JR東日本・北海道エリアを走る新幹線の車両の中に「TRAIN DESK」(トレイン デスク)という区画が現れました。
「TRAIN DESK」区画のサービスは、2023年3月から始まりました。2021年から展開されていた「新幹線オフィス車両」の仕組みがリニューアルされ、TRAIN DESKの区画が指定席として発売されています。一言でいえば、当該座席を自由席として利用できなくなり、代わりに指定席を取って利用する形です。
平日には特に、ビジネス出張者や通勤客が多く乗車しています。「TRAIN DESK」には、一人で乗車することが多いと思います。子供の声や大声の談笑がないため、車内で仕事や作業に集中できるのではないでしょうか。
この記事では、JR東日本・北海道エリアの新幹線および北陸新幹線に設定された「TRAIN DESK」の区画について、サービスの概要や必要なきっぷについて深掘りします。そして、TRAIN DESKの前身である「新幹線オフィス車両」指定席を「はやぶさ」号で利用した体験をお話しします。

新幹線の座席をオフィスに見立てた「TRAIN DESK」は、指定席です。東北・北海道新幹線は7号車、上越・北陸新幹線は9号車です。
「TRAIN DESK」とは(トレイン デスク:旧「新幹線オフィス車両」)

新幹線の座席をオフィス代わりに、移動時間にその座席で仕事ができるスペースとしてゾーニングされた車両の区画が「TRAIN DESK」です。一般車両ではできない音の出る作業を、座席にいながら行えることを意図して、専用のゾーンが設定されました。
「TRAIN DESK」の前身は、2021年にサービスインした「新幹線オフィス車両」で、実質的に自由席でした。その区画が、2023年3月のダイヤ改正から「TRAIN DESK」という名称で指定席に変わりました。
「TRAIN DESK」は一般の指定席と区分けされた専用の区画ですが、TRAIN DESK利用のための特別な加算料金はありません。指定席を取る際、単にTRAIN DESKの区画を選択する形です。
2021年2月から新幹線オフィスとしての実証実験が二度にわたり行われました。その後、2021年11月から8号車を「新幹線オフィス車両」として運用が始まりました。2020年に新幹線の利用が著しく減少したことが契機となり、座席の有効活用を図ろうという意図で運用が始まったと考えられます。

「TRAIN DESK」の号車にある座席は、新幹線での移動中の仮想オフィスとして利用することが想定されています。ただし、専用の個室ブースやパーティション、テーブルが完備しているわけではありません。あくまでも、新幹線の普通の座席にすぎません。(電源コンセントとWIFIは、TRAIN DESKであるなしに関係なく、利用できます。)
設備面では普通の座席ですが、運用面では移動時間の間に仕事や勉強に集中したい乗客を一か所に集めている形です。ゾーニングという点では、いわゆる最繁忙期に設定される「子連れファミリー車両」と似た考え方です。ただし、「TRAIN DESK」は「子連れファミリー車両」とは違い、仕事や勉強といった作業をしたい人が静かに作業したり休息したりするための車両です。
前身の「新幹線オフィス車両」に実際に乗車して感じましたが、ビジネスパーソンだけが乗車できる専用車両という誤解が見受けられます。本来は、作業に集中したい人が利用する車両であることを理解した上で、誰でも利用できる区画です。
「TRAIN DESK」の利用条件

「TRAIN DESK」を利用する際に覚えておきたい条件について、ここでみていきましょう。
● 平日のみ
土休日および最繁忙期を除いた平日に「TRAIN DESK」として専用の区画が設定されます。
注意が必要なのは、飛び石連休の中日の平日などの最繁忙期には「TRAIN DESK」とならずに、一般車両として運用される点です。あらかじめ、公式ページで確認しましょう。
● 東北・北海道新幹線(E5系・E2系)は7号車
● 上越・北陸新幹線(E7系)は9号車
「新幹線オフィス車両」時代は、この区画は8号車に統一されていましたが、TRAIN DESKでは、列車によって号車が異なります。
● 指定席に統一された
TRAIN DESKは、指定席制です。必要なきっぷも座席指定された新幹線特急券に統一されましたが、一部区間で例外があります。
乗車に必要なきっぷ
「TRAIN DESK」を利用するにあたって必要なきっぷは、座席指定された新幹線特急券に統一されました。TRAIN DESKの利用に関しては、紙のきっぷか「新幹線eチケット」かは、特に関係ありません。
また、ネット専用割引料金「えきねっとトクだ値」を利用する場合でも、TRAIN DESKの区画を利用できます。

