千葉県房総半島の中央を縦断する、いすみ鉄道。上総中野駅(千葉県大多喜町)と大原駅(千葉県いすみ市)の約27kmの区間を結ぶ短い路線です。
上総中野駅にて小湊鉄道線と接続していて、房総半島を鉄道で縦断できます。里山の風情を味わうことができます。
いすみ鉄道には、国鉄時代そのままの気動車を利用した観光急行列車が走っていました。その車両であるキハ28とキハ52は、かつてJR西日本の大糸線を走っていたものです。いすみ鉄道がJR西日本から購入した車両をそのままの姿で観光急行列車として走行させていました。
この記事では、いすみ鉄道でかつて走っていたキハ28とキハ52に乗車した体験を、筆者の備忘として残したいと思います。そして、いすみ鉄道にて体験したきっぷ鉄について綴っていきます。
なお、この列車に乗車したのは、レストラン営業していない時間帯でした。

観光急行列車のコンセプトは、新潟県のえちごトキめき鉄道「国鉄形観光急行」列車に継承されています。
2022年11月をもって、レストラン列車「レストランキハ」を含む、キハ28の定期運行が終了しました。現在キハ52での運行ですが、近いうちに終了になるのではないかと思料します。
本記事で紹介する列車のダイヤは、2016年当時のものです。あらかじめご承知おきください。
いすみ鉄道「観光急行」列車の概要・背景

いすみ鉄道のキャッチフレーズ自体、「ここには、何もないがあります」で、大多喜町の中心部を除いて観光資源があるわけではありません。
いすみ鉄道に公募で就任した前社長の鳥塚亮氏のブログを読んで、鉄オタとして一度足を向けようというふうに思い立ちました。同氏が無類の鉄オタで、観光急行列車のようなこだわりの強い商品を造成したと思われます。
当該ブログの内容から、鳥塚氏の鉄道に対する強い情熱を感じました。
大原駅にて~観光急行列車に乗車~
早速、大原駅から乗車した「観光急行」列車について書いていきたいと思います。
1号(101D):大原駅 9:18分ー上総中野駅 10:26分 ※急行運転は大原ー大多喜間のみ
列車番号100番台の列車が、キハ28+キハ52の2両編成の「キハ」でした。
大原駅は、JR外房線が接続するが、両線の改札口は別々です。いったんJR線の改札口を出て、いすみ鉄道の売店に入ります。

いすみ鉄道にはムーミン列車も走っていますが、それは後ほど。

すでに、大原駅ホームには、急行列車となるキハ28 2346と並んで、先発列車のキハ20 1303もとまっていました。

国鉄時代を再現した懐かしいきっぷ
大原駅の売店では、急行券と、乗車券としての「房総横断乗車券」\1,700を購入しました(2016年当時の値段)。硬券中硬券も発売していたので、全種類購入してコンプリートしました。きっぷを収集していると伝えると、快く全種類出してくれました。

まずは、急行券。指定席券は、1号の常備式と補充式の両方がありました。指定席券は、乗車当日の朝9時から発売されました。レストラン・キハとなる2号車が指定席として開放されている席でした。
1号車の自由席には、普通の急行券を購入して乗車しました。上記の指定席券とも、硬券の地紋がなんと国鉄時代のものでした。一瞬目を疑いましたが、なんというこだわりようか、感動を覚えました。

売店には硬券だけではなく、車急式の軟券も発売していました。筆者も、いちばん長い状態で購入。これも国鉄地紋でした。こんなに鉄オタを魅了するきっぷは、当時いすみ鉄道以外ではまず見かけませんでした。このインチキさ?にはただ笑うしかなかったです。サービス精神満点のきっぷだと思いました。
国鉄時代を再現した手売りきっぷは、鳥塚氏が移籍したえちごトキめき鉄道の観光列車にてそのまま見ることができます。えちごトキめき鉄道の「観光急行」列車については、別記事にて紹介します。

実乗のための乗車券として購入した房総横断記念乗車券、小湊鉄道線の五井駅まで片道乗車できる企画きっぷです。率直に言って、値段がかなりおトクです。小湊鉄道の運行本数が少ないのは、我慢ということで。
この券は、さすがに「JPR てつどう」地紋です。
乗車券類の話になっているので、ついでながら大多喜駅や車内で売っているきっぷについてもご紹介しましょう。

