きっぷの発券がほぼ自動化された、JR各社の出札業務。JR四国管内でもその例外ではなく、乗客が目にするのは、ほとんどがマルス券などの端末券です。
ここ最近はきっぷのチケットレス化が進み、JR四国管内でもチケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」がリリースされました。そんなことから、手売りきっぷを目にする機会はますます減りそうです。
ただし、従来の手売りきっぷなどもはや存在しないだろうと思い込むのは、ちょっと早計です。実は、JR四国を含む三島会社では、それらのきっぷがいまだ現役です。
きっぷ鉄界隈で有名になった、予土線近永駅の出札窓口。筆者もようやく訪問できました。2023年以降、きっぷの発売範囲がかなり狭くなりましたが、貴重な手売りきっぷをいまだ入手できる夢のような場所です。
この記事では、JR四国管内で手売りきっぷやPOS券が発売されている簡易委託駅を中心にした駅をめぐって入手した常備券や補充券を読者の皆さまと共有します。また、JR四国管内のきっぷ鉄事情や駅めぐりの情報など、筆者の知見の範囲でお話ししたいと思います。

JR四国の簡易委託駅はいくつかありますが、手売り券を発売している駅は一部に限定されます。いずれの駅もアクセスが悪いので、よく計画した上で訪問してください。
JR四国管内のきっぷ鉄事情

四国地方には、JR四国の他、いくつかの鉄道会社があります。それらの鉄道会社の中できっぷ鉄を楽しめるのは、愛媛県の伊予鉄道、徳島県の安佐海岸鉄道、高知県の土佐くろしお鉄道、そしてJR四国の一部の駅です。
この記事ではJR四国についてお話するわけですが、手売りきっぷを発売している駅そのものが少ないです。その上、発売範囲が狭まったりと兵糧攻めにあっているような状況です。
JR四国管内にも、自治体などが出札業務を受託する簡易委託駅がいくつかあります。JR四国の場合、簡易委託駅にもPOS端末が設置されていて、発売管理が電算化されています。
POS端末が設置されている以上、POS券が発売されるはずですが、あらかじめ調製された手売りきっぷを発売する駅が、なぜか少数だけ存在します。JR東日本と同様、JR四国においても補充券を発売する際には経路や発売金額を端末に登録します。かなり手数がかかる作業です。
また、本来マルス端末が設置されるべきにもかかわらず、なぜかマルスが導入されず、POS端末のみ設置されている直営駅がいくつかあります。本記事では、それらの駅もきっぷ鉄の対象にしたいと思います。
簡易委託駅の営業状況は常に流動的です。きっぷの出札窓口が不定休だったり、突然営業終了することは、よくあります。実際に駅を訪問する際は、自身で最新情報を確認してください。
きっぷ鉄対象駅のタイプ
ということで、JR四国の一部の直営駅および簡易委託駅には、以下の2タイプがあります。
● POS端末券発売駅
汎用の乗車券用紙(ロール紙)を使用してプリンターから端末券を出力し、発売する駅です。JR四国管内では、マルスを設置しない直営駅および簡易委託駅数駅が該当します。JR四国ウェブサイトに掲載された直営駅一覧の中で、平日日中のみ営業する駅が該当します。
● 手売りきっぷ発売駅(車発機を含む)
何らかの事情で端末券プリンターを導入せず、手売り用の常備券や補充券を調製してきっぷとして発売する駅です。直営駅にはこのタイプの駅はなく、すべて簡易委託駅です。該当する駅は、今では業務終了した予讃線鬼無駅や、現役の予土線近永駅、予讃線卯之町駅くらいです。そのほか、予土線江川崎駅や予土線土佐大正駅にも一部の券種の取り扱いがあります。
他にも手売りきっぷが臨時で発売されることがありますが、JR四国ではほとんどが車発機券のようです。何らかのきっぷを入手できたとしたら、かなり幸運でしょう。
発売対象の券種・発売区間
これらの駅等にて発売される乗車券類の発売範囲が縮小され、2023年以降は概ねJR四国管内完結が条件となりました。手売り券はともかく、POS券であれば全国のJR線区間を発売してもよさそうですが、どういうわけか発売範囲が狭まりました。
JR四国のウェブサイトで一時的に公表された当該情報を、ここにも引用しておきます。


