栃木県と福島県の山間部を走り、東京と会津地方を結ぶサブルートの野岩鉄道と会津鉄道で、筆者も手売りきっぷの収集を楽しみました。
野岩鉄道線は、鬼怒川温泉の北にある新藤原駅(栃木県日光市)と会津高原尾瀬口駅(福島県南会津町)との間を結んでいます。
そして会津鉄道線は、会津高原尾瀬口駅と西若松駅(福島県会津若松市)との間を結んでいます。日光・鬼怒川と会津地方という大観光地の間を走る路線で、風光明媚な車窓を楽しむことができます。
そんな両社の駅ですが、筆者もよくよく考えてみたところ、いずれの駅にもきっぷの自動券売機が設置されていないことに気づきました。
そんなわけで、きっぷを窓口で駅員さんから購入することになりますが、大都市の鉄道会社とは一風変わった独特な味わいがあります。
この記事では、筆者が5年間で買い集めた両社の乗車券類、乗車券や入場券、料金券をご紹介しつつ、きっぷの様式の多様性を読者の皆さまに知っていただきたいと思います。
野岩鉄道の手売りきっぷ

野岩鉄道線内では普通列車と特急リバティ会津号が運行されており、隣接する東武鉄道線と会津鉄道線にこれらの列車が乗り入れています。
有人駅の窓口では、線内の乗車券と他線への連絡乗車券、特急券が発売されているが、入手できるきっぷの大部分は端末で発券された券です。硬券については、入場券を含め目にしたことがありません。そんなわけで、バリエーションに富んでいるとは言えません。
● 普通乗車券(駅購入分)
1枚目として、線内の普通乗車券をお見せしたいところですが、適当なものが手持ちにありません。そこで、東武鉄道線への連絡乗車券をお出しします。

この乗車券は、新藤原駅を経由して東武鬼怒川線小佐越駅行きの連絡乗車券です。着駅が野岩線内の駅であっても東武線内の駅であっても、端末券の様式は特に大きく変わりません。以前は薄緑色の地紋あり、かつ熱転写式の乗車券用紙が使用されていましたが、現在は無地の感熱紙です。
野岩鉄道線内のみ障害者割引運賃が適用され、東武鉄道線については無割引の運賃が適用された普通乗車券です(第二種身体・知的障害者および精神障害者が購入できるパターン)。
一部の区間のみ割引が適用される場合、鉄道会社によっては連絡乗車券として発売しない場合が多いかと思いますが、野岩鉄道線発では、端末発券の一葉の乗車券を入手可能です(筆者は障害者手帳を所持しているため、割引運賃にて購入しました)。
● 車内乗車券(車発機発行)
次は、野岩鉄道線内の普通乗車券です。

これは、車内検札時に車掌さんから購入したものです。東武鉄道線内のみの乗車券(や株主優待乗車証)で乗り越した際に運賃を支払った際に受け取るきっぷです。携帯端末機で発券されるもので。駅売りの乗車券と様式は同一です。ただし、きっぷの上部に会社のロゴマークが印字されています(これも障害者割引適用のものです)。
● 料金券(特急券・座席指定券)
続いて、野岩線の駅で購入した特急券です。

これは、特急「リバティ会津」号の特急券です。野岩線内から東武線内の全区間で座席指定を受けて、両社の特急料金が合算されたものです(事情があれば東武線内の区間のみでも購入可能)。電話で席番が手配されたもので、券番号と席番が手書きで記載されています。

次は、野岩線の駅で発行された「SL大樹」号の座席指定券です。これも電話手配のものですが、先ほどと違って席番と券番号が端末に入力されて印字されています。東武鉄道線内単独の料金券ですが、野岩鉄道が受託者として引き続き発売しているものと思われます。
上記のいずれの端末で発券されたきっぷも、駅売り分はタブレット端末から印字されたもので、車内発行分は車発機から印字されたものです。
野岩線における端末券の収集価値を、筆者的には特に見出すことはできません。
● 出札補充券
きっぷ鉄としての収集対象は、こちらの補充券になろうかと思います。
野岩鉄道の補充券には、2つの様式が存在します。

まずは、記入式の出札補充券です。この様式は、東武鉄道のものとよく類似しています。東武鉄道が大株主だけに、影響を受けているものと考えます。例によって、野岩線内の区間を障害者割引で発券していただきました。

そして、地図式補充券です。会津鉄道線方面の会津若松駅までの区間と、東武鉄道線方面の路線のうち、旅客流動が多そうな区間が掲載されています。昔は、東武鉄道線内でも地図式の車内補充券が存在した記憶があります。
会津鉄道の手売りきっぷ

会津鉄道線は、会津田島駅(福島県南会津町)を境界にして、野岩・東武鉄道線に向かっていく系統(特急「リバティ会津」号など)、および会津若松駅(および磐越西線喜多方駅方面)に向かっていく系統(気動車の普通列車)に分かれます。「AIZUマウントエクスプレス」号は例外的に、両方の系統を通しで走っています。
会津鉄道の駅においては、会津鉄道線内のきっぷだけではなく、野岩鉄道線・東武鉄道線に連絡する乗車券および特急券、そしてJR只見線・磐越西線に連絡する乗車券と、多様な乗車券類を購入することができます。
それらの乗車券類は、通常は端末で発券されます。ただし、バリエーションが少ない野岩鉄道と違って、端末券や補充券のみならず、硬券入場券や多様な記念入場券・乗車券も入手可能です。
● 入場券(硬券・端末券・補充券)
多くの鉄道会社と同様、会津鉄道の有人駅でも硬券入場券を購入できます。
ただし、西若松駅では、会津鉄道の入場券は発売されていません(その代わり、JRのPOS券を入手できます)。

