八ヶ岳の山麓にある小淵沢駅(山梨県北杜市)から小諸駅(長野県小諸市)までの78.9kmを結ぶローカル線、JR小海線。
さわやかな高原を通る小海線にも、「HIGH RAIL 1375(ハイレール イチサンナナゴ)」号という観光列車が週末を中心に走っています(観光列車のことをJRでは「のってたのしい列車」と呼んでいます)。
小海線の沿線には清里や野辺山高原、千曲川の流れなどの観光資源が豊富で、日中走る「HIGH RAIL 1375」号に乗車すると良い景色を楽しむことができます。
そんな「HIGH RAIL 1375」号に、筆者も2017年秋と2022年初夏に乗車しました。

全国のJR線で一番標高が高い場所を走ります。夜は星空がステキですよ!
この記事では、「HIGH RAIL 1375」号に乗車するためのきっぷの準備方法と、小諸駅から小淵沢駅に向かう「HIGH RAIL 1375」2号に実際に乗車した体験を、皆さまと共有したいと思います。
高原を走る観光列車「HIGH RAIL 1375」号について

冒頭でお話しした通り、観光列車「HIGH RAIL 1375」号は、2017年7月に運行が始まった列車です。小淵沢駅と小諸駅の区間を、週末の日中に1往復2本、日没後に1本運行しています。標高差のある区間を2時間強で走ります。
日中に走る2本の列車名は、小淵沢駅発「1号」、小諸駅発「2号」で、日没後に走る列車は、小淵沢駅発「星空号」です。
「HIGH RAIL 1375」号の走るJR小海線は、全国のJR線内でも最も標高の高いところを走る路線です。高原を走るということが、「HIGH RAIL 1375」号という列車の名前の由来です。
全国のJR線の最高地点が清里駅と野辺山駅の中間にあり、標高が1375mです。そんなわけで、列車名に「1375」が含まれています。列車のキャッチフレーズは、「空にいちばん近い高原列車の旅」です。
「HIGH RAIL 1375」号に使用される車両は、小海線を走る既存の気動車、キハ100/110系を観光列車として改造したものです。新造車両ではない分、気取らない庶民的な部類の観光列車と感じます。
これから詳しくお話していきますが、「HIGH RAIL 1375」号の座席配置がとても独特です。2両編成の車内のうち、1号車にはシングルシートやペアシートが配置されています。

「HIGH RAIL 1375」号のデビューは2017年7月で、JR東日本の観光列車の中では後発です。その分、今までの観光列車の運営ノウハウがうまく反映されているように見受けます。
「HIGH RAIL 1375」号に関する詳しい情報、運行日や時刻については、「のってたのしい列車」公式サイトを参照するのが確実です。この記事の末尾にあるURLから参照することができます。
「HIGH RAIL 1375」号の座席の種類・WIFIコンテンツ

「HIGH RAIL 1375」号は、2両編成で定員は50名です。この列車は全車指定席のため、乗車するためには「乗車券」の他、「指定席券」をあらかじめ購入しておく必要があります。
2017年に運行が始まった頃は、旅行商品としての日帰りツアーの設定もありました。また、オプショナルツアーとして食事も提供されていました。現在はそれらの旅行商品の販売はなくなっており、指定席券を買って乗車する形です。
座席の種類(設備)
「HIGH RAIL 1375」号は、2両とも一般座席です。1号車にあるボックスシートと、ボックスシート以外の座席では、指定席券の取り方が若干異なります。
● 1号車 シングルシート・ペアシート
八ヶ岳を望めるシングルシートと、南アルプス連峰や甲府盆地方面を望めるペアシートがあります。列車名「HIGH RAIL」として指定席券を購入します。

シングルシート(1号車1-7番D席)は、レイアウト的に「王様シート」とも言ってもいいくらいで、やはり人気があるようです。

ペアシート(1号車1-7番A・B席)は、赤の他人との相席は厳しいものがあります。2席単位で席を取った方がいいように思えます。
● 1号車 ボックスシート

出入口に近い車端部に、4人掛けのボックスシートが8席分あります(1号車8番・9番)。ボックスシートに限っては、予約上の列車名が異なります。列車名「HIGH RAIL BOX」として指定席券を購入します。
ボックスシートの一部が窓なしであるため、外の景観がさえぎられます。そのため、人気はいまいちなように思えます。
● 2号車 一般のリクライニングシート