それでは、各駅で発売されている主な手売りきっぷを見ていきましょう。
予土線近永駅【簡易委託】

全国のJR線区間を対象にしたオールマイティーな乗車券類を、昔ながらの方法で手売りしていたことから、きっぷ鉄界隈で有名になった駅です。2023年に発売範囲が狭まるまでは、まさに「JR全線きっぷうりば」のような状況だったそうです。
きっぷ鉄にとって聖地ともいえるような駅ですが、いかんせん奥地であることが難です。近永駅がある愛媛県鬼北町は地理的に遠隔な南予地方に位置していて、大都市からはなかなかたどりつけない駅です。
それで、筆者も長年行きたいと思っていたものの遠さ故になかなか実現できず、2023年になりようやく念願かなって訪問できた次第です。

近永駅の出札業務は、鬼北町が受託する形で行われています。営業時間は、鬼北町のウェブサイトに記載されている通り、朝8時前から夕方17時前までの営業で、途中昼休みありです。近永駅自体が遠隔地にありますが、収集そのものは難関ではありません。

2023年から縮小されたきっぷの発売範囲が書かれています。一時的にJR四国のウェブサイトにも掲載されていましたが、今は駅に掲示されているのみです。
常備券

金額式の常備券(赤券)が5口座あります。そのうち、宇和島駅ゆきは小児専用券があります。宇和島駅ゆきの430円区間の券だけは実需があるようで、券番が進んでいます。
青券の常備券は2口座あり、松山駅ゆきと高知駅ゆきです。高額なきっぷのために筆者のようなきっぷオタしか購入しないようで、券番はほとんど進んでいませんでした。
往復の常備券は、宇和島駅ゆきのみです。
筆者が訪問したのが2023年6月下旬で、2023年5月下旬にあった運賃改定から1か月でした。券番の進み具合から、1か月間でコレクターが約20人訪れたことが推測できます。そのうち、全口座買うコア層が約10人というわけです。
補充券

JR四国管内の簡易委託駅で現在補充券を発券してくれるのは、近永駅が唯一の駅になりました。
補充片道乗車券(補片)、特別補充券(出補)、料金専用補充券(料補)と一通り揃っています。以前は発駅や経路に制限がなく、それこそJR全線きっぷうりば状態でしたが、現在は発売制限があります。その制限については、上記の写真をご覧ください。
補充券の発駅は、宇和島駅を含む予土線内の駅で、着駅がJR四国管内完結という条件です。料補で発券されるきっぷ(自由席特急券)は、当該区間の乗車券とのセット発売が条件です。当該自由席特急券の発駅は宇和島駅に限らず、購入した乗車券上の区間であればJR四国管内どこでもオッケーです。指定券の取り扱いは現在ありません。
Sきっぷ・定期券
宇和島駅から松山駅までのSきっぷと通勤・通学定期券が発売されていますが、強者以外は購入しないと思います。
予土線江川崎駅【簡易委託】

高知県四万十市(旧西土佐村域)にある駅です。地元の四万十市が受託する簡易委託駅です。平日・土曜の日中に窓口が開いています。

この駅は地元密着の駅で、それが発売券種に現れています。普通乗車券の取り扱いはなく、6枚回数券と通学定期券に限られます。

筆者は珍しい6枚回数券を購入してみました。様式は、補充式の独自の6枚回数券です。
予讃線卯之町駅【簡易委託】

愛媛県西予市の中心駅で、西予市役所と一体整備された駅です。無人駅で近距離券売機のみ設置されていますが、駅前にある「どんぶり館駅前店あおぞら」にて乗車券類の発売が簡易委託されています。

