乗り慣れた自分の自転車を列車にそのまま載せて、東京・両国駅から千葉県房総半島の各地まで移動できる、サイクルトレインの「B.B.BASE」(ビービーベース)。比較的平坦な道が多く、年中温暖な気候の房総半島はサイクリングには適した土地で、千葉県でもサイクルツーリズムが推進されています。
「B.B.BASE」は、「Boso Bicycle Base(房総自転車基地)」の意味で、2018年から運行されています。東京から房総半島までの移動基地(移動手段)として、週末に現地でサイクリングを楽しむサイクリストたちが主な乗客層ですが、自転車がなくても観光の足として利用することもできます。
「B.B.BASE」は従前、旅行商品として発売されていて、事前に予約購入しなければならないのがネックでした。2022年3月より、全車指定席の列車として「指定席券」と「乗車券」を購入する形で、満席にならない限り当日でも乗車できるようになりました。当日の天気が分かってから、きっぷを購入して乗車できるようになったのは嬉しいです。

自転車をそのまま載せられるんですね!

自転車があれば座席のそばに載せられますし、なくても乗車できますよ!
この記事では、自転車をそのまま持ち込んで乗車できる「B.B.BASE」がどのような列車で、どのようなコースがあるかという概要について最初に触れます。それから、乗車に必要な「指定席券」と「乗車券」の準備方法を説明します(手回り品となる自転車持ち込み料金についても)。
そして、筆者が2022年5月に「B.B.BASE」の「佐倉・銚子コース」に乗車した時の様子を皆さまと共有したいと思います。
「B.B.BASE」の5つのコース・情報の取り方

「B.B.BASE」は6両編成の電車で、4号車のフリースペース以外の車両にボックスシートがあります。2人用と4人用のボックスシートで、列車の定員が99名です。全員分のサイクルラックが座席の背後に配置されているので、自転車の置き場所の場所取りレースになることはありません。その点は安心できます。
自転車を載せての移動に特化した列車のため、他の観光列車のように「のってたのしい」という雰囲気はあまりなく、インテリアもとても地味です。ただし機能性は長けていて、とても快適に過ごせます。
「B.B.BASE」のコース
週末や祝日を中心に運行される「B.B.BASE」には、目的地によって5つのコースがあります。同じ目的地を毎週末運行するのではなく、5つのコースのそれぞれの目的地をローテーションで運行します。それぞれ、月1~2日程度の運行です。

● B.B.BASE内房
館山駅(千葉県館山市)、和田浦駅(千葉県南房総市)に向かいます。
● B.B.BASE鹿野山・菜久留トレイン
木更津駅(千葉県木更津市)、君津駅(千葉県君津市)方面に向かいます。「菜久留トレイン」に乗車して、久留里線内に入ることができます。
● B.B.BASE外房
上総一ノ宮駅(千葉県一宮町)、勝浦駅(千葉県勝浦市)、安房鴨川駅(千葉県鴨川市)に向かいます。
● B.B.BASE佐倉・銚子
佐倉駅(千葉県佐倉市)、銚子駅(千葉県銚子市)方面に向かいます。行きと帰りで経由路線が異なります。
● B.B.BASE佐原・鹿島
佐原駅(千葉県香取市)、潮来駅(茨城県潮来市)、鹿島神宮駅(茨城県鹿嶋市)方面に向かいます。
情報の収集方法
目的地や運行日が一定ではない臨時列車の「B.B.BASE」に乗車する際は、いつどの駅に向かえるか知った上で計画を立てるようになります。ほぼ唯一のソースは、JR東日本の「のってたのしい列車」公式サイトです(URLは本記事末の参考資料を参照ください)。

JRの主要駅にも「B.B.BASE」の紙のパンフレットが置いてありますが、列車の運行日までは記載されていません。結局は、前述したウェブサイト上で情報を得ることになります。
「B.B.BASE」については、公式ウェブページの他に、Facebook上に「B.B.BASE」クルー主宰の非公式グループがあり、目的地でのランチ処の情報など細かな情報を得ることができます(URLは本記事末の参考資料をどうぞ)。
「B.B.BASE」の運行されたての2018年に、旅行商品としての「B.B.BASE」佐原コースに筆者も乗車したことがあります。その時車内にレンタサイクルを持ち込んだ様子を記事として書いたので、今も参考になろうかと思います。佐原コースの詳細については、古い記事(↓)ですが合わせて参照してください。
「B.B.BASE」の席番表
通勤型の209系車両を改造した車内はとてもシンプルですが、座席配置がゆったりしていて快適です。各車両とも同じ座席配置です。向かって東京湾側の座席が4人掛けのボックスシートです(各号車奇数番A-D席)。

