JR東日本の主要駅に「駅たびコンシェルジュ」なるものができたと聞いて、それは何だろうかと思って早速利用してみました。
従前、JR東日本の駅には「旅行センター」の後継として「びゅうプラザ」があって、JRきっぷや旅行商品を対面販売で利用できました。
昨今では、旅行商品を対面で購入するのではなく、自分でインターネットにアクセスしてオンラインで購入するのが主流になりました。また、JRきっぷも「えきねっと」や駅の指定席券売機を利用して、自分で操作して購入することが要求される時代になりました。
しかし、操作が煩雑な機器やインターネットを自在に使いこなせないシニア層や、日本を訪れる外国人客にとっては、非常にハードルが高いことです。そんな層にとって心強いサポート役が「駅たびコンシェルジュ」のスタッフさんではないでしょうか。

誰でも利用できるんですか?

旅行相談なら誰でも利用できることになっていますが、シニア層や外国人の利用を想定しているようです。
この記事では、「駅たびコンシェルジュ」とは何か、受けられるサービスについての概要を説明します。その上で、筆者自身が「大人の休日倶楽部」会員用のフリーきっぷを購入するために訪れ、利用した実体験をお話ししたいと思います。
目次
「駅たびコンシェルジュ」の立地

従前あった旅行商品の対面販売店舗「びゅうプラザ」が一斉に閉店して、その代替として「駅たびコンシェルジュ」が2021年から順次開店しています(外国人向けインフォメーションセンターの後継でもあります)。2021年3月に開店した「駅たびコンシェルジュ秋田」を皮切りにして、2022年春までに県庁所在地の主要駅を中心に20か所以上の店舗が開店しました。
駅たびコンシェルジュの立地は大きく、
● 県庁所在地にあるJR主要駅
● 国際空港
の2タイプに分けられます。
JR主要駅に関しては、県庁所在駅に1か所づつ(すべての県庁所在地ではない)、および新幹線・特急列車のターミナル駅に店舗が立地しています。
● 東北地方:青森駅、秋田駅、盛岡駅、山形駅、仙台駅、福島駅
● 信越地方:長野駅、新潟駅
● 首都圏:東京駅、新宿駅、渋谷駅、品川駅、上野駅、池袋駅、立川駅、大宮駅、横浜駅、川崎駅、柏駅、船橋駅
国際空港については、羽田空港、成田空港とその中継駅の浜松町駅【未開店】に店舗があります。
北関東3県および山梨県内には、この記事の執筆時点で開店予定の店舗がありません。
重要な点は、「駅たびコンシェルジュ」が、昨今閉鎖が続いている乗車券類の販売窓口である「みどりの窓口」の代替ではない点です。まず、旅客自身が能動的に自己検索・操作を行い、きっぷを購入することが前提としてあります。
乗車券類を対面で販売する役割を持つのは依然「みどりの窓口」であり、「駅たびコンシェルジュ」はきっぷを購入するための旅客サポートを行うための場所です。
「駅たびコンシェルジュ」の顧客層
駅たびコンシェルジュの利用が見込まれる顧客層ですが、
● 「大人の休日倶楽部」会員である中高年層の旅行者
● 日本を訪問する外国人旅行者(インバウンド)
の2つの層がターゲットと思われます。
JR東日本の経営戦略としてのデジタル化(DX)が顕著で、その具現として旅客に触れる部分においてもデジタル化が進んできています。乗車券類のデジタル化、チケットレス化、旅行商品のウェブサイトからの購入と、旅客自身がインターネットを利用して、自分で検索や操作をして予約や購入を行う時代になりました。
しかし、これらの少々強引と言える施策についていけない層に関して、よく分析できているようです。「大人の休日俱楽部」会員層である中高年・シニア層は、現役層に比べてインターネットの活用が弱いのが事実です。また、訪日外国人旅客にとっても、ウェブ上での情報操作を日本語画面で行うことは厳しい面があるでしょう。
言葉は悪いですが、いわゆる「情報弱者」であるこれらの層に関する課題を、対面接客ベースで解決するのが、今回登場した「駅たびコンシェルジュ」であると、筆者は考えています。
「駅たびコンシェルジュ」で受けられるサービス内容

