JR各社の多くの駅に設置されている「指定席券売機」。
数年前にはまだ台数も多くなく、慣れた人が利用する程度でした。現在では、有人窓口(みどりの窓口)の数が減少し、代替手段として指定席券売機が普及してきました。乗車券だけでなく、指定券も自分自身で買う機会が増えました。
指定席券売機は、一般の券売機と比べて大変高機能で、多種類のきっぷを買えます。指定券や定期券を買えることはもちろんですが、乗車券だけでも購入できることをご存じでしょうか。
長距離の乗車券だけではなく、近距離乗車券や入場券も買うことができます。また、現金だけではなく、クレジットカードや(駅によっては)交通系ICカードで決済できます。
この記事では、指定席券売機を使用して、近距離の普通乗車券や入場券を購入する方法を、図解で説明します。

とっつきにくい指定席券売機ですが、慣れればとても便利です!
指定席券売機を使用するメリット・デメリット

指定席券売機には、実に多彩な機能が搭載されていて、多くの種類のきっぷを購入できます。
「指定席券売機」の名称は、JR各社によって異なります。JR西日本管内では「みどりの券売機」と呼ばれます。
指定席券売機は、基本的に自分自身で操作してきっぷを買う機器です。その中には、オペレーターからのサポートを受けられるものもあります。アシスト機能付きの「アシストマルス」と呼ばれる券売機で、JR各社によって「話せる指定席券売機」や「話せる券売機」「みどりの券売機プラス」などと、呼称が異なります。
指定席券売機のメリット
指定席券売機には、多くのメリットやデメリットがあります。ここでは、筆者が感じている点をいくつかお話しします。
● 操作感が統一されている
JRに限らず、鉄道会社や駅によって、券売機のボタンの形や操作感はそれぞれ異なります。近距離きっぷの券売機で乗車券を買う際、自分で運賃表を見て正しい金額を見つける必要があります。
これが、人によってはきっぷを買う際にハードルを感じる原因です。
一方、指定席券売機の乗車券メニューを使用すれば、目的地の駅名を入力するだけで金額が表示され、慣れれば使い勝手の良さを感じるはずです。操作画面が全国の指定席券売機で同じなため、覚えた操作方法をどこにいても使える統一感があります。
これは、一台一台の指定席券売機が専用線を介してホストコンピューター「マルス」に接続されているため、違うJR会社でも操作感が同じです。この記事では「マルスモード」と呼びます。
● 決済手段が現金だけでない
操作感が統一されている点は、決済方法にまで及んでいます。JRの指定席券売機の場合、券種を問わず、クレジットカードで決済できます(一括払いのみ)。
ただし、JR北海道など一部の指定席券売機に実装されている「近距離きっぷモード」では、現金決済だけです(この記事では、便宜的に「近距離きっぷモード」と呼びます)。
● 出札窓口の係員と話をする必要がない
出札窓口にいる駅員さんに、席番など細かな要望を注文してきっぷを買うには、コミュニケーションスキルが結構必要です。そのため、意外に高負荷なストレスを感じます(乗客だけでなく、駅員さんもストレスを抱えるはず)。
指定席券売機で自己操作すれば、複雑な指示を出す必要がなく、マイペースかつストレスフリーにきっぷを買うことができます。
指定席券売機のデメリット
指定席券売機を使用するにあたって、メリットと同じだけのデメリットがあるのも確かです。
● きっぷが発券されるまで時間がかかる
高機能なだけに、初期画面から目的のきっぷを購入するまでの画面遷移が多く、操作手順が複雑です。
正しい操作メニューを選択するスキルが必要で、たとえ正しく操作できても操作工数が多く、きっぷの発券まで時間がかかります。
● 買えない割引きっぷがある
連絡乗車券や連続乗車券、学割、障害者割引が適用された乗車券について、自己完結では購入できません。アシスト機能付きの券売機を使用し、インターホンでオペレーターに依頼するか、従来通り有人窓口で購入する必要があります。
JRが発売に消極的な券種ほど、指定席券売機では購入しにくいです。
● 乗車変更や払いもどしが苦手
きっぷを新規に購入する場合、便利な指定席券売機ですが、一度買ったきっぷを乗車変更したり、払いもどししたりすることがかなり限られます。
アシスト機能がない普通の指定席券売機では、基本的に乗車変更や払いもどしができず、有人窓口で処理を依頼する必要があります。
指定席券売機はとても高機能で、各社が自在に操作画面をカスタマイズできます。それが利用者にとってメリットにもデメリットにもなります。JR各社・各駅で異なる指定席券売機の呼び方や操作画面について、別の記事にまとめました。以下の記事(↓)を参照してください。
指定席券売機の活用は適切に
このように多くの種類のきっぷを自己操作で購入できるのが指定席券売機ですが、適切に利用したいです。
2023年9月以降、JR東日本管内すべての指定席券売機において、一定金額以下の他駅発普通乗車券の購入(他乗代)が制限されました。指定席券売機では自在にきっぷを購入できることが悪用され、不正につながったことがその原因と聞いています。
元々購入できたきっぷが購入できなくなると、指定席券売機が持つせっかくの高機能性と利便性が損なわれる結果となります。JR西日本管内で元々制限されていた機能が東日本管内では従前開放されていたので、横並びとなってしまい残念な結果となりました。
この記事は、読者さまに筆者の知見を共有し、便利かつ良い体験をしていただきたいという善意をもって投稿しています。くれぐれも、きっぷの不正利用につながるような券売機の濫用を慎んでください。
指定席券売機で近距離きっぷ・入場券を買う方法

