【悲報】JR線と小田急電鉄線との連絡きっぷは、駅のみどりの窓口やネット予約「えきねっと」で購入できた時期があります。しかし、2023年3月18日以降東京圏における連絡運輸が大幅に縮小し、紙の連絡きっぷは非常に限定的になりました。
一時期えきねっとで購入できたJR線と小田急線との連絡きっぷの典型例を、いくつか投稿しました。現在は購入できないものの、記録としてこの記事を残すこととします。
連絡きっぷ(普通乗車券)の発売は基本的に終了
JR東日本のネット予約システムである「えきねっと」では、新幹線や在来線特急列車の指定席を予約できることは広く知られています。その中には富士山麓電氣鐡道(旧称富士急行)線や伊豆急行線といった他社線に乗り入れる列車も含まれます。
現在は交通系ICカードの普及で、連絡運輸の普通乗車券を紙のきっぷとして買うことは風前の灯火の状態になってきていて、駅の自動券売機で連絡きっぷ(普通乗車券)を広い範囲で購入するのが難しくなってきています。ただし、連絡定期乗車券に関しては、連絡運輸がいまだに欠かせない制度です。
この記事を読めば、実際の発売可否にかかわらず、社線発の乗車券も技術的にはマルスで発券できることがわかります。ただし、2023年3月の「鉄道駅バリアフリー料金」制度導入のため運賃が全面的に改訂となり、マルスへの運賃登録が今般見送られたのではないかと推測します。
いずれにせよ、紙の連絡きっぷを買えた時代は終わり、ひとつの時代の幕引きとなりました。
小田急電鉄との連絡運輸のバリエーションは実に豊富

ここでお話しする内容は、2023年3月までの内容です。現在は連絡運輸が縮小し、任意の区間のきっぷは購入できないことを留意してください。
なお、JR御殿場線松田駅接続の連絡きっぷについては、従前のまま残存しています。
東京の新宿駅と小田原駅(小田原線)、藤沢駅(江ノ島線)、そして特急ふじさん号がJR東海の御殿場線に直接乗り入れする松田駅(小田原線)など、JR線との接続駅がいくつかある小田急電鉄。それらの駅で連絡するきっぷに関して連絡運輸の設定があり、広範に連絡きっぷを購入することが可能です(ただし、この設定があるのは、JR東海およびJR東日本のみです)。
小田急電鉄との連絡運輸については、JR(東日本・東海)以外にも接続する他の民鉄会社にも当然に設定があります。この記事では、当該JR線に限ることとしたいと思います。通常は、普通乗車券を購入するには自動券売機で購入するのが原則ですが、その例外が存在することがミソです。
JRの列車予約システムであるマルスには、JR線の駅だけではなく、連絡する社線の駅のうち一部が登録されています。どの駅が収録されているか、その全貌は筆者も把握しきれませんが、このことはすなわち、マルスに収録されている社線の駅発着のきっぷに関してもJRの普通乗車券として購入できうることを意味します。
小田急電鉄に関しても、JR東海御殿場線に直通乗り入れする特急ふじさん号が運行されていることから、特急ロマンスカーが停車する駅を中心にマルスに収録されています。運賃登録のあるそれらの駅を発着する普通乗車券をマルスで発券することは、実は可能ということです(かといって、発売可能とは限りませんが)。
実際にみどりの窓口で発売を断られることの多い小田急線との連絡きっぷ、実は発券自体はかなり自在にできることが、今回の一連の検証から見出すことができました。発売「できない」のではなく、意図して発売「しない」ということが分かります。
一発目は新宿駅接続と登戸駅接続のきっぷを購入
ケーススタディーの1例目は、小田急線の新宿駅接続と登戸駅接続のそれぞれの普通片道乗車券です。マルスに収録されている駅に成城学園前駅(東京都世田谷区)があり、近場ということで選択してみました。
下記の普通乗車券は、見た目は大宮駅と成城学園前駅相互間の往復乗車券にも見えますが、2組の普通片道乗車券です。
【片道乗車券その1】