会津鉄道の場合、硬券入場券は200円です。

端末や補充券で発行されるものもあり、この場合は150円です。
同じ入場券であっても、媒体によって料金が異なるのが、一見摩訶不思議に思えます。同社の旅客営業規則上、一般の入場券は大人150円のものの、硬券のものは記念入場券の扱いで、別途定められた料金となります。規則通りの発券で、筆者も合点がいきました。

改めて、会津田島駅にて購入した入場券です。媒体として4種類すべて揃えました。
端末券と補充券で発売した場合の料金がそれぞれ150円。硬券の料金が、記念台紙込みで200円。そして、南会津町特産のブナの木を媒体にした、記念入場券300円も発売されています(西若松駅を除く全全駅で使用可)。
同じ効力の入場券が4媒体あるのは、全国でもおそらくここだけでしょう。その独創性が、きっぷ鉄にはうれしい限りです。
● 普通乗車券(記念券・端末券)
次に乗車券です。ブナの木の記念乗車券が発売されていたので、購入してみました。

会津田島駅から310円区間の設定です。

この木板の裏面には、券番がしっかりと刻印されています。
次に、端末発行の普通乗車券です。
きっぷの台紙は坪量の大きな丈夫な紙質で、印字もインクジェット式で、保存性が非常に良好です。ロール紙の丸みが強く、なかなか平らになりませんが、きっぷ鉄にはうれしいところです。会津鉄道オリジナルの地紋も印刷されています。

端末で発券された、湯野上温泉発会津若松行きの会津鉄道線内からJR線内への普通連絡乗車券です。
野岩線→東武線の連絡乗車券と同様、会津鉄道でも、会津鉄道線内が割引でJR線内が無割引の、障害者割引の連絡乗車券が発行できるそうです。JR線への連絡運輸の乗車券類については、補片が出るものと思い込んでいたので、ちょっと驚きました。
● 料金券(特急券)

会津鉄道の端末で発券された「リバティ会津」号の特急券です。
会津鉄道線内発着の特急券だけではなく、東武線内のみの区間でも事情があれば発行が可能なそうです(本券は、東武線内の新藤原駅発浅草駅行き)。本ケースでは、筆者が新藤原駅から特急に乗車するということで出していただいたものです。会津鉄道が、東武鉄道の発売受託者でもあることが分かります。
● 特別補充券

2つの様式が存在する補充券のうち。これは記入式の特別補充券です。会津鉄道では、乗車券のみならず、入場券で使用されることもあるようです。

入鋏式(地図式)の特別補充券です。これも、同社の旅客営業規則に様式として規定があるものです。
前掲した野岩線の地図式補充券と同じく、JR磐越西線方面および東武線方面の同社と連絡運輸の設定がある区間について記載されています。
おわりに
乗車券類発行に厳格な鉄道会社が多い中で、この記事に挙げた両社はきっぷ収集には非常に寛容だと思います。きっぷ鉄としては大変ありがたい限りです。
通常発券される端末券や補充券については、特に変わったものではありませんが、工夫が施された多様な記念乗車券類には今後も期待したいところです。
嫌な顔をせず、淡々と対応してくださった両社の職員の皆さまには感謝です。
東京から会津若松への移動は風光明媚な野岩・会津線を
筆者は「4線連絡片道乗車券」を利用して、東京の浅草駅から会津若松駅まで東武・野岩・会津鉄道線とJR只見線にて移動しました。このきっぷの概要と列車利用の体験を以下の記事にまとめましたので、是非ご一読ください。
参考資料 References
● 会津鉄道の旅客営業規則から一部を抜粋
(乗車券類の様式)
第 85 条 乗車券類の発券種類及び様式は、次のとおりとします。
2 乗車券の発券種類
(1) 普通乗車券
①乗車券発売機用乗車券
ア、駅発売機用乗車券(乗車券発券システム」以下「発券システム」という。)
イ、車掌発売機乗車券(ポータブルターミナル(以下「POTポット」という。)
②特別補充券(入鋏式)
③特別補充券(記入式)
(2) 定期乗車券
①発券システム(通勤、通学)
②補充定期乗車券(通勤、通学)
(3) 回数乗車券
①発券システム
②補充回数乗車券
(4) 団体乗車券
①発券システム
②補充団体乗車券
(5)その他の乗車券類
①発券システム
②その都度定めます。
3 前項に規定する乗車券類の様式は、様式8号の1から8号の5のとおりとします。
(入場券の料金)
第 130 条 入場券の料金は、次に掲げるとおりとします。
大人 150 円
小児 70 円
記念入場券等の料金は、その都度設定します。
【別表第2号】
連絡運輸の発売区域
1.東日本会社線
東北本線 (北)福島
磐越西線 (北)郡山~喜多方間
只見線 会津若松~会津坂下間
2.野岩鉄道線
会津鬼怒川線 全線
2.東武鉄道線
東武日光線、東武伊勢崎線、東武スカイツリーライン、東武桐生線、東武小泉線、東武佐野線、東武亀戸線、東武大師線、東武野田線(アーバンパークライン)の全線
改訂履歴 Revision History
2021年11月20日:初稿
2022年4月06日:初稿 再構成
2022年5月11日:初稿 本文修正
2022年5月17日:初稿 修正
2022年6月21日:初稿 修正
2022年7月25日:初稿 修正
2023年02月20日:初稿 修正
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