JR東日本管内のローカル線を中心に、臨時列車として投入されるトロッコ車両の「びゅうコースター風っこ」。
春から秋の季節にかけては、オープンエアーの車内に入る風を浴びながら、心地よい移動を楽しめます。冬場には、車内にあるストーブが稼働して、同じ車両がストーブ列車に変わります。
「びゅうコースター風っこ」は、JR東日本管内の各地に出張して、いろいろな線区を走ります。臨時列車として運行されますが、季節によって、走る線区や区間がある程度決まっています。
「びゅうコースター風っこ」の列車名は、走る線区や目的地の地名によって「風っこ●●」号もしくは「●●風っこ」号のように命名されます。また、一発屋の臨時列車であることはむしろ少なく、例えば新緑や紅葉の時期に毎年走る季節列車的な性格を持っています。
「風っこ」は、いわゆる「のってたのしい列車」にはカテゴライズされず、ピンの臨時列車の扱いになっています。これが、きっぷの取り方に関係してきます。

楽しそうな列車ですね!

はい。天気がいいと、涼風を浴びながら、気分爽快な乗り鉄を楽しめます!
この記事では、いわばJR版のトロッコ列車である「風っこ」の概要や予約の取り方、きっぷの買い方について、詳しく説明します。
そして、春から秋にかけてオープンエアーの車内を楽しめる代表的な列車として、JR只見線を走る「風っこ只見線」号に筆者が実際に乗車した体験を、レポしたいと思います。
「びゅうコースター風っこ」の概要・列車の走る区間

「びゅうコースター風っこ」は、気動車のキハ48形がトロッコ列車として改造された2両編成の車両で、2000年から稼働しています。すでに稼働から20年以上が経っており、率直なところ車両の古さを感じます。
しかし、一昔前の観光列車として、定食メニュー的な「のってたのしい列車」では得られない、汽車旅の懐かしさを体験することができます。
「びゅうコースター風っこ」の所属は、宮城県北部の美里町にある小牛田運輸区です。小牛田をベースに、各地に出張して臨時列車として稼働しています。
毎年春から秋にかけて走る「びゅうコースター風っこ」は、窓ガラスを取り払い、車内に風が心地よく吹き込む、オープンエアーの車両です。2両編成の列車の座席は、木製のボックスシートです。
「風っこ」が走る路線・区間
冒頭で申し上げた通り、「びゅうコースター風っこ」は、一回限りの単発の臨時列車として走ることは少なく、毎年決まった季節に同じ線区・区間を走る傾向があります。
「びゅうコースター風っこ」が実際に走る際の列車名は、線区や目的地の地名、季節を織り込み、「風っこ●●」号か「●●風っこ」号のように命名されます。

2021年度から2022年度にかけて定期的に運行された、春夏秋の「風っこ●●」号の運行時期・線区・区間を、この記事の最後に記載しました。
定期的に「風っこ」が走る線区・区間は、次の通りです。
● JR只見線(会津若松駅ー会津川口駅)
● JR水郡線(水戸駅ー磐城石川駅)
● JR左沢線(山形駅ー寒河江駅)
● JR五能線(弘前駅ー五所川原駅)
● JR男鹿線(秋田駅ー男鹿駅)
● JR陸羽東線(仙台駅ー新庄駅)
他にも、単発で運行された列車には「風っこ仙山線春風」号、「風っこ夏休み奥羽本線」号などがあります。
このように、「びゅうコースター風っこ」は、いろいろな列車として運行されます。したがって、いわゆる「のってたのしい列車」にはカテゴライズされていません。過度に商業化されていない、純粋な穴場的臨時列車の乗り鉄を楽しむことができるかと思います。
冬場にストーブ列車として走る「風っこストーブ喜多方」号の乗車体験については、筆者の別記事(↓)を参照ください。
「風っこ」の席番表

1号車と2号車の中間から先頭部分に向かって、席番が進みます。
1号車では、トイレに近い方が若い席番、2号車ではストーブに近い方が若い席番です。そのため、1号車と2号車では進行方向に向かって偶数番か奇数番か異なります。席番を指定する際、要注意です。

