東京と仙台を結ぶ常磐線。沿線には茨城県水戸市や日立市、福島県いわき市といった主要都市が連なっています。
それらの街を結ぶ常磐線は重要な在来線で、特急列車が頻繁に走っています。常磐線特急には、「ひたち」号と「ときわ」号と2つの系統があります。
日中時間帯に上野駅から水戸駅まで停車しない、速達タイプの「ひたち」号がいわき駅(福島県いわき市)まで走っています(一部仙台駅まで)。そして、途中駅に細かく停車する「ときわ」号が、勝田駅(茨城県ひたちなか市)まで走っています(一部高萩駅まで)。
そんな「ひたち」号や「ときわ」号ですが、全車指定席で自由席はありません。しかし、特急券を持たずに乗車すると、車内料金として追加料金が加算されてしまいます。
この記事では、特殊な乗車制度が導入された常磐線特急の普通車に乗車するため、要領よくきっぷを準備し座席指定を受ける方法、そして座席の座り方について、詳しく説明します。グリーン車については、他の列車と同じ制度のため、本記事での説明は割愛します。
乗車するために必要なきっぷは乗車券と特急券ですが、特急券には座席指定済みの「特急券」と座席指定が未済の「座席未指定券」があり、制度が複雑です。
また、常磐線特急の車両、E657系電車の各座席の上には、指定席の販売状況を示すランプ(インジケーター)が付いています。このランプの見方も説明します。

急に乗りたいときには、座席指定を受けるのが煩わしいものです。とりあえず座席未指定券を買って、車内料金を免れるワザもありえます。
座席未指定券全般の詳しい情報については、以下の記事も参照ください。
常磐線特急「ひたち」「ときわ」号の概要
きっぷについて詳しく説明する前に、常磐線特急の概要について説明します。
常磐線には、「ひたち」号と「ときわ」号の2系統の特急列車が走っています。常磐線特急に充当されている車両はE657系電車で、2012年以降に新造された快適な車両です。走行区間と途中駅の概要は、下図の通りです。

ここでは、それぞれの系統の走行区間や運行形態についてお話しします。
「ひたち」号

東京(品川駅・東京駅・上野駅)といわき駅を結ぶ速達タイプの特急列車です。一部の列車は、海まわりで仙台駅まで走ります。
上野駅からいわき駅までの平均所要時間は、2時間10分です。日中時間帯は、途中の上野駅から水戸駅まで停車しません。そのため、水戸駅以北まで通しで乗車するような、中長距離を移動する場合に便利な列車です。
「ときわ」号

東京(品川駅・東京駅・上野駅)と勝田駅を結ぶ急行タイプの特急列車です。一部の列車は、高萩駅まで走ります。
上野駅から勝田駅までの平均所要時間は、1時間25分です。途中、柏駅や土浦駅に停車するローカルな特急列車といえます。そのため、柏駅や土浦駅で降りるような、短距離を移動する場合に便利な列車です。
常磐線特急乗車に必要なきっぷの準備方法
常磐線特急「ひたち」「ときわ」号は、全車指定席で、自由席がありません。そのため、列車に乗車する前に、乗車券の他、座席指定を受けた特急券が必要です。
常磐線特急独自の料金システム

常磐線特急の特急料金は、従来のB特急料金ではなく、全車指定席を前提とした独自の料金体系です。中央線特急や東海道線特急の特急料金と同じシステムです。
このシステムの特色は、従来の特急料金に適用されるシーズナリティによる料金の変動が、常磐線特急にはない点です。常磐線特急の料金は、通年同額です。
特急料金は、乗車1回ごとに1回分の特急料金がかかります。例えば、「ひたち」号が停車しない土浦駅からいわき駅まで乗車するのに水戸駅で列車を乗り換える場合、特急料金は通算されず、乗車1回ごとに各区間の料金がかかります。この点は、新幹線の特急料金体系と異なります。
もちろん、乗車券は通しで買っても問題ありません。上記例でいえば、土浦駅からいわき駅までの通しの乗車券を購入します。
常磐線特急の特急料金は、系統を問わず均一です。「ひたち」号の料金のほうが「ときわ」号の料金より高いということはありません。
普通車指定席特急券の準備方法
【事前に座席指定の特急券を購入する場合】
● JR駅のみどりの窓口・指定席券売機で購入

乗車日の1か月前の日の午前10時から特急券を購入できます。
駅員さんと相談しながらきっぷを購入できますが、ネット割引料金を利用できず、所定の料金を支払うことになります。
「座席未指定券」は、駅の有人窓口か指定席券売機を利用して購入します(指定席券売機の操作の流れについては、本記事末尾のAppendixに掲載しました)。
「大人の休日俱楽部」割引を適用する場合、乗車券と特急券をまとめて購入するには、窓口で購入すると、よりスムーズだと思います。

