JR東日本首都圏エリア発着の在来線特急列車の大半は、全車指定席です(対象列車は後述します)。それらの特急列車に乗車するには、乗車する前に特急券を購入し、座席指定を受ける必要があります。
しかし、事情によっては、座席指定を受けられない場合があります。
● 列車が満席の場合
● 乗車する列車を確定できないけど、特急券だけ用意する場合
● 特急券を持たずに列車に乗車した場合(無札)
これらの中でも、特急券を持たずに乗車してしまった場合、車内料金が大人で260円加算されてしまいます。できれば回避したいところです。
そこで登場するのが「座席未指定券」です。

「座席未指定券」では、基本的に座席が確保されません。まずは、普通の(指定席)特急券の購入を考えましょう。
この記事では、JR東日本在来線特急列車の中で対象となる列車の「座席未指定券」の買い方・変更・払い戻し方や座席指定の受け方、座席の座り方について解説します。最後に、座席未指定券で乗車するシステムの課題点についてお話ししたいと思います。
「座席未指定券」の対象列車~どのような場合に買うか~
座席指定を受けた特急券を購入できない場合、やむを得ず購入する「座席未指定券」。たとえ座席指定を受けられない場合でも、車内料金の追徴を回避するため、乗車する前に必ず座席未指定券を買っておきたいところです。
前述した通り、次のケースでは「座席未指定券」を購入することになります。
● 列車が満席の場合
● 乗車する列車を確定できないけど、特急券だけ用意する場合
この場合でも、座席指定を受けることを強くおススメします。
「座席未指定券」のシステムがあるのは普通車指定席だけで、グリーン車には適用されません(もともと全席指定)。

「座席未指定券」を購入しうる首都圏エリア発着の在来線特急列車は、全車指定席の次の列車です。
● 東海道線特急:特急「踊り子」号・「湘南」号
● 中央線特急:特急「あずさ」号・「かいじ」号・「富士回遊」号・「はちおうじ」号・「おうめ」号
● 高崎線特急:特急「あかぎ」号
● 常磐線特急:特急「ひたち」号・「ときわ」号
● 「成田エクスプレス」
これらの列車のうち、特急「踊り子」号の伊豆箱根鉄道駿豆線内の区間、特急「富士回遊」号の富士急行線内の区間については、鉄道会社の都合で座席指定を行いません。当該線内のみ乗車する場合、座席指定を受けられず、必然的に座席未指定券で乗車することになります。
なお、特急「踊り子」号の伊豆急行線内の区間については、座席指定を受けられます。
料金・買い方・特急券の様式

ここでは、座席未指定券の料金、買い方、紙の特急券の様式についてお話しします。
特急料金の金額
これらの列車の特急料金には、繁忙期や閑散期といったシーズナリティがなく、通年同額です(成田エクスプレスを除く)。
また、座席指定を受けても受けなくても、特急料金は同額です。この点が、自由席の設定がある特急列車との大きな違いです。
詳しくは後述しますが、「事前料金」と「車内料金」の2種類の料金設定があります。車内料金を適用されないよう、乗車するまでに特急券を買いましょう。
● 東海道線特急・中央線特急・常磐線特急・「あかぎ」号
通年同額です(シーズナリティはありません)。余談ながら、座席指定を受けたチケットレス特急券は、下表の事前料金より100円引きです。
営業キロ | 事前料金 | 車内料金 |
50キロまで | 760円 | 1,020円 |
100キロまで | 1,020円 | 1,280円 |
150キロまで | 1,580円 | 1,840円 |
200キロまで | 2,240円 | 2,500円 |
300キロまで | 2,550円 | 2,810円 |
400キロまで | 2,900円 | 3,160円 |
乗車するまでに、座席未指定券を含む特急券を購入すれば、必ず「事前料金」が適用されます。
「車内料金」が適用されるのは、特急券を持たずに普通車指定席に乗車した場合(無札)、そして「大人の休日俱楽部パス」を持っていても、座席指定を受けなかった場合です。準備なく列車に飛び乗ると高額な車内料金を取られるので、うかつに飛び乗りできません。
それに加え、車内で特急料金を支払った場合、座席指定は受けられません。空席に座るか立席かになります。座れなかったからといって、料金の払いもどしを請求することはできません。
● 「成田エクスプレス」
指定席特急料金と同額です(シーズナリティがあり、最繁忙期や繁忙期、閑散期は料金が異なります)。全車指定席ですが、「立席特急券」ではなく、「座席未指定券」が適用されます(満席でも同額ということ)。
車内料金が適用されないので、無札で乗車しても同額です。余談ながら、座席指定を受けたチケットレス特急券の場合、下表より200円引きです。
営業キロ | 特急料金 |
50キロまで | 1,290円 |
100キロまで | 1,730円 |
150キロまで | 2,390円 |
200キロまで | 2,730円 |
座席未指定券の買い方
ネット予約の「えきねっと」では、座席指定を受けて決済するのが前提のため、座席指定されていない座席未指定券を購入できません。列車が満席でも、座席未指定券を購入できません。
座席未指定券は、駅にある指定席券売機か、みどりの窓口(有人窓口)のいずれかで購入します。指定席券売機の操作画面は、記事文末のAppendixに掲載しました。

