新幹線乗車で「東京近郊区間」を外れる小ワザ~70条と端末処理を考える~

東海道山陽新幹線700系車両
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JR線の乗車券を駅の「みどりの窓口」で購入する際、大部分はマルス端末から発券された磁気券を手にすることと思います。

しかし、手売りの常備券や補充券(非端末券)が完全に消滅したわけではありません。日本列島はとても広く、全国のすべてのJR駅にオンライン処理可能なマルス端末が完備されているわけではありません。したがって、出札業務を手作業に依存する場面がどうしても残っています。

乗車券類の経路や例外をよく検討し、時と場所さえ選べば、JR線の手売りきっぷの入手が現在でも可能ということです。

この記事では、筆者が念入りに検討し、購入した普通乗車券が「出札補充券」で発行された、非常にまれな事例をご紹介します。

運賃計算の特例や端末処理の限界を突いているため、常に再現できるものではないことを、先にお断りしておきます。

【お断り】この記事に記載した運賃・料金の金額は、初稿執筆の2017年時点のものです。その後、改定されていることをご承知おきください。

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マルス端末で処理できない乗車券もまれにある

今回購入した普通片道乗車券は、大都市近郊区間の一つである「東京近郊区間」のエリア内を周回するものです。

この記事を読む上での鍵は、新幹線が経路に含まれる場合は、大都市近郊区間を外れることです。その場合、例外的な扱いとして、乗車経路通りに乗車券を購入することになります。

大都市近郊区間内で在来線を乗車する場合、一筆書き経路である限り、任意の乗車経路とすることが可能です。いわゆる、最低区間運賃での「大回り乗車」といわれるもののルール上の根拠です。

この点を別の観点からみると、大都市近郊区間内における乗車券は、営業キロの長短を問わず、途中下車できないことになります。

これらのルールを裏返して考えると、大都市近郊区間内であっても、経路の一部に新幹線の区間が含まれる場合、最低区間運賃では任意の経路を選べません。大原則にそって、乗車経路の通りに乗車券を購入することになります。

その場合、乗車距離が100kmを超えると、きっぷの有効期限が営業キロに応じて2日間以上になり、途中下車が可能となるわけです。

新幹線に乗車する区間によっては、運賃計算上、マルス端末で処理できないケースがまれに発生します。

この記事で紹介する事例は、マルス端末での発券ができないゆえに、出札補充券で乗車経路通りに発券してもらうことが可能という、例外的なレアケースです。

経路の検討

JRの旅客営業規則70条では、東京都区内にある環状経路部分を通過する場合の運賃計算方法について規定されています。

70条を適用する経路としては、無限のパターンが考えられます。

その一例として、大宮駅方面から赤羽駅を経由して田端駅で山手線に乗り換えて、新宿駅までほぼ一周乗車します。その先、三鷹駅方面へ向かう場合が考えられます。

その場合、実際の乗車経路にかかわらず、最短経路である赤羽駅ー新宿駅(埼京線十条駅経由)を通ったものとして扱うことになります。

実乗経路と運賃計算経路の違い
かなりデフォルメしています。アバウトなイメージとご理解ください。

今回は、東京近郊区間内の1駅間の一例として、東北本線の川口駅ー赤羽駅という1駅間を取り上げます。ちなみに、この区間、1駅間で営業キロは2.6km、運賃は紙券を購入した場合140円です。後出の出札補充券との違いを、ぜひ観察していただきたいと思います。

当該経路の場合、在来線だけを乗車する場合で途中下車しない場合(改札口を出ない場合)、一筆書きである限りは、周回乗車でもこの140円で済むことになります。

改札口を出ない限り、任意の経路で乗車可能(あくまで新幹線は含まず)

今回は、当該経路上に新幹線の区間を一部含め、運賃計算の基本である実乗経路で計算して、普通乗車券を購入しました。実乗経路と運賃計算経路は、下表のとおりです。

発駅経由線区着駅営業キロ運賃計算キロ
川口東北東京15.8
東京新幹線品川6.8
品川山手1代々木9.9
代々木中央東立川27.9
川口東北赤羽2.6
赤羽埼京池袋5.5
池袋山手2新宿4.8
新宿中央東立川27.2
立川青梅拝島6.96.9
拝島八高倉賀野82.190.3
倉賀野高崎高崎4.44.4
高崎上越新幹線熊谷40.340.3
熊谷高崎大宮34.434.4
大宮東北南浦和7.87.8
南浦和武蔵野武蔵浦和1.91.9
武蔵浦和埼京赤羽10.610.6
【合計】248.8236.7
営業キロの合計と運賃計算キロの合計に注目

「川口駅ー(王子駅を通る在来線)ー東京駅ー(新幹線)ー品川駅ー(在来線)ー新宿駅→(中央本線方面)」という実乗経路において、乗車券の経路はその通り成立します。

ところが、規則70条によって、運賃計算は最短経路の「川口駅ー赤羽駅ー(十条駅経由)ー新宿駅→(中央本線方面)」で行います。そのため、実乗キロと運賃計算キロに齟齬が生じます。

今回の発券例では、実乗キロは248.8kmで、運賃は本来4,430円(当時)となるはずです。しかし、実際に発券すべき運賃計算上の営業キロ数は236.7km、運賃額は4,000円(当時)です。

このケースにおいて実乗経路を指定した場合、マルス端末では4,000円と算出することが不可能です。それゆえ、出札補充券の出番となります。

新幹線に乗車する場合、乗車経路通りに運賃計算(ただし70条による修正あり)

この画像が、実際の「出札補充券」の券面です。実乗経路が、別紙で添付されます。

経路途中の「赤羽駅ー新宿駅」までは経路の指定を行わないことから、最短経路で発行した端末券でも、規則上は東京駅や品川駅など最短経路外でも途中下車が可能です。

しかしながら、実務的なところで(JR東海の)新幹線に乗車する際に、経路通りの乗車券を持っていないとトラブルになると懸念し、大事をとって補充券で発券してもらったわけです。

こぼれ話ですが、後述の東京駅入場時に、JR東海の東京駅駅員に不審を抱かれました。娯楽的なきっぷを作って乗車するからいけない、という批判がもしあれば、甘んじて受けたいと思います。

出札補充券で「東京近郊区間」内の列車を実乗!

