「大人の休日俱楽部」の会員になると、ジパング会員では30%、ミドル会員では5%の運賃や料金の割引を受けられることは、ご周知のことと思います。
筆者も「大人の休日俱楽部」への入会以来、多くの割引きっぷをオーダーメイドで購入したり、「大人の休日パス」を購入したりと、遠方への乗り鉄の経済的なハードルが下がりました。
しかし、筆者がいざ乗り鉄に出かけようとすると、天気に恵まれず、日にちの変更が必要になることが何回かありました。その過程で「大人の休日俱楽部」割引きっぷに関する乗車変更について、実は制約が多いことを知りました。

割引のメリットが前面に出ていますが、ちょっとしたワナも潜んでいます。
この記事では、「大人の休日俱楽部」割引きっぷを購入後、「乗車変更」を行う場合に知っておきたい、あまり知られていない注意点について、筆者の実例を含めて詳しく取りあげました。
なお、この記事でお話しする「割引きっぷ」は、オーダーメイドでつくる乗車券類を指します。「大人の休日俱楽部パス」などの会員用フリーパスのことではない点を留意してください。
きっぷの使用前か使用開始後かで取り扱いが異なる
「大人の休日俱楽部」会員になると、JR東日本・北海道エリアで完結するきっぷを、割引で購入することができます。
そのきっぷには、「乗車券」だけではなく「特急券」「グリーン券」といった料金券も含まれます(それらのきっぷのことを、まとめて「乗車券類」といいます)。
「大人の休日俱楽部」会員として、割引の乗車券類を割引で購入した後に、やっぱり旅程を変えたい、ということがあろうかと思料します。旅行の出発前に旅程を変更したいと考えることもあれば、出発してから行きたいところが変わることもあろうかと思います。
きっぷの変更のことは「乗車変更」と呼ばれ、きっぷを買ってからも一回だけならば考え直して、変更ということで別のきっぷを作り直すことができます。
割引がない所定料金のきっぷであれば、乗車変更に特別な条件はありません、しかし、「大人の休日俱楽部」の割引きっぷについては、実はかなり制約があります。
旅行開始前で、きっぷを全く使っていない状態であれば、1回だけ乗車変更ができます。最初にきっぷを購入した時の旅程と全く異なる旅程にすることも可能ですが、一般ルールよりも制約がきついです。
そして、きっぷを使い始めてから旅程を変更したくなることもあります。「大人の休日俱楽部」割引きっぷに関しては、旅行開始後の乗車変更が一切ができません。その場合、きっぷを払い戻して買い直すことになります。
「大人の休日俱楽部」割引きっぷの乗車変更に関する制限について、実はあまり情報が出回っていません。そのため、広く知られていないことと思います。
大人の休日俱楽部カード入会時に郵送されてくる「ご利用ガイド」には、細かな利用条件が小さな文字でしれっと記載されています。この割引きっぷが、厳密には「企画乗車券」にカテゴライズされていることが明記されていないため、一般の運送約款が適用される無割引の乗車券類とルールが同じと誤解しがちです。
旅行開始前の乗車変更

「大人の休日俱楽部」割引が適用された料金券を含む、すべてのきっぷを全く使っていない状態で、乗車券の種別、旅行開始日、区間、経由路線などを変更することを、「旅行開始前の乗車変更」といいます。
無割引の乗車券類については、「1回だけ」行えるという制限を除き、変更の仕方に特別な制約はありません(普通乗車券については、普通乗車券相互間の変更が可能)。
しかし、「大人の休日俱楽部」割引きっぷは、厳密には「企画乗車券」です。そのため、無割引の乗車券類よりも制約が多くあります。その最たるものが、乗車券の種別相互間の変更ができない点です。
乗車券の種別には、「片道」「往復」「連続」の3つがあります。無割引の乗車券類の乗車変更の一般ルールでは、それらの種別の変更を制限なく行うことが可能です。
しかし、「大人の休日俱楽部」割引きっぷになると、
● 片道 → 片道
● 往復 → 往復
● 連続 → 連続
と、同じ種別でしか変更が認められません。