席番表の拡大版は、記事最後のコチラをご覧ください。
「風っこ」の情報源
「風っこ」は「のってたのしい列車」ではないため、今のところ公式ウェブサイトがありません。運行日や区間などの詳しい情報については、JR東日本のニュースリリースにて発表される、季節ごとの増発列車の資料から情報を拾う必要があります。
「風っこ」号の予約の取り方・きっぷの準備

臨時列車の「風っこ」は、いずれの列車も全車指定席です。乗車するには、事前に「乗車券」と「指定席券」を購入します。
一言に「風っこ」と言っても、毎年定期的に走る臨時列車か、1回限り走るピンの臨時列車か、それぞれ性格が違います。そのため、一概に列車の予約の取りやすさを言うことはできません。これまで走ったことがない区間を初めて走る場合、予約が取りにくいのではないでしょうか。
トロッコ列車である「風っこ」の木製ボックスシートは、かなり狭めです。1ボックスあたり、大人2人と子ども1人で座って、ちょうどいい感じでしょうか。大柄な男性が4人で座ると、かなり圧迫感があります。混雑していなければ、間隔をあけて座席指定するとよいでしょう。
指定席券のお値段
通年:大人530円(小児260円)
指定席券の発売開始時期
乗車1か月前の日の朝10時00分に座席の発売が開始されます。指定席券を購入する箇所・手段によって開始時期が以下の通り微妙に異なります。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10時00分~
※ 只見線内の駅員常駐駅にはみどりの窓口はありませんが、指定券を取次手配で買える場合があります。停車駅すべてにみどりの窓口があるとは限りません。
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10時10分~
他の購入手段よりも、開始が10分遅いことを注意してください。
指定席券売機できっぷを買うための操作方法については、筆者の別の記事(↓)をヒントにしてみてください。
● ネット予約「えきねっと」【シートマップ表示可】
乗車日の1か月と7日前の午後14時00分~【事前受付開始時刻】
実際に座席が確保され、予約が成立するのは、乗車日1か月前の10時00分以降です(取れない場合もあります)。
「えきねっと」トップページにある「のってたのしい列車」のリンクをたどると、列車の一覧が表示されます。その中に「風っこ」が表示されるようになりました。予約を取りたい列車がプルダウンリストに表示されていれば、そこから予約を進められます。
ただし、そのプルダウンリストの保守には、不安があります。一般の検索画面から発駅名、着駅名、日にち、発車時刻を自分で入力して、目当ての列車を表示させるのが、一番確実でしょう。

他の列車と同様、臨時列車の「風っこ」であってもシートマップを表示し、好きな席を選べます。
※ えきねっとで座席が取れた場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。
「えきねっと」の事前受付に関する詳しい情報は、筆者の別記事(↓)を参照してください。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券は、以下の通りです。列車によって、券面に記載される「風っこ●●」号の列車名が変わります。

乗車券について
「風っこ」に乗車するためには、上記指定席券のほか、乗車区間を含んだ乗車券が必要です。普通乗車券の他に、「週末パス」や「小さな旅ホリデーパス」を利用することも可能です。また、期間限定の「青春18きっぷ」「北海道・東日本パス」「大人の休日俱楽部パス」(*)を使用してもオッケーです。
* 「大人の休日俱楽部パス」では、「風っこ」の指定券(指のみ券)を回数の枠内で、パス料金込みで取ることができます。
きっぷが取れたら。。。
春から秋にかけて走る「風っこ」はオープンエアーの車両なので、天気の影響をモロに受けます。
晴れていれば、最高に心地よい風を浴びれる一方、雨に降られるとカーテンの中に閉じ込められるため、居住性には天と地の差があります。
きっぷを買ったら、あとは好天を祈りましょう(てるてるぼうずを作るといいかも)。

ここからは、「風っこ只見線」号に乗車した体験です!
快速「風っこ只見線」号下り列車に乗車【2022夏】
2022年7月、会津若松駅から会津川口駅まで往復で「風っこ只見線」号に乗車しました。ここでは、列車の車内を探訪してから、実際の道中をレポしたいと思います。
9425D:会津若松駅 10:15分発 →(JR只見線)→ 会津川口駅 12:17分着

