新潟県から山形県にかけての日本海沿岸を結ぶ羽越本線。そのうち新潟駅から酒田駅までの約168kmの区間を、観光列車「海里」号が週末を中心に結んでいます。
「海里」号は、2019年10月に運行が始まった新しい観光列車(のってたのしい列車)です。新潟駅から酒田駅まで乗車した場合、乗車時間の約3時間にわたり、日本海の美しい眺めや車内での食事を楽しむことができます。
筆者も、2022年4月になってようやく「海里」号に乗車する機会が得られ、酒田駅発の上り列車に乗車しました。

車内での食事がおいしそうですね!

食事付きプランでも、海里特製弁当を買っても、食事を楽しめますよ。いずれも事前予約がおススメ!
この記事では、観光列車「海里」号の概要に触れてから、列車の予約(座席指定)の取り方をお話しし、列車に乗車するための費用やコスパについて深掘りします。そして、実際の車内の様子を見た上で、筆者の乗車体験を綴ります。
筆者は2号車のコンパートメント座席に乗車し、車内で海里特製弁当の「庄内弁」をいただきました。乗車体験とあわせ、車内での「庄内弁」の喫食体験もレポしたいと思います。
「海里」号の概要・情報源

「海里」号は、新潟駅(新潟市中央区)からJR白新線・羽越本線を経由し、途中鶴岡駅(山形県鶴岡市)に停車してから、終点酒田駅(山形県酒田市)に至る快速列車です。約168kmの距離を、約3時間で結びます。
「海里」号は、乗車自体を楽しむ観光列車です(「のってたのしい列車」と呼ばれます)。そんなわけで、特急列車よりは移動に時間がかかります。しかし、新潟駅や鶴岡駅、酒田駅間を単純に移動するための列車としての利用もアリかなと思います。
この区間を、金曜日と土休日を中心に、下り列車と上り列車の1往復が運行されます。途中の桑川駅(新潟県村上市)に長時間停車して、道の駅「夕日会館」や日本海岸の散策を楽しめるのが「海里」号の特長です。季節によっては、日本海の夕日を眺めるのに合わせたダイヤ設定がされています(10月と2月は、上り列車で日本海上の日没を眺められる時期です)。
また、「海里」号の車内では、特製の食事を楽しむことができるのが大きな特長です。4号車の食事付きプランでは日本料理や洋食の御膳、一般車両に乗車した場合でも、車内販売される特製弁当をいただくことができます。視覚や聴覚だけではなく味覚にも訴える、いささか上級な乗り鉄と言えましょう。
この列車のコンセプトは「新潟の食」と「庄内の食」そして「日本海の景観」だそうですが、よく当たっていると思います。
「海里」号がデビューする以前は、違う車両の「きらきらうえつ」号として、この区間をほぼ同じダイヤにて運行されていました。車両のリニューアルを機に、サービスが高級化されたと言えます。
列車の運行日や駅の通過時刻などの詳細は、JR東日本「のってたのしい列車」公式サイトで確認することができます。また、4号車の食事付きプランの予約購入も、当該サイトから行うことができます(いずれのURLも文末の参考資料を参照ください)。
「海里」号の座席の種類・予約の取り方
観光列車の「海里」号は、快速列車ながら全車指定席です。そのため、乗車する設備に応じて、乗車する前にあらかじめ予約購入を行う必要があります。
座席の種類(設備)
「海里」号には、座席の種類として次の3種類の設備(キャビン)があり、それぞれ座席の予約・購入方法が大きく異なるため、注意が必要です。
「指定席券」を取る設備
● 一般のオープン座席(1号車:定員30名):リクライニングシート
酒田駅行きの下り列車では、1号車1番A-D席が最前部座席で、展望スペースに近い良席です。

● コンパートメント座席(2号車:定員32名):4人用の半個室
「リゾートしらかみ」号「橅」編成と同じ造りの車室ですが、「海里」号の場合は全車室とも座席がフルフラットになります。また、各車室にはスマホ・PC用のコンセントが1つあり、電源として利用できます。
予約上の最低人数等の縛りは、特にありません。

「旅行商品」を購入する設備
● 食事付きプラン専用の座席(4号車:定員24名):2人用・4人用のボックス座席・並びの座席
全席ともシェル型シート。外から座席が見られないプライバシーが保たれる高級感ある座席です。

