長野県北部と新潟県中部の魚沼地方を結ぶ、JR飯山線。
豊野駅(長野県長野市)から千曲川・信濃川沿いを走り、十日町駅(新潟県十日町市)を経て終点の越後川口駅(新潟県長岡市)まで至る、96.7kmの長いローカル線です。
冬場は豪雪地帯の飯山地方は、田舎の風情で満たされています。そんなJR飯山線にも、観光列車「のってたのしい列車」の一つである「おいこっと」号が走っています。
「おいこっと」をローマ字で表記すると「OYKOT」。東京「TOKYO」の綴りと逆さまです。東京のような大都会とは反対の、田舎という意味が込められています。

田舎のふるさとに帰った雰囲気を五感で味わえます!
この記事では、観光列車の「おいこっと」号の概要と、列車の予約方法(指定席券の買い方)を詳しく説明します。そして、筆者が2016年と2021年に2回乗車した体験をレポしたいと思います。
「おいこっと」号の概要・情報の取り方

冒頭で申し上げた通り、「おいこっと」号は、北陸新幹線が停車する長野駅(長野県長野市)を発着します。長野駅からしなの鉄道北しなの線を通り、途中の豊野駅からJR飯山線に入り、終点の十日町駅に向かう快速列車です(冬場は、途中の戸狩野沢温泉駅止まりとしての運行実績あり)。
週末を中心に、86.1kmの距離を、約2時間30分をかけて走ります。
終点の十日町駅では、同じ観光列車「のってたのしい列車」の「越乃Shu*Kura」号と連絡していて、同日に乗り継ぐことができます。
「越乃Shu*Kura」号の運行する日には、長野駅から「おいこっと」号で十日町駅に向かい、「越乃Shu*Kura」号に乗り換えて、上越妙高駅まで乗り鉄を続けることが可能です。
逆回りで、先に「越乃Shu*Kura」号に乗車して十日町駅まで乗車し、「おいこっと」号に乗り継ぐことも可能です。ただし、乗り継ぎ時間が短めです。第一、飲んで出来上がった状態で「おいこっと」号にそのまま乗る光景を想像すると、ちょっと怖いものがあります(笑)
「おいこっと」号は、乗り鉄(列車に乗車すること自体)を楽しむ観光列車「のってたのしい列車」です。主な乗客層は、首都圏などの大都市圏から乗り鉄しに来る観光客です。
しかし、飯山線の運行本数が少ないことから、「おいこっと」号が運行される週末には、長野市から十日町市の間の移動手段としても十分に使えます。

「おいこっと」号の名前は、先に申し上げたように、ローマ字表記「OYKOT」です。東京「TOKYO」の綴りと、ちょうど逆さまです。大都会東京の真逆の、田舎の故郷でのおもてなしが、この列車のコンセプトです。
鉄道ファンはもちろん、ファミリー層にとっても十分に乗り鉄を楽しめる列車です。加えて、日本の田舎の風情をよく味わえるということで、外国人客の誘客も意識されているようです。
列車の運行日や駅の通過時刻などの列車の詳細・最新情報については、JR東日本「のってたのしい列車」公式ウェブサイトで確認できます(当該ページのURLは、文末の参考資料を参照してください)。
座席の種類・予約の取り方
「おいこっと」号に充当される車両は、キハ110系という一般型の気動車です。外装と内装を簡易に改装して、観光列車として運行されています。そんなわけで、平日には、飯山線の普通列車として運用に入ることがあります。
週末に運行される快速列車ですが、観光列車ということで、全車指定席です。そのため、乗車する前にあらかじめ予約し、指定席券を購入する必要があります。
座席タイプ(設備)
通常は、「おいこっと」号用に改装された、キハ110系車両の2両編成で運行されます。2両とも座席配列が同じです。車内の中央部がボックスシートで、ドアに近い車端部にロングシートがあります。簡易改造で生まれたこの座席配置が、かえって田舎のローカル列車の雰囲気をよく醸し出しています。
「おいこっと」号の場合、同じキャビンながら、ボックスシートとロングシートという座席配置の違いで、座席の予約・指定席券の購入方法が異なります。
● ボックスシート(26席)

1番、3番-10番の26席がボックスシートです。そのうち、奇数番の座席が2人掛けボックスシートで、千曲川・信濃川側です。偶数番の座席が4人掛けボックスシートで、千曲川・信濃川とは反対側になります。眺めは、2人掛けボックスシートのほうがよいです。実際に販売されるのは、3-10番の24席分です。
ボックスシートは、1人で乗車する場合や、ファミリーなど小人数のグループで利用する場合に、適しているかと思います。
● ロングシート(12席)