例えば、往復きっぷを買ったけど、かえりの分がいらなくなったから片道きっぷに変更したいということが、旅行出発前でもできません(乗車変更できないため、払いもどすために払戻手数料を支払う必要があります)。
また、無割引の普通乗車券を後から大人の休日俱楽部割引適用の乗車券に変更することもできず、いったん払いもどしの必要があります。
「大人の休日俱楽部」割引きっぷは「乗車券」だけでなく、料金券も含まれるため、取り扱い上制限をかけざるを得ないところがあるでしょう。
この記事では、紙のきっぷを前提にお話ししています。「えきねっと」上で購入した「新幹線eチケット」(おときゅうeチケット)については、取り扱いがまったく異なります。
筆者の乗車変更事例【旅行開始前】
筆者が大宮駅から勝田駅まで臨時特急列車を利用する機会がありました。その際、両駅間は片道では201kmを超えないものの、往復では201km以上になります。そこで、往復乗車券と往復分の特急券をセットで、「大人の休日俱楽部」割引きっぷとして購入しました。
その後、旅行予定日の天気が悪いということで、日にちを1日ずらすために、乗車変更を申し出ました。


これらは、乗車変更した後の、ゆきとかえりの乗車券です(余談ながら駅員のハンドリングが雑です)。


これらは、乗車変更をした後の、往路分の特急券と復路分の特急券です。
もともと購入したのが「往復乗車券」で、変更後も「往復乗車券」です。その経路上に、特急券が乗っているかたちです。乗車変更に制約が多いながらも、問題なく乗車変更できる事例になります。
乗車変更後の券面には「乗変」と表示されます。今回は同じ経路での乗車変更で、金額の変更はありませんでしたが、目的地や金額が変わっても差し支えありません。
旅行開始後の乗車変更

列車に乗車するためにきっぷを使い始めたら、「旅行開始後」となります。
無割引のきっぷに適用される一般ルールでは、この変更を「区間変更」とよび、特別な取り扱い方が規定されています。
しかし、「大人の休日俱楽部」割引きっぷについては「区間変更」の取り扱いをしないと規定されています。割引きっぷならではの制約といえます。
区間変更に料金券を含めると混乱を極める、というのが取り扱いをしない背景と考えられます。
きっぷをいったん使い始めたらきっぷの乗車変更は一切できず、払戻手数料を支払って払いもどすしかないと覚えておきましょう。
区間変更できないのは「乗車券」だけではなく、セットで購入した料金券も含まれます。乗車券上の違う区間の特急券に変更したいと思っても、それができないので要注意です(この場合、当該料金券を払いもどし)。
「大人の休日俱楽部」にかかわる旅行開始後の「区間変更」についての情報が、今まで見つけられませんでした。事例そのものが少ないことや、「制約が多い」ことを知られること自体がJR東日本にとって都合が悪いことの両面が、理由として考えられます。
筆者の乗車変更事例【旅行開始後】
筆者が使用した「大人の休日俱楽部」割引が適用された連続乗車券の経路上にある新幹線に乗車するための「新幹線自由席特急券」が不要となり、他の特急列車の特急券に変更しようと考えました。

これは、不要になった小山駅から大宮駅までの「新幹線特定特急券」です(単区間の新幹線自由席特急券は、新幹線特定特急券となります)。
駅のみどりの窓口でその変更を申し出たところ、旅行開始後の変更は一切できず、払いもどすしかないとの答えを得ました。筆者の野望は見事に打ち砕かれ、泣く泣く払戻手数料220円を支払うことになりました。