「海里」号の席番表
1号車の場合、日本海側の座席はA席側です。

各号車の席番表は、この記事の最後にある「Appendix-1」を参照してください。
「指定席券」および「乗車券」の購入方法(1・2号車)
運行開始からあまり時間が経たない列車であるため、列車自体に人気がかなりあるようです。また、1・2号車の座席定員が合わせて62名と非常に少ないため、時期を問わず指定席券(予約)自体が取りにくいように感じられます。
指定席券のお値段
通年:大人840円(小児420円)
※ 1号車一般座席、2号車コンパートメント座席とも同額です。
指定席券の発売開始時期
乗車1か月前の日の朝10時に座席の発売が開始されますが、指定席券を購入する箇所・手段によって開始時期が以下の通り微妙に異なります。
指定席券の発売箇所・発売手段
指定席券を購入する手段および発売開始のタイミングについては、次の通りです。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10:00–
1号車の一般座席、2号車のコンパートメント座席とも購入できます(4号車は、指定席券として発売されていません)。
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10:10–
1号車の一般座席のみ購入できます。指定席券売機の一部操作画面の遷移については、文末の「Appendix」を参照ください。
※ 有人窓口よりも10分遅い開始です。取りにくい時期は、有人窓口を利用した方が無難でしょう。
● 「えきねっと」(インターネット予約)【シートマップ表示可】
乗車日の1か月と7日前の14:00– 【事前受付開始時刻】
1号車の一般座席、2号車のコンパートメント座席とも購入できます(4号車は、指定席券として発売されていません)。

「のってたのしい列車」の申込画面から「海里」号を選択すると簡単に進めると思います。ただし、1号車と2号車では、予約システム(マルス)上に登録されている列車名が異なることを留意してください。
1号車の列車名:「海里」(シートマップ表示可)
2号車の列車名:「海里 コンパートメント」(シートマップ表示不可)
「えきねっと」では、上り・下り列車別、上記の列車名別に設備を選択して、予約を進めます。2号車コンパートメント座席はこの方法でしか進めませんが、1号車一般座席は通常の検索画面から結果を表示して進めることも可能です。
※ 実際に手配が行われるのは、上述した「乗車日1か月前の10:00」と、有人窓口と同一です。事前受付が完了したからといって、予約が確定したわけではないので、要注意です(取れない場合も往々にしてあります)。
※ えきねっとで座席が取れた場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。
「えきねっと」の事前受付に関する詳しい情報は、筆者の別記事(↓)を参照してください。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券は、設備によってそれぞれ以下の券面です。
● 一般座席(1号車)
(満席で取れなかったため、本記事には掲載していません)
● コンパートメント座席(2号車)
列車名の表記は「海里 コンパートメント」です。

乗車券について
「海里」号に乗車するためには、上記指定席券のほか、乗車区間を含んだ乗車券が必要です。乗車券の代わりに、「青春18きっぷ」「北海道・東日本パス」「週末パス」「大人の休日俱楽部パス」(*)などのフリーパス類を使用することも可能です。
* 「大人の休日俱楽部パス」では、「海里」号の指定券(指のみ券)を回数の枠内で、パス料金込みで取ることができます。
「旅行商品」食事付きプランの申込方法(4号車)
乗車中にいただける食事内容は、次の通りです。
● 新潟駅発の下り列車:日本料理の御膳(乗車日によって提供元が異なる)
● 酒田駅発の上り列車:洋食御膳(鶴岡市の「アル・ケッチャーノ」)
旅行商品としての食事付きプランについては、日帰り旅行商品として、乗車3日前までに専用の「のってたのしい列車」予約サイトから予約を行います。
予約サイトの画面から乗車区間や人数を入力すると、シートマップから好きな座席を選びます。それから表示された料金を確認して、申込手続を進めます(決済方法はクレジットカードのみ)。
乗車1か月前よりも先に予約した場合、1か月前までは即確約とはならないものの、シートマップから4号車の座席を選択しているので、実質確定しているととらえていいと個人的には思います。
現在は、インターネット上の「のってたのしい列車」予約サイトからのみ予約購入が可能です(URLは文末を参照ください)。ネットの操作に不安があったり、ネット環境がない場合には、JR主要駅にある「駅たびコンシェルジュ」のスタッフさんのサポートを得ると良いかと思います。
前述した乗車券および指定席券については、4号車の場合は旅行商品の代金に含まれるため、別に購入する必要はありません。
この旅行商品は「募集型企画旅行」のため、旅行主催会社の旅行業約款が適用されます。乗車11日前まではキャンセル料がかかりませんが、それ以降は乗車日が迫るにつれて一定料率のキャンセル料がかかります。「指定席券」の払戻手数料の規定とは根拠が異なることに要注意です。
関連する旅行商品について
この記事の本題から若干外れますが、「海里」号を旅程に含めた旅行商品が多く発売されています。例えば「日本の旅、鉄道の旅」ウェブサイトには多くの旅行商品が掲載されていて、「大人の休日俱楽部」会員であれば代金割引で購入できます。
ただし、それらの旅行商品に含まれる海里号の乗車については4号車の食事付きプランではなく、一般車両乗車のケースが多いため、検討の際にはよくチェックしてください。
「指定席券」「乗車券」「旅行商品」お値段の比較
一番気になるのが、「海里」号に乗車するためのお値段でしょう。各設備別にかかる費用は、次の通りです。
● 一般座席/コンパートメント座席
券種 | 大人 | 小児 |
指定席券 | 840円 | 420円 |
乗車券:新潟ー酒田 | 3,080円 | 1,540円 |
合計 | 3,920円 | 1,960円 |
指定席券の料金は一般的な530円ではなく、840円です。
車内で特製弁当を購入したとすると、大人1人あたり最低でも6,600円程度の支出となります。
【キャンセル料】乗車券・指定席券のルールを適用
● 食事付き専用プラン(旅行商品)
列車 | 大人 | 小児 |
下り:新潟→酒田(日本料理) | 16,400円 | 14,800円 |
上り:酒田→新潟(洋食) | 12,800円 | 11,600円 |
乗車券および指定席券相当分を含めた料金設定です。半期ごとに料金が改定されるため、予約時に公式予約サイトを確認してください。日帰り旅行代金として、いずれも1万円を超えます。
予約方法が「のってたのしい列車」予約サイトのみからのため、旅行商品であっても「大人の休日俱楽部」割引は適用されないです。
【キャンセル料】旅行業約款の約定料率を適用
これらのお値段の評価は、人によって分かれると思います。人それぞれの価値観によって、コスパが良いとも良くないともいえる価格帯です。
お手軽に乗車できる一般座席と比較して、旅行商品のサービスが高級な分、料金設定がかなり強気であることがお分かりいただけるかと思います。

