北海道、道東の釧路市の北に位置する「釧路湿原国立公園」。その東縁を走るJR釧網本線の車窓からは、釧路湿原を眺めることができます。
釧網本線では、普段は1両編成の普通列車が1日数往復するだけです。しかし、釧路湿原を観光する手段として貴重なトロッコ列車が、毎年GWから10月前半にかけて運行されます。その列車は「ノロッコ」と呼ばれ、釧網本線を走る列車に関しては「くしろ湿原ノロッコ」号となります。
釧網本線を走る「くしろ湿原ノロッコ」号の指定席車両は、オープンエアーの展望車両です。窓際の席が取れると、気持ち良い風を浴びながら、すがすがしい旅ができるかと思います。
筆者は、2020年に「くしろ湿原ノロッコ」号に、往復で乗車しました。あいにく雨に祟られてしまいましたが、貴重な機会になりました。

釧路湿原を面で満喫できます。30年以上走っている人気列車です!
この記事では、トロッコ列車の「くしろ湿原ノロッコ」号に乗車するためのきっぷの買い方、事前準備や、実際に乗車した体験を皆さまと共有したいと思います。
最近、ネット予約「えきねっと」にて、チケットレスの指定席券を購入できるようになりました。現地で急に指定席に座りたくなったような場合にも購入できるので、便利になりました(空きがあるのが前提ですが)。
「くしろ湿原ノロッコ」号の概要・運行区間

JR北海道には、客車列車をトロッコ列車として改造した「ノロッコ」があります。ディーゼル機関車で牽引されるトロッコ列車で、観光の目玉です。「ノロッコ」は、富良野線の他、この記事で取り上げる釧網本線を走ります。
オープンエアーのトロッコ車両(展望座席:指定席)3両と、普通列車の車両をベースにした自由席車両1両で構成されており、のんびりとした汽車旅を楽しめます。
そのうち、釧網本線を走るこの列車は、釧路湿原の中を「ノロノロ」とゆっくり走ることから、「くしろ湿原ノロッコ」号と呼ばれます。
毎年GWから10月前半までの時期に、通常の日は一日1往復、多客期には一日2往復運行されます。
列車の運行区間は、釧路駅(北海道釧路市)から塘路駅(とうろえき:北海道標茶町)の27.2キロの区間が基本です。日中、片道1時間弱かけて走ります。
春秋には、日数は少ないものの、塘路駅からさらに先の駅である川湯温泉駅(北海道弟子屈町)まで延長運転されることがあります。
「くしろ湿原ノロッコ」号の座席:自由席と指定席

「くしろ湿原ノロッコ」号には、普通列車仕様の自由席客車1両と、トロッコ車両の指定席客車3両が連結されています。
自由席車両に乗車するには、フリーパス類を含む乗車券のみで乗車できます。一方で、指定席車両に乗車するには、乗車券に加え、「指定席券」を購入する必要があります。
自由席(1号車)の定員は、約70人です。「くしろ湿原ノロッコ」は、非常に人気のある列車のため、キャパシティの少ない自由席には、乗客が乗りきれなくなる恐れがあります。個人的には、指定席券を確保することをおススメします。
指定席は、2号車から4号車の間の3両で、定員は200名弱です。6人掛けのボックスシートと、2人掛けのペアシートがあります。
余談ながら、筆者が乗車した2020年9月時点では、座席を間引いて発売され、フルキャパシティーのおおよそ60%の120席程度でした。
席番表
下図は、筆者が作成した指定席車両の席番表です。席番の位置関係だけを簡略化して描画したため、実際の座席位置とは異なることを、あらかじめお断りします。

いずれの席も狭く、6人掛けのボックスには4人程度で乗車すると快適です。また、2人掛けのペアシートは、窓側にもボックスシート側にも座席の向きを変えられますが、例によって狭い座席です。見知らぬ人との相席は、厳しいかと思います。
釧路湿原側の席は、常に「A席」です。2人で乗車する際には、例えば5番と6番のA席をとるとよいでしょう。
席番表の拡大版は、記事最後のコチラをご覧ください。
情報源
「くしろ湿原ノロッコ」号については、JR北海道の公式ウェブサイトに詳しい記載があります。運行区間や運行日などの情報は、当該公式ページから得ることになります(URLは、本記事文末を参照)。
「くしろ湿原ノロッコ」号のきっぷの準備方法