筆者が駅たびコンシェルジュの店舗でもらってきたパンフレットに、主なサービス内容が書いてあります。
キーポイントであるのが「旅客サポートに徹する拠点」であることと考えます。スタッフがおすすめの旅行商品を積極的に営業するのではなく、旅客の相談に応じてソリューションを提案し、旅客自身が自ら旅行商品を購入するのを支援するというところでしょうか。
● 旅のコンサルティング(旅行相談)
● ウェブ商品予約サポート
● 大人の休日俱楽部会員サポート
● JR東日本のオンラインサービス等のサポート
● 訪日外国人旅客のサポート
● 東日本エリアの観光情報発信
● 各種イベントの開催
● 駅周辺の観光案内「街歩き」
これらの内容を見るに、大人の休日俱楽部会員や外国人でなければサービスを受けられないわけではありません。鉄道旅行を考えているけど、みどりの窓口でゆっくり相談できにくそうで困っているという場合、この「駅たびコンシェルジュ」を利用すると良いかもしれません。
「旅客のサポートに徹する」ため「自ら販売推進する」訳ではない現れとして、JRきっぷは基本的にはみどりの窓口で購入してほしいとのことです。マルス端末が備わっていますが、フル稼働するわけではなく補助的に販売業務を行うとのことでした。
「駅たびコンシェルジュ」筆者の利用体験

筆者が「大人の休日俱楽部」に入会して半年が過ぎた2022年2月のある日に、東京駅丸の内北口にある駅たびコンシェルジュのお店を訪れ、「大人の休日俱楽部北陸フリーきっぷ」を購入してみました。
開店から1か月しか経たない新しい店舗での、筆者が訪れた時のスタッフさんの接客対応を含めて、どんな感じだったのかということを書きたいと思います。
駅たびコンシェルジュでは来店予約を受け付けているので、ゆっくり鉄道旅行の相談をしたいと思ったら、お店に行く前に予約をすると良いかと思います。
さて、筆者が予約なしでお店の中に入ると、女性のスタッフさん(コンシェルジュ)がこちらに向かってきて、挨拶を受けてから用件を聞かれました。大人の休日俱楽部会員用のフリーきっぷを買いたいと申し出たら、カウンター席に案内されました。
ひとりひとりのスタッフさんがホテルのコンシェルジュというコンセプトなのか、黒いスーツを着て金色のネームタグを着けていました。接客はとても丁寧です。

● カウンター席に座ってゆっくり話せる
鉄道のきっぷを買う時、普通はハイカウンターで対面して、旅客が経った状態でせわしなく要望を伝えて、きっぷを購入します。落ち着いて話をしたくても、立ちっぱなしでは疲労します。
しかし、駅たびコンシェルジュの店内には、立って話をするハイカウンターはなく、スタッフも旅客も椅子に座って話をするローカウンターでの接客スタイルです。
座って落ち着いて相談ができるというのが、大きなポイントかと思います。
● 機器類が店内から見えない場所にある
鉄道のきっぷを発行するためのマルス端末などの機器類、従来の旅行会社の店舗ではむき出しになっていて、せわしない感じがしました。
駅たびコンシェルジュの店舗には、旅客から見えるところにそれらの機器類が見えず、バックヤードに置いてありました。
固定のPC端末さえなく、代わりにタブレット端末を使用するので、ゆったりした雰囲気です。その分、クレジットカードリーダーの延長ケーブルが奥から出てきて、やたら長くて笑えました。
● きっぷや旅行商品を購入するまでのサポートが主な役割
筆者は、大人の休日俱楽部北陸フリーパスを購入することが決まっていて、単にきっぷを買うだけのために訪れました。駅たびコンシェルジュは、どのきっぷを買ったら一番良いかという相談ができる場所です。買いたいきっぷの結論がすでに決まっている人にとっては、普通のみどりの窓口を利用した方が迅速という印象を持ちました。
乗車券類の発売業務はみどりの窓口、発売のためのサポートを行うのが駅たびコンシェルジュと棲み分けがあるように見えました。実際に、JRきっぷだけの販売は基本的には行っていないということでした。

接客は丁寧だけど~課題点が多い~
開店からわずか1か月の店舗、スタッフさんはとてもフレッシュな感じでしたが、きっぷの購入にかなり時間を要しました。
接客はとても丁寧で好感を持つことができましたが、率直に言って業務知識や端末操作スキル、そして提案力には課題を感じます。知識や要求が高いシニア層や外国人の旅客をサポートする窓口だけに、高い業務知識や語学力が要求されるはずです。「コンシェルジュが旅のコンサルをする」のがコンセプトなだけに、いかに場数を踏んで業務知識を身に着けることができるかというところでしょうか。
かつての対面販売店舗だった「びゅうプラザ」のコンサル機能を踏襲できるか、良く見守りたいかと思います。
参考資料 References
● 駅たびコンシェルジュ ウェブサイト(JR東日本)
● 駅たびコンシェルジュ パンフレット(駅たび東京作成 2022)
改訂履歴 Revision History
2022年2月18日:初稿
2022年5月11日:初稿 修正
2022年5月17日:初稿 修正
2022年6月21日:初稿 加筆
※ コメント ※