ここから筆者の乗車体験記です!
「海里」号上り列車に乗車!【車内の様子】
筆者は、2022年4月のある金曜日の昼下がりに、酒田駅から新潟駅まで、上り列車の2号車コンパートメント座席に通しで乗車しました。
8852D: 酒田駅 15:00分 →(羽越本線・白新線経由)→ 新潟駅 18:31分
途中の鶴岡駅にて30分間の停車時間があるため、所要時間が3時間半になっています。実質的な走行時間は、ちょうど3時間です。

酒田駅の3番線ホームに筆者が入ったのが、列車の発車前の14:30分頃でした。この直前に特急「いなほ」号新潟行きが発車したばかりで、ホームは閑散としていました。上りの「海里」号は、下り列車と比べ所要時間がかかる分、単純移動目的よりは乗り鉄目的の性格が強い列車かと思います。

14:40分に、3番線ホームに「海里」号の列車が入線してきました。2019年に新造されたHB-E300系車両はまだ新しく、外装の塗装も大変きれいです。

1号車の外装。「海里」号のロゴが、高級感ある専用列車感を醸し出しています。

1号車の一般座席。とてもモダンな感じの内装です。リクライニングシートがより機能的に見えます。

2号車のコンパートメント座席に至る廊下の部分。橙色の廊下がアクセントあります。

コンパートメント座席の車室。白い壁・テーブルとグレーの座席モケットが、やはりきりっとした大人の空間という風に印象付けられます。座席をフラットにする前の状態です。

少し見えにくい場所に、電源を取れるコンセントが1つあります。電源と大きなテーブルがあるので、車室がPC作業のためのワーキングスペースにもなります。コンセントが2か所にあるといいなぁ、と筆者は思いました。

