近鉄南大阪線の大阪阿部野橋駅(大阪市阿倍野区)と吉野線吉野駅(奈良県吉野町)の間には、概ね30分間隔で特急列車が運行されています。
そのうち、2往復が観光特急の「青の交響曲(あおのシンフォニー)」として運行されています。大阪から橿原神宮や吉野山に観光で訪れる場合、その足として利用できる列車です。
品が良く、広々としたデラックス席(特別車両)の乗り心地が良く、乗車時間の約1時間15分があっという間に過ぎます。この列車に連結された2号車のラウンジが上質な空間で、スイーツやアルコールを楽しめます。他の観光列車とは一味違うプレミアム感が、観光特急「青の交響曲」の特色です。
筆者も、2019年8月のある日曜日に、吉野駅から大阪阿部野橋駅に向かう2便に乗車する機会が得られました。この記事では、観光特急「青の交響曲」に乗車するためのきっぷの準備のお話と、実際に列車に乗車した体験をレポします。

二人掛けのツイン席と四人掛けのサロン席のレイアウトが良く、テーブルも大きくて使いやすいです。なかなか取りにくいですが、指名して特急券を買いましょう。
「青の交響曲」乗車するまでの準備

近鉄観光特急「青の交響曲」は、全席座席指定のデラックス席(特別車両)です。
本記事の後半で詳しく紹介しますが、この列車の設備には、一人から乗車できる普通のデラックス席(通常のリクライニングシート)、二人用のツイン席(向かい合わせのテーブル席)、四人用のサロン席(向かい合わせのテーブル席)があります。ツイン席とサロン席は座っていて空間が広く感じるので、おススメです。
ただし、客席の定員が1号車と3号車の2両で65人と少なく、ツイン席が6組分、サロン席が5組分しかないため、なかなか予約が取りにくいです。

この列車に乗車するには、乗車券の他に特急券・特別車両券が必要です。吉野駅から大阪阿部野橋駅までの当該料金は、大人730円です(2023年4月時点)。乗車券込みでも片道2千円かからず、豪華な観光列車にしてはリーズナブルな価格設定だと思います。
特急券を購入できるのは、乗車1か月前の午前10時30分からです。予定が決まったら早く購入したほうが良いでしょう。事前に特急券を購入しなければならないのですが、全国できっぷを買えるJR線と違って、近鉄沿線でしか特急券を購入できないのが厄介です。考えられる購入手段は、
● 近鉄線の有人駅窓口で購入
● 近畿日本ツーリストなどの旅行会社で購入
● インターネット予約販売サイトでオンライン決済
です。クレカでオンライン決済できればチケットレスで乗車できて手軽ですが、そのほかの決済手段では窓口に出向く必要があります。

筆者は遠方に住んでいるため、事前に予約購入できず、乗車前日になって駅窓口できっぷを購入しました(今回は紙のきっぷを入手したかったので、あえてチケットレスを回避)。
余談ですが、おしなべて人当たりの良い近鉄の職員にあって、今回特急券を買った大阪阿部野橋駅の出札職員がいやに不親切だったのが忘れられないです。
大阪阿部野橋駅を午前中に発車する1便と、吉野駅を夕方に発車する4便は、やはり需要があります。そんなわけで、今回は席に余裕がある2便を選んで乗車することにしました。
いざ吉野駅へ!

2便:吉野駅 12:34分 →(近鉄吉野線・南大阪線経由)→ 大阪阿部野橋駅 13:51分
「青の交響曲」乗車当日、朝早い一般の特急列車で大阪阿部野橋駅から吉野駅まで先回り。吉野山の散策をせわしなく済ませ、12時少し前に吉野駅に到着。この地方の名産、柿の葉寿司を車内で食べたくて、駅前の売店で仕込んで持ち込みました。

吉野駅の出札窓口前には空席情報の表示がありました。昼に発車する2便の列車にはまだ空きがあって、夕方に発車する4便の列車は満席だとわかりました。この日の2便の列車は、結局満席にはならなかったようです。
青の交響曲の車両とご対面!

