地方零細私鉄会社での手売りきっぷ(補充券や硬券など)の面白さにはまってきた筆者は、去る週末に静岡県富士市にある岳南電車への乗り鉄と収集に出かけた。かねてからマークしてきた路線なのだが、実際に行ってみたらきっぷが時代錯誤の昔のスタイルのままで、大変面白かった。
岳南電車は、工業地帯の夜景という観点から日本夜景遺産に指定されており、今後は乗り鉄客を中心とした観光客の誘致に力を入れたいようである。
補充券等の手売りきっぷの収集用発券は、当該鉄道会社の好意によるものと考えます(正当事由による発券を除きます)。
当然、発券を断られることもあることを留意する必要があります。
もし入手できた場合は、感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。また、入手のための職員への無理強いなども慎むようにしましょう。
なお、補充券や常備券の在庫は常に変動するため、本稿に掲載したきっぷを今後入手できることを保証できません。
以上をあらかじめご承知のうえ、本稿を閲覧ください。
岳南電車が走るところ
その岳南電車がJR東海道線と接する吉原駅は、富士駅から1つ東にあり、東京駅からは新幹線で三島駅で乗り換えて、名古屋駅からは静岡駅から乗り換えて向かう。新幹線の新富士駅からも近いが、バスの便が良くないようなので、残念ながらお勧めできない。(東京や名古屋からは片道乗車券で来て、岳南電車の駅で復路の硬券の乗車券を買い求めるとよいかと思う。)
吉原駅は工業地帯の中にある地味な駅だが、富士駅方に忽然と岳南電車の駅舎が現れる。木造平屋の建物である。
結構殺風景な一帯である。岳南電車の駅舎は、写真の右のほうである。
駅の中の様子は、こんな感じである。
JR側から歩いてくるとまず自動改札を通ってから岳南電車の乗車券を購入する。ここでは、現在では以下にも風変わりな、昔ながらの硬券を売っているので、入手した一部の口座をのちに紹介する。
いきなり紙鉄
まずは、全線1日フリー乗車券を購入してから、乗車開始である。終点の岳南江尾まで乗って帰ってくると運賃的には元が取れるので、ここで買うのをお勧めする。
いきなりのD型硬券で萌えるが、印刷は意外にも鮮明である。小児用のものは、金額と写真が違う程度である。
電車の乗り場に進むところに、ショーケースがあって、岳南電車のグッズがたくさん展示されている。千葉県の銚子電鉄と同じく、明らかに鉄道ファン向けのビジネスなのだが、硬券のセットなどが今や希少性が高いので、思わず飛びついてしまうのである。
マグカップやペーパークラフトがお得意なようである。しかし、記念硬券のセットがやはり目立つ。
目についたのが、社名変更記念硬券・補充券セット\1,500円である。
D型硬券7枚と補充片道乗車券が3枚のセットであるが、補充券のほうがなんと乙片付きなのである。これは萌えてしまう。こんなのは他の鉄道会社ではまず売っていないだろう。
1枚づつ手作業で日付がダッチングされていて、制作のための手間が結構かかっている一品でもある。
岳南電車1周年記念の硬券セット\1,000も併せて購入したが、地図式のA型硬券である。実際の乗車用には売っていない様式なので、特製と思われる。
これらのセットや補充券などのきっぷを購入した時には、袋をくれたので結構優しい。
乗り鉄そのものは、起点の吉原駅から終点の岳南江尾駅までの片道20分間の移動にすぎないが、途中岳南富士岡駅にはかつての貨物輸送でで使用されていた電気機関車が留置されていて、かつての多様性を連想された。
乗車した車両は、元京王帝都電鉄で使用されていたおさがりの車両である。
乗り鉄用に、現地の駅では岳南電車沿線マップという結構きれいなマップを配布していて、ちょっとした街歩きに役立ちそうだ。
きっぷ三昧
乗り鉄の後は、いよいよ硬券収集(券鉄)である。まずは、日中だけ窓口が開いている吉原本町駅へ。(平日朝は岳南富士岡駅なども窓口が開いていて、収集が可能と思われる。)市街地の中にある小さな駅である。
まずは補充券。特別補充券はなくて、補充片道乗車券と車内補充券が存在するとのこと。
補充片道乗車券は、経由欄に吉原駅が記載されているため、JR線連絡のいずれかの駅までであれば切ってくれるとのこと(もちろん連絡運輸範囲内で)。これはリアルなきっぷである。
次は、車内補充券である。岳南電車ではワンマン運転なので車掌が存在せず、入手できないはずなのだが、吉原本町駅にある岳鉄プラザに鋏とともに展示されていて、希望者には運賃実費で切ってくれるものである。これは、線内だけである。
よく見たら、日付を入鋏しない様式であって、ひやひやものだ。
硬券
さて、本稿の締めは、硬券たちである。
まずは、JR線連絡券関連である。公知であろうが、吉原駅の岳南鉄道口では、JR東海線の乗車券を発売しているのだが、それが券売機ではなく、硬券なのである。ただし、硬券の口座数が少なく、近場のみの金額式である。
A型券の駅名式となると、藤枝行きや東京山手線内行き、名古屋市内行き(新幹線経由)程度しか設備がないので、入手するかどうかは予算次第である。
連絡券でないバージョンは、吉原駅発の次の券である。小児専用券も常備されていた。発行箇所がなぜか吉原本町駅と、実態と異なる。
券面を見ると、カオスさを感じざるを得ない。次は、吉原本町駅発の連絡券である。
不思議なことに、同じ連絡券関連でも、地紋が異なるのが面白い。
入場券の様式も統一されていないらしく、駅によって地紋の有無がみられる。
線内の硬券口座は限られているが、バリエーションがみられる。目的駅名が固定されている一般式と矢印式なのだが、金額式にはしないようだ。何か理由がありそうではある。
地紋のデザインがかわいいけどシンボリックなもので、券鉄であれば収集したくなるのではないかと思う。首都圏にも近く、鉄道ファン・マニアに優しい鉄道会社なので、乗り鉄・紙鉄にはお勧めである。