えきねっと操作画面では、普通車指定席に「一般の指定席」と「TRAIN DESK」の両方が表示されます。後者の座席を選択します。
旧「新幹線オフィス車両」では問題にならなかった「タッチでGo!新幹線」や「新幹線定期券」。それらのきっぷではTRAIN DESKを利用できなくなったので、注意してください(以下特例参照)。
なお、乗車に必要なのは、TRAIN DESK(7号車/9号車)の座席が指定された新幹線特急券と乗車券です。「TRAIN DESK利用券」などの追加料金はありません。
東北・北海道新幹線
● 「はやぶさ」「はやて」号
指定席扱い → 新幹線特急券または「えきねっとトクだ値」料金などの企画券
TRAIN DESK専用区画の「7号車の指定席」を乗車前に取ります。
公式サイトでは要請されていませんが、「TRAIN DESK」の趣旨を鑑み、静粛な空間づくりに配慮して隣の人とは離れた席を取るようにしたいです(A席・C席・E席)。
【特例】
盛岡駅以北の区間のみ利用する場合、新幹線特定特急券か新幹線定期券を持っていれば、座席指定なしで空席を利用できます(当該座席の指定券を持った人には席を譲ること)。
仙台駅ー盛岡駅の区間で途中駅に停車する列車の場合、新幹線自由席特急券か新幹線定期券を持っていれば、座席指定なしで空席を利用できます(当該座席の指定券を持った人には席を譲ること)。
これらの特例を使う場合、座席指定ができないので注意してください。
● 「やまびこ」号
指定席扱い → 新幹線特急券または「えきねっとトクだ値」料金などの企画券
TRAIN DESK専用区画の「7号車の指定席」を乗車前に取ります。
公式サイトでは要請されていませんが、「TRAIN DESK」の趣旨を鑑み、静粛な空間づくりに配慮して隣の人とは離れた席を取るようにしたいです(A席・C席・E席)。
● 「なすの」号
【指定席のある列車】
指定席扱い → 新幹線特急券または「えきねっとトクだ値」料金などの企画券
TRAIN DESK専用区画の「7号車の指定席」を乗車前に取ります。
公式サイトでは要請されていませんが、「TRAIN DESK」の趣旨を鑑み、静粛な空間づくりに配慮して隣の人とは離れた席を取るようにしたいです(A席・C席・E席)。
【全車自由席の列車】
TRAIN DESKは運用されません(7号車はあくまでも普通の自由席)。
秋田・山形新幹線
TRAIN DESKの運用はありません。
上越新幹線
● 「とき」号
指定席扱い → 新幹線特急券または「えきねっとトクだ値」料金などの企画券
TRAIN DESK専用区画の「9号車の指定席」を乗車前に取ります。
公式サイトでは要請されていませんが、「TRAIN DESK」の趣旨を鑑み、静粛な空間づくりに配慮して隣の人とは離れた席を取るようにしたいです(A席・C席・E席)。
● 「たにがわ」号
【指定席のある列車】
指定席扱い → 新幹線特急券または「えきねっとトクだ値」料金などの企画券
TRAIN DESK専用区画の「9号車の指定席」を乗車前に取ります。
公式サイトでは要請されていませんが、「TRAIN DESK」の趣旨を鑑み、静粛な空間づくりに配慮して隣の人とは離れた席を取るようにしたいです(A席・C席・E席)。
【全車自由席の列車】
TRAIN DESKは運用されません(9号車はあくまでも普通の自由席)。
北陸新幹線
● 「かがやき」「はくたか」「あさま」号
指定席扱い → 新幹線特急券または「えきねっとトクだ値」料金などの企画券
TRAIN DESK専用区画の「9号車の指定席」を乗車前に取ります。
公式サイトでは要請されていませんが、「TRAIN DESK」の趣旨を鑑み、静粛な空間づくりに配慮して隣の人とは離れた席を取るようにしたいです(A席・C席・E席)。
予約の方法・きっぷの様式
TRAIN DESKの座席を取るには、ネット予約サービス「えきねっと」か駅の指定席券売機・窓口を利用します。
ネット予約「えきねっと」
座席の種類を選択する際、普通車指定席には一般の指定席と「TRAIN DESK」が表示されます。必ず後者を選択し、先に進みます。

TRAIN DESKを選択すると、以下の注意事項が表示されます。了解の上、先に進みます。

TRAIN DESKの号車だけ選択できます(本例の「なすの」号は7号車)。

「大人の休日俱楽部パス」に座席指定を付ける場合、えきねっと上では「TRAIN DESK」の設備を選択できません。大人の休日俱楽部パスでもTRAIN DESKを利用できますが、駅の指定席券売機もしくはみどりの窓口でTRAIN DESKの座席を取る必要があります。
指定席券売機
乗車したい列車の普通車「指定席」を選択します。

