毎年3回、通常の「大人の休日倶楽部パス」が発売されていることは、ご周知のことかと思います。2021年以降、それに加えて「特別設定 Web限定 大人の休日パス スペシャル」がネット限定で発売されています。
この記事では、「特別設定 Web限定 大人の休日パス スペシャル」(東日本スペシャル)を活用し、東日本エリアで乗り鉄の修行を敢行した顛末をレポートしたいと思います。

東日本エリアを海岸沿いに「東京→仙台→青森→新潟→東京」の経路を反時計回りしました!
2022年に発売された「特別設定 Web限定 大人の休日パス スペシャル」

「特別設定 Web限定 大人の休日パス スペシャル」は、天候がいまいちなことが多い「最閑散期」に期間設定されている通常の「大人の休日倶楽部パス」と異なり、比較的天候が良い「通常期」にも設定されています。(この記事では「特別設定 Web限定 大人の休日パス スペシャル」を「大人の休日パス」「パス」と略します。)
2022年4月に発売されたパスの発売期間に合わせて、筆者もたまたま休暇を取れたので、パス(東日本スペシャル)を購入して乗り鉄に出かけることができました。4月になれば気候が良くなり、南東北地区あたりは桜が満開になるので、パスを利用しての鉄道旅行には大変いい季節です。
筆者にとっては初めてのパス購入ということもあり、今回テーマとしたのは、パスの有効期間である4日間をかけてなるべく遠くに向かい、より長い距離を移動しようということでした。
仙台駅を起点として、北東北地方の太平洋沿岸を走る列車にひたすら乗り続け、青森県を経て日本海沿岸の路線で新潟駅まで向かうことで、本州の東半分をぐるっと反時計回りに鉄道で周遊しました。
この、日本列島の東の部分を反時計回りする経路「東京→仙台→青森→新潟→東京」を、急げばちょうどパスの有効期間である4日間で回ることができます。かなり強行軍で体力を要しますが、パスを最大限活用するとこれだけ回れますよ~、という一つのモデルコースと考えます。
パスの購入方法やパスの価格の価格比較・検討(いかに元を取るか)については、筆者の別稿をお読みください。次のリンクから当該記事を参照してください。
● パスの購入方法
● パスと他商品との価格比較…いかに元を取るか
首都圏から三陸海岸までのアプローチ【1日目午前】

首都圏から東北地方の三陸海岸に入るためのゲートウェイになる地点は、宮城県仙台市です。仙台から日本三景である松島を通り、南三陸海岸に至ります。
筆者が日頃利用する大宮駅から仙台駅まで、当初は東北新幹線でサクッと移動する予定でしたが、ちょうど地震災害による不通に見舞われました。そのため、途中の福島駅まで始発の東北新幹線に乗車したあと、在来線に乗り換えて仙台駅に入りました。
このモデルコースにおいては、1日目の9時30分に仙台駅にいる必要があります。通常ダイヤであれば、
はやぶさ103号 東京駅 7:56分ー仙台駅 9:30分
の列車に乗車すれば間に合うので、今回は仙台駅までの移動に通常より2時間余計にかかったことになります。
(1) 大宮駅→福島駅(東北新幹線)
【乗車列車】 やまびこ301号 大宮駅 6:29分ー福島駅 7:53分
【乗車距離】 242.5km

【指定券の券面】

大宮駅(さいたま市大宮区)から福島駅(福島県福島市)まで乗車した東北新幹線は臨時ダイヤで運行されていて、この日のやまびこ号は終点福島駅まで各駅停車でした。
この列車の10両編成のうち、普通車指定席は1両で、残りの7両は自由席でした。東北新幹線の運行本数が大幅に減少していたため、始発列車にもかかわらず混雑し、ほぼ満席の状況でした。
(2) 福島駅→仙台駅(東北本線)
【乗車列車】 臨時快速列車 福島駅 8:26分ー仙台駅 9:32分
【乗車距離】 79.0km


福島駅から仙台駅(仙台市青葉区)までは、途中白石駅(宮城県白石市)のみ停車する臨時快速列車で移動しました。
E653系という特急列車用の車両で快適に移動できるかと思ったのですが、前述の10両編成の新幹線車両から7両編成の在来線特急列車用車両に多くの乗客が乗り換えたというわけです。輸送のためのキャパシティが減少することで、多くの乗客が殺到して大変な混雑でした。
東北新幹線が日本の大動脈であることを、この時改めて思い知らされました。
沿線の桜の花が満開で、この車両目当ての大勢の撮り鉄たちを車窓から見かけました。
(3) 仙台駅→小牛田駅(東北本線)
【乗車列車】 普通2531M 仙台駅 9:48分ー小牛田駅 10:34分
【乗車距離】 43.2km