似たような席番配置ですが、6号車だけ席番の付け方が違うので、ご注意を。
この記事の最後にある「Appendix-1」に、各号車の席番表をみやすく掲載しました。
「B.B.BASE」きっぷの準備方法

現在は全車指定席の列車である「B.B.BASE」に乗車するには、「指定席券」と「乗車券」が必要です。
旅行商品だった時と違って、出発数日前に天気予報を確認してからきっぷを買って当日乗車、という行動をとれるようになりました。
乗車1か月前から指定席券を購入することができますが、天気が命!の列車のため、出発間際になってから予約が埋まる傾向があるよう見受けます(繁忙期はタイミングが遅くなると満席になるかも)。
指定席券のお値段
通年:大人840円(小児420円)
※ 自転車の持ち込み料は、特にかかりません。
指定席券の発売開始時期
乗車1か月前の日の朝10時に座席の発売が開始されますが、指定席券を購入する箇所・手段によって開始時期が以下の通り微妙に異なります。
指定席券の発売箇所・発売手段
指定席券を購入する手段および発売開始のタイミングについては、次の通りです。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10:00–
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10:10–
指定席券売機で指定席券を購入する場合だけでなく、「えきねっと」でオンライン決済した場合にも指定席券売機を利用し、紙のきっぷとして指定席券を受け取ります。
指定席券売機の一部操作画面の遷移については、文末の「Appendix-2」を参照ください。
※ 有人窓口よりも10分遅い発売開始です。それまで待てないようであれば、有人窓口へどうぞ。
● 「えきねっと」(インターネット予約)【シートマップ表示可】
乗車日の1か月と7日前の14:00– 【事前受付開始時刻】
「B.B.BASE」の乗車駅によっては、みどりの窓口だけではなく、指定席券売機さえない駅もあるため、「えきねっと」を利用してオンラインで座席を予約してしまうのが、一番楽で安心だと思います。

えきねっとのトップページから「のってたのしい列車の申込」を選択して、列車の一覧から予約を進めるのが簡単です(URLは本記事末の参考資料をどうぞ)。この場合、一緒に購入できる乗車券は「B.B.BASE」の区間と同じになります。

通常の検索画面で発駅と着駅を指定し、経由駅に「両国駅」を含めると、実際に乗り降りする地元の駅まで通しできっぷを買うことができます。
※ 実際に手配が行われるのは、上述した「乗車日1か月前の10:00」と、有人窓口と同一です。事前受付が完了したからといって、予約が確定したわけではないので、要注意です(取れない場合も往々にしてあります)。
※ えきねっとで予約を取った場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。現地でえきねっとを利用してオンライン予約した場合でも、紙のきっぷとして受取が必要なのが、意外に厄介です。
「えきねっと」の事前受付に関する詳しい情報は、筆者の別記事(↓)を参照してください。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券は、以下の券面です。
列車名の表記は「BBBASE●●」です(●●はコース名)。

乗車券について
「B.B.BASE」に乗車するためには、上記指定席券のほか、乗車券が必要とお話ししました。

乗車券としては、Suicaなどの交通系ICカードでも、紙の乗車券でもどちらでも大丈夫です。自転車を持ち込んで専用ゲートをそのまま出入りする場合は、紙のきっぷをあらかじめ買っておくことをおススメしたいです。
というのは、自転車専用ゲートにはSuicaリーダーがなく、入出場のために自動改札に向かうのが二度手間になってしまうからです。どのみち、紙のきっぷとして指定席券を受け取る必要があるので、同時に紙の乗車券を買っておくと良いでしょう。
乗車券を購入する際、経由路線は特に考慮しなくても大丈夫です。駅の運賃表に記載されている金額、もしくは指定席券売機上で表示されている金額で正しいと考えて差し支えありません(大都市近郊区間のため)。
自転車の持ち込みについて
「B.B.BASE」は、自転車を持ち込み、載せることが前提の列車のため、1人1台無料で自転車を持ち込むことができます。サイクルラックも、1人1台確保されています。
「B.B.BASE」以外の列車に乗車して、自宅など最寄りの駅まで移動する場合には、自転車をたたんで袋に入れ、輪行することになります。その場合、無料手回り品として列車に無料で持ち込むことができます(旅客営業規則308条2項)。

