2018年4月から、東北・上越・北陸新幹線の首都圏内の一部区間で始まった「タッチでGo!新幹線」乗車サービス。2022年3月からは、JR東日本管内の全路線に利用区間が拡大し、完成されたサービスになりました。
ネット環境やクレジットカードなしに、交通系ICカードやスマートフォン一つで新幹線の自由席にサクッと手軽に乗車できる便利なものです。
「タッチでGo!新幹線」を利用する際の料金、事前にネット決済するのではなく、代わりに運賃チャージをしておき、乗車する時に残高が引き落とされる仕組みです。
しかし、乗車券部分と自由席特急料金部分がセットの「タッチでGo!新幹線」料金は、新幹線停車駅相互間で決まっています。したがって、新幹線と接続する在来線を通しで乗車する場合、新幹線と在来線とは、別々のきっぷになります。従前の乗車券・特急券(紙のきっぷ)と違い、運賃・料金面でメリットはあるでしょうか。
この記事では、在来線と通しで乗車する場合に「タッチでGo!新幹線」を利用して乗車ごとに別々の運賃・料金を払うのか、通しで計算された乗車券・特急券(紙のきっぷ)を買って乗車するのか、損得計算が絡む微妙な問題を掘り下げたいと思います。

東京都区内など特定都区市内制度が適用される場合、従来通り乗車券と特急券を買って乗車したほうが低額になる場合が多いです。慎重に利用の判断をしましょう。
「タッチでGo!新幹線」のサービスの概要・利用エリアや利用方法については、筆者の別記事(↓)で詳説しました。先にお読みいただきたいです。
「タッチでGo!新幹線」サービス開始時のキャンペーン価格および従前利用できた「モバイルSuica特急券」のサービスは、2020年3月13日をもって終了となりました。現在、普通車自由席に乗車する場合の運賃・料金は、きっぷの買い方を問わず同額です。
「タッチでGo!新幹線」と紙のきっぷ|どちらがおトクか?

「タッチでGo!新幹線」を利用する場合の料金は、乗車券部分と新幹線自由席特急券部分がセットになっています。その料金は、新幹線停車駅の駅間ごとに決められています。当該料金表は「タッチでGo!新幹線」公式ウェブサイトに掲載されています。
我々がまず留意するべきは、「タッチでGo!新幹線」にて利用する新幹線に接続する在来線の運賃が通算されないで、別々の運賃・料金として支払う点です。
この料金は新幹線停車駅間で設定されているため、東京山手線内、東京都区内、仙台市内といった特定都市区内制度が適用されません。そのため、発駅から着駅まで通しで運賃計算された乗車券と新幹線乗車区間の新幹線自由席特急券を購入し、全体で通しのきっぷとして買ったほうが、旅費が安く上がる場合がしばしばあります。
つまり、「タッチでGo!新幹線」で乗車した場合、紙のきっぷより割高になり、不利益になることがあります。事前の損得勘定が必須であることがお分かりになるかと思います。
JR東日本エリアの新幹線には、東海道・山陽・九州新幹線の「運賃ナビ」のような、運賃・料金の比較ツールがなくて困ります。えきねっとやスマホアプリを利用して、自分でシミュレーションする必要があります。
「タッチでGo!新幹線」を利用する場合に紙のきっぷとの損得勘定をするのは、えきねっと「新幹線eチケット」にもいえます。両者の料金設定が普通車自由席の場合なので、本記事で解説するノウハウを「新幹線eチケット」にも応用できます。
紙のきっぷはこんな感じ
紙のきっぷで乗車する場合、発駅から着駅まで通算された乗車券と新幹線自由席特急券をそれぞれ購入することになります。
次の例は、東京山手線内の任意の駅から大宮駅まで在来線で向かい、大宮駅で新幹線に乗り換えて高崎駅まで向かう紙のきっぷです。紙のきっぷでは、特定都区市内制度が適用されています。
この乗車券は、在来線の駅から高崎駅まで通しで運賃計算されています。中心駅の東京駅から高崎駅まで105.0kmで、運賃額は1,980円です(余談ながら新幹線経由の場合有効期間が2日間で、大宮駅などで途中下車が可能です)。

