長野県の松本駅から新潟県の糸魚川駅を結ぶ、大糸線。この路線に「リゾートビューふるさと」号という観光列車が、週末を中心に運行されている。
この記事では、長野駅から松本駅を経由し、大糸線南小谷駅を結ぶ「リゾートビューふるさと」号について、必要なきっぷや道中の体験をご紹介したい。
リゾートビューふるさと号の概要
リゾートビューふるさと号の運行区間は長野駅から松本駅を経由して、長野県の南小谷駅までと走行距離が結構長い。
この列車のみどころは、長野駅発の上り列車か南小谷駅発の下り列車かで違う。南小谷駅ゆき上り列車では、篠ノ井線姨捨駅からの日中の善光寺平(長野盆地)の眺めと、穂高駅における穂高神社への参拝で、長い停車時間がある。
一方で、長野駅ゆき下り列車では穂高駅、姨捨駅での停車時間がないが、姨捨駅付近で善光寺平の夜景を季節によって車内から眺められる。
夜景の方がいいかどうかで、どちらかの好みが分かれそうである。
乗車するためのきっぷ
この列車は全車指定席の快速列車で、乗車するには乗車券と指定席券が必要である。今回乗車した時は時期柄、青春18きっぷが有効な期間で、18きっぱーが実際に乗車していた。
指定席券を購入するにあたって留意すべき点は、この列車が途中の松本駅で進行方向が反対になる珍しい列車である点である。車窓から見たい景色によって、車内のどちら側かを選ぶことになる。善光寺平側がA席、北アルプスの山々側がD席で、指定席券を通しで購入する場合、いずれかの車窓を犠牲にすることになる。
そこで、筆者は奇策をとった。コストはその分かかるが、松本駅で指定席券を分割購入した。南小谷駅からの指定席券は以下の通りで、D席山側。

松本駅からの指定席券はA席善光寺平側。

松本駅から車掌が乗務してくるので、券面上にきれいなスタンプを頼めば押してくれる。費用にかかわらず車窓にこだわる向きには、このような分割購入という手もある。
実際に乗車した
さて、実際に乗車したのは、南小谷駅発の長野駅行き下り列車である。
大糸線内は運転士だけのワンマン運転、篠ノ井線内は車掌が乗務する形態で、アテンダントは全区間乗務する。
南小谷駅 15:16分 →(大糸線、篠ノ井・信越本線経由)→ 長野駅 18:28分
※ 2015年現在の発着時刻
リゾートビューふるさと号の車両が南小谷駅に入ってきたのは14:50分頃で、入線からすぐに列車の中に入れたので、時間の余裕があっていい。総じてJR東日本管内のリゾートトレインの入線は発車時刻の20分以上前と早く、発車前にゆったりと写真を撮って過ごせたりしてよい。

この車両はHB-E300系だが、最新式のハイブリッドディーゼルエンジンを搭載したハイテク車両である。乗っていて快適なのだが、ハイテク過ぎてリゾートトレインという感じがしない(ボロい気動車を改造しているものが多い中で、JR東日本の財力を感じる次第である)。
ディーゼルエンジンとモーターを動力として動くので、燃料を節約できるし、保安装置の条件が適う限り、長野エリア外の全国どこにでも出張サービスできる車両である。
自家用車でいえば、プリウスやアクアのエンジンの仕組みと同じようなものと考えていただければよい(もっとも、燃料がガソリンと軽油という違いはあるが)。この列車のデビューから5年しかたっていないので、新車同様だった。
この列車の名称「リゾートビューふるさと」だが、筆者にとっては地味に感じる。JR東日本長野支社の考えることがかなり控えめなようにも思える。

車内も快適だ。普通車にもかかわらず、シートピッチが約120cmと広く、長時間の乗車も苦にならない。ただし、物販カウンターや楽しい演出コーナーなどがなく、リゾートトレインというよりは純粋な臨時輸送列車という感じだ。
※ 最近は、おもてなしが意識されるようになってきているようである。

エンターテイメントとしては、天井に飛行機の機内のようなモニターがあって、前方の走行風景がリアルタイムで再生されるのもハイテクなエンタメだ。
唯一のお楽しみは、車両先頭部にあるJR東日本標準の展望スペースだ。うれしいことに、走行時間が夜間になったにもかかわらず、乗務員室が見える以下の大きな窓がカーテンで閉められず、依然景色が楽しめた。

クリスマス直前だったので、小さなクリスマスツリーが飾られていてかわいかった。
また、1号車の展望スペースに乗車記念カードとスタンプが置かれていた。このカードで、列車の運行が5周年記念ということが分かった。

いざ南小谷駅を発車した時には乗客が10人前後とがら空きで、途中松本駅で乗客があらかた降りてしまったため、長野駅まで乗り通した乗客は数名しかいなかった。リゾートトレインというよりは臨時の快速列車という性格が強いためか、乗客層も乗り鉄客はほとんど見かけず、一般客が大半だった。
松本駅までの大糸線内はワンマン運転のため、自動放送を補う形でアテンダントが車内放送を行って、時々観光案内も行われた。この自動放送がハイテクな新幹線の自動放送のようで、リゾートトレインらしくない。
このハイブリッドエンジンの列車の走行音だが、1号車はディーゼルエンジンの音が中心で、一方2号車はモーターの音が主で、電車のように感じた。ハイブリッド車の製造コストが高く、ローカル線輸送の気動車としては高価すぎると思うのだが。。。
リゾートビューふるさと号のコンセプト
アテンダントによると、この列車の愛称は「ゆとりとおもてなしのリゾートトレイン」だそうである。
アテンダントの業務は案内放送とスーパーのかごのようなバスケットでの車内販売を行う程度で、他のリゾートトレインのアテンダントのようによく働くわけではない。なお、列車のオリジナルグッズはほとんど期待できない。
白馬駅でも乗客を乗せて走行したが、松本駅に着いたら大半の乗客が降りてしまった。その先は進行方向も列車番号も変わり、篠ノ井線内では別の列車のようになって、終点の長野駅を目指した。
松本駅から車掌が乗務してきて、指定席券にオリジナルスタンプを押してくれた。
この列車の唯一のみどころは、姨捨駅のスイッチバックと、日本三大車窓である善光寺平の夜景である。冬場だと完全に日没後の時間帯なので、夜景を見たい人は松本駅からの乗車をお勧めする(真夏だと、日没していないので夜景は見られないはず)。
ただし、姨捨駅での停車時間設定がなく、すぐに発車してしまうのが残念だ(長野発の朝の列車には停車時間がある)。車内から夜景を見られるだけで、普通の列車と変わりない。
姨捨駅を発車すると、終点の長野駅までひた走る。
最後に、長野行きのリゾートビューふるさと号は、リゾートトレインと期待すると物足りないものがある。何かのついでにこの車両に乗ってみるのは良いかと思う。
改訂履歴 Revision History
2015年12月27日:初稿
2022年12月08日:初稿 再構成
コメント