JR東日本・北海道内の新幹線・在来線特急列車のネット限定割引料金「えきねっとトクだ値」。予約が取れて、来たる旅行が楽しみという方が多いのではないでしょうか。
空きがある限り、乗車日近くになるまで購入できる通常の「えきねっとトクだ値」の他に、乗車日の14日前までに予定が決まれば、より安く購入できる「お先にトクだ値」もあり、とてもおトクです。乗車日の21日前まで購入できる「お先にトクだ値スペシャル」が限定発売されることもあります。
「えきねっとトクだ値」料金はおトクな分、複雑な条件があります。例えば、悪天候や予期しない状況で旅行日程を変更したり、キャンセルしなければならなくなった場合も考えられます。その際にかかるキャンセル料についても計算が複雑なため、その内容をあらかじめ知っておくと安心です。

料金が安い分、いろいろな条件がありますよね。

はい。紙のきっぷ受け取り後は、変更やキャンセルにかなり制約があります。
この記事では、在来線特急列車で「えきねっとトクだ値」料金を利用する場合の、通常のきっぷと比べ複雑なキャンセル料(払戻手数料)について、計算実例を交えつつお話ししたいと思います。
きっぷの媒体で異なるキャンセル料のワナ

旅行を予定する時には、悪天候や災害、事故などで突如キャンセルしなければならない事態を、転ばぬ先の杖として常に想定しておきたいものです。
「えきねっとトクだ値」料金で列車に乗車する場合、紙のきっぷを受け取る前であるか、受け取った後であるかで、キャンセル料(払戻手数料)が大きく異なります。
「新幹線eチケット」チケットレス乗車・「チケットレス特急券」の場合
新幹線を利用する場合、「新幹線eチケット」を原則チケットレスで利用することになります。紙のきっぷの受け取りは、通常必要ありません。
また、在来線特急列車の「トクだ値」料金には、乗車券付きの他、特急券だけの「チケットレス特急券」があります。これも、紙のきっぷの受け取りはありません。
紙のきっぷを受け取らない限り、1人1区間「320円」の払戻手数料を支払うことで、ネット上で事なくキャンセルをすることができます(*)。また、列車の出発前であれば、乗車する列車を何回でも無料で変更することができます。
「紙のきっぷ」を受け取って乗車する場合
しかし、乗車券付きの「トクだ値」で在来線特急列車を利用する場合、乗車する前に必ず「紙のきっぷ」を受け取らなければならないです。紙のきっぷを受け取った後、急遽変更やキャンセルをしなければならなくなった場合が事なのです。。。
先にお話しすると、「新幹線eチケット」や在来線特急列車を問わず、「えきねっとトクだ値」料金適用の「紙のきっぷ」を受け取った後にキャンセルする場合の、1人1区間の払戻手数料は、次表の通りです。
● 紙のきっぷの払戻手数料
払戻手数料 | 手数料の原則金額 | 最低金額 | 留意点 |
特急券部分 | 料金に割引率を乗じた額 (a) | 340円 | 最低金額に満たない場合は、最低金額分かかる |
乗車券部分 | 運賃に割引率を乗じた額 (b) | 220円 | 最低金額に満たない場合は、最低金額分かかる |
合計 | (a)+(b) の合算金額 | 560円 | 算出結果高額な方を適用 |
通常のきっぷと比べ、計算方法が複雑なことがお分かりいただけるかと思います。実際の払いもどしに当たっての計算実例については、本文を読み進めていただきたいと思います。
* 本記事では、えきねっと特典外となる列車の予約の場合のキャンセル料については考慮しないこととします。

私がこの記事を書くに至った背景を、これからお話しします。
筆者のエピソード~台風でキャンセルしたいけど~
2021年7月以降、「えきねっと」で予約したきっぷの決済タイミングが変わり、予約成立後早期の決済が必要になりました。本記事の初稿を執筆した当時は、乗車直前まで決済を保留することも可能だったため、当時と現在では背景が異なります。
そのため、ここでご紹介するエピソードは現状とかみ合わない部分がありますが、きっぷをキャンセルする際、キャンセル料のジレンマに悩むことは皆さまお変わりないことと思料します。こぼれ話としてお読みください。