新幹線自由席特急券は、大宮駅から高崎駅まで1,870円です。乗車券との合計金額は、3,850円です。

具体的な運賃・料金の比較

それでは、「タッチでGo!新幹線」の料金と紙のきっぷの運賃・料金を比較していきましょう。発駅と着駅の組み合わせは無限ですが、ここではわかりやすい例とするため、高崎駅(群馬県高崎市)と前橋駅(群馬県前橋市)を挙げてみることにします。損得計算の考え方とやり方を理解いただきたいと思います。
新幹線停車駅が目的地の場合(高崎駅)
下表は、新幹線停車駅の高崎駅を目的地にした場合の、普通車自由席の運賃・料金早見表です。利用ケースが多そうな駅を取り上げてみました。
【東京駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
東京=高崎 | 4,490 | 4,490 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
品川ー東京=高崎 | 4,490 | 178+4490=4,668 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
横浜ー東京=高崎 | 4,820 | 483+4490=4,973 |
「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額のほうが高くなります。特定都区市内制度の利点がよく現れています。
【大宮駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
大宮=高崎 | 3,210 | 3,210 | |
池袋ー大宮=高崎 | 3,850 | 406+3210=3,616 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
渋谷ー大宮=高崎 | 3,850 | 571+3210=3,781 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
紙のきっぷに比べて、「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額のほうが若干安くなります。新幹線の乗車距離が短いのが要因です。
新幹線から在来線に乗り換え目的地に向かう場合(前橋駅)
下表は、両毛線前橋駅を目的地にした場合の、普通車自由席の運賃・料金早見表です。高崎駅まで新幹線を利用し、高崎駅から前橋駅までは在来線に乗り換えて利用する想定です。
【東京駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
東京=高崎ー前橋 | 4,490 | 4490+199=4,689 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
品川ー東京=高崎ー前橋 | 4,490 | 178+4490+199=4,867 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
横浜ー東京=高崎ー前橋 | 5,150 | 483+4490+199=5,172 |
「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額のほうが高くなります。特定都区市内制度の利点が特によく現れています。
【大宮駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
大宮=高崎ー前橋 | 3,390 | 3210+199=3,409 | |
池袋ー大宮=高崎ー前橋 | 3,850 | 406+3210+199=3,815 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
渋谷ー大宮=高崎ー前橋 | 3,850 | 571+3210+199=3,980 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
紙のきっぷの金額と、「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額とは、駅によって微妙ですが、両者の差は小さいです。これも、新幹線の乗車距離が短いからと思料します。
まとめ

ネットいらず、クレジットカードいらずで、運賃チャージだけで自動改札をサクッと通れる「タッチでGo!新幹線」乗車サービス。しかし、料金の損得勘定までは手軽ではなく、乗車する区間によって慎重に利用するかしないか判断したいです。
新幹線停車駅相互間であれば、事情がない限り「タッチでGo!新幹線」一択です。しかし、新幹線に乗車する前後に在来線の列車に乗車する場合、紙のきっぷを買って乗車したほうが安くつく傾向があります。
そんなわけで、利用する前に損得勘定することをおススメします。
東京都区内、東京山手線内、仙台市内といった特定都区市内制度が適用される駅を利用する場合、従前の乗車券(紙のきっぷ)の優位性が目立ちます。制度をうまく活用し、旅費の節約を図りたいです。
このような現象が発生するため、駅の券売機では「タッチでGo!新幹線」乗車サービスの利用開始時に同意を求められるわけです。乗車券と特急券を併用して乗車するか、運賃・料金がセットの「タッチでGo!新幹線」を利用して乗車するか、今後永遠の課題になると思います。
参考資料 References
● 「タッチでGo!新幹線」公式ウェブサイト(JR東日本)2023.01閲覧
改訂履歴 Revision History
2018年4月08日:初稿
2023年01月19日:第2稿
2023年01月20日:第2稿 修正
2023年4月07日:第2稿 修正
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