近畿地方南部、東海地方南部の広大なエリアに網を張る近鉄線(近畿日本鉄道)。近鉄線にも、ぐるっと一周回って出発した駅に戻る環状経路が一つあることをご存じでしょうか?
乗り換えなしで一周できるわけではありませんが、経路上のすべての区間を特急列車でつなぐことができます。数ある鉄道会社の中で、有料特急列車だけで一周乗車できるのは、JR線以外では近鉄線だけではないでしょうか。
この記事では、近鉄大阪線布施駅(大阪府東大阪市)、奈良線大和西大寺駅(奈良市)、橿原線大和八木駅(奈良県橿原市)の区間を結ぶ環状経路を、特急列車に乗車して一周した体験を綴ります。
JR以外の民鉄路線にも、環状経路がある鉄道会社がいくつかありますが、実際に乗車した記録として投稿するのは、本記事がが初めてです。
近鉄線で大回り乗車♪

路線ネットワークが密な鉄道会社だと、時に環状経路が形成され、一周乗車できる場合があります。一番分かりやすい例は、東京のJR山手線、大阪のJR大阪環状線です。それらの路線では、乗り換えなしで何周でも乗車できてしまいます。寝過ごして、何周もした話はよくあります。
単に一周乗車するだけならば、あまりおもしろみを感じられません。しかし、一周乗車するのに運賃・料金がいくらかかり、どんなきっぷが発券されるのか、制度系の面を考えるととても興味深いです。

筆者の第一印象ながら、近鉄の職員は、JRや関東の多くの鉄道会社とは違って、まず断ることありきではなく、乗客の注文にまずは真摯に応えてくれようとする姿勢が素晴らしいと感じました。一方で、無札の乗客には毅然と対応していたのも、素晴らしいところです。
環状経路一周乗車のきっぷを購入!

一周乗車の拠点とすべき駅、環状経路上の駅であれば、どの駅でも大丈夫です。
今回は全区間特急列車を利用したため、列車が停車する鶴橋駅、生駒駅、大和西大寺駅、大和八木駅が候補に挙がりました(布施駅は乗車券上の接続駅ですが、通過する特急列車があるので、利用は困難です)。
この内、ラッチ外にちゃんとした駅営業所があるのは唯一大和西大寺駅で、敷居が低いかと思います。鶴橋駅や大和八木駅は、駅長室内に併設された営業所で、入りにくい感じが正直あります。駅員の人員にも余裕がないようで、ちょっと覚悟が必要です。
いずれにせよ、どこかの駅で環状経路を一周するための乗車券と特急券を作ってもらわなければなりません。

乗車券については、布施駅ー(奈良線)-大和西大寺駅ー(橿原線)-大和八木駅ー(大阪線)-布施駅の一周73.5kmで、運賃1,290円です(2023年4月時点)。
なお、全区間特急列車に乗車し、いずれかの列車が布施駅を通過する場合は、鶴橋駅で乗り換えすることになります。乗車券の運賃計算、特例で上記駅間の一周分の営業キロにて計算します。
特急券は、鶴橋駅ー(奈良線)-大和西大寺駅ー(橿原線)-大和八木駅ー(大阪線)-鶴橋駅の一周79.5kmで、通しの特急券とした場合、特急料金は920円です(2023年時点)。1区間づつ特急券を購入するよりも、合計金額ははるかに安いです。
ただし、特急電車同士の乗り換えはすべて30分以内でなければならないので要注意です。布施ー鶴橋間が経路上重複しても、いずれかの列車が布施駅を通過する場合には、1枚の通しの特急券として購入可能です(旅客営業規則52条の2)。
このような複雑なきっぷであることから、発券を端末では対応できないようです。そんなわけで、手書き作業で、特別補充券の出番となりました(それぞれ1葉づつ)。特急券の手配は、端末上の「セールスブック検索」にて完了しました。当該番号が、特急券上に手書きされています。
この環状経路の一周乗車、途中下車できないので、単なる修行でありました。。。
現在、近鉄では補充券の発券がかなり制限されている模様です。本経路で補充券が発行されるかどうか、読者さまご自身で確認をお願いします。
実際の乗車体験
きっぷを買ってすぐに列車に乗車し、途中下車なしの修業が始まりました。
近鉄特急は日常使いのライナー列車という一面もあり、単なる移動の手段という側面が強いと思います。観光列車ではないため、道中おもしろいことがあったわけではありません。
注意したいのは、奈良線の特急列車です。日中約1時間間隔で走るのは土曜休日のみです。旅程を組む時には注意してください。
1.大和八木駅 14:48分 → 1302レ 大阪上本町行き → 鶴橋駅 15:14分

大阪線を走る一般特急電車です。幹線ルートなので、乗車率は堅調です。
2.鶴橋駅 15:40分 → 1517レ 近鉄奈良行き → 大和西大寺駅 16:03分

奈良線の数少ない特急電車。筆者の座る席が、無札外国人に占領されていて、しばらく座れなかったです。大阪東部、マナーが悪いというのは本当の話でした。4両編成のライナー的特急に車掌が2人も乗務していたのは、余程無札客が多い現れでしょうか。
3.大和西大寺駅 16:16分 → 4519レ 橿原神宮前行き → 大和八木駅 16:34分

こちらは観光ルートです。しかし、用務客や一般客の利用も意外に堅調で、座席の使用率が案外高いように感じました。
おしぼりに感動!

最後におまけ。
近鉄特急の洗面所には、おしぼりが置かれています。他の鉄道会社では、こんなサービスを見たことがないので、感動ものでした。会社の都合を乗客に押し付ける多くの鉄道会社とは違い、近鉄はかなり乗客志向な鉄道会社と思えました。少なくとも、特急に関しては。。。
最後に、単なる趣味的乗車にもかかわらず、煩雑な乗車券類の発券や乗り場の案内などを短い時間で快く対応していただけた、大和八木駅の駅員の皆様には、この場にて感謝を申し上げます。
環状経路はこれだけではない!
冒頭の近鉄線路線図を見てお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、近鉄線の環状経路はこれだけではありません。興味ある方は、こちらの記事(↓)もどうぞ。
参考資料 References
● 近畿日本鉄道 旅客営業規則 52条の2(特別急行券の乗継ぎ発売)
旅客が特別急行列車の運行形態等の事由により乗継ぎをする場合は、乗継駅での接続時分が30分以内に限って、1枚の特別急行券でキロ程を通算した特別急行料金により発売する。但し、次の各号の1に該当する場合を除く。
(1)特急「しまかぜ」から特急「しまかぜ」を乗り継ぐ場合
(2)特急「あをによし」と他の特急を乗り継ぐ場合
改訂履歴 Revision History
2016年7月05日:初稿
2022年12月16日:初稿 再構成
2023年02月13日:初稿 修正
コメント