筆者が2020年10月のある週末に、山梨県内でぶどう狩りを楽しみたいと思い、新宿駅から甲府駅行き特急かいじ号のきっぷを50%割引の「お先にトクだ値スペシャル」料金で予約していました。
2021年の「えきねっと」リニューアル以前は、予約を取る際「駅で受け取る」を選択できました。その場合、駅で紙のきっぷを受け取る時点で、現金もしくはクレジットカードで決済を行うことも可能でした(当時は決済期限が設定されていませんでした)。
その場合、決済が未済ならばキャンセル料が発生しないため、キャンセルするならば、紙のきっぷを受け取るまでにネット上でキャンセルしたほうがよいということがありました。
しかし、台風が接近しているけど、一体運休しそうかしなさそうか予想が全くつかない中で、今回は乗車する日よりかなり前に紙のきっぷに引き換えてしまったのでした。
紙のきっぷを受け取ってクレジットカードに課金されたタイミングで、東海道新幹線など他の線区では、台風でのキャンセル料は「無料」とアナウンスされたのです。タイミングが大変悪く、乗車予定だった特急「かいじ」号のキャンセル手数料についても、無料で済むかどうか気になったのでした。
JR東日本管内の列車については、台風の影響での旅行取りやめでの払戻手数料の取り扱いについてアナウンスがなかったため、キャンセル料が完全に乗客負担になってしまうわけです。
結局は列車が運休にならず、予定通りに乗車できて払戻手数料は問題にならなかったのですが、もしも乗客自身の判断できっぷ受け取り後にキャンセルを決めた場合の手数料額が問題です。
「えきねっとトクだ値」紙券受取後の払戻手数料の計算方法
現行の「えきねっと」では、トクだ値料金での申込完了直前に、以下のようなメッセージが表示されます。この記事にて詳説する内容が端的に書かれていますが、よく理解した上で進めたいものです。

紙のきっぷを受け取るまでは、ネット上での乗車日付などの変更について手数料は発生しません。
しかし、駅の指定席券売機やみどりの窓口で一度紙のきっぷを受け取ってしまうと、その後変更は一切できなくなります。キャンセルとした場合に高額の払戻手数料がかかってしまうことが盲点で、注意が必要です。
【払戻手数料の計算実例-1】
一つ設例として、筆者が実際に乗車した特急「かいじ」号で、50%引き(5割引き)の「えきねっとトクだ値スペシャル」料金をキャンセルし、払い戻した場合の料金を考えたいと思います。

券面には「払戻不可」と記載されていますが、発車時刻以降という意味です。発車時刻前なら、以下の手数料で払い戻しできます。
当該列車の発車時刻前の払い戻しには、発売金額に対して、割引率分の払戻手数料が発生することになります。
この設例の場合、新宿駅(東京山手線内)から甲府駅までの50%引きの運賃・料金1,940円に対し、割引率である50%の払戻手数料がかかることになります。筆者がJRに直接確認したところでは、トクだ値料金の乗車券部分と特急券部分にそれぞれ50%の手数料がかかるそうです。
【トクだ値50】 | 発売金額(a) | 割引率(b) | 算出金額(a)X(b) | 最低金額(c) | 払戻手数料 |
乗車券部分 | 1,150円 | 50% | 570円 | 220円 | 570円 |
特急券部分 | 790円 | 50% | 390円 | 340円 | 390円 |
合計金額 | 1,940円 | *** | 960円 | 560円 | 960円 |
本設例では、{(a)X(b)} > (c) と導き出せます。
そのため、算出結果(a)X(b)の960円が、そのまま払戻手数料として適用されます。

