「大人の休日俱楽部」会員本人が購入できる割引きっぷの経路は、必ずしもJR線の区間だけで完結させなければならないわけではありません。
あくまでもJR東日本・北海道管内ですが、条件を満たせばJR線以外の連絡社線を乗車券に含めることが可能です(ただし、当該連絡社線の区間は割引なし)。したがって、JR他社の区間を含められるという意味ではありません。
筆者も、大人の休日俱楽部の会員となってから2回目の乗り鉄用に、旅程の途中に他社線を挟む「通過連絡運輸」の乗車券を実際に購入してみました。
この記事では、連絡運輸の制度を活用し、他社線区間を含む経路を自ら運賃計算し、実際に「大人の休日俱楽部」割引きっぷを購入した体験をお話しします。そして、そのきっぷで「谷川岳もぐら」号や「越乃Shu*Kura」号に日帰りで乗車した、楽しい道中をご紹介したいと思います。
この記事では、上級クラスの運賃計算テクを使用しており、意図せずマニアックな記事に仕上がりました。一般の方には、記事の内容が難解に感じることを、あらかじめお断りします。

最初に、今回の乗り鉄に使ったきっぷのお話です。ちょっと難しい内容です。
自社線区間に連絡する他社線の区間を含めて一枚の乗車券を発行することを「連絡運輸」といいます。また、他社線の区間を経路の途中に含めて前後の自社線区間の運賃を通しで計算することを「通過連絡運輸」といいます。
「大人の休日俱楽部」割引における連絡運輸
冒頭で申し上げた通り「大人の休日俱楽部」割引が適用される乗車券の経路は、条件を満たせば、JR線以外の他社線区間をJRの乗車券に含めることができます(JR東日本との連絡運輸および通過連絡運輸の契約がある社線に限る)。
例えば、
● 千葉駅ー(総武本線・中央本線)ー大月駅ー(富士急行)ー河口湖駅【往復で割引適用】
● 高崎駅ー(上越線)ー宮内駅ー(信越本線)ー直江津駅ー(えちごトキめき鉄道)ー上越妙高駅ー(新幹線)ー高崎駅【片道でも割引適用】
の2例とも、JR線を合計で201km以上乗車することになるため、JR線の区間について運賃、料金の割引を受けられます(他社線区間である富士急行線、えちごトキめき鉄道線については割引なし)。
その場合、JR線の通算キロに対して「大人の休日俱楽部」割引を適用し、その上で無割引の他社線運賃を加算します。
※ 連絡運輸において他社線の運賃計算キロと合わせて201km以上となる場合であっても、割引が適用されるのは、あくまでもJR線区間が201km以上含まれる場合に限られます。
今回の乗り鉄で使った「大人の休日俱楽部」割引きっぷ
この記事においても、前回(通算1回目)の乗り鉄に続き、
● 連続乗車券
● 通過連絡運輸
● 「大人の休日俱楽部」割引が適用されること
の3条件を同時に満たす旅程を考えてみました。
今回は、以下の通り、えちごトキめき鉄道の区間を含めようと思いました。しかし、えちごトキめき鉄道を含めると連続乗車券とすることができないため、片道か往復乗車券で経路を組むことになります。
大宮駅ー(高崎線)ー高崎駅ー(上越線)ー宮内駅ー(信越本線)ー直江津駅ー(えちごトキめき鉄道)ー上越妙高駅ー(新幹線)ー大宮駅

これは一見、連続乗車券が成立しそうな経路ですが、上述の理由のため、惜しいところで成立しません。
したがって、上記経路のいずれかの駅で打ち切って、運賃計算を行います。ここで留意すべきなのは、「大人の休日俱楽部」割引適用の区間のみ、料金券も割引になる点です(料金券については距離の制限なく割引が適用されます)。
いろいろと検討した結果、最終的に以下の通り、2組の片道乗車券を作ることにしました。
詳しい運賃計算の過程については、以下の記事で詳説したいと思います。
【片道1(無割引)】大宮駅ー(高崎線)ー高崎駅ー(上越線)ー井野駅

【片道2(「大休05」割引適用)】井野駅ー(上越線)ー宮内駅ー(信越本線)ー直江津駅ー(えちごトキめき鉄道)ー上越妙高駅ー(新幹線)ー大宮駅

井野駅(群馬県高崎市)は、高崎駅から上越線に入り、2つ目の駅です。この経路の場合、上越妙高駅(新潟県上越市)からの新幹線特急券には、大人の休日俱楽部割引が適用されます。「片道2」の乗車券上には、大人の休日俱楽部割引5%が適用された意味である「大休05」が表示されています。
帰りの新幹線特急券に割引を適用させるためには、ベースとなる乗車券にも割引が適用されていなければなりません。そのため、新幹線乗車区間の途中駅で運賃計算を打ち切るのは、あまり現実的とはいえません。その代わり、本事例では、ゆきの在来線乗車区間内で運賃を打ち切りました。
経路全体を連続乗車券にできないことで、払戻手数料の件数増加や割引証(学割証やJR乗車券購入証)の必要枚数増加のデメリットが生じます。
そして今回の場合、部分的に「大人の休日俱楽部」割引を適用できない区間が生じるデメリットが追加されます。