一般の普通列車の運用に入ることがあるため、車端部のドアに近い座席はボックスシートではなく、ロングシートが配置されています。6人掛けのロングシートが2組ある形です。少人数で相席になるのは、ちょっとしんどいです。5名以上の大人数のグループが固まって座るのに、適しているかと思います。
車内の無料WIFIやスマホ用コンセントなどの設備は、特にありません。
「おいこっと」号の席番表
1号車、2号車とも全く同じ座席配置です。基本は2両編成ですが、運用の都合で1両で運行される場合があります。

【座席タイプ別の予約留意点】
いま申し上げたボックスシートとロングシートでは、予約システム(マルス)上に登録されている列車名が異なることに留意してください。
ボックスシートの列車名:「おいこっとBOX」
ロングシートの列車名:「おいこっと」
列車名を間違えると、意図せずロングシートに座ることになるので、ご注意を。
指定席券および乗車券の購入方法

「おいこっと」号の運行開始から時間が経ち、初期の人気が一区切りしているため、観光列車の中では比較的予約を取りやすい部類に入ろうかと思います。ただし、運用上1両で運行される場合があり、座席が取りにくいこともあります。
指定席券のお値段
「おいこっと」号の指定席券の値段が、2023年10月01日以降引き上げられます。
● 2023年10月01日以降の購入分
通年:大人840円(小児420円)
● 2023年9月30日までの購入分
通年:大人530円(小児260円)
指定席券の発売開始時期
乗車1か月前の日の朝10時00分に座席の発売が開始されます。指定席券を購入する箇所・手段によって開始時期が以下の通り微妙に異なります。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10時00分~
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10時10分~
他の購入手段よりも、開始が10分遅いことに注意してください。
指定席券売機の詳しい操作方法と画面遷移については、本記事の末尾を参照してください。
● ネット予約「えきねっと」【シートマップ表示可】
乗車日の1か月と7日前の午後14時00分~【事前受付開始時刻】
実際に座席が確保され、予約が成立するのは、乗車日1か月前の10時00分以降です(取れない場合もあります)。
(1) 「のってたのしい列車」の申込画面から「おいこっと」号を選択します。

(2) 下り/上り別・ボックスシート/ロングシート別に列車名を選択します。

(3) 列車名と発駅・着駅が自動的に埋まります。日にちと人数を選択します。

(4) そのまま操作を続けます。座席票から容易に席番を選べます。
● ボックスシート「おいこっとBOX」上り

● ロングシート「おいこっと」下り

※ えきねっとで座席が取れた場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。
「えきねっと」の事前受付に関する詳しい情報は、筆者の別記事(↓)を参照してください。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券は、座席のタイプによって、それぞれ以下の券面です。
● ボックスシート
列車名の表示は「おいこっとBOX」です。

● ロングシート
列車名の表示は「おいこっと」です。

乗車券について
「おいこっと」号に乗車するためには、上記指定席券のほか、乗車区間を含んだ乗車券が必要です。乗車券の代わりに、「青春18きっぷ」「北海道・東日本パス」「週末パス」「大人の休日俱楽部パス」(*)などのフリーパス類を使用することも可能です。
* 「大人の休日俱楽部パス」では、「おいこっと」号の指定券(指のみ券)を回数の枠内で、パス料金込みで取ることができます。
下り列車に乗車!【2016年】
2016年9月のある週末に、長野駅から「おいこっと」号に乗車しました。列車が出発する長野駅4番線ホームには、余裕をもって入りました。

下り:長野駅 9:15分 →(しなの鉄道北しなの線・JR飯山線経由)→ 十日町駅 11:48分

列車が入線したのが、定刻7分前の9:08分と、かなり間際でした。小海線を走る観光列車「High Rail 1375」号同様、JR東日本の観光列車にしては、余裕がない入線時刻だと思います。長野支社には、入線時刻に余裕を持つよう、要望したいところです。
車掌さんと、車内サービスを行うアテンダントさんが乗務していました。

車体のラッピングデザインは、地味ながらも、なかなか凝っています。決して嫌味ではありませんが、外装が地味なのが奏功して、田舎らしさがよく表現されています。「おいこっと」のロゴマークからも、いい雰囲気が出ています。

「おいこっと」号の車内の様子です。ロングシートとボックスシートが配置されています。通常運用に備えて、ロングシートを多めに残してありますが、観光列車的には中途半端になったような気がします。シートのモケットも凝ったものに張り替えられていますが、観光列車の仕込みにしては節約したな、という風に感じます。
列車は定刻に発車し、最初の停車駅の替佐駅までは、北しなの線の駅を含め、通過します。車内には飯山線の観光案内があり、唱歌の故郷(ふるさと)の歌詞もあります。