三陸海岸への基点となる仙台駅からは、ひたすら普通列車の旅になります。
石巻線との乗り換え駅である小牛田駅(宮城県美里町)までは、車窓に松島海岸を眺めながら、近郊電車で約45分の移動でした。東北地方のJR普通列車に多い、経年が古いオールロングシートの電車、車両の乗り心地はあまり快適ではなく、長旅にはこたえます。
(4) 小牛田駅→柳津駅(石巻線・気仙沼線)
【乗車列車】 普通2927D 小牛田駅 10:40分ー柳津駅 11:21分
【乗車距離】 30.3km

小牛田駅で東北本線から離れ、三陸海岸沿いを走る気仙沼線を目指して次の列車に乗り換えました。途中の前谷地駅(宮城県石巻市)から気仙沼線が始まりますが、ここで乗車した列車は気仙沼線の柳津駅(宮城県登米市)まで入りました。
この区間からは完全なるローカル線で、1両の気動車でトコトコ走るのどかな汽車旅の始まりでした。乗客も自分の他に約5人と閑散としていました。混雑した列車の喧騒から離れた瞬間で、ほっとしました。
三陸海岸縦断のはじめはBRT(路線バス)で【1日目午後】

去る東日本大震災で長期間不通になっていた気仙沼線。柳津駅からは、かつてあった鉄路がバス専用道路に変わります。柳津駅から志津川駅(宮城県南三陸町)、気仙沼駅(宮城県気仙沼市)、陸前高田駅(岩手県陸前高田市)を経て、岩手県大船渡市の盛駅までの99kmの区間は、ひたすら「BRT」と呼ばれるJR東日本直営の路線バスでの移動でした。(*BRT : Bus Rapid Transit バス高速輸送システム)
(5) 柳津駅→BRT志津川駅(気仙沼線BRT)
【乗車列車】 BRT1935K 柳津駅 11:47分ー志津川駅 12:14分


柳津駅で鉄路が切れて、普通の鉄道車両が入れなくなります。かつての線路は舗装されたバス専用道路に変わり、その道路を路線バスが走ります。一般道路から専用道路へはゲートがあり、一般車は入れないようになっています。
車両は11m長の一般の大型車両で運行される路線バスですが、あくまでもJR東日本の鉄道路線という建てつけです。それぞれのバス便には列車番号があり、バスの停留所は鉄道駅と同じ扱いです。
この区間はBRT路線の中でも最も閑散とした区間で、バスの本数も1時間に1本あるかないかの程度です。旅行客数名以外に地元客がいなく、ある種のやばさを感じました。
(6) BRT志津川駅→気仙沼駅(気仙沼線BRT)
【乗車列車】 BRT1941K 志津川駅 13:39分ー気仙沼駅 15:01分
【乗車距離】 柳津駅から55.3km

途中、南三陸町の志津川の街に立ち寄りました。2011年3月の東日本大震災の際、津波災害で街が水浸しになりましたが、現在もいまだ復興途上といった状況です。旧町役場庁舎の骨格やホテルだった建物がむき出しで震災遺構として残っています。
バスから一旦下車し、次のバスまでの1時間20分の間、バス停からすぐの場所にある震災遺構を見てから復興したての商店街でランチを取りました。

商店街にはランチを取れる食堂が数件入っていますが、修学旅行生たちで賑わっていました。教育旅行の旅行先として、観光で街が再生する気配を感じました。
志津川駅を出発してから1時間半バスに乗りっぱなしでしたが、ここから南三陸海岸に入り、景色のいいところを走るようになります。
(7) 気仙沼駅→BRT陸前高田駅(大船渡線BRT)
【乗車列車】 BRT3343F 気仙沼駅 15:09分ー陸前高田駅 15:45分