12時過ぎに吉野駅の改札口に着いた時には、すでに青の交響曲の車両(16200系)が到着しており、早めに写真を撮ることが可能でした。
発車案内板で先発の表示になったのは、発車の20数分前の12時10分頃でした。

車内に入れるのは、列車の発車10分前と案内されます。しかし、筆者が乗車した時は発車20分前にドアが開いて、車内に入ることができました。

車体の色は深い紺色で、吉野杉の深い緑色とよくマッチします。文字は金色の配色で、結構重厚感があります。英文の列車名「Blue Symphony」のデザインが、吉野の山深さに合っているように思えます。往年のブルートレインを彷彿とさせる配色です。

ホームから外を見た風景。山の緑と車体の色がよく調和していることが分かります。
満を持して車内へ

デッキの中は高級ホテルのようなインテリアで、豪華に見えました。外見も豪華に見えますが、車両内部はかなり手が入っていることを感じさせられました。

1号車の車内。横3列のデラックス席、座り心地がフカフカで快適です。座席の色が深い緑色で、見た目重厚感があります。普通のデラックス席には、普通の折り畳み式のテーブルがあるだけです。シートピッチと窓枠のサイズが一致していないので、席番によっては外の景色が見にくいことがあります。

ツイン席とサロン席には大きなテーブルが付いているので、2人以上で乗車する時は普通のデラックス席を取るよりもよいです(ツイン・サロン席の指名買いがおススメ)。

2号車はラウンジで、バーカウンターがあります。入口にラウンジの表示があるあたりが、ホテルをイメージさせられます。

2号車ラウンジのデッキには、この写真の通り小さなライブラリーとベンチが置いてあって、ちょっとした休憩を取ることができます。

ラウンジの内部。重厚な雰囲気のインテリアで、ゆったりとお茶を楽しめます。
バーカウンターではプリュムやマカロンといったスイーツセットや吉野の地酒の飲み比べセットを買えます。バーカウンターに買いにいって、商品を受け取ったらラウンジ内や客席で楽しむ形です。アルコールのメニューが豊富ですが、日中の列車だからか、飲んだくれている人はいなかったです(笑)。

車内の席に置いてある車内販売メニュー。このメニューを見てから2号車のラウンジに行くとよいかと思います。

車内でもらえる沿線ガイド。四季の観光案内が載っているので、もらっておくとよいと思います。乗車したときにはクリアファイルが売っていたので、購入してみました。

案内放送で、記念乗車証が2号車のラウンジでもらえることを知りました。実際にもらってみましたが、丸いコースターで、飲み物の下敷きになる代物でした。
車内でもらえる記念乗車証のデザインは、随時変わるようです。何がもらえるかは、乗車した時のお楽しみと考えていただきたいです。

座席でいただく柿の葉寿司。車内販売でも軽食程度のものはあるようですが、まとまった量を食べたいのであれば、外で買って持ち込んだほうが良いと思います。
吉野駅を発車してから
列車は定刻に発車して、大阪阿部野橋駅に向かって走行。1時間20分走って、終点の大阪阿部野橋駅に到着。吉野線と南大阪線は線形がそれほど良くないので、全体的にゆっくり走っている印象でした。
車内販売が席まで来るわけではないし、車掌が巡回する程度で、客席は静かでした。他の観光列車でありがちな乗客を楽しませるようなイベントや演出は特になかったです。
まとめ
大阪阿部野橋駅と吉野駅の区間を約1時間20分で結ぶ観光列車「青の交響曲」号。リーズナブルな料金で品の良い豪華な非日常空間を満喫できます。
ラウンジでいただけるスイーツやアルコールが欲張りな感じです。数ある観光列車の中でも、お酒を楽しめる列車は数少ないです。
座席の中でも、二人掛けのツイン席と四人掛けのサロン席の居住性がいけてますが、もともとの座席数が少なく、取りにくいです。予定が決まったら早めに特急券を買うのをおススメします。
特急券を対面で買えるのは近鉄沿線の駅と、エリアが限られます。近畿日本ツーリストなどの旅行会社やインターネットのオンライン予約サービスの利用を検討したいです。
加算料金としてのデラックス料金(特別車両料金)がわずか210円なので、乗車する時間帯が合えば、コスパの良い列車だと思います。
参考資料 References
● 「青の交響曲」公式ウェブサイト(近畿日本鉄道)2023.02閲覧
● 近鉄電車インターネット予約・発売サービス
改訂履歴 Revision History
2019年9月08日:初稿
2023年02月02日:初稿 再構成
2023年4月07日:初稿 修正
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