「新幹線eチケット」チケットレス乗車体験~少数者への配慮も望まれる~

新幹線E5系盛岡駅にて デジタル鉄(ネット)

2020年3月のダイヤ改正から開始した「新幹線eチケット」サービス。

東海道・山陽新幹線の「スマートEX」に類似したチケットレス乗車サービスが、JR東日本管内の新幹線(*)にもようやく導入されました。

筆者も、「新幹線eチケット」サービスを利用して、東北新幹線でのチケットレス乗車をさっそく体験してみました。

「新幹線eチケット」サービスは、デジタル化に適応できる大多数の人々にとっては便利なサービスである一方、高齢者や障がいを持つ人、外国人などの少数者にとっては、酷な面があるサービスといえます。

とても便利ですが、誰にでも使いこなせるような配慮が欲しいですね。

この記事では、「Apple PayのSuica」(iPhone)を使用して、東北新幹線盛岡駅から仙台駅までの区間をチケットレス乗車した体験をレビューし、課題点を洗い出します。

* 東北・(JR北海道)北海道・秋田・山形・上越・(JR西日本を含む)北陸新幹線

新幹線にチケットレス乗車するためには、スマホを含む交通系ICカードを用意します。その上で、ネット予約サービスの「えきねっと」上で、事前に乗車する列車の予約購入を行う必要があります。その詳細な内容や手順については、筆者が書いた以下の記事(↓)を参照してください。

領収書や紙のきっぷの発行方法については、以下の記事(↓)を参照してください。

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新幹線の改札口から入場(盛岡駅)

盛岡駅駅舎

「新幹線eチケット」サービスが開始してから4日目、2020年3月17日の朝、通勤ラッシュが収束した9時30分頃に盛岡駅に到着しました。

今回乗車するのは、盛岡駅10時07分発の「やまびこ52号」。盛岡駅始発で、仙台駅まで各駅に停車する列車です。

前売の「えきねっとトクだ値」料金、仙台駅まで停車しない速達タイプの列車の割引率が5%なのに対して、この列車は15%でした。少しでも節約したくて、この列車を選びました。

発車の約1時間半前に「えきねっと」から、乗車直前のリマインダーメールが届いていました。内容は次の通りです。

このメールがないと、座席番号を忘れそうです。

その場合、駅に「座席票発行機」があって確認できるといいますが、筆者はあいにく発見することができませんでした。

盛岡駅改札口

盛岡駅の南口改札には、在来線の改札口と新幹線の改札口が並んでいます。筆者は、右手の新幹線の改札口へ進みました。

あらかじめ登録しておいた「Apple PayのSuica」(iPhone)を、自動改札機にかざして入場しました。初めての利用だったので、エラーが出ないか心配でしたが、何事もなく通過できました。在来線を利用する要領と全く同じように、タッチして通るだけです。

この記事のように、iPhoneの場合は、「ウォレット」アプリから「新幹線eチケット」の使用ステータスが表示されます。一方、Androidスマホの「おサイフケータイ」アプリからは、何も表示されません。

新幹線自動改札口

東海道・山陽新幹線と違って、自動改札機からは「ご利用票」のような紙片が発行されることはなく、ただ通れるだけです。

手元のiPhoneに「新幹線」という表示が出てきたのが、唯一の反応でした。

iPhone上のステータスは「移動中」に変わりました。

えきねっとでの予約の際に改札通過メールの配信をするよう、あらかじめ設定しておいたので、改札を通過したタイミングで座席番号が記載されたメールが届きました。

これ、手元にあるのがスマホで、スマホで席番を確認できるからよいのですが、

スマホを持たない人でプラスチックの交通系ICカードで乗車している人にとっては、席番を忘れやしないかと、不安になるかと思います。

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盛岡駅始発の「やまびこ」52号に乗車!

