大月駅(山梨県大月市)から富士山駅(山梨県富士吉田市)を経由し、河口湖駅(山梨県富士河口湖町)までの区間、26.6kmを結ぶ富士急行線。富士急行線を運営する会社の社名は「富士山麓電氣鐡道」に変わりましたが、路線名は従前と変わりありません。
世界遺産の富士山にアクセスするのに便利な路線で、多くの外国人観光客の利用で混雑することが多いです。しかし、そんなせわしない富士急行線にも、観光列車が走っています。
水戸岡氏がデザインした列車「富士登山電車」(元京王井の頭線の車両)と「富士山ビュー特急」(元JR東海371系)は、東京と富士山の間を移動するだけの列車ではなく、電車そのものを観光の対象として楽しめる列車です。
この記事では、富士急行線の観光列車である「富士山ビュー特急」と「富士登山電車」に乗車した体験について書いていきます。「富士山ビュー特急」には、1号車特別車両のスイーツプランとして日曜日に乗車しました。

富士急行線を走る観光列車の中で事前の予約必須なのは「富士山ビュー特急」のスイーツプランです。他の列車には当日でも十分乗車できます。
「富士山ビュー特急」スイーツプラン申込!

富士山ビュー特急は、富士急行線内を平日・週末ともに1日2往復する列車です。自由席車両(特急料金大人400円)と特別車両(指定席)の設備があります。
自由席車両は純粋に移動用の設備で、座席の予約もできません。
乗り鉄の対象として楽しめる指定席の特別車両、平日は900円の特別車両料金を別途支払って乗車できます。週末などの土休日は、スイーツプランの旅行商品扱いとなり、事前の申し込みが必須になります。
本記事では、旅行商品としてのスイーツプランの申し込みから実際の乗車までの流れを一通り振り返ります。

スイーツプランの申し込みは、富士山ビュー特急のウェブサイトから行います(URLは本記事最後を参照)。申し込みの開始日については、上記のページを参照してほしいです(おおむね2か月前から申し込みが可能)。
申し込みの締め切り日(手仕舞)は乗車日の3日前なので、それまでにネットで予約を完了しましょう。
クレジットカードなどで支払いを済ませると、出発から13日前から最終旅程表をダウンロードできるようになります。それを印刷して持参するか、スマホなどで表示できるように準備をしてから、現地に向かいます。乗車するまでには、電話でやり取りすることも特にありませんでした。
「富士山ビュー特急」のスイーツプランの内容と値段は、随時変わります。最新のメニューや値段については、記事末のURLから公式サイトをご自身で確認してください。
「富士山ビュー特急」特別車両にいざ乗車!
2号:河口湖駅 9:41分 →(富士急行線)→ 大月駅 10:34分
東京からの日帰りだったものの、スケジュールの関係で河口湖駅を午前中に早く出発する2号に乗車しました。
朝早い河口湖駅。これから富士山や観光スポットに向かおうとしている外国人観光客をはじめとした人たちを背にして、河口湖駅の改札口を入って、いざ列車へ。

発車の定刻15分前にホームに着きましたが、すでに列車の中に入れる状態でした。

これから乗車するのは、1号車の指定席特別車両。

1号車の乗車口には赤いカーペットが敷かれていて、アテンダントさんが受付をしていました。
名前を申し出て乗車したところ、この日は他に予約している利用者がいなくて、スイーツプランの乗客としては貸し切り状態だということでした。

受付を済ませたところで、座席番号が記入された乗車証を受け取りました。

乗車証の裏面には座席表があります。乗車定員はわずか26名で、ボックスシートに座れるのはわずか6組とわかります。

車内に入ったら、完全に水戸岡ワールド。
富士山ビュー特急に限らないですが、木材を多用した木目調のインテリアは温かみを感じます。運転席へのドアに張られた寄木細工のデザインが美しいです。
運転室側の車両の先頭部には大きな円形テーブルが配置されていて、一人の利用客でも座れるようになっています。

車両中央部には、ゆったりしたボックスシートが配置されています。1列3人のゆったりとした幅のシートです。

運転席と反対側にはサービスカウンターとショーケースもあって、典型的な観光列車の設備になっています。ショーケースには、山梨県の特産品や列車のパンフレットが展示されています。

この日は予約客が筆者しかいなかったため、ボックスシートを用意していてくれていました。大きなテーブルを独占できましたが、乗客が自分一人きりで、テーブルに置かれたスイーツがぽつんとしています。

お目当てのスイーツは、ハイランドリゾートホテル&スパ監修のもので、甘すぎず上品な味に仕上がっていました。
コーヒー、紅茶やソフトドリンクは乗車中飲み放題で、注文するとアテンダントさんが持ってきてくれます(県産品のドリンクは有料のものも)。