ここまで、頭の痛くなるような、難しい話が続いてしまったことと思います。

検討を慎重に重ねて購入した、上記のきっぷを使用して、実際に乗車しました。その日の体験を共有したいと思います。

発駅の川口駅で入鋏!

朝の川口駅で出札補充券に入鋏してもらい、京浜東北線で東京駅に向かいました。

東海道新幹線乗車【東京駅ー品川駅】

今回の経路中のキーポイントです。

自由席でわずか7分間の乗車で、特急料金は860円。後にも先にも経験しないだろう短区間の乗車でした。

東京駅の東海道新幹線改札口を通過しようとしたら、2人の駅員がきっぷをじろじろ見て、疑っている様子。正しいきっぷを持っているので、堂々と通ったのですが、後味が悪かったです。旅行前に懸念を抱いた通りとなりました。

良くも悪くも、補充券よりもばかばかしく、珍しい特急券かもしれないです(笑)。

こだま号名古屋行に乗車。すでに引退してしまった、700系車両でした(JR西日本所有の車両)。

八高線乗車【拝島駅ー高麗川駅ー高崎駅】

東京駅から100km圏内のJR線において気動車が残る、貴重な線区です。ほぼ全線にわたり、里山の中を走る路線です。半日でちょっとローカル線に乗りたいと思い立った時に、気軽に乗車できる路線です。

途中の高麗川駅(埼玉県日高市)までは電車で、高麗川駅から先、高崎駅までは2両編成のワンマン気動車に乗車しました。

拝島駅から、まずは川越行に乗車。東京都内の区間は、住宅地の中を走ります。

単線の路線なので、ローカル感がよく感じられます。箱根ヶ崎駅を過ぎて埼玉県に入ると、茶畑が広がります。ほっとした気分になりました。

高麗川駅は思ったよりもローカルな駅で、駅前にコンビニもなかったです。

ここで、気動車とご対面。昼下がりの時間帯の乗車でしたが、そこそこ人が乗っていました。

高崎駅に近づくにつれて、地元の乗客が多く乗車してきて、車内が混んできました。

思ったよりも田舎を走る路線で、遠い地方に行ったかのような気分になりました。

寄居駅あたりまでは里山を縫って走り、その先高崎駅までは関東平野の中、関越自動車道と並走。高崎駅では、途中下車。

上越新幹線乗車【高崎駅ー熊谷駅】

八高線から高崎駅を経由して大宮駅方面に戻る経路で、高崎駅で途中下車するためには、一筆書きの経路でなければなりません。そこで、高崎駅から熊谷駅までは、上越新幹線に乗車する経路をとりました。

東海道新幹線および上越新幹線の区間が経路に含まれているため、東京近郊区間外の扱いとなります。乗車券の有効区間は、運賃計算経路に基づき3日間となり、途中下車が可能となるわけです。

2017年6月当時の料金金額

新幹線の自由席特急料金は、途中に本庄早稲田駅ができてからも860円です(特定特急券)。

実際に乗車したのは、日曜日の夕方の東京行きでした。とても混雑していて、自由席には空席がありませんでした。

高崎駅では多くの乗客がこの列車に乗車しましたが、自由席では座ることができませんでした。

まとめ

片道100kmを超える経路に新幹線乗車区間を含めると、東京近郊区間を外れて、途中下車が可能となります。つまり、ブツ切りの運賃合算ではなく、旅行全体で通しの運賃の適用が可能で、距離が長ければ長いほど運賃が割安になります(遠距離逓減制)。

今回、出札補充券での発券となったのは、あくまでも、端末処理ができないための例外と考えます。

世の中に存在する電算システムで、100%完璧に情報処理できることはあり得ません。それは、マルスシステムにおいても例外ではありません。システムエラーは何かしら、必ず存在します。そのため、人による手作業がどうしても発生します。そのようなケースに備えた、文字通りの「補充券」なのに、駅員に疑われるのは迷惑です。

JR東海の区間である東海道新幹線に乗車する場合、本事例のように、実乗経路を記載した乗車券の発券をおススメします。その場合でも、規則70条規定の区間では、運賃計算を最短経路で行います。

参考資料 References

● 「きっぷあれこれ」大都市近郊区間・途中下車(JR東日本)

途中下車:JR東日本
JRのきっぷの種類・発売日・有効期間や、学割・団体割引をはじめとする割引料金、変更・払いもどしなど、きっぷに関するさまざまなご案内をしています。
運賃計算の特例:JR東日本
JRのきっぷの種類・発売日・有効期間や、学割・団体割引をはじめとする割引料金、変更・払いもどしなど、きっぷに関するさまざまなご案内をしています。

● 旅客鉄道株式会社旅客営業規則70条(特定区間における営業キロ)より抜粋

第70条 第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間を通過する場合の普通旅客運賃・料金は太線区間内の最も短い営業キロによって計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。

JR東日本ウェブサイトより引用

改訂履歴 Revision History

2017年7月02日:初稿

2022年6月14日:初稿 再構成

2022年6月22日:初稿 修正

※ コメント ※

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