この指定席券を、筆者は「えきねっと」で取りました。乗車1か月前の時点では、ボックスがそれほど埋まっていなかったので、自由に選ぶことができました。

只見線を走る「風っこ」の場合、2号車先頭が会津川口駅方、1号車先頭が会津若松駅方になります。
下り「風っこ只見線」号においては、会津盆地を眺められる進行方向右側の席をおススメします。1号車では偶数番、2号車では奇数番のボックスが該当します。

列車が出発する午前中の会津盆地の天気は快晴で、蒸し暑かったです。天気が良い中、朝10時前に会津若松駅の3番線ホームにいました。
余談ですが、この日は他にも「喜多方レトロ満喫」号や「SLばんえつ物語」号が運行されていて、会津若松駅には臨時列車が集まりました(ただし、時間帯がバラバラで、相互に接続せず)。

只見線の全線運行再開まであと2か月半というタイミングで、会津若松駅の改札口に、写真のようなペットボトルの蓋のアート作品がありました。

駅の改札口を入ったところに、発車案内の電光表示の他に「風っこ只見線」号の幕がありました。

定刻の10分前に、風っこの車両が入線。ホームには、すでに乗車する人々が多くいました。

前世代のキハ48形車両にはLEDの行先表示器などなく、懐かしいサボが掲げられていました。

ここで、風っこの車内探訪。客室には、木製のボックスシートが並んでいます。窓ガラスは取り外され、天井もむき出しです。

1号車の2号車寄りには、トイレと車いす用スペースがあります。

2号車の1号車寄りには、冬場使われるストーブが設置されています。

各ボックスには小さなテーブルがあり、ドリンクホルダーが固定されています。

定刻までせわしなかったですが、会津若松駅を発車。駅員さんたちが幕を持って見送ってくれました。

この日の「風っこ只見線」号はそこそこ売れていて、すべてのボックスが埋まっていました。相席はほとんどなく、1組1ボックスが確保できていたようです。
西若松駅を出発すると、ほどなく阿賀川の鉄橋を渡ります。

会津坂下駅までは、会津盆地の田園地帯を走ります。快晴だったので、水田の眺めが見事でした。

会津坂下駅を出ると、只見川沿いの山間部に入ります。只見川は清流というよりは、湖という感じがします。

会津柳津駅を発車してからすぐに、観光協会の人が添乗して、あわまんじゅうをふるまってくれました。黄色いまんじゅうですが、もち米の中にこしあんが入っていて、モチモチした食感でした。

車窓に水力発電所のダムを眺めながら、2時間の乗車で終点の会津川口駅に到着。ダム湖のほとりにある駅で、列車がとても絵になります。
快速「風っこ只見線」号上り列車に乗車【2022夏】
9428D:会津川口駅 13:56分発 →(JR只見線)→ 会津若松駅 16:03分着

会津川口駅は、2011年の大雨災害の時から暫定的な列車の終点になっていました。JR東日本の社員が常駐している駅で、帰りの列車の指定券も購入可能です(発券まで時間がかかる)。
2022年10月に、只見線の運行が全線で再開しました。それまでの間、会津川口駅が暫定的な終着駅でしたが、現在は途中の駅です。代行バスも、現在は走っていません。以下に掲載した会津川口駅の時刻表も、現在変わっています。

2022年9月まで走っていた、只見線不通区間を走っていた代行バス。銀色のマイクロバスが只見駅まで走っていましたが、今は昔です。

会津川口駅の待合室に掲示された只見線の時刻表。代行バスの発車時刻が掲載された暫定版です。

発車20分前の13:35分に帰りの列車の車内に入りました。帰りの列車も、ほぼすべてのボックスが埋まっていて、にぎやかな車内でした。

会津川口駅に着いてから雲行きが怪しかったのですが、帰りの列車が発車する間際に、激しい雨が降ってきました。雨が車内に吹き込まないよう、ビニールのカーテンが閉められました。

