東武鉄道伊勢崎線の路線図を眺めていると、東京から伊勢崎駅・赤城駅方面に向かう経路には、東武伊勢崎線と小泉線の二つあることがわかります。
館林駅(群馬県館林市)から太田駅(群馬県太田市)に向かう場合、伊勢崎線で足利市駅(栃木県足利市)を経由する経路と、小泉線で東小泉駅(群馬県大泉町)を経由する経路の2通りがあります。いずれかの経路をとっても、同じ駅に到達します(特急「りょうもう」号は、伊勢崎線経由)。
館林駅から小泉線の東小泉駅を経由して太田駅に至り、伊勢崎線で館林駅まで戻る場合、同じ駅を通らずに一周乗車して戻る環状経路が成立することは注目に値します。
この記事では、筆者が東武鉄道小泉線と伊勢崎線の環状経路を一周するため買ったきっぷと、実際に同経路を時計回りに一周した体験を紹介します。
東武小泉線・伊勢崎線 環状経路の概要
環状経路が成立する群馬県の館林駅から太田駅までの区間には、二通りの経路が存在します。
● 東武伊勢崎線:館林駅→足利市駅→太田駅 実キロ20.1km
● 東武小泉線:館林駅→東小泉駅→太田駅 実キロ16.2km
伊勢崎線は、東京方面から太田駅以遠の伊勢崎駅や桐生線の赤城駅を結ぶ幹線で、特急「りょうもう」号も走る経路です。小泉線は館林駅と東小泉・西小泉駅、太田駅を結ぶローカル線です。
館林駅から館林駅まで、あるいは太田駅から太田駅まで乗車する場合に、伊勢崎線と小泉線を連続して乗車した場合、一周大回りの環状経路が成立するというわけです。
伊勢崎線と小泉線とを合わせた一周の実乗車キロは36.2km。ごくごく小さな旅です。

環状経路の運賃計算ルールと乗車券
この環状経路を一周する場合、乗車する区間の営業キロに応じて運賃計算を行う原則により、営業キロ40.2km分の運賃が課されます(2023年4月現在610円)。
この区間の実キロは36.2kmですが、営業キロ(運賃計算キロ)は40.2kmです。伊勢崎線の運賃計算キロは実キロと同一ながら、小泉線には実キロとは異なる営業キロ(擬制キロ)が定められています。館林駅から太田駅までの小泉線の営業キロは20.1kmで、伊勢崎線経由のキロ数と同一になります。つまり、小泉線の運賃に関しては、実乗車キロに比べて高い運賃が設定されているわけです(同社の旅客営業規則第14条に、擬制キロの規定があります)。
また、環状経路を一周する経路の場合、片道乗車券を発売する旨規定されています(旅客営業規則第26条の2)。それゆえ、今回の環状経路一周に必要な乗車券は、営業キロ40.2km分の普通片道乗車券になります。
東武鉄道では、全駅で交通系ICカードが利用できます。しかし、同一駅で出場できないので、どのみち紙のきっぷを購入する必要があります。券売機で磁気券を購入して乗る場合、発駅で出場することになるので、自動改札機でエラーとなります。どのみち、有人改札を通ることになるので、窓口できっぷを購入することをお勧めします。この環状経路上の主な有人駅は、館林駅、足利市駅、太田駅、東小泉駅で、いずれの駅でも対応してもらえるはずです。

筆者もこんなきっぷを購入してから、実際に乗車しました。途中下車ができないため、ただ乗って帰ってくるという、リアルティに欠けた修行になりました(汗)
東武線環状経路を実際に一周♪

折しもつつじ祭りが開催されていた館林。その最寄り駅である館林駅から一周乗車の小さな旅が始まりました。
環状経路をゆっくり一周しても、わずか1時間20分程度でした。今回は、時計回りに乗車しました。
館林駅 → 東小泉駅(小泉線)

725レ:館林駅 11:02分 → 東小泉駅 11:14分
小泉線の館林駅方には、館林駅と西小泉駅の区間を折り返す列車が運行されています。館林駅の4番線ホームからは、小泉線の列車が発着します。ホームに着いた時には、8000系の2両編成のワンマン列車が停車していました。亀戸線や大師線と同じ運行形態です。
座席が大体埋まるほどの乗客が乗車したところで発車。単線の路線ながら、かなりスピードを出して快走。
東小泉駅 → 太田駅(小泉線)

817レ:東小泉駅 11:29分 → 太田駅 11:38分
小泉線の西半分は、太田駅を経由し、桐生線赤城駅まで直通する列車です。同じく、8000系2両編成のワンマン列車です。

東小泉駅では15分の乗り継ぎで、太田駅まで乗車。東小泉駅は、群馬県大泉町にある駅ですが、大泉だか小泉だか、頭がこんがらがります。大泉町には大きな工場があり、日系ブラジル人などの外国人が多く住んでいます。そのためか、この区間の車内が異国情緒満点で、シンガポールにいるかのような雰囲気でした。
列車自体はこれまた快走し、太田駅の手前で高架線に入って、9分で到着。
太田駅 → 館林駅(伊勢崎線)

408E:太田駅 11:41分 → 館林駅 12:12分
太田駅は、自動車メーカースバルの企業城下町の太田市にある駅です。高架化されたきれいな駅です。
太田駅からは、伊勢崎線区間運転、館林駅ゆきの列車に乗車。わずか3分間の乗り換えでした。

電車は800系3両のワンマン列車。この区間の普通列車は結構需要があるようで、普段混んでいる印象を受けます。この列車はというと、座席が埋まる程度でそれほど混んでいなかったです。
伊勢崎線も館林駅から先の区間は単線で、途中対向列車の交換待ちもあって、館林駅までの所要時間は30分程度です。この日は日曜日だったこともあり、観光客も結構乗車していました。館林駅からは、東京方面の普通列車に乗り換える人が多かったです。

環状経路一周乗車、これであっけなく終わってしまいました。普通列車での一周で、特筆するべきものは特にありません。大回り乗車が好きな方は、一度出かけてみてはいかがでしょうか。
参考資料 References
● 東武鉄道 旅客営業規則(抜粋)
第14条(キロ程)
旅客運賃・料金の計算その他の運送条件をキロメートルをもって定める場合は、営業キロ程による。
2 前項の規定にかかわらず、次の表に掲げる区間については、表中に示したキロ程による。
小泉線
館林・成島間 2.6km
成島・本中野間 4.2km
本中野・篠塚間 2.4km
篠塚・東小泉間 1.8km
東小泉・竜舞間 4.4km
竜舞・太田間 4.7km
第26条の2(普通乗車券の発売方)
次の各号に掲げる場合は、前条および第68条の規定により、それぞれ片道乗車券または連続乗車券を発売する。
(1)環状線一周となる経路の場合は、片道乗車券を発売する。
改訂履歴 Revision History
2018年5月04日:初稿
2023年01月20日:初稿 再構成
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