さあ、ここからは実際の道中をお話しします!
「B.B.BASE」佐倉・銚子コースに乗車!

9331M: 両国駅 8:12分 →(総武本線経由)→ 銚子駅 10:36分
2022年5月のGW連休明けの週末、「B.B.BASE」佐倉銚子コースが出発する両国駅に朝早く向かいました。
佐倉・銚子コースの銚子駅行きの列車は、総武本線成東駅(千葉県山武市)まわりで、途中松尾駅(千葉県山武市)と干潟駅(千葉県旭市)に停車します。夕方両国駅に戻る列車は成田線まわりで途中佐原駅(千葉県香取市)に停車し、乗客を拾ってから戻ります。行きと帰りで通る路線が違うので、注意が必要です。
車内には4号車に小さなカウンターがありますが、食料や飲料の車内販売はありません。食べ物や飲料の持ち込みは可能なので、駅に入る前にコンビニなどで調達しておきましょう。
筆者は自転車を携行していなく、単なる乗り鉄で乗車したため、両国駅では西口改札口から直接列車が発車する3番線ホームに入りました。
7:30分過ぎに両国駅に着いた時には、3番線に至る通路のシャッターがまだ閉まっていました。発車30分前に開くとのこと。

7:40分になり、ようやく通路であるステーションギャラリーに入れました。房総半島を昔走っていた急行列車などの資料が展示されていました。

自転車をそのまま列車に持ち込むための入口が、駅の外側からつながっています。両国駅西口から国技館の脇を抜けると3番線ホームに上がれます。

両国駅3番線ホームだけに残されている、国鉄時代からの駅名柱です。

列車はすでに入線していて、車内に入れる状態でした。乗客も早くから集まってきました。
「B.B.BASE」車内の様子
「B.B.BASE」の車両は、元々通勤電車の209系電車を種車として改造されています。通勤電車ゆえ、大量の乗客を詰め込める仕様です。その空間に、広々としたボックスシートとサイクルラックが配置されています。

ボックスシートは、4人用と2人用が配置されていて、座席の幅がグリーン車並みに広いです。

ボックスシートのシートピッチもとても広く、足元のスペースが半端なく広いです。改造前には14人が座れるロングシートだったスペースに、6人分のボックスシートが配置されたので、広くて当然です。

各ボックスにあるテーブルには、スマホ用のコンセントがあって、充電ができます。JR東日本エリアの他の列車同様、フリーWIFI設備がないのが残念なところです。

ドアの数は減らされておらず、1両あたり4ドアの数は変わりません。各ドアの脇にサイクルラックが配置されていて、自転車の扱いがしやすい設計になっています。

ドアの数や形状は改造前から変更されていませんが、結果的に自転車の出し入れが容易になっています。

4号車のフリースペース。改造前のロングシートがそのままの形で残っています。ボックスシートに座らず、このロングシートに乗車した人を見かけました。

「B.B.BASE」には、アテンダントの代わりに男性のクルーが添乗していて、乗客のサポートをしてくれますが、彼らの居場所が4号車です。小さなカウンターがあります。

編成内のトイレは、4号車と2号車の2か所にあります。観光列車クラスの凝ったものではなく、元の通勤電車仕様のままです。

トイレの隣にある洗面所。広いスペースが確保されていて、軽い着替えや汗をぬぐう程度のことが可能です。
「B.B.BASE」銚子駅に向けて出発!

