関東地方北部に路線網を広げる、東武鉄道。
北関東地区にある同社の駅は、東京近郊の駅のように券売機や自動改札が整備された駅ばかりではありません。むしろ、PASMO簡易改札機のみ設置された、乗降客数の少ない無人駅が主流です。
そんな無人駅が多い中で、日中時間帯に普通乗車券・特急券の出札業務だけ有人で行っている駅が、2020年まで3駅ありました。その駅は、
● 日光線 板荷駅(栃木県鹿沼市)
● 佐野線 渡瀬駅(群馬県館林市)
● 宇都宮線 野州大塚駅(栃木県栃木市)
です。どうしてこんな辺鄙な駅に有人窓口があったのか、と不思議でした。しかしながら、きっぷ鉄の間では有名な駅だったようで、存在意義として納得できたわけです。
さすがに、2020年中にこれらの駅での手売りきっぷの出札業務が終了し、一つの時代が終わりました。
この記事には、2016年3月に板荷駅を、2018年4月に渡瀬駅を訪問して、手売りの普通乗車券や特急券を購入した記憶を残したいと思います。

この体験が、筆者がきっぷ鉄に傾倒したきっかけです
東武日光線板荷駅にて

この記事で紹介した板荷駅および渡瀬駅の出札窓口営業は、すでに終了しています。したがって、きっぷを購入できません。
乗降駅証明書を取って乗車し、着駅で運賃を精算してください。
板荷駅は、新鹿沼駅(栃木県鹿沼市)と下今市駅(栃木県日光市)の間にある、東武日光線の駅です。浅草駅方から乗車してくると、関東平野が終わって山が迫ってくるあたりに位置する駅です。
駅前にはコンビニなどのお店がほとんどなく、開いているかどうかわからないような小さなたばこ屋さんが、1軒あるだけです。他には、製材所がある程度の、住人の気配がない辺鄙な場所です。
こんな環境下にある駅ですが、浅草駅や北千住駅からは当時、区間快速列車1本で来られる駅でした(現在は新栃木駅から普通列車を利用)。
板荷駅には、東武鉄道の職員が日中駐在し、出札業務を行っている不思議な駅でした。東武鉄道のホームページによれば、同社で最も乗降客数が少ない駅であるにもかかわらずです。

出札窓口が9時00分から16時15分まで開いていて(12時から13時まで休憩)、普通乗車券と特急券だけ手売りきっぷとして発売していました。回数券や定期券を取り扱わない有人窓口というのが、存在自体不思議でした。
東武鉄道の有人駅であれば、通常は自動券売機や自動改札機が設置されています。しかし、板荷駅からは、券売機さえ撤去されていました。ましてや、マルチ印刷発行機など設置されているわけがありません、そんなわけで、手売りきっぷだけを発売する業務形態になっていました。大手私鉄にしては、普通ならありえない話です。

板荷駅にも、乗客の見えるところに春闘のスローガンが掲げてありました。労働組合の強さを、垣間みました。これが、業務必要性が薄いにもかかわらず、有人駅である事情かと、勝手に邪推しました(労働組合活動への懲罰的制裁を行う拠点か??)。
出札窓口から事務所内をのぞくと、コンプライアンスに関する職員向けの掲示がありましたが、筆者には皮肉としか感じられませんでした。
出札ニーズがあるとはとても思えないが。。
乗降客数がこれだけ少ない駅で駅員が常駐する理由を、通常のビジネス感覚からして見出せません。無人駅であるのが、傍目から見ても妥当なところでしょう。
この駅に配属されることが、何かの教育のためではないかと、あるいは東武鉄道ならではの特有の事情があるのではと、勝手に想像しました。
乗降客数の一番少ない駅でのワンオペで、手書きのきっぷの出札業務に従事させることが、懲罰的ではないかと思った次第です(顧客サービスの原点をここで学べ、というところでしょうか)。
現に、筆者にきっぷを売ってくれた中高年世代の駅員さんは、言葉遣いなどのビジネスマナーに問題がある人でした。もし、主要な駅に配属したら明らかに、乗客からのクレームの嵐になりそうな人でした。考えれば考えるほど、怖い会社だなぁと思いました。
この駅、基本は無人駅で「乗降車駅証明書」を取ってから列車に乗車します。また、交通系ICカードの簡易入場機と簡易出場機もあるので、この出札窓口で紙のきっぷを買う必要はないわけです。
手書きのきっぷ登場!
それでも、この出札窓口で紙のきっぷを買うのであれば、手売りかつ手書きのきっぷを買うことになります。
まずは、硬券入場券を購入。実需があるとはとても思えず、完全なるファンサービスなのが実態でした。しかし、硬券入場券自体、東武鉄道の地紋が印刷されているところに味があります。
同時に、実際に使用する普通乗車券も注文しました。しかし、対応してくれたこの駅員さんに、やる気が全く感じられないのです。作業が緩慢で、すべて面倒モード。これは決して誹謗中傷ではなく、実体験だというところを強調しておきたいです。