「海里」号では、全車室で座席をフルフラットにできます。スライド座席の操作方法が壁に記載されています。

座席をフルフラットにした状態。身長が低ければ、完全に横になれる広さです。相席だと窮屈さを感じます。

3号車には、共用のイベントスペースがあります。多くの観光列車にあるフリースペースにある椅子が、海里号にはありません。

3号車の売店では、特製弁当を含む食事や軽食、アルコール飲料やソフトドリンクを購入できます。

3号車に設置されている記念スタンプ。列車の紙パンフレットも置かれています。

押印した状態はとても良好ですが、台紙が貧粗なのが残念なところです。

1号車にある多目的トイレ。新造車両なので、大変使いやすく清潔です。
15時ちょうどに、列車が新潟駅に向けて発車。海里号の乗車定員自体が少ないため、乗車したホームや車内に混雑した感じがないのは、観光列車ならではのいい点です。庄内平野をひた走り、鶴岡駅に到着。
「海里」特製弁当「庄内弁」を喫食!【弁当の内容】
基本的に事前予約が必要な特製弁当。売れ残った場合は予約なしでもカウンターにて購入できますが、必ずしも買えるわけではありません。鶴岡駅で30分間停車している間に、特製弁当が積み込まれて、販売が始まりました。
「海里」号車内で購入できる特製弁当。列車の運行開始時から事前予約が必要でしたが、一時的に予約不要の先着順で購入できました。現在は、専用サイトにて事前予約を入れることが推奨されています。確実に購入するためには、スマホ専用サイトから事前予約されることをおススメします(URLは文末参照)。

筆者が乗車した時には、下り列車の新潟駅で積みこまれる「加島屋御膳」2,700円が1つだけ売れ残っていました。上り列車の鶴岡駅で積み込まれた「庄内弁」は2,600円です。日常は躊躇するお値段ながら、折角の機会なので、清水の舞台を降りる気分で1食分を購入。

「庄内弁」の外紙を外した状態。鶴岡の地場の業者さんが出している弁当です。結構高級感ある箱です。

これが「庄内弁」の中身。高級ブランド鮭である「めじか」がメイン料理の「めっこい巻」の材料に使われています(弁当箱の最右方)。山形牛のローストビーフ(最左方)も入っていて、お値段に見合う内容です。普通の弁当に比べ高級感があり、アルコール飲料とよく合います。料亭の味として、しっかりとした食べ応えがあります。

弁当をいただいている間に列車が再び走り出し、日本海岸をひた走りました。途中、桑川駅で長時間停車しました。

筆者が乗車した日は、4月にもかかわらず台風が日本列島に近づいていて、その影響で悪天でした。桑川駅前の道の駅や海岸の遊歩道に出るのに、大雨で濡れてしまいました。

桑川駅の中線に海里号が停車している間に、後続の特急「いなほ」12号に抜かれます。その後、桑川駅を発車した後は休止なく新潟駅までひた走り、高架化された新潟駅には定刻に到着しました。
Appendix-1:「海里」号の席番表
● 1号車(一般座席)

● 2号車(コンパートメント座席)

● 4号車(食事付き専用プラン用座席)

Appendix-2:駅の指定席券売機で指定席券を購入するための操作の流れ
駅の指定席券売機にて観光列車の指定席券を購入するのは、列車によって難易度が違います。「海里」号の場合、比較的簡単に列車を検索することが可能かと思います。
上り列車が発車する酒田駅には、有人の「みどりの窓口」がないため、「指定席券売機」を利用して指定席券を購入する必要があります。
なお、指定席券売機で購入できる「海里」号の設備は、1号車の一般座席のみです。
「海里」号の2号車コンパートメント席を購入するには、ネット予約「えきねっと」で当該座席を指定して予約を完了させた上で、駅の指定席券売機で代金の決済/指定席券の受け取りをするとよいでしょう。
(1) 初期画面の「乗換案内から購入」ボタンを押します(「海里」号のワンタッチボタンがある場合は、以下の手順を飛ばせます)。
(2) 乗車区間と日にちを入力し、列車の発車時刻の少し前の時刻を入力します。
(3) 検索結果として表示された「海里」号を選択します(この画面では左側)。

(4) 指定席券・乗車券の一方または両方とも購入するか指定します。
(5) 座席の設備を指定しますが、海里号の場合は「普通車」一択です。
(7) シートマップを表示させたうえで、好きな座席を選びます。
※ 2号車のコンパートメント座席を指定することはできません(=2号車の座席は指定席券売機では購入できず、有人窓口で購入します)。

参考資料 References
● 「のってたのしい列車」公式サイト「海里」号(JR東日本)

● 「のってたのしい列車」予約サイト(JR東日本びゅうツーリズム&セールス)
海里号4号車食事付きプラン単独の予約購入
● 「Tabi-Connect」サイト
海里号特製弁当の事前予約

● 「日本の旅、鉄道の旅」予約サイト(JR東日本びゅうツーリズム&セールス)
海里号乗車を含む旅行商品、海里号車両使用の臨時列車の予約購入
● 筆者の過去記事:「きらきらうえつ」号乗車体験 2015.10
改訂履歴 Revision History
2022年5月08日:初稿
2022年5月13日:初稿 加筆
2022年5月16日:初稿 修正
2022年5月24日:初稿 加筆
2022年6月02日:初稿 加筆
2022年6月19日:初稿 修正
2022年6月21日:初稿 修正
2023年4月07日:初稿 修正
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