大多喜駅の出札窓口では、硬券の急行券・指定席券を売っていて、希望すれば発行してくれました。なお、普通の片道乗車券は、自動券売機のみでの発売です。
ちょっと変わった硬券乗車券としては、小湊鉄道の養老渓谷駅ゆき連絡乗車券が売っていました。これも国鉄地紋のレアものです。いつまで発売されるものか。。。
補充券については、他の第三セクター鉄道と同様、最低限の1種類しかありません(一時期、褐色地紋の入鋏式特別補充券が存在したようですが、この日に聞いたらすでに在庫なしでした)。

この補充券は、大多喜駅での出札(基本発券不要のため、収集用発券を行ってくれるかは保証できないです)および車内券としてアテンダントさんから購入可能です。至ってオーソドックスな様式です。
観光急行列車が発車
話が脱線したので、お話を観光急行列車のほうに戻します。
大原駅売店からホームの中に入ると、キハ28のほうの2号車に、「急行フラミンゴ」のヘッドマークが掲げられていました。筆者には、そもそも房総各線の気動車に乗車した経験がなかったですが、「急行フラミンゴ」というのも初耳でした。行先標(サボ)もばっちり掲げられていました。


ランチ時は、レストラン・キハとしての営業でした。

2号車指定席は本来、ボックスシートでした。シートの上に大きな手作りテーブルがのっていて、2人しか座れませんでした。大多喜行きの列車の場合、進行方向逆向きに進行するので、そのつもりで。
2号車には終点の上総中野駅まで乗車できましたが、大多喜駅からは「レストラン・キハ」の営業準備が始まって、落ち着きませんでした。

1号車(キハ52 125)は自由席として乗車できました。また、全線通しで乗車できました。大多喜駅を過ぎると、行先標(サボ)もしっかり変更されていました。


車内は正直なところ、かなり疲れていて、床材がはがれてぼこぼこな場所がありました。しかし、雰囲気は決して悪くなかったです。車端部には、スタンプや展示のコーナーがあり、国鉄の路線図もありました。


キハ28に吊るされていた広告が、これまたこだわりの塊。国鉄時代の「ナイスミディパス」などの企画商品のポスターが、何枚かありました。不正乗車防止啓発のポスターも。

このくらいの言い回しのほうが、抑止効果があるのでしょう。
大原駅から大多喜駅までは約30分間、さらに終点の上総中野駅まではもう30分の短い乗車時間でした。景色が決していいとは言えない車窓で退屈でした、その分素朴な里山風景を味わえます。
素朴さがウリの列車とあって、実際の客層は大半の乗客が中高年層でした(夫婦が多かった)。国鉄を懐かしむというこの列車のコンセプトが分かるのは、おそらく50歳代以降の年代の人かと思われます。
今、多くの鉄道会社は中高年層をターゲットにして鉄道商品を造成しているので、いすみ鉄道のこのやり方も間違っていないと思いました。
ムーミン列車

終点の上総中野駅から接続する小湊鉄道線が、これまたレトロで味があります。
いすみ鉄道のもう一つの顔が、ムーミン列車です。とはいえ、普通のロングシートの車両で、ラッピング列車にすぎません。こちらは日常輸送用なので、インパクトには欠けます。サボが鉄道むすめ系なので、車両に多様性があります。



いすみ鉄道はグッズの販売も充実していて、大原駅、大多喜駅に売店があります。食品で特色あるのは「キハカレー」でしょうか。筆者が購入したのは、クリアファイル300円、運転士車掌バッジ840円他でした。

首都圏にあってアクセスのよいいすみ鉄道は、鉄オタに依存した鉄道会社だと思います。職員の人たちも、鉄道ファンの乗客たちに理解があるように感じました。
参考資料 References
● 筆者記事「えちごトキめき鉄道「国鉄形観光急行」きっぷの買い方・乗車体験【自由席】」
改訂履歴 Revision History
2016年8月16日:初稿
2022年12月22日:初稿 再構成
2022年12月28日:初稿 修正
2023年4月06日:初稿 修正
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