ここからは、「谷川岳もぐら」と「越乃Shu*Kura」の楽しい乗車体験記です!
快速「谷川岳もぐら」号で乗り鉄を開始!
高崎・上越線:大宮駅→越後湯沢駅
谷川岳もぐら号:大宮駅 9:36分発 →(高崎線、上越線経由)→ 越後湯沢駅 13:32分着

臨時快速列車「谷川岳もぐら」号と「谷川岳ループ」号は、485系「リゾートやまどり」号用の車両で、大宮駅(さいたま市大宮区)から越後湯沢駅(新潟県湯沢町)まで通しで乗車できる列車でした。
下りの「谷川岳もぐら」号では、地下深くにある土合駅(群馬県みなかみ町)に30分間停車して駅の探訪を楽しめます。そんなこともあってか、若い鉄道ファンを中心に大変人気のある列車です。
「リゾートやまどり」号用485系電車は、2022年10月に引退しました。そのため、臨時快速列車「谷川岳もぐら」号および「谷川岳ループ」号は、2022年下期以降特急列車に格上げされました。ただし、特急列車らしく停車駅が少なく、所要時間も短いダイヤになりました。。
2021年にリニューアルされる前の「えきねっと」では、予約を取るのになかなか歯が立たなかったです。「えきねっと」がリニューアルされた直後の今回、割と余裕で指定席券を取ることができました。

乗車当日に列車が出発する大宮駅に到着したのが、朝の9時過ぎ。
ランチとしていただく駅弁を仕込んでから、7番線ホームへ。それから少し経った9時20分に、この列車が入線してきました。間際まで入線しない列車が多い中で、この列車は定刻の16分前の入線で、時間的に余裕がありました。大宮駅の7番線には、この列車に限らず、いろいろな列車が発着するので、心躍る場所です。

大宮駅在来線ホームにある発車案内表示で見かけるのは、通常高崎駅か前橋駅までです。この瞬間「越後湯沢」と表示されているのが、非日常感であふれています。

485系電車の「リゾートやまどり」編成。中之条駅(群馬県中之条町)に向かう本来の「リゾートやまどり」号の運行がない中で、各地への運行で活躍している車両です。
かなり年季が入ってきていて、故障箇所がぼちぼちと。車両の老朽化で、そろそろ見納めかもしれないと感じました。

この編成の良さが、1列3席配列の余裕ある車内空間。長距離を移動するにはもってこいの車両です。しかし、車両デッキへの扉や天井の照明切れなどの故障が目立っていたので、そろそろ寿命のような気がするわけです。

ランチの時間帯を挟んで約4時間の乗車時間がある長距離列車ということもあって、車内でランチを取れるように駅弁を用意しました。おぎのやさんの「峠の釜めし」を大宮駅でも購入できることを知って、迷わずチョイスして、車内で楽しみました。
大宮駅を出発してから高崎駅までの区間では、先行の普通列車を追い抜くことなく、ゆっくりと走りました。高崎駅から上越線に入ったところで、快速列車として速度が上がりました。

渋川駅(群馬県渋川市)を過ぎて、山間部へ。上越線は車窓風景がいい線区ですが、利根川を渡る橋梁の風景がステキです。
水上駅で乗務員が交代して、この列車のハイライトの区間に入りました。
湯檜曽駅(群馬県みなかみ町)で3分間停車した後、12時20分に土合駅に30分間停車。「地上に上がるまで486段の階段があり、10分から20分かかります」とアナウンスがあったのですが、これが予想よりもハードでした。

土合駅の下り線ホームに停車中の列車。普通乗車券に加え、指定席券があれば乗車できる列車ということもあって、客層は中高生や大学生の男子学生と思しき若者たちが大半でした。鉄オタ御用達列車であるのは、間違いありません。

土合駅の駅名標は大変シンプルです、発光しないのが、地下駅にしては残念です。

「大人の休日俱楽部」会員である年代にさしかかった筆者も、体に鞭を打って、土合駅の階段を駆け上がりました。486段の階段を約10分で登りきりましたが、後日の体の疲労が半端ではなかったです。

普段は人がいない土合駅の階段も、臨時列車停車中は多くの人で賑わっていました。

土合駅を出発してから終着の越後湯沢駅に着くまでの40分間、列車はゆっくりと走りました。新清水トンネルを抜けた土樽駅から、越後湯沢駅までの車窓風景の美しさは群を抜いていて、筆者も好きな場所です。初秋という季節柄もあって、稲の収穫前の黄色い稲穂がとても美しかったです。
上越線:越後湯沢駅→越後川口駅
普通1739M:越後湯沢駅 14:14分発 →(上越線経由)→ 越後川口駅 15:07分発
越後湯沢駅から、越後川口駅までの区間は、普通列車で移動しました。