この日は総武快速線を走る他の列車にトラブルがあって、10分弱の遅れで両国駅を出発。この日の乗客層、本来のターゲットであるサイクリストと乗り鉄客の割合がほぼ半々で、ボックスシートが一部を残して埋まっている程度の乗車率でした。乗り鉄客なしには、観光列車が維持できないと思ったくらいでした。

発車してからクルーがまわってきて、検札をするのと同時にスタンプカードを配っていて、もらいました。片道1回の乗車でスタンプ1個、3回往復乗車して6個貯まったら、オリジナルグッズプレゼントとのこと。観光列車でスタンプカードを配り、リピートを期待するのは、筆者が乗車経験した観光列車の中では初めてです。

9分の遅れのまま、途中の松尾駅に到着。山武市の職員さんが乗ってきて、観光パンフを配っていました。ホームでいちごとおにぎりを準備しているので取りに来て、と言われたのですが、本来あるはずの停車時間が列車遅延のためなく、すぐに発車。車掌が乗客をすぐに車内に戻して発車したので、もらう暇なし。山武市の職員さんが気の毒でした。
いただいたパンフの中には、山武市めぐりに便利な情報が入っていて、寄っていってください!というアピールを感じました。筆者が乗車した時には、乗客限定でいちご狩り無料!というチラシも入っていました。

銚子駅にはほぼ定刻に到着。千葉支社のゆるキャラ「駅長犬」が出迎えてくれました。

銚子駅に着いてから向かった、銚子港近くの魚料理屋さんでいただいた、刺身定食と刺身盛り合わせが格別においしかったです!

Appendix-1:「B.B.BASE」席番表
● 1・2・3・5号車

● 6号車

Appendix-2:指定席券売機の画面操作方法(画面遷移)
駅に設置された指定席券売機で「B.B.BASE」の指定席券、乗車券を購入する具体的な流れです(以下の画面は「B.B.BASE」外房のものです)。
どの駅で購入する場合でも、最初に「乗換案内から購入」のボタンを押すと、これから説明する検索画面が表示されます。
(1) 検索画面上で、次の項目を入力します。
● 発駅・着駅:「B.B.BASE」の区間外の駅から通しで乗車券を購入する場合、実際の出発駅を入力します。
● 日付・時刻:終着駅に到着する時刻を入力する方が検索しやすいと思います(例.安房鴨川駅に9:55分着)。
● 人数
● 経由駅:「B.B.BASE」の区間外の駅から通しで乗車券を購入する場合、「両国駅」を指定します。

(2) 検索結果として「B.B.BASE」が表示されたら、選択します。

(3) 指定席券と乗車券の両方を買うか、いずれか一方だけ買うか選択します。
(4) 指定席券を購入する場合、シートマップを表示させて席を選べます。席を取りたい号車を選択します(すべての号車を選択できます)。

(5) 「B.B.BASE」の場合、ボックスシートのレイアウトと進行方向が画面に表示されるため、簡単に選択できます。

(6) 代金を決済し、きっぷを受け取ります。
参考資料 References
● 「のってたのしい列車」公式サイト「B.B.BASE」のページ(JR東日本)

● えきねっと「のってたのしい列車」予約ページ
● Facebookグループ「非公式 B.B.BASE Fun」
● 旅客営業規則308条(無料手回り品のルール)
第308条 旅客は、第309条に規定する以外の携帯できる物品であって、列車の状況により、運輸上支障を生ずるおそれがないと認められるときに限り、3辺の最大の和が、250センチメートル以内のもので、その重量が30キログラム以内のものを無料で車内に2個まで持ち込むことができる。ただし、長さ2メートルを超える物品は車内に持ち込むことができない。
2 旅客は、前項に規定する制限内であっても、自転車及びサーフボードについては、次の各号の1に該当する場合に限り、無料で車内に持ち込むことができる。
(1)自転車にあっては、解体して専用の袋に収納したもの又は折りたたみ式自転車であって、折りたたんで専用の袋に収納したもの
(2)サーフボードにあっては、専用の袋に収納したもの
改訂履歴 Revision History
2022年5月20日:初稿
2022年5月24日:初稿 加筆
2022年6月01日:初稿 加筆
2022年6月06日:初稿 修正
2022年6月19日:初稿 修正
2022年6月21日:初稿 修正
2023年4月08日:初稿 修正
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