大宮駅ー(湘南新宿ライン)ー新宿駅【接続駅】ー(小田急小田原線)ー成城学園前駅
この普通乗車券はJR東日本の駅発のものであるので、原則としては出発当日に発駅である大宮駅の窓口でも本来購入できるきっぷです(意図的に窓口での販売を制限していたら別ですが、システム的には発券自体は可能です)。大都市近郊区間に含まれる駅相互間の普通乗車券なので、JR線内の乗車経路は任意です。

【片道乗車券その2ー1】

成城学園前駅ー(小田急小田原線)ー登戸駅 【接続駅】 ー(南武/武蔵野/埼京線)ー大宮駅
成城学園前駅から大宮駅まで帰るきっぷです。この普通乗車券は小田急電鉄発のきっぷで、本来は発駅である成城学園前駅の駅窓口で購入するのが筋です。それにもかかわらず、えきねっとではこんなきっぷを仕込むことが一時期可能でした(乗車券発売の原則に反しているので、JRのみどりの窓口では発売を断られると思います)。

【片道乗車券その2ー2】

成城学園前駅ー(小田急小田原線)ー登戸駅 【接続駅】 ー(南武/武蔵野/埼京線)ー大宮駅
本来あるべききっぷで、実際に成城学園前駅の駅窓口で購入した同じ効力の普通乗車券です。自動券売機で買える連絡乗車券のバリエーションが限られているため、駅窓口で対応してもらえます。今回の事例ではMSR端末での発券が可能で、登戸駅からの金額式の様式となっています。
余談ながら、小田急線の駅では普通乗車券であっても、クレジットカードで決済できることが券面からも分かります。

二発目は藤沢駅接続のきっぷを購入
ケーススタディーの2例目は、江ノ島線の藤沢駅(神奈川県藤沢市)連絡になる普通片道乗車券です。
【片道乗車券その3】

(小田急)新宿駅ー(小田急小田原/江ノ島線)ー藤沢駅 【接続駅】 ー(東海道/東北本線)ー大宮駅
小田急線の新宿駅から小田急線藤沢駅を経由してJR線で大宮駅まで帰るきっぷです。この普通乗車券は小田急線発のきっぷで、本来は発駅である小田急の駅窓口で購入するものです。この経路についても、えきねっとで仕込むことが一時期可能でした。

【おまけ】
このケースで購入した普通乗車券が「新宿ー大宮」という券面であるので、発着区間が逆の「大宮ー新宿」という券面の乗車券を連絡運輸のもので作れないかと思って考えていたところ、こんなものを思いついて、実際に発券してもらって乗車しました。
東武野田線の大宮駅(さいたま市大宮区)から柏駅(千葉県柏市)を接続駅としてJR東日本線に連絡する普通乗車券です。この経路は、マルスには収録されていないため、えきねっとで仕込むことは不可能です。乗車券類発売の原則を忠実に実行する形で、当日駅窓口で出していただいたきっぷです。東武野田線に柏駅まで延々と乗車するのが修行でしたが、体力と根性のある方はどうぞ。

三発目はJR東日本線との乗継割引運賃適用のきっぷ
JR東日本と小田急電鉄の連絡運輸について、定められた区間(*)を乗り継いで乗車する場合、小田急線の運賃額から大人・子供とも10円が割引されます。その区間を割引運賃適用でえきねっとで仕込むことができるかどうか、もう一例検証してみました。
【片道乗車券その4ー1】

(小田急)代々木上原駅ー(小田急小田原線)ー新宿駅【接続駅】ー(山手線)ー高田馬場駅
代々木上原駅から新宿駅までの区間およびJR東日本の新宿駅から140円区間に相当する駅の相互間を乗り継ぐ場合、上述通り10円割引になります。このケーススタディーでは、小田急線区間分150円+JR東日本線区間分140円の合計で290円が運賃額ですが、マルス上に運賃登録がなされているため、えきねっとでもその割引分が正確に反映されています。
こちらは、えきねっとで仕込み、JR駅の指定席券売機で決済して発券したマルス券です。
発駅である代々木上原駅、駅名だけでは認識されません。小田急線であることを以下のように追加するとうまく認識されます。