それでは、指定席券売機で近距離きっぷ(営業キロ100km以下の普通乗車券)を買う方法を説明していきます。
まず、初期から導入されている一般的な指定席券売機の操作方法です。JR東日本の駅に設置されている「指定席券売機」やJR西日本の駅に設置されている「みどりの券売機」が該当します。
普通乗車券は、いずれの駅でも購入できます。きっぷを買う駅から乗車する乗車券が基本ですが、他駅発の乗車券も購入できます(JR西日本管内の一部の駅では、他駅発のきっぷを購入できないことがあります)。
入場券は、購入する駅のみで使用できます。JR東日本管内の駅では、指定席券売機で入場券を購入できる駅が限られます。
一般的な「指定席券売機」「みどりの券売機」(マルスモード)
● 近距離の「普通乗車券」
ここでは、JR東日本管内の駅に設置された指定席券売機で、他駅発の片道乗車券を購入した実例をご紹介します。
上述した背景があり、本事例でご紹介した他駅発の普通乗車券の購入が現在制限されています。そのため、以下の購入手順を再現できません。あらかじめご了承いただき、お読みください。
なお、当駅発着の乗車券や、指定券とセットで発売される乗車券については、従来通り以下手順にて購入可能です。
1.初期画面にある「乗車券」を押します。

2.「乗車券」を押します。

3.きっぷを使用する日にちを選択します(乗車1か月前から前売り)。駅によって表示が異なります。

4.人数を選択します。

5.新幹線経由の乗車券を購入する場合は上方のボタン、在来線経由の一般の乗車券は下方のボタンを押します。

6.通常は当駅の駅名が表示されているので、その駅を押します。ここでは、他駅発の乗車券を購入するため「その他の駅」を押します。

7.かなキーが表示されたら、発駅のよみを入力します。

8.よみが同名か、類似した駅名が表示されます。目当ての発駅名(漢字表記)を選択します。

9.同様に、着駅名のかなを入力し、候補から目当ての着駅名を選択します。

10.経路の候補が表示されます。実際に乗車する目当ての経路を選択します。

11.片道乗車券か往復乗車券のいずれかを選択します。

12.確認画面が表示されます。正しいことを確認し「確認」を押します。

13.現金か交通系ICカード(一部の駅)、クレジットカードのいずれかを投入して決済します。このステップに至るまできっぷの値段が表示されないのが、指定席券売機の欠点です。

14.ビューカードなど交通系ICカード付きのクレカを入れた場合、決済方法を選択します(交通系ICカード使用可能な駅に限る)。

15.きっぷを受け取ります。
(発券された実際のきっぷ)

● 入場券
JR東日本管内では、指定席券売機で入場券を買える駅がなぜか限られています。その他の会社では、特に制限なく多くの駅で買えます。
ここでは、JR東日本管内の駅に設置された指定席券売機で、入場券を購入した実例をご紹介します。
1.初期画面にある「乗車券」を押します。

2.「入場券」を押します。

3.人数を選択します。
4.現金か交通系ICカード(一部の駅)、クレジットカードのいずれかを投入して決済し、きっぷを受け取ります。
(発券された実際のきっぷ)

JR北海道「話せる券売機」で近距離きっぷ・入場券を買う方法

JR北海道管内の設置駅にある、アシスト機能付き「話せる券売機」は、非常に多機能かつ高機能です。早朝から深夜までオペレーターが対応し、サポートを受けやすいです。
また、近距離きっぷに関しては、専用の近距離きっぷモードが付いており、比較的簡単な操作で購入できます。
近距離きっぷモード
従来の単機能券売機と同じ使い勝手で、画面遷移がない簡単操作で近距離きっぷを買えます。ただし、現金決済のみです(クレジットカードで決済したい場合、マルスモードで購入)。
単機能の券売機では、先にお金を入れてから金額ボタンを押します。一方、話せる券売機では、金額ボタンを押した後、決済画面が表示されてからお金を入れます。
● 近距離の「普通乗車券」
当駅発の当日有効の片道乗車券を購入した実例をご紹介します。
1.初期画面が、駅によって異なります。近距離きっぷモードの金額ボタンが表示されていない場合、初期画面にある「近距離きっぷ・入場券」を押します。