「くしろ湿原ノロッコ」号の醍醐味を満喫するためには、トロッコ車両である指定席車両に乗車することになります。指定席車両には、あらかじめ指定席券を購入しておきます。
この列車自体、観光資源になっていて、結構人気があります。思っている以上に、指定席がとりにくいかと思います。予定が決まり次第、早めに指定席券を購入することをおススメします。特に、釧路湿原側のA席は、すぐに埋まってしまいます。
先に申し上げた通り、「ノロッコ」号の展望座席は、いずれもかなり狭めです。大柄な男性が定員で座ると、かなり圧迫感があります。混雑しておらず可能であれば、間隔をあけて座席指定するとよいかと思います。
指定席券のお値段
通年:大人840円(小児420円)
指定席券の発売開始時期・発売箇所
乗車1か月前の日の朝10時00分に座席の発売が開始されます。指定席券を購入する箇所・手段によって開始時期が以下の通り微妙に異なります。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10時00分~
※ 塘路駅には、みどりの窓口はありません。あらかじめ他の駅で指定席券を購入しておくか、チケットレス券をえきねっとから購入します。
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10時10分~
他の購入手段よりも、開始が10分遅いことに注意してください。
指定席券売機できっぷを買うための操作方法については、筆者の別の記事(↓)をヒントにしてみてください。
● ネット予約「えきねっと」【シートマップ表示可】
乗車日の1か月と7日前の14時00分~【事前受付開始時刻】
実際に座席が確保され、予約が成立するのは、乗車日1か月前の10時00分以降です(取れない場合もあります)。
「のってたのしい列車」予約メニューから、「くしろ湿原ノロッコ」列車を選択することができます。もちろん、一般の検索画面から発駅名、着駅名、日にち、発車時刻を自分で入力して、表示させることもできます。

「くしろ湿原ノロッコ」号の場合、現在は、従来の指定席券(紙のきっぷ)に加え、チケットレス指定席券を選択可能です(クレカでのオンライン決済要)。

シートマップを表示し、好きな席を選べます。

チケットレス券を購入する場合、クレジットカードを使用してオンライン決済が必要です。紙のきっぷを購入するには、クレカ決済(オンライン決済・駅での決済)の他、現金やコンビニ払いもオッケーです。

※ えきねっとで座席をとった場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。なお、チケットレス券については、受取不要です。
「えきねっと」の事前受付に関する詳しい情報は、筆者の別記事(↓)を参照してください。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券は、以下の通りです。

乗車券について
「くしろ湿原ノロッコ」号に乗車するためには、上記指定席券のほか、乗車区間を含んだ乗車券が必要です。普通乗車券の代わりに、各種フリーパス類を利用することも可能です。また、期間限定の「青春18きっぷ」「北海道・東日本パス」「大人の休日俱楽部パス」(*)を使用してもオッケーです。
* 「大人の休日俱楽部パス」では、「くしろ湿原ノロッコ」の指定券(指のみ券)を回数の枠内で、パス料金込みで取ることができます。
きっぷが取れたら。。。
春から秋にかけて走る「くしろ湿原ノロッコ」号の展望車両は、オープンエアーの車両です。そのため、天気の影響をモロに受けます。
晴れていれば、最高に心地よい風を浴びられると想像します。筆者が乗車した時には、見事に雨に降られました。天気に恵まれるかどうかで、乗車体験の質には、天と地ほどの差があります。
雨天時には、ガラス窓が設けられます。とはいえ、にわか雨に降られることや、風が強いことなどが考えられます。風除けの上着を持っていると安心だと思います。

ここからは、筆者の乗車体験記です!
釧路駅から「くしろ湿原ノロッコ」2号に乗車!
2号:釧路駅 11:06分発 →(釧網本線経由)→ 塘路駅 11:54分着

2020年9月末の土曜日の午前中。この日は台風の余波であいにくの大雨でした。
宿泊していたホテルから釧路駅に向かい、着いたのが午前10時過ぎ。発車前の時間を持て余すかと思っていましたが、「くしろ湿原ノロッコ」号に乗車しようという人たちが、すでに多く駅に入っていました。

釧路駅には自動改札機が設置されており、いつでもホームに入場できます。
自由席に乗車する場合には、10時過ぎにはホームに入って、乗車口に並ぶことをおススメします。駅の待合室が狭いので、指定席に乗車する場合は、発車時刻が迫ってから、駅にきてもよいかと思います。

筆者が、3番線ホームに入ったのが、10:35分頃でした。ちょうど車内に入れるタイミングで、自由席に乗車する人の長い列がみられました。

釧網本線の網走駅方にディーゼル機関車のDE10が先頭で走り、前方が1号車の自由席客車、後方が4号車の指定席客車です。

列車の最後尾が、釧路駅方の4号車です。「くしろ湿原ノロッコ」号の終点、塘路駅から釧路駅に折り返してくるときには、4号車の客車が先頭になって走るため、客車にもかかわらず運転席があります。