やむなく「座席未指定券」を購入した場合でも、乗車するまでに極力座席指定を受けましょう。
座席未指定券・特急券(指定券)の様式
座席未指定券[特急券(座席未指定)]の様式はこの通りで、列車名、区間および乗車日のみが指定されています。

座席指定を受けると、座席番号が記載された通常の[特急券]に引き換えになります。

社線区間の買い方・きっぷの様式
● 特急「踊り子」号の伊豆急行線内のみ乗車の料金
伊豆急行線内(伊東駅と伊豆急下田駅の区間)のみ乗車する場合の特急料金は、大人600円均一です。また、座席指定を受けても受けなくても同額です。

● 特急「踊り子」号の伊豆箱根鉄道線内のみの料金
伊豆箱根鉄道駿豆線内(三島駅と修善寺駅の区間)のみ乗車する場合の特急料金は、大人200円均一です。座席指定は受けられず、「座席未指定券」を購入して空席に座ります(「大人の休日俱楽部パス」の有効区間外です)。

● 特急「富士回遊」号の富士急行線内のみ乗車の料金
富士急行線内(大月駅と河口湖駅の区間)のみを乗車する場合の特急料金は、区間により金額が異なります(下表参照)。座席指定は受けられず、「座席未指定券」を購入して空席に座ります。
区間 | 大人料金 | 小児料金 |
大月~下吉田・富士山・富士急ハイランド・河口湖の駅間 | 600 | 400 |
富士山・河口湖の駅間 | 0 | 0 |
上記以外の駅間 | 400 | 300 |

列車の乗り方・座席の座り方
ここでは、座席未指定券を購入し、座席指定を受けない状態で列車に乗車する場合を想定し、説明します。
「大人の休日俱楽部パス」を持っている場合、列車に乗車する前に必ず座席指定を受け「指定券」を受け取ります。そうしない場合、特急料金を無割引の「車内料金」で全額支払うことになります。「Japan Rail Pass」を持っている場合も、乗車する前に必ず座席指定を受けます。
座席未指定券が発売される特急列車の各座席には、当該座席の販売状況を示す3色のランプが付いています(ランプがついていない列車もあります)。
このランプの色は、座席の販売状況次第でリアルタイムに変わります。ランプの色には3つあり、それぞれの意味は次の通りです。
● 赤色:まだ売れていない席(しばらくの間空席)
● 黄色:売れた席(これから先の駅で、間もなく席が埋まる)
● 緑色:売れた席(誰かがすでに座っているはず)
乗車する前に座席指定を受けずに、座席未指定券や無札で乗車した場合、その時点で売れていない「赤色」もしくは「黄色」のランプが付いた座席に座ります。
列車が走っている間も、座席の販売が続きます。その座席が販売されて、ランプが突然「緑色」に変わることがあります。その場合、当該座席に座り続けることはできません。
座席指定を受けた特急券を持った乗客の立場が強く、今まで座っていた座席を譲らなければなりません。混雑時や満席時は座れなくなります。座れなかったといって、座席未指定券は払いもどしできません。

この写真を撮った時点では、赤色のランプがついた席がほとんどです。ほとんど空席の状態です。

この写真を撮った時点では、赤色、黄色、緑色が混ざっています。まあまあ席が売れている状態で、これから混んでくるかもしれないです。

この写真を撮った時点では、緑色のランプがついた席ばかりです。満席の状態です。
座席のポケットには、座席の座り方についての説明書が置かれています。表面・裏面の内容は、以下の写真の通りです。