2.「近距離きっぷ」を押します。

3.金額ボタンが表示されます。着駅までの運賃が表示されたボタンを押します(駅名入力も可能です)。

4.現金で決済し、きっぷを受け取ります。

(発券された実際のきっぷ)
指定席券売機ながら、小さなサイズで発券されます(エドモンソン券サイズ)。

● 入場券
近距離きっぷモードで、入場券を購入した実例をご紹介します(駅によっては、自動的にマルスモードに移る場合があります)。
1.初期画面の左にある「入場券」を押します。

2.現金で決済し、きっぷを受け取ります。
(発券された実際のきっぷ)
指定席券売機ながら、小さなサイズで発券されます(エドモンソン券サイズ)。

マルスモード
翌日以降の前売り乗車券や、他駅発の乗車券を購入する場合、あるいはクレジットカードで決済したい場合、マルスモードの画面で操作します(「マルスモード」とは表示されないので、以下画面を参照ください)。
JR北海道以外のJR各社の指定席券売機でも、おおむね同じ操作方法です。
● 近距離の「普通乗車券」
「乗換案内から購入」メニューと同じ操作手順です。
1.初期画面にある「乗車券のみ」を押します。

2.乗車区間、日にち、人数を入力し「検索」を入力します(乗車1か月前から前売り)。

3.経路の候補が表示されます。実際に乗車する目当ての経路を選択します。

4.「乗車券を購入」を押します。

5.片道乗車券か往復乗車券のいずれかを選択します。

6.確認画面が表示されます。正しいことを確認し「確認」を押します。

7.現金かクレジットカードのいずれかを投入して決済します。このステップに至るまできっぷの値段が表示されないのが、指定席券売機の短所です。

8.きっぷを受け取ります。
(発券された実際のきっぷ)

● 入場券
1.初期画面にある「乗車券・特急券・おトクなきっぷ」を押します。このボタンを押すことで、一般の指定席券売機にある初期メニュー(マルスモード)に移ることができます。

2.「入場券」を押します。

3.人数を選択します。
4.現金かクレジットカードのいずれかを投入して決済し、きっぷを受け取ります。
(発券された実際のきっぷ)

目当ての経路が表示されない場合「乗換案内から購入」機能を使用
ここまでご紹介したのは、乗車券購入メニューから操作し、自動で表示された経路にて近距離きっぷを購入する方法です。
しかし、目当ての経路が出ない場合も、中にはあります。
そのようなケースでは、同じ指定席券売機の別メニュー「乗換案内から購入」機能を使用し、経由駅などを指定して乗車券を購入できます(「乗換案内から購入」機能の呼び方は、JR各社によって異なります)。
「乗換案内から購入」メニューの操作方法は奥が深いため、筆者の別の記事にて詳しく説明しています。以下の記事(↓)を参照してください。
まとめ

JR各社の駅に多数設置されてきた「指定席券売機」。
オペレーターのサポートを受けられる、アシスト機能付き指定席券売機を含め、その機種や機能はさまざまです。
一部の会社の指定席券売機で実装されている「近距離きっぷモード」では、当日当駅発の近距離きっぷを現金で購入する場合、簡易な操作画面で購入でき、とても便利です。
どの駅にいても通用する買い方は、ホストコンピューター「マルス」の操作画面を使用する「マルスモード」です。JR東日本、JR西日本では、このモードだけ導入されています。前売りのきっぷや他駅発のきっぷを購入する場合(指定券とセット購入)、あるいは交通系ICカードやクレジットカードで決済したい場合には、この機能を使用します。
「乗換案内から購入」機能を使用すると、統一された操作画面から全国のJRきっぷを購入することができ、機種の違いに戸惑うことがありません。ただし、使いこなすには慣れが必要です。
指定席券売機で購入したいきっぷを買えるかどうか確認し、買えない場合には有人窓口に行かなければならないのは、乗客にとっては二度手間です。
慣れた乗客が単純なきっぷを指定席券売機で購入する導線と、複雑なきっぷを有人窓口で購入する導線を、同じ駅に両方備えておく必要がありますが、窓口削減はいささか拙速な気がします。
参考資料 References
● 指定席券売機でできること(JR東日本)2022.9閲覧
改訂履歴 Revision History
2015年7月13日:初稿
2022年9月23日:第2稿
2022年12月12日:第2稿 修正
2023年4月06日:第2稿 修正
2023年7月04日:第2稿 修正
2023年8月16日:第2稿 修正
2023年9月12日:第2稿 加筆
コメント