今回、「谷川岳もぐら」号に乗車した後に「越乃Shu*Kura」号に乗車しました。
この日は、越後湯沢駅発の「ゆざわ Shu*Kura」号ではなく、十日町駅発の「越乃Shu*Kura」号としての運行でした。そのため、列車を乗り継ぐ必要がありました。
越後湯沢駅から十日町駅(新潟県十日町市)まで接続する列車がなかったため、途中の越後川口駅(新潟県長岡市)で「越乃Shu*Kura」号を出迎える形になりました。

というわけで、越後湯沢駅のホームで40分間待ち合わせ、水上駅始発の長岡駅行き普通列車で越後川口駅までつなぎました。E129系車両2両編成の列車は、かなり混雑していました。何とか座って移動ができました。魚沼平野を望む車窓の眺め、素晴らしかったです。
乗り鉄の後半は「越乃Shu*Kura」号に乗車!
上越・信越線・トキ鉄線:越後川口駅→上越妙高駅
越乃Shu*Kura号:越後川口駅 15:41分発 →(上越線・信越本線・えちごトキめき線経由)→ 上越妙高駅 18:38分着


越後川口駅に到着し、飯山線ホームに移動。 「越乃Shu*Kura」号デザインの駅名標があるものの、過疎化が進んだ駅がひっそりしていて、不安を感じるくらいでした。

15:20分に十日町駅からの列車が入線。
越後川口駅には21分間停車して、15:41分に発車しました。越後川口駅では、筆者と同じく「谷川岳もぐら」号から乗り継いだ乗客と思われる数組と一緒に列車を出迎え。
筆者が乗車した3号車には、始発の十日町駅から乗車している人が多くて、一杯飲んで、すでに出来上がっている感じでした。そのような空間には、なかなか中に入りにくいものの、意を決して乗車。

「越乃Shu*Kura」号の行先表示とロゴ。日本酒がテーマの大人のための列車ですが、コロナ禍でジャズの生演奏が中止されているのが残念です。

越後川口駅を出発する前でした、さっそく2号車のカウンターで「飲み比べセット」2,000円をオーダー。
純米吟醸クラスの地酒3種類がそれぞれ桝酒で出され、おつまみには焼鮭が出されました。これとは別に、無料の振る舞い酒もサービスされて、筆者もベロベロになるくらい日本酒を楽しめました。

途中の長岡駅で進行方向が変わってから信越本線を疾走し、17:11分に青海川駅(新潟県柏崎市)に到着。
サンセットにしては日がまだ高かったです。毎年10月前半と2月後半の時期には、青海川駅への列車の停車時間ちょうどに、サンセットを楽しめるはずです。

日本海越しに見える太陽は少し高かったですが、美しい眺めでした。

直江津駅(新潟県上越市)に到着し、えちごトキめき線に入りました。昭和時代を思わせる佇まいが現在でも残っていて、筆者的にはこの雰囲気が好きです。

直江津駅では、えちごトキめき鉄道の鉄印を入手。トキ鉄のものは手書きではなく、書き置き(印刷)なのが残念。この日は、2種類ありました。両方ともゲット。
直江津駅で停車中、特急「しらゆき」号が先行して出発。直江津駅出発後も、高田駅(新潟県上越市)で数分間停車。終着の上越妙高駅に到着した時には、すっかり空が暗くなっていました。駅の改札口も無人になっていて、構内の土産物屋とレストランもすでに閉店していました。
北陸新幹線:上越妙高駅→大宮駅
はくたか574号:上越妙高駅 19:14分発 →(北陸・上越新幹線)→ 大宮駅 20:50分着

日帰りの乗り鉄のしめは、新幹線でした。

上越妙高駅のレストランがすでに閉店だったため、夕食はキヨスクでかったパン2個で済ませ、新幹線ホームへ。

乗車した車両が、たまたまJR西日本の編成でした。それで、車内放送のメロディーが「北陸ロマン」でした(数回聴くとしつこいメロディーだが、新鮮味があります)。

前回乗車した「かがやき」号は、長野駅から大宮駅までノンストップで56分間と、あっという間でした。今回の「はくたか」号は、上越妙高駅から大宮駅まで1時間45分の長い道中。北陸路の奥の深さを感じさせられました。
実は週末パスのほうが安かったりして。。。
今回はあれこれと熟考した上で、「大人の休日俱楽部」割引適用の片道乗車券を購入して、乗り鉄を楽しんだわけです。乗車券の値段だけを比較する限り、実は「週末パス」のほうが安価です。
ただし、「週末パス」を乗車券として利用した場合には、新幹線特急券などの料金は割引適用外となり、合計金額として高額となる可能性があるので、一筋縄にはいきません。
「大人の休日俱楽部」割引が絡むと、運賃計算が通常以上に複雑になります。運賃計算が好きな向きには、奥の深さを楽しめるはずです。
参考資料 References
● 「大人の休日俱楽部」公式ウェブサイト 割引きっぷの概要(JR東日本)

改訂履歴 Revision History
2021年9月26日:初稿
2022年7月22日:初稿 再構成
2023年4月07日:初稿 修正
コメント