列車の自動案内放送のナレーションは、「まんが日本昔ばなし」の、常田富士夫氏によるものです。「おいこっと」号のコンセプトによく合った人選で、五感で訴えかけられます。チャイムも、唱歌の「故郷」のメロディーです(「故郷」の作曲者も、常田氏も、出身地が飯山線沿線)。
【田舎らしいおもてなしを満喫】
途中の飯山駅では16分間停車しました。その間に改札をいったん出て、10時ちょうどの「からくり時計」と、飯山産の地酒(北光、水尾)の試飲を楽しめました。

車内では、アテンダントさんが車内販売しつつ、お茶請けの野沢菜漬が配られました(飲み物は自分で用意)。

おみやげに、「野沢菜のたね」をくれました。飯山線の良さを感じられるおもてなしの数々です。

記念スタンプを押すこともできました。

そして、アテンダントさんが記念撮影用ボードを持ってきました。「すげぼうし(藁帽子・藁頭巾)」という、わらでできたかぶりものを着用して記念写真を撮ることができました。

そして、森宮野原駅(長野県栄村)に到着。長野県も、ここで終わりです。積雪が7メートル以上あったとは、にわかに信じられません。
新潟県に入ってからは平野部に入り、定刻に十日町駅に到着しました。
上り列車に乗車♪【2021年】
「おいこっと」号に乗車する機会が、2021年9月に再び得られました。今度は、十日町駅から上り列車に乗って、長野駅へ。

上り:十日町駅 15:12分 →(JR飯山線・しなの鉄道北しなの線経由)→ 長野駅 18:07分
乗車当時の2021年のダイヤでは、「越乃Shu*Kura」号で十日町駅に着いてから、この「おいこっと」号に乗り継ぐまで、十分な時間がありました。しかし、2022年のダイヤ改正で上り列車の発車時刻が前倒しになり、乗り継ぎ時間がかなり短くなっています。
「おいこっと」号は通常2両編成ですが、この日は運用の関係で1両での運行でした。

ボックスシートの全てが埋まる程度の乗客を乗せて、十日町駅を出発。発車時には、駅員さんが温かくお見送りしてくれました。

上り列車でも、アテンダントさんが乗務し、車内販売や車内サービスがありました。コロナ禍ということもあって、野沢菜漬の代わりに、「内山手すき和紙」のしおりをくれました。

途中、森宮野原駅で小休止し、飯山駅では20分間停車。夕方だったこともあり、「おいこっとマルシェ」はやっていませんでした。前回乗車した時の数々のおもてなしに比べると、随分と質素でした。
おわりに~ふるさとを思い出すおもてなしの列車~
この記事で紹介した「おいこっと」号は、ハード面で恵まれているわけではありません。
しかし、ソフト面はよく練りこまれていて、列車に乗車中、五感に訴えかけられる体験をしました。
唱歌「故郷」のチャイムや「まんが日本昔ばなし」と同じナレーション。(今は休止中ですが)野沢菜漬のふるまい。飯山駅での地酒のふるまい。そして、豪雪地帯に建つ立派な民家の風景。
列車に乗りながら日本の原風景を満喫できる体験は、日本人にはもちろん、外国人にも特におススメできると思います。
Appendix:指定席券売機操作方法・画面遷移
指定席券売機を操作する上で基本かつ万能なのが、先にも申し上げた「乗換案内から購入」の機能です。
ここでは、「おいこっと」号の指定席券を「乗換案内から購入」するための手順と画面遷移を残しておきたいと思います。
ロングシート座席の購入画面遷移
ここでは、「おいこっと」号下り列車(ロングシート)を例にして、指定席券を購入します。
(1) 指定席券売機のタッチパネルに表示されている初期画面上で、「乗換案内から購入」を押します。

(2) 列車の検索条件を指定する画面が表示されます。
ここでは、購入したい列車の乗車区間、乗車日・時間帯、人数および新幹線を利用するかどうか、経由駅といった条件を設定します。指定席券売機を操作している駅が「発駅」としてデフォルトで入力されています。また、「新幹線を利用する」がデフォルトです。必要に応じて、適宜変更します。