不要になった料金券1枚につき、所定の払戻手数料(*)がそれぞれかかります。この事例では、「大人の休日俱楽部」割引きっぷである「新幹線特定特急券」950円をクレジットカードに戻し入れる代わりに、払戻手数料220円を新たに収受することになります。計算書には、このことが端的に表示されています。
* 払戻手数料:指定券以外1枚220円/指定券1枚最低340円
まとめ
きっぷを使い始める前(旅行開始前)であっても、乗車券の種別を変更できないなどの縛りがあります。
そして、いずれかのきっぷを一枚でも使い始めた途端(旅行開始後)、乗車変更そのものができなくなります。
一枚一枚の料金券が未使用だから、一枚づつ乗車変更できるのでは、と考えがちですが、「大人の休日俱楽部」割引きっぷは、すべての乗車券と料金券を一セットと考えます。そのため、いずれか一枚のきっぷを使用し始めた瞬間、すべてのきっぷの変更ができなくなります。
無割引の乗車券類では考えられない、企画乗車券にカテゴライズされる「大人の休日俱楽部」割引きっぷ独特の厳しい制約です。
きっぷの割引率が、特にミドルでは5%と低率です。乗車変更に制約があることは、受けられる割引(利益)に対して、リスク(負担)を負うことになります。「割引の裏には制限がある」ということを、肝に銘じる必要があるでしょう。
参考資料 References
● 「大人の休日俱楽部カード」ご利用ガイド(ビューカード)2021.7
● 「大人の休日俱楽部」公式ウェブサイト 割引きっぷの概要(JR東日本)

● 「きっぷあれこれ」きっぷの変更(JR東日本)
● 旅客鉄道株式会社旅客営業規則248条(乗車券類変更)より抜粋
第248条 普通乗車券、急行券、特別車両券、寝台券、コンパートメント券又は座席指定券を所持する旅客は、旅行開始前又は使用開始前に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、1回に限って、当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更(この変更を「乗車券類変更」という。)することができる。ただし、次の各号に定める乗車券類の変更については、これを同種類のものとみなして取り扱うことができる。
(1)普通乗車券相互間の変更
(2)指定急行券以外の急行券相互間の変更
(3)自由席特別車両券(急行・自由席特別車両券(A)を含む。以下この条において同じ。)相互間の変更
(4)指定券(急行・指定席特別車両券(A)、急行・寝台券、急行・コンパートメント券及び急行・座席指定券を含む。以下この条において同じ。)相互間の変更
(5)指定急行券以外の急行券又は自由席特別車両券から指定券への変更
● 旅客鉄道株式会社旅客営業規則249条(区間変更)より抜粋
第249条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券、普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅、営業キロ又は経路について、次の各号に定める変更(この変更を「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅又は営業キロを、当該着駅を超えた駅又は当該営業キロを超えた営業キロへの変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
2区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)普通乗車券
イ 次により取り扱う。この場合、原乗車券が割引普通乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)であって、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、変更区間及び不乗区間に対する旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によって計算する。
(イ)前項第1号に規定する場合は、変更区間に対する普通旅客運賃を収受する。
(ロ)前項第2号及び第3号に規定する場合は、変更区間(変更区間が2区間以上ある場合で、その変更区間の間に原乗車券の区間があるときは、これを変更区間とみなす。以下同じ。)に対する普通旅客運賃と、原乗車券の不乗区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
ロ イの場合において、原乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)が次のいずれかに該当するときは、原乗車券の区間に対するすでに収受した旅客運賃と、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。この場合、原乗車券が割引普通乗車券であって、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によって計算する。
(イ)大都市近郊区間内にある駅相互発着の乗車券で、同区間内の駅に区間変更の取扱いをするとき。
(ロ)片道の乗車区間の営業キロが100キロメートル以内の普通乗車券で区間変更の取扱いをするとき。
(2)自由席特急券、特定特急券、普通急行券又は自由席特別車両券
原乗車券類に対するすでに収受した料金と、実際の乗車区間の営業キロ又は同区間に対する料金とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
改訂履歴 Revision History
2022年6月10日:初稿
2022年6月13日:初稿 加筆
2022年6月19日:初稿 修正
2022年6月21日:初稿 修正
2022年9月09日:初稿 修正
2023年4月07日:初稿 修正
2023年5月25日:初稿 修正
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