この日は乗客一人(筆者)に対し、アテンダントさんが4名乗務してサービスしてもらえました。アテンダントさん側からドリンクのお代わりを勧めてくれたり、いろいろ声をかけてもらえました。
2号車の自由席の車両ものぞいてみました。4列のリクライニングシートが配置された普通の特急列車のシートです。完全に移動手段の座席ですが、水戸岡デザインの車両なので美しいです。

途中、三つ峠駅の手前にある富士山のビュースポットでは、徐行運転で富士山の眺めを楽しめました。この時は、ラッキーにも富士山の全容を眺めることができました。

河口湖駅から大月駅までは1時間弱の乗り鉄でしたが、貸切状態の車両だったのでゆったりリラックスできました。
「富士登山電車」にも乗車!
「富士登山電車」は、2023年現在運休中です。
3号:大月駅 13:38分 →(富士急行線)→ 河口湖駅 14:31分
「富士登山電車」は、富士急行線の元祖観光列車という趣です。大月駅と河口湖駅を1日2往復で結ぶのは、他の観光列車と変わりありません。ただし、途中の停車駅が三つ峠駅と下吉田駅で、移動目的ではなく、列車への乗車そのものを楽しむ観光列車という感じです。
車両のデザインは、これも水戸岡氏によるものです。他の車両のデザインも水戸岡氏が手掛けて改修されているので、富士急行線自体が水戸岡ワールドといえましょう。

この列車に乗車するには、乗車券の他に着席券という200円の料金が必要である。
同社ウェブサイトから事前予約も可能ですが、ピークシーズンでない限り事前予約が必要とは思いません。通常は、乗車する時に駅で着席券を購入すれば事足ります。

乗車券には、2日間有効の「富士急特急フリーきっぷ」を利用してみました(この日、線内を何往復もして元は十分に取れました。通常は、特急列車で1往復すれば元を取れます)。

このフリーきっぷには割引特典がついていて、ふじやま温泉やロープウェイなどで割引を受けられます。

富士急行線大月駅の入口では、神社の鳥居をくぐります。こじんまりとした改札口からホームに入りました。

この日は、富士登山電車の2両の車両に、着席券なしで乗車できる一般の車両が2両併結されていました。そのためか、着席券を購入して乗車する車両が空いていました。

富士登山電車の車体は、マルーン色の大胆なデザインです。車体は古いけれど、何となく気分がほのぼのとします。
出発10分前になってドアが開いたので、さっそく車内へ。

まずは、2号車、青富士の車両から。
大月駅方の運転席側にはソファー席が配置されて、最前部の眺めを楽しめます。

車内の中央部。富士山を望める展望席で、ベビーサークルもある座席配置です。

1号車への連結部にはサービスコーナーとショーケースがあって、アテンダントさんが1名乗務して車内販売を行っています。記念スタンプも置いてあります。

次に、1号車、赤富士の車両へ。
2号車への連結部にもショーケースがあって、パンフレットや記念スタンプが置いてあります。

1号車の車内の中央部には、富士山を望む展望席にライブラリーが。

富士山駅方の運転席側にもソファー席があります。この日はこの席に座って、最前部の眺めをかぶりつきで楽しみました。

喧騒とかき離れた静かな車内で、ごとんごとんとゆったりと過ごすことができました。
途中、下吉田駅で4分間の行き違い停車があって、列車の最前部を撮影できました。下吉田駅、駅舎がきれいに改装されています。時間があれば、駅舎を見学するとよいと思います。

いいコンセプトの電車ですが、車両自体が古いのが気になりました。今後長く走ることができるのか、保守面で課題があるかと思います。
トーマス電車の写真(普通列車)
これまで紹介した「富士山ビュー特急」や「富士登山電車」以外の車両にも、改修されたものがあります。そのうちの一つが「トーマス電車」です。
たまたまこの電車にも乗れたので、写真だけを掲載しておきたいと思います。
外見から、JRの205系車両を購入して改造したものと思われます。その面影が、車体前面から感じられます。

車体を横から眺めると、明るいデザインが目を惹きます。

行先表示板は、LED表示できれいです。

車内はロングシートながら、つり革が木材だったりと、これも水戸岡系のデザインと見受けました。シートのモケットのデザインがかわいいです。

富士山駅の駅名標も「きかんしゃトーマス」。

参考資料 References
● 富士山ビュー特急(富士山麓電気鉄道ウェブサイト)2023.01閲覧
改訂履歴 Revision History
2019年4月29日:初稿
2023年01月27日:初稿 再構成
2023年4月07日:初稿 修正
コメント