一般の特急列車と同じ座席配置で、1列当たり4席の普通車仕様の座席です。列車名「HIGH RAIL」として指定席券を購入します。
座席のシートピッチと窓枠のサイズが一致していないため、列によっては景観がさえぎられる場合があります。
車内WIFIコンテンツについて
「HIGH RAIL 1375」号では、星座の情報や車載カメラからの映像などのオリジナルコンテンツがWIFIベースで提供されています。
手持ちのスマホからWIFIに接続すればコンテンツを楽しめます。ただし、このWIFIはコンテンツ提供専用のため、インターネットには接続できません。
また、スマホの電源を取れるコンセントは設置されていませんので、モバイルバッテリーをお忘れなく。
WIFIコンテンツの詳細については、この記事の後半を参照してください。
「HIGH RAIL 1375」号の席番表
上述した通り、1号車と2号車では座席配置が大きく異なります。座席のレイアウトを、簡易に図解にしました。

この記事の最後にある「Appendix-1」に、各号車の席番表をみやすく掲載しました。
「HIGH RAIL 1375」号に乗車するためのきっぷの準備

「HIGH RAIL 1375」号の座席定員自体が少ないため、特にシングルシートとペアシートについては席が取りにくい傾向があります。
筆者が乗車2日前に席を取った時には、2号車のリクライニングシートと1号車のボックスシートは空きが多かった一方、1号車のシングルシートとペアシートはすでに予約で埋まっていました。
指定席券のお値段
通年:大人840円(小児420円)
指定席券の発売開始時期
乗車1か月前の日の朝10時に座席の発売が開始されますが、指定席券を購入する箇所・手段によって開始時期が以下の通り微妙に異なります。
指定席券の発売箇所・発売手段
指定席券を購入する手段および発売開始のタイミングについては、次の通りです。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10:00–
※ 小諸駅はしなの鉄道が管理する駅です。マルス端末が設置されていて、JR駅と同様に指定席券を購入できます。
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10:10–
全ての座席の購入が可能です。指定席券売機の一部操作画面の遷移については、文末の「Appendix-2」を参照ください。
一般座席と1号車ボックスシートは、システム上違う列車扱いなので、ご注意を(以下「えきねっと」の項を参照)。
※ 有人窓口よりも10分遅い開始です。取りにくい時期は、有人窓口を利用した方が無難でしょう。
● 「えきねっと」(インターネット予約)【シートマップ表示可】
乗車日の1か月と7日前の14:00– 【事前受付開始時刻】
全ての座席の購入が可能です。
「のってたのしい列車」の申込画面から「HIGH RAIL 1375」を選択すると簡単に進めます。ただし、1号車ボックスシートについては、予約システム(マルス)上に登録されている列車名が異なることを留意してください。
一般座席の列車名:「HIGH RAIL」(シートマップ表示可)
ボックスシートの列車名:「HIGH RAIL (BOX)」(シートマップ表示可)

※ 実際に手配が行われるのは、上述した「乗車日1か月前の10:00」と、有人窓口と同一です。事前受付が完了したからといって、予約が確定したわけではないので、要注意です(取れない場合も往々にしてあります)。
※ えきねっとで座席が取れた場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。
「えきねっと」の事前受付に関する詳しい情報は、筆者の別稿(↓)を参照してください。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券は、設備によってそれぞれ以下の券面です。
● 一般座席(1・2号車)
列車名の表記は「HIGH RAIL」です。

● ボックスシート(1号車)
列車名の表記は「HIGH RAIL X号 B」です。

乗車券について
「HIGH RAIL 1375」号に乗車するためには、上記指定席券のほか、乗車区間を含んだ乗車券が必要です。乗車券の代わりに、「青春18きっぷ」「北海道・東日本パス」「週末パス」「大人の休日俱楽部パス」(*)などのフリーパス類を使用することも可能です。
* 「大人の休日俱楽部パス」では、「HIGH RAIL 1375」号の指定券(指のみ券)を回数の枠内で、パス料金込みで取ることができます。

ここからは、筆者の列車乗車体験です!
小諸駅から「HIGH RAIL 1375」2号に乗車!
8222D:小諸駅 14:33分 →(小海線)→ 小淵沢駅 16:57分
発駅の小諸駅から着駅の小淵沢駅までは、2時間24分の汽車旅です。