これは、「大人の休日俱楽部」割引にて購入した常磐線特急の座席未指定券のイメージです。
座席未指定券に座席指定を行った場合、金額入りの1枚の特急券が引き換えで発行される場合と、金額なしの指定券が追加で発行され、座席未指定券とセットで使う場合の2通りあります(記事末尾Appendix参照)。どちらも、座席指定された特急券として有効です。
● ネット予約「えきねっと」を利用

えきねっと専用の割引料金「えきねっとトクだ値」を利用するためには、ネット予約が必須です。
ネット予約の最大のメリットは、乗車1か月と7日前の14時から事前受付を利用できることです。ネット専用の割引料金ゆえ、駅では購入できない点を留意しましょう。
えきねっとで特急券を購入する場合、シートマップを表示して自分で好きな座席を選択できます。えきねっとでは、「座席未指定券」を購入できないので、注意が必要です。

これは、筆者がえきねっとにて予約した「えきねっとトクだ値」10%引きのきっぷのイメージです(紙のきっぷ引き取り前)。
● ネット予約「えきねっと」にてチケットレス特急券を購入

特急券をチケットレス特急券として購入し、Suicaなどの交通系ICカードを乗車券として乗車することも可能です。
チケットレス特急券は、通常の特急券よりも1枚100円割引になります(あくまでも所定料金がベース)。
また、常磐線特急では「チケットレス特急券」用の「えきねっとトクだ値」の発売が始まりました。発車時刻まで購入できるので、トクだ値の設定区間をチケットレスで乗車する場合、特急料金が実質的に35%引きとおトクです。
紙のきっぷを買うために、駅の窓口や指定席券売機を利用する必要がないため、要領を得ている場合はとてもスムーズです。
チケットレス特急券は、ウェブブラウザ版の他、えきねっとアプリでも購入可能です(登録済のクレジットカード決済のみ)。

これは、筆者がえきねっとにて予約した、チケットレス特急券のイメージです。
なお、チケットレス特急券には「大人の休日俱楽部」割引がありません。当該割引を適用する場合、紙の特急券のほうが安い場合があるので、比較するとよいでしょう。
常磐線特急のネット限定割引「えきねっとトクだ値」は、
● チケットレス特急券:35%割引【出発時刻までに購入】
として提供されています。従来設定されていた乗車券付きの紙のきっぷ、常磐線特急では2022年度をもって終了しました。
【座席指定なしで列車に乗車する場合】
列車が満席の場合や乗車の間際で、事前に座席指定した特急券を購入できない場合、次の手段もありえます。
● 座席未指定券(事前料金)を購入しておき、列車に飛び乗る
● 特急券なしで列車に飛び乗り、車内料金で特急券を車内で購入する(無札)
ただし、それぞれにデメリットがあるため、やむを得ない場合の手段と考えてください。
最たるデメリットは、指定席特急券と同額の料金を払いながら、自分の座席が確保されないことです。座席の上にある「赤色」のインジケーターが光った空席を探しながら、そわそわした気分で列車に乗ることになります。そんなわけで、筆者的にはお勧めしません。

事前に座席未指定券を買った場合、列車に乗るまでに、ぜひ座席指定を受けてください。
常磐線特急の乗車システム~筆者の実乗車体験~

全車指定席の「ひたち」「ときわ」号の各座席には、当該座席の販売状況を示す3色のランプ(インジケーター)が付いています。このインジケーターの色は、座席の販売状況次第でリアルタイムで変わります。
このシステムは、東海道線特急「踊り子」号や中央線特急「あずさ」「かいじ」号と全く同じものです。

インジケーターの色には3つあり、それぞれの意味は次の通りです。
● 赤色:販売される見込みのない席(しばらくの間空席)
● 黄色:販売されている席(これから先の駅から間もなく席が埋まる)
● 緑色:販売された席(誰かがすでに座っているはず)
座席指定された特急券を買ってから乗車し、指定された正しい座席に座る時には、このインジケーターが必ず「緑色」になっています。万が一他の色になっている場合、間違った席に座ろうとしていることになります(ただし、乗車直前に座席指定した場合、まれに緑色になっていないことがあります)。
乗車する前に座席指定を受けられずに座席未指定券や無札で乗車した場合、販売されていない「赤色」もしくは「黄色」のインジケーターが付いた座席に座ります。
この場合、いつでも当該座席が販売されて、インジケーターが突然「緑色」に変わって、座席指定を受けた(特急券を正しく買った)乗客が乗ってくる可能性があります。