外国人が進んで読むような内容とはいえません。
変更・払いもどしについて
座席未指定券の乗車変更を行う場合や払いもどしする場合の扱いを説明します。
座席未指定券は、普通車指定席の特急券に当たるため、指定券に準じた扱いがされます。
乗車変更
座席未指定券を使って、指定された列車、指定日と指定区間の範囲内で列車の座席指定を行う場合、乗車変更には当たりません。
座席未指定券の乗車日付や区間を変更する場合、そして座席指定を受け終わったあとの特急券を変更する場合、乗車変更に当たります。1回のみ乗車変更できます。
払いもどし
ここでお話しする払いもどしは、あくまでも列車に乗車しなかった場合です。列車に乗車した場合は、座れなかったとしても払いもどしできません。
指定券のカテゴリーに含まれるため、座席指定されていてもいなくても、払戻手数料は1枚340円です。ただし、座席指定を受けていない状態であれば、乗車2日以内の払いもどしに適用される30%の手数料はかかりません。
つまり、乗車2日前よりも直前になってから、座席指定を受けない状態で座席未指定券を払い戻した場合、手数料が1枚340円で済むということになります(いったん座席指定を受けると、30%とられるという意味です)。
「座席未指定券」の課題点~乗客想いとはいえない~

この記事で見てきたように、座席指定が前提の列車では、座席未指定券を発売することはイレギュラーといえます。イレギュラーという観点から、乗客にとって、以下のようなデメリットがあります。
● 料金面
満席の場合に、指定席特急券と同額の「座席未指定券」を買うということは、座れても座れなくても値段が変わらないことを意味します。
自由席が設定されている特急列車や(全車指定席であっても)新幹線が満席の場合の購入する特急券は「立席特急券」です。指定席特急料金から530円引き=自由席特急料金のレベルです。
この記事でお話ししてきた全車指定席の首都圏発着特急列車は、まずもって料金面で実質引き上げになったといえます。
● 座席を譲ること
座席未指定券では座席指定がされていないため、着席が保証されていません。同じ値段を払っても、座席指定を受けられた人に席を譲らなければいけないのは、普通の感覚ならば納得いかないことではないでしょうか。
納得いかない感があるため、席を譲ってくれないなどのトラブル発生が十分予期できます。
そもそも、全車指定席の特急列車は、満席になったら、それ以上乗客を乗せないものです。ところが、「座席未指定券」を買わせて乗せてしまうのです。座っている人にとっても、座れない人にとっても、不快感だけが残るでしょう。本来ならば、座席定員以上の席を売るべきではありません。
個人的には、鉄道会社のご都合でこのようなシステムが乗客不在で決められたとしか思えませんが、いかがでしょうか。
Appendix-1:指定席券売機で座席未指定券を新規購入

ここでは、どの駅にもある「乗換案内から購入」から購入する方法を説明します。駅によっては、ワンタッチメニューから購入できる場合もあります。
(1) 最初の画面にある「乗換案内から購入」を押します。

(2) 発駅、着駅、日付、人数を入力して「検索」します。

(3) 購入する列車を「選択」します(この画面の場合、どちらを選んでも結果は同じ)。

(4) 特急券だけを購入するか、乗車券込みで購入するか「選択」します。

(5) 設備が表示されたら、「座席未指定」を押します。

(6) 座席未指定券についての説明が表示されます。

(7) 購入内容を「確認」します。

出力されたきっぷ

Appendix-2:指定席券売機で座席未指定券に座席指定
初期画面にある「指定席」メニューから操作を進めます。
(8) 「指定席の変更/座席未指定券への座席指定」を押します。

(9) 座席未指定券を人数分、券売機に挿入します。

(10) 座席指定したい列車・設備を選択します(普通車指定席のみ押せます)。

(11) 座席を選択します。
(12) 最終画面にて、内容を「確認」します。

出力されたきっぷ

参考資料 References
● 「きっぷあれこれ」特急券(JR東日本)
● 首都圏発着特急列車 ご利用方法(JR東日本)
● 富士回遊号について(富士山麓電氣鐡道)
● 大人の休日俱楽部パス(JR東日本)

改訂履歴 Revision History
2022年6月30日:初稿
2022年9月09日:初稿 修正
2022年10月19日:初稿 修正
2023年4月07日:初稿 修正
2023年4月26日:初稿 加筆
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