盛岡駅新幹線ホーム

改札口を通ってから、列車が発着するホームに上がりました。盛岡駅のホームは、とても余裕があるように感じられます。

やまびこ号行先表示板

今回乗車するのは、「トクだ値」料金が適用になる普通車指定席。盛岡駅始発のやまびこ号でも、車両がE5系で、とても快適です。

E5系車内

盛岡駅での車内の様子。始発駅ということを勘案しても、3月という繁忙期にもかかわらず、乗客がほとんど乗っていませんでした。

仙台駅駅名標

盛岡駅を定刻で発車して、各駅に停車しながらゆっくり走り、約1時間20分で仙台駅に到着。

途中駅で少しづつ乗客が乗ってきたものの、満席には程遠い状態で仙台駅に到着して、ほとんどの乗客が仙台駅で列車を降りました。

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新幹線の改札口を出場(仙台駅)

仙台駅新幹線改札口

仙台駅に定刻に到着して、ホームから階段を下りて改札口へ。在来線との乗り換え改札口ではなく、新幹線専用の改札口です。盛岡駅に比べて、仙台駅は人が多かったです。

iPhoneを改札機にかざして出場しました。自動改札機からは、特別な反応はありませんでした。

手元のiPhone上のSuicaのステータスが、「移動中」から「使用済み」に変化しました。

詳細表示すると以下の通りです。

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「新幹線eチケット」を利用してみての雑感

ネットで指定席を予約してから、自動改札機を通過するだけ。

車内での検札も、指定席では省略。

とにかく、人と絡むことが一切ありません。他者とコミュニケーションを取りたくない人たちにとっては、最高のサービスだと思います。

「新幹線eチケット」サービス|鉄道会社にとってのメリット

「新幹線eチケット」サービスも、鉄道会社が提供するひとつのサービスです。サービス提供者である鉄道会社にとって何かと都合がいい面があるからこその、積極的な展開なのだと思います。

● 人件費の節約・出札業務縮小効果

一度情報システムを構築すれば人件費を節約でき、少子化時代の人材不足にも対応できます。

● 不正乗車の根絶

ICカードやスマホを使用するサービスなので、紙のきっぷと違ってごまかしようがありません(乗客目線では、スマホが万が一故障すると、不正乗車を疑われそうです)。

● 国鉄時代から引き継いだ運賃制度のレガシーの払拭

通しの乗車券という概念を払拭し、1乗車ごとに運賃料金を徴収する考え方です。

単純な都市間の移動であれば事足りますが、多くの駅を周遊旅行する人にとっては、運賃をぶつ切りされると、遠距離逓減制(※)のメリットを享受しにくくなります。乗客にとって運賃が割高になり、利用の仕方次第では都合が悪いサービスだと思います。

※ 遠距離逓減制:乗車キロ数が長いほど、キロ当たりの運賃単価が安い仕組み

また、途中下車という概念もないので、周遊する旅行者にとっては不利に作用するように思えます。

「新幹線eチケット」サービスの課題

「新幹線eチケット」サービスの課題も次の通り考えられます。少数者である筆者の立場からすると、おしなべて少数者が社会から排除される傾向がこのサービスにも現れているように感じます。

● 「えきねっと」の操作やスマホの扱いなどに慣れないと利用しにくいこと

操作が簡単そうに思えますが、万人にとって簡単なわけではありません。

● 鉄道利用に詳しくない人にとって、得られる情報が少ないために混乱すること

ネットサービスは基本自己解決しなければならないので、職員による援助が必要な人にとっては厳しいです。電話サポートも混雑してつながりにくいし、外国人にとっては言語の問題もあります。

● 新幹線の前後に在来線に乗車する場合、運賃が割高になる可能性があること

通しの乗車券を利用したほうが、運賃が割安になる可能性が多くあります。

「新幹線eチケット」のサービスには、解決されなければならない課題も多くみられます。乗客としては、サービスをうまく使い分けて、賢く利用するといいのかなと思います。

参考資料 References

● 「えきねっと」JRきっぷご利用ガイド

https://www.eki-net.com/top/jrticket/guide/reserve/e-ticket.html

改訂履歴 Revision History

2020年3月21日:初稿

2022年6月03日:初稿 再構成

2022年6月22日:初稿 修正

2023年02月14日:初稿 修正

2023年4月07日:初稿 修正

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