次のステップに進めるようになるので、青いボタンを押して先に進みます。

決済方法を指定して購入を完了します(乗車2日前までならば「駅でお支払い」が可能です)。

【片道乗車券その4ー2】
こちらは、上記と同じ効力の連絡きっぷを、本来の発駅である小田急線代々木上原駅で購入したものです。接続社線のJR東日本線の部分が金額式で、合計額に割引の表示がある券面です。

もう一発、松田駅接続のきっぷを買えるかどうか
特急ロマンスカーふじさん号が小田急小田原線とJR東海御殿場線とを連絡する松田駅(新松田駅)経由のきっぷをえきねっとで購入できるかどうか、試しに調べてみたら、これができるではないですか。いわゆる(2-タ)のパターンの連絡運輸である普通乗車券をえきねっとで購入できるのには、さすがに驚きました。
実際にこの乗車券を仕込もうとした矢先に、経路入力が不可能になってしまい、ぴえんでした。
※ 特急ふじさん号の特急券については、えきねっとを含むJR東日本では発売されません(検索結果に表示されないです)

おわりに|ぬか喜びでした。。。
今回、えきねっとで購入できる連絡運輸の普通乗車券をどの程度まで仕込むことができるか検証してみましたが、想定以上にできることが多いと思いました。
旅客営業規則および旅客連絡運輸規則に関するルール上では、乗車当日に発駅(最初に乗車する鉄道会社)にて普通乗車券を購入するのが前提です。その前提が解かれるえきねっとの柔軟性については、乗客にとってはありがたいと一瞬思っていたわけです。
JR東日本の駅のみどりの窓口が大幅に縮小されることは旅客にとって、特に連絡きっぷを購入できる機会の喪失を意味します。旅客の利便性が失われるような施策を強引に続々と打ってくる姿勢には、筆者も甚だ失望します。乗客の希望をことごとく断って、何がいいのかと頭をかしげます。
参考資料 References
● 連絡運輸に関する規則から一部を抜粋【2023年3月17日まで】
(236)小田急電鉄
藤沢 (片、往、続)
新宿 (片、往、続)
登戸 (片、往、続)
松田 (片、往、続)
連絡運輸区域
[東] 東海道本線、山手線、赤羽線、南武線、鶴見線、武蔵野線、横浜線、根岸線、横須賀線、相模線、伊東線、中央本線(東京-塩山間)、東北本線(東京-宇都宮間、尾久、北赤羽-北与野間)、常磐線(日暮里-友部間)、 高崎線、総武本線(東京-八日市場間、秋葉原-錦糸町間)、京葉線、外房線(千葉-蘇我間)、成田線(佐倉-成田空港間)各駅
[海] 東海道本線(東京、新横浜、小田原、熱海-浜松間)、 御殿場線、身延線(富士宮、西富士宮)各駅
社線旅客運賃設定駅(普通旅客)
(新宿、登戸、厚木、小田原、藤沢接続の場合) 小田原線各駅、江ノ島線各駅
(松田接続) 小田原線各駅、江ノ島線各駅(東海会社線に限る。片・往のみ)、多摩線各駅(東海会社線に限る。片・往のみ)
(備考)松田接続の連絡特急券(あさぎり号)は、JR東日本での発売はありません。
改訂履歴 Revision History
2021年10月10日:初稿
2021年12月09日:初稿 加筆
2022年3月30日:初稿 再構成
2022年4月08日:初稿 修正
2022年5月11日:初稿 本文修正
2022年5月17日:初稿 修正
2022年6月21日:初稿 修正
2023年02月15日:初稿 修正
2023年4月01日:初稿 修正
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