しなの鉄道の公共交通機関としての立ち位置

従前から、長野県にある第三セクターの鉄道であるしなの鉄道に乗車する機会が時よりある。最近も一部区間を乗車する機会があったのだが、乗車した軽井沢駅が立派に改装されているのに驚いたのと同時に違和感を覚えた。

地域公共交通機関である第三セクターのしなの鉄道に、一体何が起こっているのだろうか。
確かに観光列車(リゾートトレイン)に乗車する観光客向けの外向きの表情は一見良く見えるが、一方で、一般の地元の人たちや用事で普通電車に乗車する乗客への内向きの表情は一体どんなものだろうかと思った。地元の利用者には辛抱を強いているのではないか。
県外の人間として僭越ではあるが、一体何が起こっているのか、限界はあるのだが、議論のたたき台として一般利用者の目線で声をあげてみたい。

きれいな軽井沢駅駅舎に驚いた

2017年11月下旬にしなの鉄道の軽井沢駅を訪れたのだが、従前利用されていなかった旧駅舎が立派に改装され、観光列車のろくもん号の待合ラウンジやカフェが設置された。10月下旬に完成したばかりというが、2018年3月に向けてさらなる改装が進行中である。同社ホームページによれば、駅舎も、車両デザインを手がけた水戸岡氏のデザイン設計だという。

カフェの入口。観光地らしい看板である。

座り心地は大変良くて、くつろげた。

主に県外の観光客には受けがいいと思うが、この改装費用が一体どこから捻出されたか、純粋に疑問に思った。
少なくとも、経営が厳しいはずの並行在来線の第三セクターの鉄道会社には釣り合わない程度の豪華さである。

疑問がわいてきた

これって、通学客や高齢者などの一般の利用者には利益があるのか、単純な疑問として湧いてきた。
実は軽井沢駅を訪れたこの時に、筆者が駅員と接触したのだが、ぞんざいな対応をする職員がいて、ちょっとひどい思いをした。ちょっと無理なことを尋ねたとはいえ、一鉄道ファンを見下した態度だなと思ったのである(居合わせた他の一般客にもぞんざいな口調だった)。

2013年3月に沿線で桜の木が伐採された事件が報道されて、鉄道ファンが犯人と決めつけられてツイッターが炎上した事件を記憶されている方がいるかもしれないが、それ以来、この会社の職員による鉄道ファンに対するアレルギー・風当たりが強いのかと考えると自然なことである。

ここまでならば、単なる筆者の戯言に過ぎないと思っていたのだが、実はそうでもなさそうである。

地元の人々にとっての不利益は?

元々、しなの鉄道の車両(115系)にはトイレの設備があるにもかかわらず施錠して利用できないこと、駅のみどりの窓口でのマルス端末が撤去されてJR指定券が購入できなくなること、運賃水準がJRよりも上昇するなど、鉄道会社側の経費削減の一連の行動で、地元の乗客にはかなり不利益であることには違いない。
また、ワンマン運転で運転士が駅での集改札も行わないので、乗客には不案内である。その割には、運転士が車内放送で観光客向けに、浅間山のビュースポットの案内をしていた。毎日聞かされる地元客はうんざりするに違いない。

同じ北陸新幹線の並行在来線である、えちごトキめき鉄道(新潟県)、あいの風とやま鉄道(富山県)、IRいしかわ鉄道(石川県)では、いずれも車両内のトイレは利用できるし、主要駅にはJRのマルス端末があってJR指定券が購入できる。
運賃水準の上昇は避けられないものの、しなの鉄道とそれを管理する長野県は、ちょっと利用者を我慢させすぎではないか。

長野県のウェブサイトにある、「県民ホットライン」というものをたまたま見つけた。
これまた驚くことに、しなの鉄道に関するネガティブな声が、2015年11月から2016年5月まで立て続けに7件掲載されているのである(しなの鉄道の車両設備について、乗客サービスについてなどの声)。

長野県「県民ホットライン」
http://www.pref.nagano.lg.jp/soumu/koho/hotline/bunrui/03_001.htm

現場職員の接遇態度・サービスや、観光列車のろくもん号との扱いの格差などに相当不満と怒りがたまっているようで、その様子が垣間見えるのだが、筆者が体験した現在までそれらが改善されたとは思えない。
筆者が感じたことが、それらのページにはそのまま掲載されているので、単なる筆者の個人的な所感とは言えない。

観光客優先の姿勢の現れでは?

上記の軽井沢駅の大改装プロジェクトにしても、観光列車のろくもん号にしても、外向けの観光客向けのものと考える。
鉄道会社の経営的には、普通電車のわずかな収入よりは、観光客が落とす収入にうまみがあるのだと想像できる。

本ブログでも、ろくもん号の乗車体験を紹介しているが、アテンダントさんの接遇は見事な素晴らしさだった。お金を払えば、素晴らしいサービスを受けられる好例である。

しなの鉄道「ろくもん」号 乗車体験【前編】
しなの鉄道「ろくもん」号 乗車体験【後編】

このろくもん号、最近ウェブ予約やクレジットカード決済に対応し始めたが、それらの導入の設備投資に多額のコストがかかっているはずである。

一方で、乗車運賃を支払っているだけの地域の利用者には上記のような我慢を強いている。
その分の投資を積み立てて、地元のために車両の更新やトイレ設備の開放に優先すればいいのにと思った。
記念きっぷを購入することのない一般客を冷遇するというのは、ちょっと言い過ぎだろうか。

地域の公共交通機関としての在り方の問題である

結局は、一時的な収入増加をもたらす観光客を優遇するのか、地域の公共交通機関として地元の利用者を大事にしていくのか、究極の二者択一である。
この経営判断には筆者は決して立ち入れないが、一つだけ言えることは、地域の利用者にそっぽを向かれては、地域の鉄道として愛されずに存続困難となる悲しい事態になるということである。

観光列車は、個人的には一過性のブームだと考えていて、将来観光客に飽きられれば、それらの客はすぐどこかに逃げてしまう。一方で、毎日利用する乗客はすぐに逃げるとは思われないので、地元からの貴重な収入源だと考えるのは筆者だけだろうか。

長野県はかなりの車社会なので、もし地元利用者を敵に回せば、どのような結果になるかは自明だと思う。
原点に返って、しなの鉄道にも、長野県の当局にも、地域利用者目線での公共性ある施策を模索してもらいたいものだと思う。

 
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