ノロッコ号のエンブレム。走り出してからすでに、30年以上経つそうです。観光列車としては古い部類に入るかと思います。

客車側面に掲げられた行先標(サイドボード)。北海道の普通列車ではいまだに鉄板製の行先標がみられて、懐かしさを覚えます。

4号車の客室。写真の先のほうが釧路駅方にあたり、運転室があります。釧路湿原側にボックスシートがあり、逆側にペアシートがあります。
ボックスシートが良席であることは言うまでもありませんが、その席番の振り方が不規則なので、事前に席番表を確認することをおススメします。
ボックスシートの窓側がA席、中間がB席、通路側がC席。1つのボックスに6人座るのは正直狭い感じがするので、4人が座るくらいがちょうどよいかと思います。ペアシートは、釧路湿原側にも、その反対側にも背もたれの向きを変えられます。
2人で窓側のボックス席を取る場合、例えば1番と2番のA席を取ると、窓側で向かい合わせで座れる最良のパターンになります。一般的なボックス席では、A席とD席が向かい合わせになりますが、ノロッコ号は違うわけです。
公式ウェブサイトの席番表は、以下のURLの通りです。
https://www.jrhokkaido.co.jp/travel/kushironorokko/zaseki.pdf

4号車の車両番号は「オクハテ510-1」。「オ」が客車、「ク」が運転台、「ハ」が普通車、「テ」が展望車の意味ですが、こんな車両形式は、よそでは見られないと思います。WIFIサービスもあるようです。

4号車の乗降口。タンチョウとエゾシカがいて、楽しく記念写真を撮れると思います。

2号車には、簡易なサービスカウンターがあります。

1号車は自由席の客車ですが、展望車ではなくて一般の客車です。車両中央がボックスシート、出入口近くがロングシートです。発車間際では、好きな席に座れないこと必至です。
列車が発車し塘路駅へ
11:06分に釧路駅を定刻に出発。大雨の中、一路塘路駅に向けて走り出しまし。
列車が入線した頃には人が少なかったですが、発車時刻には指定席車両にも大勢の人が乗ってきて、指定席として販売されている席がほぼ満員でした。
当時、コロナの影響で列車がもっと空いているかと思いましたが、1か月前に指定席券を買った時でさえ、思ったように席番指定できなかったほど席が埋まっていました。この列車の人気ぶりや好調さを語っているかと思います。
途中、釧路湿原駅までは通常の速度で走り、釧路湿原駅で乗客を降ろしてからはゆっくりスピードで走りました。遠矢駅を過ぎて国立公園に入る頃に、釧路川と沿って走るようになり、タンチョウやエゾシカがみられることがあるということでした。雨でなければオープンエアーで風景を堪能できたのですが、この日はガラス窓が上がっていて、残念でした。

車掌さんが車内を巡回してきて、ノロッコ号の乗車証明書をくれました。この写真のものは2020年度のものですが、ボール紙でしっかりできています。

終点の塘路駅には、定刻の11:54分に到着。
塘路駅到着の後
「くしろ湿原ノロッコ」2号が塘路駅に到着してからとれる行動パターンとして、次が考えられるかと思います。
● 車に乗って他の目的地に向かう
● そのまま折り返しの「くしろ湿原ノロッコ」1号に乗車して釧路駅に帰る
● その後続の普通列車で釧路駅に帰る
塘路駅で降りてから、後続の網走駅行き普通列車を待つのは時間が長すぎて、現実的ではないような気がします。

塘路駅の駅舎。中に喫茶店が入っていますが、撮影はご遠慮ください、ということ。外からの写真を載せました。駅舎の中にはきっぷうりばはないので、指定席券を購入することはできません。

先頭の4号車客車。客車が先頭、ディーゼル機関車が最後尾から押して走行する形になります。
筆者は、折り返しの1号で、釧路駅まで帰ってきました。

雨に濡れた釧路川の風景。

帰りの列車の乗車証明書(2020年度版)。行きのものとは配色が若干異なりますが、同じサイズです。
Appendix:「くしろ湿原ノロッコ」号席番表
(2号車)

(3号車)

(4号車)

参考資料 References
● 「くしろ湿原ノロッコ」号 ウェブサイト(JR北海道)
改訂履歴 Revision History
2020年10月14日:初稿
2022年8月01日:第2稿
2022年8月03日:第2稿 加筆
2023年02月06日:第2稿 修正
2023年4月08日:第2稿 修正
2023年5月19日:第2稿 修正
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