気仙沼駅にはBRTの他に鉄道線も乗り入れてきます。駅構内には、バス用の舗装道路と鉄道線路が同居する珍しい光景があります。
気仙沼駅の周辺の市街地は従来鉄道路線だった専用線を走りますが、信号待ちや渋滞がない専用道路の強い点を感じました。途中からは、高速道路である三陸沿岸道路に入りました。交通モードとしては高速道路が最強で、鉄道が太刀打ちできないと感じた場所です。旧鉄道線路の専用道路と一般道路、高速道路のいずれも活用できるのがBRTの強みであると思いました。
この区間で岩手県に入り、市街地に入ったところで奇跡の一本松を眺め、間もなく陸前高田のバス停に到着。
(8) BRT陸前高田駅→BRT盛駅(大船渡線BRT)
【乗車列車】 BRT1349F 陸前高田駅 16:51分ー盛駅 17:36分
【乗車距離】 気仙沼駅から43.7km
岩手県陸前高田市も、東日本大震災の震災遺構が残る街です。海岸の近くには奇跡の一本松が今も残っていて、BRTが走る国道45号線から眺めることができます。高台に移転した街が、かなり復興されて形になってきました。

バスが到着した陸前高田駅。物理的にはバス停にすぎませんが仮想的な鉄道駅で、再建された駅舎とみどりの窓口がしっかりあります。

陸前高田駅からBRT終点の盛駅(岩手県大船渡市)までの区間は地元の人たちの足で、バスの便数も比較的多い区間です。大船渡市街をバス専用道路でサクッと抜けて、三陸鉄道の線路が見えてきたら終点の盛駅です。
今回筆者が完乗した、JR気仙沼線とJR大船渡線を走るBRT(バス高速輸送システム)については、以下別記事(↓)にて詳しく書きたいと思います。
(9) 盛駅→釜石駅(三陸鉄道リアス線)
【乗車列車】 三陸鉄道普通 217D 盛駅 18:20分ー釜石駅 19:07分
【乗車距離】 36.6km

三陸鉄道が終点の久慈駅(岩手県久慈市)まで全線つながるまでは、盛駅から釜石駅(岩手県釜石市)までの区間は南リアス線でした。盛駅では路線バスの車両から鉄道に乗り換えて、釜石駅まで北上を続けました。ここで日没を迎えたので、釜石駅で投宿しました。

大人の休日パスの券面には有効区間として「JR東日本全線」と記載されていますが、三陸鉄道全区間もパスのフリー乗車区間に含まれています。他の企画乗車券にはないパスの特長のおかげで、筆者もようやく三陸鉄道線に乗車しようという気になり、今回三陸海岸を訪れたわけです。
三陸鉄道の列車はほとんどが1両編成ですが、混雑することもなく、快適な車内でした。盛駅を出発した時点で外が暗くなっていて、どのような車窓か分かりませんでしたが、トンネルが多い区間で日中乗車しても車窓は暗かったかもしれません。
【1日目の乗車距離合計】 530.6km
三陸鉄道リアス線全線踏破!【2日目午前】

釜石駅がある岩手県釜石市は三陸海岸にある主要な都市で、製鉄工場があってビジネス客を多く見かけました。JR釜石線と三陸鉄道リアス線が交わる、三陸海岸の交通の要衝でもあります。釜石駅の駅ナカにある「ホテルフォロクローロ」というビジネスホテルに筆者も投宿しました。
前述した通り、大人の休日パスのフリー乗車区間には三陸鉄道線が含まれていて、運賃を別途払うことなく乗車できます。筆者も三陸鉄道線を全線乗車する絶好の機会と思い、今回の乗り鉄旅の経路に含めることにしたわけです。
(10) 釜石駅→宮古駅(三陸鉄道リアス線)
【乗車列車】 三陸鉄道普通 1007D 釜石駅 7:50分ー宮古駅 9:14分
【乗車距離】 55.4km
釜石駅から宮古駅の区間は旧JR山田線の区間でした。東日本大震災で長期間不通でしたが、復旧して運行が再開された時点で、三陸鉄道に運営が移管された区間です。古くからある路線なので長いトンネルが少なく、三陸鉄道の中でも最も景色がいい区間です。
(11) 宮古駅→久慈駅(三陸鉄道リアス線)
【乗車列車】 三陸鉄道普通 5111D 宮古駅 10:40分ー久慈駅 12:34分
【乗車距離】 71.0km

JR東日本の運営のままの山田線区間と三陸鉄道線が交わる宮古駅(岩手県宮古市)で途中下車しました。釜石のような大企業の拠点が特にない街で、のどかな普通の田舎町です。
宮古駅には「さんてつや」という三陸鉄道が運営するお店があり、オリジナルグッズや土産品が多く販売されています。三陸鉄道の約160kmの区間、日中は久慈駅まで通しで乗車するのも可能ですが、途中下車して休息をとるのが良いと思います。そう思い、このお店に立ち寄ったわけです。