これは、筆者が「ひたち」号に始発の品川駅から乗車した際のインジケーターの状態です。赤ランプが多く、かなり空いていました。

こちらは、始発の勝田駅から「ときわ」号に乗車した際の座席上のインジケーターの状態です。「ひたち」号が停車しない駅からの乗車が多く、そこそこ乗っている人がいることが分かります。
座席指定を受けた特急券を持った乗客が当該座席に座る権利があるため、その乗客が現れた場合には今まで座っていた座席を譲らなければなりません。列車が混雑した時に乗車した場合、座席指定がないと流浪の民となる恐れがあるため、できるだけ乗車前に座席指定を受けておきたいものです。
鉄道会社側から見ると、緑色のインジケーターが点灯した座席は販売されていて、乗客が座っていて問題ない席です。そして、黄色や赤色のインジケーターが点灯した座席はまだ販売されていないので、正しい特急券を持っていることを確認すべく、特急券の呈示を求めることになります。
乗客に不利益がありうる乗車システム

基本的に全車指定席の列車でありながら、座席指定がない特急券で合法に乗車できる不思議な乗車システムが採用されています。
前述したように、座席指定を受けられない事情がある場合に飛び乗りできる、柔軟な一面もあります。そのため、一概にこの乗車システムを否定することはできません。
しかし、全車指定席である以上、列車の定員以上の乗客を乗せず、事前に座席指定された状態であるのが基本だと筆者は考えます。
この乗車システムでは、座席指定を受けていない乗客が、本来座るべきではない座席に正々堂々と座る状態が発生します。つまり、座席を指定していない状態の座席未指定券を持った乗客や、特急券そのものを持っていない無札の乗客が、他の乗客が購入した座席を横取りし得ると言えなくもありません。
乗客同士が座席を譲るであろうという性善説に頼ったシステムであるといえます。
鉄道会社側にしても、乗客が正しい座席に座っているかどうかまでチェックできないため、自分が購入したはずの座席に他の乗客が座っていて、譲ってくれないという憂鬱な事態があり得るといえます。
また、指定席特急券と同じ金額の「座席未指定券」を買っていながら、座る権利を主張できないという、乗客にとって理不尽な面もあります。
満席時にはやむを得ないことですが、乗車定員以上の乗客を特急列車に本来詰め込むべきではないと考えます。定員以上乗せず、快適に移動できるのが、特急料金を払って乗る特急列車の姿です。
満席でもどうしても移動しなければならないニーズもありますが、なるべく避けたい状態ではないでしょうか。
Appendix:指定席券売機の操作方法(常磐線特急の特急券購入)

ここでは、指定席券売機を使用して、座席未指定券を新規に購入するための流れと、購入した座席未指定券に座席指定を付けるための流れを、それぞれ説明します。
座席未指定券の新規購入
1.指定席券売機の初期画面は、駅によって異なります。
常磐線の特急停車駅に設置されている指定席券売機には、常磐線特急「ひたち」「ときわ」号のワンタッチボタンがあり、より少ない操作で迷いなく購入できます。

一方、他線区の駅ではワンタッチボタンがなく、指定券メニューや「乗換案内から購入」メニューから操作を進めます。この記事では、指定券メニューにて説明します。

2.「在来線指定席/座席未指定券」を押す

3.常磐線特急「ひたち」「ときわ」号を選択

4.乗車駅、降車駅を選択

5.日にち、時間帯、人数を選択
6.表示される候補から列車を選択

ここで「普通車」を選択すると、購入段階で座席指定を受けられます(購入以降に列車を変更する場合、乗車変更になる)。ここでは、「座席未指定」を選択します(座席指定を受けるまでは乗車変更にならない)。
7.座席未指定券について説明が表示されるので「確認」を押す

8.乗車券を同時に購入するかしないかを選択

9.かえりの列車の特急券も購入することも可能

10.きっぷの購入内容が表示されたら「確認」を押す

11.代金の決済をし、きっぷを受け取る
座席未指定券に座席指定
ここでは、改札内のホームに設置された指定席券売機にて座席指定を受ける際の流れを掲載します。
1.「指定席の変更/座席未指定券への座席指定」を押す

2.座席未指定券を指定席券売機に挿入(券売機の左下)

3.座席指定したい列車を選択

4.席番を指定(ここでは座席表を表示)

5.号車を選択

6.席番を確定

7.座席指定の内容を確認し「確認」を押す

8.きっぷを受け取る
特急券の原券の種類や座席指定のタイミングによって、発行されるきっぷが1枚の場合と2枚の場合があります。今回は、座席未指定券本券が返ってきて、金額なしの指定券(指のみ券)が発券されました。2枚セットで使用する形です。

席番が表示された(金額表示のある)特急券1枚で発行替えされる場合もあります。
改訂履歴 Revision History
2016年5月16日:初稿
2022年12月20日:第2稿
2023年4月06日:第2稿 修正
2023年7月04日:第2稿 修正
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