何とか作業してもらって発券された普通乗車券。着駅名を手書きするタイプの、補充片道乗車券(補片)です。発駅名は印刷されていて、完全に板荷駅専用といえます。
この駅員さん、対人コミュニケーションは至って問題だらけでした。事務作業そのものはしっかりできて、字もきれいなので、非対人モードなら問題ないでしょう。
当時は、板荷駅だけでなく、他の駅でも面倒そうな対応をされたことがままありました。
今でこそ接遇はだいぶ良くなりましたが、わずか数年前には、東武鉄道には鉄道ファンを目の敵にする職員がこんなにも多いのか、と思ったものです。
懲りずに特急券も購入
そして、「スペーシアきぬがわ」号の特急券を注文しましたが、出してもらうまでがこれまた大変でした。
手書きの特急券の発券には時間がかかるので、乗車駅から機械発券の特急券を買ったらどうだ、と露骨に誘導されました。しかし、その手書きの特急券が目当てなのだといったら、ようやく作業にかかってくれました。

これが、実際に発券してもらった「スペーシアきぬがわ」号の特急券です。車内補充券と同一の様式ですが、席番が券面に手書きで記載されています。
このように、出札対応を回避するための誘導が、東武鉄道に限らず、多くの鉄道会社にいまだ多くみられます。乗客の不利益につながり、問題です。
作業自体は、キャビネットから特急券の束を取り出し、座席を管理する部署に電話をかけて割り当てを受け、特急券に転記という流れで、かかった時間は5分程度でした。
この時、駅員があまりに面倒そうだったので、特急券と同時に使用する乗車券まで注文する気になれませんでした。
東武佐野線渡瀬駅にて

板荷駅を訪れた時とは全く別の機会で、2018年のGW時期に佐野線の渡瀬駅を訪問しました。
渡瀬駅は、過疎地域にある板荷駅と違い、群馬県館林市内の住宅地にある駅です。地元の利用客もそこそこいて、券売機が設置されていても決しておかしくない感じがします。

駅舎内には交通系ICカードの簡易改札機が置かれていて、その傍らに日中だけ業務を行う出札窓口がありました。営業時間は日中時間帯の9時30分から16時45分まで(昼休みあり)でした。
渡瀬駅の出札窓口でも、例によって回数券や定期券の取り扱いがなく、普通乗車券と特急券のみ発売していました。一般的な出札窓口の業務内容よりはるかに狭い内容で、この駅においても、なんらか意味があるのかと邪推しました。

渡瀬駅では多くのきっぷを求めず、特急りょうもう号に乗車するための特急券と乗車券のみ買いました。この駅にも、例によってマルチ印刷発行機などあるはずはなく、手売り対応でした。特別補充券に、特急券と乗車券の一葉発行という、めずらしいきっぷを入手できました。
この時は、板荷駅で体験したような問題ある駅員さんではなく、ごく普通に対応してもらえました。鉄道に限らず、人によってはどうしても接遇に差が出てしまいますが、やむなしと思います。
東武鉄道のきっぷ鉄事情については、筆者の別の記事をご一読ください。
改訂履歴 Revision History
2016年3月11日:初稿
2022年7月25日:第2稿
2022年12月13日:第2稿 修正
2023年4月08日:第2稿 修正
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