ここで、筆者が混乱してしまったのは、
新宿駅から甲府駅までの所定運賃・料金(通常期)3,890円のうち、
● 所定金額の50%分である1,940円(端数切り捨て後)が払戻手数料として課されるのか
● 実際の発売金額1,940円の50%分である960円(端数切り捨て後)が課されるのか
ということでした。キャンセルすると1円も戻ってこないのかなと疑問に思ったわけです。
結果としては後者で、発売金額に対して概ね50%の払戻手数料が課されることになります。発売金額1,940円分まるまる差し引かれてゼロになってしまうことはないことが分かり、胸をひと撫ですることができました。
本設例で「50%」と説明した部分は、それぞれのケースで実際の割引率に置き換えて計算してください。
※払戻手数料の最低金額は、上記にかかわらず乗車券部分220円、特急券部分340円(合計560円)
「えきねっとトクだ値」料金適用の「新幹線eチケット」紙券の払いもどし実例
新幹線を「えきねっとトクだ値」料金で利用する場合、原則は「新幹線eチケット」でチケットレス乗車します。しかし、何らか事情があって、紙のきっぷを発券してからキャンセルしなければならないこともあろうかと察します。
その場合の払戻手数料の算出方法は、上述した在来線特急列車におけるトクだ値料金のケースと同じです。
【払戻手数料の計算実例-2】
ここでは、大宮から宇都宮までの新幹線特急券(乗車券付き)であるトクだ値料金の紙のきっぷを乗車当日にキャンセルする場合の手数料をみてみたいと思います。紙のきっぷを発券してしまった場合の手続きは、駅のみどりの窓口に出向いて行います。

15%引きの「トクだ値15」料金の内訳は、乗車券部分1,130円、特急券部分1,870円です。
1枚にまとめて発券されたきっぷですが、乗車券部分には最低220円の払戻手数料、特急券部分には最低340円もしくは料金額の30%分(乗車前日、当日)の払戻手数料がそれぞれかかります。ただし、今回の場合は「トクだ値」料金なので、15%の割引率をかけた払戻手数料が適用されます。
【トクだ値15】 | 発売金額(a) | 割引率(b) | 算出金額(a)X(b) | 最低金額(c) | 払戻手数料 |
乗車券部分 | 1,130円 | 15% | 160円 | 220円 | 220円 |
特急券部分 | 1,870円 | 15% | 280円 | 340円 | 340円 |
合計金額 | 3,000円 | *** | 440円 | 560円 | 560円 |
本設例では、{(a)X(b)} < (c) と導き出せます。
そのため、最低金額(c)の560円が、払戻手数料として適用されます。

きっぷの割引率が30%や50%となると、紙のきっぷの払戻手数料がさらに高額となることをお分かりいただけるかと思います。
在来線特急列車のチケットレス乗車(eチケット化)が課題
このように、えきねっとトクだ値料金を利用する際、在来線特急列車に乗車する場合でも、「新幹線eチケット」を利用する場合でも、紙のきっぷを受け取るのは慎重であってほしいです。可能な限り、旅行が確実になった時点で受け取るようにすると、この記事の事例のような葛藤を感じることはないはずです。
今回の事例では、在来線特急列車の乗車前に必要な紙のきっぷの受け取りに際し、万が一受け取り後にキャンセルした場合の手数料額に関し、狂騒曲があったわけです。
このような問題は、「新幹線eチケット」のチケットレス乗車では発生しえません。在来線特急列車でも予約・変更・キャンセルがネット上で完結し、チケットレスで乗車できるようになって、紙のきっぷという媒体を発生させないようにするのが、今後の課題であると筆者は考えています。
もっとも、乗車券部分の割引がない「チケットレス特急券」ではなく、あくまでも「乗車券付き」チケットレスきっぷの選択肢も残してほしいものです。
参考資料 References
● 「えきねっと」JRきっぷ利用ガイド(JR東日本)

改訂履歴 Revision History
2020年10月11日:初稿
2022年02月08日:初稿 加筆・修正
2022年5月10日:第2稿
2022年5月12日:第2稿 本文修正
2022年5月17日:第2稿 修正
2022年5月26日:第2稿 タイトル修正
2022年6月21日:第2稿 修正
2022年8月24日:第2稿 修正
2023年02月06日:第2稿 修正
2023年4月07日:第2稿 修正
2023年7月04日:第2稿 修正
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