東海道・山陽・九州新幹線にて2017年9月に始まった予約・乗車システム「スマートEX」。クレジットカードの銘柄を問わず利用登録が可能で、手軽にネット予約やチケットレス乗車を体験できます。
この記事では、筆者が「スマートEX」を実際に利用し、発駅から着駅までチケットレスで自動改札を通った体験を共有します。スマートEX用に交通系ICカード「TOICA」を用意し、自動改札で使用しました。
実際に移動した際の発駅は、TOICAエリアの東海道本線吉原駅(静岡県富士市)、着駅はSuica首都圏エリアの東北本線赤羽駅(東京都北区)でした。途中の三島駅(静岡県三島市)から東京駅(東京都千代田区)まで、東海道新幹線に乗車しました。
「スマートEX」の利便性
東海道・山陽新幹線の新しい乗車スタイルである「スマートEX」の最大の利点は、筆者個人的には、その利便性の高さにあると思います。何しろ、手元にある交通系ICカードがあれば、そのカード1枚で新幹線・在来線を問わず、すべての自動改札を通過できるので、とにかくスムーズです。
予約もネットでできるし、変更も乗車直前まで自由で、きっぷを買うために駅で並ぶ必要なく、乗り遅れの心配がないのは大きいです。
新幹線にチケットレスで乗車するのは、今ではすっかり一般的になりました。しかし、2017年9月に初めて「スマートEX」サービスが始まったばかりの時は、かなり新鮮な体験でした。
スマートEXは最安の料金ではなく、運賃制度面でも課題があります。しかし、利便性の面から、チケットレス乗車を一度でも利用したら、紙のきっぷに戻るのが面倒に感じるかと思います。
乗車するまでの事前準備
手持ちの交通系ICカードで実際に乗車するまでに行うことは、以下の通りです。
● 「スマートEX」サービスへの会員登録
このサービスを利用するには、事前の会員登録が必要です。その際に、クレジットカードが必要です。すべての人がクレジットカードを所持するわけではないので、敷居の高さを感じるかもしれません。
● ネット上で列車の予約・購入
列車に乗車するまでに、列車の予約・代金の支払いを済ませます。
自由席を利用する場合でも、乗車前に乗車区間を指定して代金の支払いを済ませなければならない点が、余計な手間と感じるかもしれません。もしも、事前の操作なしで新幹線の自由席に飛び乗れたら、文字通りどこにでも飛んでいけるようになりますが、もう一歩というところです。
運賃・料金の比較検討/ネット上での予約購入
「スマートEX」は、運賃・料金が最安のサービスではありません。
スマートEXを利用する利点は、ネット予約で列車の座席を取り、交通系ICカード1枚ですべての移動がチケットレスで完結する利便性に尽きます。コスパを重視するのであれば、年会費がかかるものの「エクスプレス予約」に入会した方が安く利用できます。
「スマートEX」と「エクスプレス予約」には多くの会員種別があり、仕組みが複雑です。会員種別の詳細や運賃・料金の比較についての詳細は、筆者の別記事(↓)を参照していただきたいです。
運賃・料金の比較検討
乗車する経路によっては、交通系ICカードで乗車する「スマートEX」よりも安価な手段があるので、利用前に比較検討をおススメします。
この典型的な経路として、東海道本線吉原駅(静岡県富士市)から東北本線赤羽駅(東京都北区)まで東海道新幹線と在来線を乗車するものがあります。筆者は、吉原駅から赤羽駅に向けて、実際に乗車しました。
赤羽駅-吉原駅 154.5km 【自由席】
区間 | 乗車券(紙券) + e特急券(通年) | EX-IC乗車 (通年) | スマートEX (通常期) |
赤羽-東京 | [乗] 2,640 [e特] 1,760 | 220 | 220 |
東京-三島 | 3,870 | 4,400 | |
三島-吉原 | 420 | 420 | |
合計 | 4,400 | 4,510 | 5,040 |
※ 2023年4月現行
この表は、吉原駅から赤羽駅まで東海道新幹線の自由席利用での料金比較です。エクスプレス予約の会員として、紙の普通乗車券と「e特急券」を併用するのが最も安価になることが分かります。
スマートEXを利用する場合、指定席には繁忙期や閑散期の設定があるので、上記よりも高額となる場合があります。
ネット上での予約購入
列車に乗車する前に、ネット上での予約・購入が必要です。PCやスマホのウェブブラウザもしくはスマホアプリ「EXアプリ」をダウンロードして、操作を行います。
指定席はもちろんのこと、自由席に乗車する場合でも、区間を指定して事前に購入する必要があります。飛び乗りできないのが、エクスプレス予約やスマートEXを採用する東海道新幹線の弱点ともいえます。
今回、EXアプリ上で購入してみました。決済が完了すると、以下の画面のように予約状況を表示できます。

実際に乗車して使い勝手を体験♪
在来線のTOICAエリアにある吉原駅から普通列車に乗車し、三島駅で東海道新幹線に乗り換えて東京駅まで乗車、そして在来線の首都圏Suicaエリアにある赤羽駅まで、1枚の交通系ICカードで自動改札を通過しました。
余談ながら、吉原駅から赤羽駅まで在来線だけで移動した場合、エリア跨りになるため1枚の交通系ICカードでは乗降できません。交通系ICカード1枚で完結するのは、途中の区間に新幹線が入ってのマジックともいえます。

吉原駅の自動改札では、新たに調達した交通系ICカードTOICAで入場。

東海道線の在来線に乗車。特筆するところは何らありません。

三島駅で新幹線に乗り換え。

新幹線との連絡改札を通ろうとしたら、特急券が登録されていないというエラーが表示されて、通せんぼ。
スマートEXを初めて利用する場合、交通系ICカードの登録が完全にできていないと、このように入場でつまづきます。新規登録時にしっかり登録するように留意していただきたいです。

そして、無事に自動改札を通過。その際、EXご利用票が自動改札機から出てきて、受け取り。

三島駅から東京駅までは、こだま号に乗車。

のぞみ号に抜かれるために定刻よりも早く到着し、発車を待つ間の車掌さんの所作をたまたま目にしました。車両の横に立つ姿勢が美しくて、プロフェッショナルだなと感じました。

発車してから東京駅までは1時間弱。車内の各席には、スマートEXのステッカーが貼ってありました(座席はN700系)。

東京駅で新幹線を下車。

在来線の乗り換え改札はスムーズに通過できて、上野東京ラインの電車に飛び乗りました。

東京駅から15分で赤羽駅に到着。

IC専用の自動改札をスムーズに通過して、移動が完了。

自動券売機で利用履歴を出力したら、今回の移動にかかわるものが印字されていました。TOICAエリアについて、残念ながら駅名まで表示されませんでした。
ご利用票が発行されるため、ペーパーレスと言ったらウソになります。しかし、基本的にはコンタクトレスなサービスで、手軽なのは確かです。
まとめ
この記事では、交通系ICカード1枚で新幹線を含む長距離を移動する場面をイメージできるようにまとめたつもりです。
利便性の面からは、スマートEXのサービスは革新的だと思います。
ただし、従前の営業制度とかみ合わない部分が残っていて、特定都区市内制度とのねじれは大きな課題です。したがって、紙のきっぷを購入したほうが合理的な場合がしばしばあります。
将来的には、交通系ICカード1枚で全国の鉄道を移動できるようになるのかな、と予感してしまうサービスに違いありません。
改訂履歴 Revision History
2017年11月21日:初稿
2023年01月13日:初稿 再構成
2023年03月31日:初稿 修正
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