(4) まず、乗車駅を入力します。「おいこっと」号が発着するのは「しなの鉄道線」長野駅です。表示された駅の中から「しなの鉄道長野」駅を選択します。

(3) 次に、降車駅を入力します。今回は下りの「おいこっと」号が到着する、JR飯山線十日町駅を選択します。十日町駅には北越急行線も乗り入れていて、北越急行線十日町駅のシステム上の駅名は「北越急行十日町」駅です。JR飯山線「十日町」駅とは、違う駅です。今回はJR線の「十日町」駅を選択します。

(5) まずは、「新幹線を利用する」設定を変えず、経由駅も指定しない状態で検索をかけます。すると、長野駅から飯山線まで北陸新幹線を乗車する経路が表示されてしまいました。

(6) 途中で乗換しない列車を検索する方法には2つありますが、ここではデフォルトの「新幹線を利用する」を、「新幹線を利用しない」に変更します。

(7) お目当ての「おいこっと」号が表示されました。向かって左側に、ロングシートの「おいこっと」が、向かって右側には、ボックスシートの「おいこっと(ボックス)」が表示されたので、左側を選択します。

(8) 指定席券と乗車券の両方を購入するか、指定券のみ購入するか選択します(指定席券をすでにもっている場合には、乗車券のみ購入できます)。

(9) 指定券の設備を選択すると、座席指定の画面が表示されます。「座席表から選ぶ」を押します。

(10) 座席指定したい号車を選択します。

(11) ロングシートの座席表が表示されました。取りたい座席を選択します。

(12) 復路の乗車券・指定券の購入を続けることができますが、片道分を購入する場合、代金の決済に進みます。代金の決済が完了すると、きっぷが出てきます。
ボックスシート座席の購入画面遷移
ここでは、「おいこっと(ボックス)」号上り列車(ボックスシート)を例にして、指定席券を購入します。
(1) 指定席券売機のタッチパネルに表示されている初期画面上で、「乗換案内から購入」を押します。
(2) 列車の検索条件を指定する画面が表示されます。

(3) まず、乗車駅を入力します。今回は上りの「おいこっと」号が出発する、JR飯山線十日町駅を選択します。十日町駅には北越急行線も乗り入れていて、北越急行線十日町駅のシステム上の駅名は「北越急行十日町」駅です。JR飯山線「十日町」駅とは、違う駅です。今回はJR線の「十日町」駅を選択します。

(4) 次に、降車駅を入力します。「おいこっと」号が発着するのは「しなの鉄道線」長野駅です。表示された駅の中から「しなの鉄道長野」駅を選択します。

(5) 「新幹線を利用する」設定を変えず、経由駅も指定しない状態で検索をかけます。
(6) お目当ての「おいこっと」号が表示されました。向かって左側に、ロングシートの「おいこっと」が、向かって右側には、ボックスシートの「おいこっと(ボックス)」が表示されたので、右側を選択します。

(7) 今回はデフォルトの設定を変えずに「おいこっと」号が表示されました。ここで表示されない場合、「新幹線を利用しない」を選択するか、後述する「直通区間を指定して再検索」を行います。
(8) 指定席券と乗車券の両方を購入するか、指定券のみ購入するか選択します(指定席券をすでにもっている場合には、乗車券のみ購入できます)。

(9) 指定券の設備を選択すると、座席指定の画面が表示されます。「座席表から選ぶ」を押します。

(10) 座席指定したい号車を選択します。

(11) ボックスシートの座席表が表示されました。取りたい座席を選択します。

(12) 復路の乗車券・指定券の購入を続けることができますが、片道分を購入する場合、代金の決済に進みます。代金の決済が完了すると、きっぷが出てきます。
「直通区間を指定して再検索」を利用する奥の手
検索したい列車を表示させることができなかったり、途中駅から/までの区間しか表示できない場合が、どうしてもあります。その場合の奥の手が「直通区間を指定して再検索」の検索機能です。その際は、検索結果が表示された画面の下のほうにあるグレーのボタン「検索条件を変更する」を押します。

まず、出発駅を入力します。「おいこっと」号に全区間通しで乗車する場合、「しなの鉄道 長野」もしくは「十日町」を選択します。

次に、降車駅を入力します。同様に、「しなの鉄道 長野」もしくは「十日町」を選択します。

これで、9割以上の確率で、お目当ての列車が表示されるはずです。
参考資料 References
● のってたのしい列車「おいこっと」号 公式ウェブサイト(JR東日本)

改訂履歴 Revision History
2016年9月25日:初稿
2022年7月16日:第2稿
2022年7月22日:第2稿 加筆・修正
2022年7月28日:第2稿 修正
2022年12月28日:第2稿 修正
2023年4月06日:第2稿 修正
2023年8月04日:第2稿 修正
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