このお店の営業時間は、お店のウェブサイトに記載されています。土曜日以外の日中の営業です。
ここも地元密着の駅ですが、普通乗車券の取り扱いもあります。Sきっぷと通学定期券、特急定期券「快てーき」が発売されています。

筆者は普通乗車券を購入しました。きっぷの区間にかかわらず、様式は補充片道1種類のみです。
予讃線端岡駅【直営】~POS券発行駅~

端岡駅は、香川県高松市の近郊に所在するJR四国の直営駅です。どういうわけかマルス端末が設置されておらず、POS端末券で乗車券類を発売しています。過去には、青春18きっぷの常備券(赤券)が発売されていました。

窓口は日中時間帯営業ですが、定休日は特にありません。途中休憩時間帯があるので、ご注意を。

POS端末で発券された入場券と普通乗車券です。マルス券と大差ありません。

端岡駅では指定券の取り扱いがあり、電話取次にてきっぷを出していただけます。筆者も(指定席)特急券をここで購入しました。一般的には料補が使用される案件ですが、JR四国のPOS(四POS)は、指定券の中継発券に対応しています。料補を見慣れていると、POS券での[中継]記載がかえって新鮮に感じるかもしれません。
【発売終了】予讃線鬼無駅【簡易委託】

端岡駅と高松駅の中間に、現在は無人駅の鬼無駅があります。2018年頃まで、出札業務が駅舎内にある中華料理屋さんに簡易委託されていて、手売りの乗車券類を購入できました。現在は入手できませんが、筆者が2016年に購入したきっぷを参考までに掲載しておきたいと思います。

鬼無駅では中華料理店が営業している傍らで、きっぷの発売を片手間で行っている形でした。お店の人が結構多忙なようで、きっぷの販売に専念できる感じではありませんでした。
出札窓口に営業時間が掲示されていますが、お店の人がずっと窓口に座っているわけではなくて、呼んで出てきてもらいました。
常備券

近距離のものは金額式の赤券で、数種類の大人用と小児専用が1種類だけありました。小児専用券を除き小児断線がありますが、四角に切り取るので切断が面倒そうです。
遠距離の口座は、大阪市内ゆきと東京都区内ゆき。大枚をはたいて、大阪市内ゆきの常備券を購入しました。これぞ、きっぷ鉄の散財。。。
新幹線の自由席特急券もありました。こちらにも、小児断線があります。
補充券

この駅の出札窓口には、運賃計算・売上管理を行うPOS端末が置いてありました。POSで運賃計算をして、計算ができる任意の区間で補充券を発券してくれます。ただし、発駅欄に鬼無駅の駅名をすでに押してあったので、他駅発には対応していないかと思います。
料金専用補充券も存在したので、欠かさず購入しました。こちらは、他駅発もオッケーでした。
おまけ:学駅入場券

最後に、JR四国の駅で広く発売している合格祈願きっぷを紹介します。
徳島線学駅の硬券入場券のセットですが、5枚セットで購入するとお守り袋(4色から選べる)が付いてきました。珍しい体裁なので、おススメです。5枚とも緑色の地紋が印刷されていましたが、5色の地紋が用意されていたらカラフルで、商品性がより高くなるのにと思いました。。。
まとめ買いした5枚の硬券は連番でした。
謝辞 Acknowledgment

JR四国の手売り券を発売する簡易委託駅をコンプリートできました。しかし、今回訪問できた駅はごく一部です。訪問のための情報を提供してくれた先人には、感謝したいと思います。
JR四国の補充券に関しては、発券するための工数が多く、煩雑な作業です。その作業を行ってくれた受託者さんにも、この場でお礼申し上げたいと思います。
参考資料 References
● 駅/ワープ支店のご案内:JR四国
改訂履歴 Revision History
2016年6月25日:初稿
2022年12月16日:初稿 再構成
2023年7月05日:第2稿
2023年7月23日:第2稿 修正
コメント
卯之町駅 他乗代出せますか?
教えてください。
他乗代出せません。