小諸駅は、JR小海線の終点で、第三セクターのしなの鉄道が管理する駅です。筆者は小諸駅に13時過ぎに到着しました。発車まで時間があったので、駅チカの懐古園まで行って時間をつぶしました。
東京から小諸駅まで向かうためのアクセスが良くないです。北陸新幹線でアクセスする場合、途中の佐久平駅から乗車した方が便利です。長野駅方面からは、しなの鉄道を利用して小諸駅に出ます。

改札口には、「HIGH RAIL 1375」号の手作りの案内があります。全車指定席であることと、小諸駅の窓口でも指定席券が買えることが書いてあります。

発車10分前の14:23分に列車が入線。発車までの時間がかなり短いため、かなりせわしなさを感じます。できれば、もう少し早く入線してほしいところです。

車内への出入りは2号車の1か所のみです。駅のホームには、乗車位置が示されています。

車体側面の行先案内は、「快速」の表示になっています。

「HIGH RAIL 1375」2号の行先は、小淵沢駅です。
アテンダントさんが出迎えてくれるので、指定席券を見せてから車内に入ります。

出入口近くのデッキに、ウェルカムボードとスタンプ台、そして車内WIFIの利用案内があります。忘れずにゲットしましょう。
車内の様子:独特な座席の配置

1号車の車内に入ったところです。ペアシートとシングルシートが背中合わせになっています。窓の外の景色を楽しめる座席配置です。
ペアシートは改造時に新しく作られたもので、しっかりしたつくりです。
シングルシートは他の列車で使用していたものが転用されたものと思われ、かなり使い込まれた感じがあります。

2号車の座席配列は、特急列車の普通車と同じ4列のリクライニングシートです。他の列車から転用された座席のように見えます。座席のモケットは張り替えられていますが、座席そのものは古いです。
大多数の座席が2人掛けですが、1人掛けの座席が3席あります。2人掛けの座席は18席なので、早めにおさえたいところです。

窓枠と座席のシートピッチが一致していないため、外の景色にかわりに柱しか見えない席があります。個人的な意見ですが、窓枠に座席をゆったりと合わせて、席数を少なくし、普通列車用グリーン料金(指定席)など料金を高めに設定すればよかったのかなと思います。種車(キハ100/110系)を改造して、この列車に仕立てあがっているゆえの宿命でしょうか。

2号車の運転席寄りにあるギャラリーは、この列車の力作です。
円形の室内の壁は、星に関係する本が図書館のように置いてあります。本を借りて、座席で読むことができます。天井はミニプラネタリウムになっていて、春夏秋冬の星座パターンを表現できます。
夜の部の「HIGH RAIL星空」号で行われる星座の説明会は、2022年現在休止中です。

1号車の奥には、アルコールやソフトドリンク、オリジナルグッズが買える売店があります。車内でコーヒーを買って飲むと、良い心地です(2号ではホットコーヒー不売)。
アテンダントさんは途中の中込駅までは1人で、中込駅からは3人体制になってサービスしてくれます。

2号車にある洋式のトイレは新しく改造されていて、とてもきれいでした。
他の観光列車に比べると、かなり簡素な造りになっています。改造コストを抑えたのかなと推察します。座席も他の車両からの転用だったり、車内も全体的に手狭だったりと、指定席券代として他の列車より高い840円を払うだけのコスパがあるとは、個人的には思えません。
車内専用WIFIコンテンツについて

手持ちのスマートフォンで車内限定のWIFIに接続して、「HIGH RAIL 1375」車内限定のオリジナルコンテンツを楽しむことができます。その設定方法の説明書が車内入口のデッキに置いてあるので、忘れずにもらいましょう。
専用のWIFIで、星座や沿線の案内などのコンテンツを楽しめます。裏面に接続先のURLが書いてありますが、詳細は当日車内で確認していただきたいです。

車内専用のWIFIのため、外部のインターネットには接続できません。コンテンツを閲覧している間だけ、インターネットには接続できません。

また、スマートフォンのセキュリティレベルが弱くなるので、留意してください(この画面は、iPhoneの場合)。

車内WIFIにつながると、車両先頭と最後尾の車載カメラからの映像が、どの席に座っていても楽しめます。ずっと見ているとバッテリーが減るので、モバイルバッテリーをお忘れなく。
小諸駅を発車してからの道中

