JR全線の普通列車に乗車できる、季節発売の乗車券「青春18きっぷ」。発売開始から40年以上経つ歴史の長い乗車券でもあり、筆者も学生時代から愛用してきました。
現在は、発売の都度マルス端末から発券される水色のきっぷですが、券面があらかじめ印刷された常備券が数年前まで存在したことをご存じでしょうか。常備券は赤色地紋のきっぷだったため、通称「赤券」と呼ばれていました。
この記事では、マルス券になる以前の「青春18きっぷ」常備券のお話をしようと思います。1日1葉で発行されていた時代の青春18きっぷから、5日で1葉で発行されるようになった現行の青春18きっぷまで紹介します。
1982年には当初「青春18のびのびきっぷ」として発売されましたが、その時代までは遡れないことをご了承ください。
青春18きっぷ常備券販売終了のニュース
青春18きっぷの常備券「赤券」が、2016年度の冬季を最後に発売されなくなるというニュースを知りました。当時、筆者には旅行しにくい事情がありましたが、万障排して入手に出かけました。
青春18きっぷ発売当初の国鉄時代は、赤券が当たり前でした。その後、徐々にマルス端末からの発券が主流になったものの、JR西日本とJR四国の一部の駅で最後まで残って、細々と発売されていたようです。
赤券発売停止のニュースがネットで大きく流れたために、関西地区では赤券入手をめぐる狂騒曲があったようでした。しかし、JR四国管内では早々と売り切れることがなく、余裕で購入することができました。
JR四国管内の駅で常備券「赤券」を購入

筆者が向かったのが、2016年12月3日の21時頃の高松駅でした。赤券を発売しているみどりの窓口には並んでいる人もおらず、平和に購入することができました。ちなみに、きっぷ本券は常備券であるものの、領収書を頼んだらマルス券だったのが印象に残りました。
なぜ最近まで赤券が残っていたのか謎ですが、きっぷ鉄的には一大イベントであるのは確かでした。

翌朝、高松駅から予讃線端岡駅(香川県高松市)へ向かいました。

端岡駅は地元の人しか利用しないような観光資源のない駅にもかかわらず、青春18きっぷの赤券が発売されていました。直営駅にもかかわらずマルス端末が設置されてなく(POS端末はある)、常備券を発売するのに似つかわしい駅には違いありません。

きっぷ売り場には青春18きっぷの常備券発売終了に関する掲示が貼られていました。公式に告知するあたりが、JR四国の粋な点と思いました。
折角四国まで赤券を買いに行ったので、本記事では現在から国鉄時代までの青春18きっぷ「赤券」の様式を逆時系列で振り返ってみたいと思います。
発売終了直前の常備券券面
最後まで残った常備券の様式は、マルス券と共通でした。1券片あたり5日間有効であり、乗車日のスタンパーが5つ押されるのは同じです。筆者は多忙で、2回分使うのがやっとでした。

このきっぷは香川県の(讃)高松駅発行ですが、石川県の(七)高松駅でもわずかに発売があったようです。事情が許せば両方買ってみたかったですが、実現しなかったので残念です。
今となってはおもちゃのような券面に見えるが、有効な乗車券です。

裏面の注意書きが大変細かく多岐にわたっており、なかなか理解できる代物ではないです。
この注意書きによれば、
● 普通・快速列車の普通車指定席には指定席券を購入
● 首都圏を走る自由席のグリーン車に乗車する場合には普通列車用グリーン券
● ホームライナーには乗車整理券(またはライナー券)を購入
すれば、青春18きっぷを有効に活かせます。しかし、特急列車や指定席グリーン車に乗車する場合には青春18きっぷを乗車券として活かすことはできません。
一部の第三セクター会社の路線や北海道新幹線の一部区間などにも条件付きで乗車できるなど、青春18きっぷの使用条件はおそろしく複雑です。
歴代の「青春18きっぷ」常備券券面
ここで、青春18きっぷの古き良き時代を回顧しようと思います。

この券面は、1992(平成4)年JR西日本金沢駅発行分のものです。その頃はまだ表紙が存在し、1日1券片の5枚綴りのきっぷでした。表紙には、バーコードが表示されています。

第1券片は上図の通りです。券番に枝番が付いています。書体が不自然に粗いです。このような1日1券片の体裁で、大きな日付が券面にドカンと押されるのが筆者的には好きです。

裏面には注意書きがあります。現在のものよりはかなりシンプルです。

さらに遡って、国鉄時代末期の1987(昭和62)年春、国鉄最後の青春18きっぷの券片です。表紙の体裁は、上述の金沢駅発行分と大差ないです。

券面が国鉄全線となっているのが、今となっては味わい深いです。この頃は、筆者も途中下車印を押してもらって楽しんでいました(かえって券面が汚れるので、現在は控えめにしていますが)。

国鉄の地紋が味わい深く、書体の印字も明瞭できれいです。名券と感じます。裏面の注意書きには、連絡船を示唆する単語があって、時代を感じます。
年齢を問わず万人に利用される「青春18きっぷ」。優れた商品なだけに、今後の発売動向が気になります。
改訂履歴 Revision History
2017年01月11日:初稿
2022年12月30日:初稿 再構成
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