宮古駅から久慈駅までの区間は旧北リアス線で、ドラマ「あまちゃん」の舞台になった区間です。平日日中の列車で車内は閑散としていましたが、途中のビュースポットで列車が一時停止することもあり、観光列車のようでした。
今回完乗できた三陸鉄道リアス線についても、別記事(↓)に詳細を書きました。是非ご一読ください。
在来線で青森駅に到達【2日目午後】

久慈駅で三陸鉄道線が終わり、JR八戸線に乗り換えて太平洋沿岸をさらに北上しました。青森県に入り、八戸駅から青森駅までは在来線の青い森鉄道(旧東北本線)で移動しました。
大人の休日パスのフリー乗車区間には、並行在来線のIGRいわて銀河鉄道線と青い森鉄道線が含まれていて、ゆっくり普通列車で移動することもできます。
首都圏を離れてまるまる2日間かけて、青森駅までようやくたどり着きました。
筆者は八戸駅到着後、別件でIGRいわて銀河鉄道線内まで足を延ばしました。そのような用が特になければ、八戸市内で一時休憩するのもあり、青森駅に早く入ってしまうのもありです。
(12) 久慈駅→八戸駅(八戸線)
【乗車列車】 普通 446D 久慈駅 13:03分ー八戸駅 14:45分
【乗車距離】 64.9km

久慈駅から北の区間は再びJR線の区間になります。2時間弱をかけて、青森県東部の主要都市である八戸市に入りました。
JR八戸線を走る車両は「キハE131系」という新車両で、2両編成の車内はとても清潔です。三陸鉄道の区間の乗客の少なさとは対照的に、JR線に入った途端、乗客数が多くなったのが印象的です。
八戸市内に入り、途中の鮫駅に至るまでの区間は太平洋岸のすぐ近くを走り、大変眺めが良いです。お金と時間があれば、この路線を走るレストラン列車「東北エモーション」で優雅な時間を過ごしたいと思いつつ、今回は普通列車で北上しました。
鮫駅で突然八戸市街地に入り、海岸線から離れます。工場地帯が見えてきて、終点の八戸駅までは都市内交通路線という感じです。八戸市の中心に近い駅は本八戸駅で、新幹線が発着する終点の八戸駅は、市街地を抜けた何もないところにあります。
(13) 八戸駅→青森駅(青い森鉄道線)
【乗車列車】 青い森鉄道 普通 585M 八戸駅 17:23分ー青森駅 18:58分
【乗車距離】 96.0km

大人の休日パスで新幹線の空席に乗車できるので、八戸駅から青森駅までは東北新幹線で移動することも可能です。ただし、新幹線の本数が少ないため、時間帯によっては平行在来線の青い森鉄道(旧JR東北本線)に乗車しても、大して到着時間が変わらないこともあります。
筆者がこの区間を乗車した時も、新幹線の発車まで1時間待ちだったため、在来線青い森鉄道で青森駅に入りました。
列車は、2両編成の新車両。ワンマン列車ですが、平日の夕方の時間帯で、高校生の乗客で大変混雑していました。八戸駅を発車した時点では通学客が中心でしたが、青森駅に到着した頃には通勤客で混んでいる状態でした。青い森鉄道の経営は、結構盤石と感じました。
旧東北本線の終着駅、青森駅には19時に到着。日も暮れて空も暗くなったので、青森駅前のホテルに投宿。終着駅の風情があった旧駅舎は取り壊され、新駅舎が整備されている途上でした。
【2日目の乗車距離合計】 287.3km
パスの旅はまだまだ続く~日本海沿いを南下~

まるまる2日間かけて、首都圏から三陸海岸を経由し、青森駅までやってきました。これで、前半2日間の旅程を順調にクリアできたわけです。
3日目以降は、青森駅から津軽半島を回った後、日本海沿いをひたすら南下しました。そして、新潟県内で4日間の旅程を完了しました。その間、観光列車「のってたのしい列車」の「リゾートしらかみ」号と「海里」号にも乗車しました。
4日間の旅程のうち、後半の2日間については、以下の別記事としてお話を続けたいと思います。是非、最後までお付き合いください。
参考資料 References
● 大人の休日俱楽部 ウェブサイト

● JR東日本 BRT
● 三陸鉄道 ウェブサイト

改訂履歴 Revision History
2022年4月22日:初稿
2022年4月23日:初稿 本文加筆
2022年5月16日:初稿 修正
2022年5月26日:初稿 タイトル修正
2022年6月21日:初稿 修正
2022年6月25日:初稿 加筆
2023年4月07日:初稿 加筆
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