2022年に乗車した時は、「HIGH RAIL 1375」号のデビューから5年経っていることから、一般客に浸透してきているようです。乗車した時も、鉄道ファンよりも一般乗客が目立っていました。1号車は人気があって満席でしたが、2号車には空席がありました。

小海線の拠点である中込駅(長野県佐久市)では、長野県のゆるキャラ「アルクマ」と子どもたちが総出で出迎えてくれました。

JRの駅員さんは、大きな幕を持っています。
中込駅から野辺山駅(長野県南牧村)までは、風景が地味なところをゆっくり走っていくので、少し退屈に感じるかもしれません。

道中のハイライトである野辺山駅では12分間停車して、車外に出て小休止を取ることができます。標高1345mのJR最高地点の駅です。

野辺山駅を発車して山梨県との県境に至ると、JR線の最高地点の表示が右手に見えてきます。列車の名前にもなっている1375mの地点です。この地点では特に徐行してくれないので、見逃してしまう可能性があります。徐行してほしいです。
山梨県に入ると列車は下り勾配を疾走し、ひたすら小淵沢駅に向けて駆け下っていきます。
小淵沢駅に到着する寸前が、小海線で景色の一番いいところです。ペアシート側からは南アルプス連峰や甲府盆地、シングルシート側からは八ヶ岳を望めます。そして、列車は定刻通りに小淵沢駅に到着しました。
おわりに

「HIGH RAIL 1375」号は、JR東日本の観光列車の中では後発なだけに、列車のコンセプトはしっかりしています。
アテンダントさんの対応やWIFIコンテンツなどの目に見えるサービスは、おおよそ問題ないです。沿線スポットでの徐行など、かゆい所に手が届くといいのですが。。。
肝心の車両が設備面で簡素なつくりで、他の観光列車と比較して質感に劣ることが否めません。改装のためのコストを削ったことと推察します。車内の座席配置に一貫性がなく、座席のタイプによって人気不人気があります。座席のよって居住性が大きく差があるのは、不公平さを感じます。
それだけに、旅行の計画を早く確定し、人気のある1号車のシングルシートやペアシートを押さえられるようにすると楽しめるかと思います。
夜の部の列車である「HIGH RAIL 1375 星空」号。野辺山駅で星空を眺めることができます。
「HIGH RAIL 1375 星空」号の乗車体験は、以下の別記事を参照してください。
Appendix-1:「HIGH RAIL 1375」の席番表
● 1号車

● 2号車

Appendix-2:指定席券売機の画面操作方法(画面遷移)
駅に設置された指定席券売機で「HIGH RAIL 1375」号の指定席券、乗車券を購入する流れです。
どの駅で購入する場合でも、最初に「乗換案内から購入」のボタンを押すと、これから説明する検索画面が表示されます。
(1) 検索画面上で、次の項目を入力します。
● 発駅・着駅:「HIGH RAIL 1375」号の区間外の駅から通しで乗車券を購入する場合、実際の出発駅を入力します。
● 日付・時刻:旅行を始める駅もしくは小諸駅を出発する時刻を入力します。
● 人数
● 経由駅:「HIGH RAIL 1375」号の区間外の駅から通しで乗車券を購入する場合、「両国駅」を指定します。

(2) 検索結果として「HIGH RAIL」と「HIGH RAIL (BOX)」の両方が表示されます。
2号車8番、9番のボックスシートを取る場合は後者、その他の座席を取る場合は前者を選択します。

(3) 指定席券と乗車券の両方を買うか、いずれか一方だけ買うか選択します。
(4) 指定席券を購入する場合、シートマップを表示させて席を選べます。席を取りたい号車を選択します。
● ボックスシート以外の座席

● ボックスシート:2号車を選択できません。

(5) シートマップから取りたい座席を指定します。

(6) 代金を決済し、きっぷを受け取ります。
参考資料 References
● 「のってたのしい列車」公式サイト「HIGH RAIL 1375」号(JR東日本)

● 「えきねっと」の「のってたのしい列車」予約画面
改訂履歴 Revision History
2017年12月03日:初稿
2022年5月27日:第2稿
2022年6月01日:第2稿 加筆
2022年6月22日:第2稿 修正
2023年01月17日:第2稿 修正
2023年4月07日:第2稿 修正
2023年8月04日:第2稿 修正
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