車両にはエアコンが付いていないため、カーテンが閉められると、かなり蒸し暑いです。筆者も熱中症になりそうで、辛い時間を過ごしました。乗車する前に、水分を多く用意した方が良いかと思います。
定刻に会津川口駅を出発してから会津若松駅に到着するまでの2時間、激しい雨がずっと降りっぱなしでした。途中で運転見合わせにならず、終点まで走り抜けたのが幸いでした。
おわりに

春から秋にかけて走るオープンエアーの「びゅうコースター風っこ」、車内に風が吹き込んできて、とても心地よいです。一方、雨に降られると辛抱の時間を過ごすことになります。
それでも、素朴なローカル感あふれる「風っこ」に乗車すれば、定食メニュー的な「のってたのしい列車」よりも、より楽しい体験を味わえると思います。
天候に左右される列車であることには違いないです。暑さへの対策を自身でしっかり準備されることをおススメします。
Appendix-1:「びゅうコースター風っこ」運行実績(2021年~)

ここでは、単発で走る列車ではなく、春から秋にかけて毎年定期的に走る列車を記載しました。
JR只見線を走る「風っこ」
● 「風っこ只見線新緑」号:会津若松駅ー会津川口駅
【春】2021年5月02-04日
【春】2022年4月29-30日,5月03-04日
【春】2023年4月29-30日,5月03-07日
● 「風っこ只見線夏休み」号:会津若松駅ー会津川口駅
【夏】2021年7月31日-8月01日
● 「風っこ只見線」号:会津若松駅ー会津川口駅
【夏】2022年7月09-10日,16-17日
● 「風っこ只見線夏休み」号:会津若松駅ー只見駅
【夏】2023年7月22-23,29-30日
● 「風っこ只見線紅葉」号:会津若松駅ー会津川口駅
【秋】2021年10月23,24,30,31日
● 「風っこ只見線紅葉」号:会津若松駅ー只見駅
【秋】2022年10月29,30日
JR水郡線を走る「風っこ」
● 「春の水郡風っこ」1/2号:水戸駅ー磐城石川駅
【春】2023年4月01日-02日
● 「奥久慈清流風っこ」1/2号:水戸駅ー磐城石川駅
【夏】2021年8月28日
● 「奥久慈清流風っこ」3/4号:水戸駅ー常陸大子駅
【夏】2021年8月29日
● 「風っこ奥久慈」1/2号:水戸駅ー磐城石川駅
【夏】2022年8月28日
● 「風っこ奥久慈」3/4号:水戸駅ー常陸大子駅
【夏】2022年8月29日
● 「風っこ奥久慈」号:水戸駅ー常陸大子駅
【夏】2023年8月26-27日
● 「風っこ水郡線紅葉」1/2号:水戸駅ー常陸大子駅
【秋】2021年11月06-07日
● 「水郡線紅葉風っこ」1/2号:水戸駅ー常陸大子駅
【秋】2022年11月12-13日
JR左沢線を走る「風っこ」
● 「さくらんぼ風っこ」1/2号:山形駅ー寒河江駅
【春】2021年6月19-20日,26-27日
【春】2022年6月18-19日,25-26日
【春】2023年6月17-18日,24-25日
JR五能線を走る「風っこ」
● 「りんごの花 風っこ」号:弘前駅ー五所川原駅
【春】2021年5月08日
【春】2022年5月07日
(2023年度運行なし)
JR男鹿線を走る「風っこ」
● 「風っこ男鹿あじさい」号:秋田駅ー男鹿駅
【夏】2021年7月03-04日,10-11日
【夏】2022年7月02-03日
【夏】2023年7月01日
JR陸羽東線を走る「風っこ」
● 「風っこ湯けむり」号:仙台駅ー新庄駅
【秋】2022年10月08-09日,22-23日
Appendix-2:「びゅうコースター風っこ」席番表
(2号車)

(1号車)

参考資料 References
● JR東日本 ニュースリリース(臨時列車の運行計画が発表されるところ)
改訂履歴 Revision History
2022年7月20日:初稿
2022年7月21日:初稿 修正
2022年8月19日:初稿 加筆
2022年8月31日:初稿 修正
2022年9月27日:初稿 修正
2023年02月13日:初稿 修正
2023年4月08日:初稿 修正
2023年5月19日:初稿 修正
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