その次の画面で、一般の指定席か「TRAIN DESK」か選択できます。後者を選択すると注意事項が表示されるので、了解して先に進みます。

きっぷ(新幹線eチケット/新幹線特急券)の様式
● 新幹線eチケット
ネット予約「えきねっと」で予約すると、チケットレスで乗車できます。紙の証拠がないので、メールやスクリーンショットをとっておきましょう。当該画面には、TRAIN DESKの表示があります。

● 新幹線特急券
「えきねっと」で紙のきっぷを指定した場合、駅できっぷを購入する場合には、紙のきっぷを利用します。席番の右側に小さく「T」と表示され、TRAIN DESK利用とわかります。

してもいいこと・してはいけないこと
基本的に、誰でも利用できる「TRAIN DESK」。仕事(リモートワーク)や勉強の作業環境を優先的に作るためのゾーンです。そのため、一般車両でのマナー・常識が通じない点があることを知っておく必要があります。
公式ページの記載を基にして、TRAIN DESKでしてもいいこと、いけないことを筆者なりに考えてみました(あくまでも主観です)。
してもいいこと

仕事(リモートワーク)や勉強に集中できる環境づくりという点が、ポイントになろうかと思います。オフィスではPCの打鍵音や通話の声がするので、それは許容されるべきということでしょうか。
● 携帯電話・スマホでの通話はオッケー
一般車両では車内で通話ができないですが、TRAIN DESKではそのへんが緩和され、仕事しやすいよう配慮されています。座席にいながらのリモート会議、電話での声出し通話が想定されています。
● ノートPCの打鍵音が出てもよい
PCで仕事やリモート会議を行うことが想定されています。キーボードの打鍵音が苦手な人は、自分で耳栓を用意するか、一般車両に移動したほうが良いでしょう。
必要以上の大声は出さないよう、配慮が必要かと考えます。
TRAIN DESKにて常に作業していなければならないわけではなく、座席で休息していても、もちろん大丈夫です。
してはいけないこと
実際のオフィスでは、私語は想定されていません。TRAIN DESKでも、ファミリーやグループ客が歓談して仕事や勉強の邪魔にならないように、以下のような制限が意図されているのではないでしょうか。
● スマホ、PCのスピーカーはOFF
● 同乗者同士での歓談
通話がOKなのに、歓談がNGというのが不思議と思われますが、おしゃべりが仕事や勉強の妨げになるという趣旨だと思います。作業に集中するための静粛性が求められるゾーンであることを理解する必要があります。
したがって、グループやファミリーで乗車する場合、この車両に乗車するのは望ましくありません。
● 過度の飲酒
仕事が終わってから乗車するときに、軽く一杯やりながら休息することが想定されているかと推察します。
ただし、実際のオフィスでは仕事中飲酒しないのに、車内での飲酒がオッケーなのは、個人的にはずいぶん寛容な運用かなと思います。
● なるべく席の間隔を空ける(A・C・E席利用)
TRAIN DESKは、一人で乗る客の利用が想定されていると考えられます。グループで乗る場合は、一般車両に移動した方が良さそうです。
「はやぶさ」号での利用体験【旧 新幹線オフィス車両 指定席】

筆者は、ある火曜日の夕方から夜間に走る上りの「はやぶさ」号の8号車に乗車しました。その様子を、ここでご紹介したいと思います。
旧「新幹線オフィス車両」指定席と現「TRAIN DESK」は、同じサービスです。ただし、東北・北海道新幹線の場合、7号車に変更されています。以下文中にある8号車ではありませんので、注意してください。
「はやぶさ」号では、事前の座席指定が必要になったため、筆者も8号車の指定をあらかじめ取りました。

この時は「大人の休日俱楽部パス」で乗車したため、きっぷは金額表示のない新幹線指定券(指のみ券)です。

発車少し前の、8号車の座席指定状況です。窓側の座席に一人で乗車する客が多いと見受けられますが、D席・E席を中心に二人で乗車する客を何組か見かけました。

当日は、北海道新幹線の終点である新函館北斗駅から、上り「はやぶさ」40号に乗車しました。夕方16時台に青函トンネルを通り、出先での業務が終了した出張者を新青森駅、盛岡駅、仙台駅で拾い、終点の東京駅に向かう列車です。
ビジネスパーソンがあまりいないと想定される新函館北斗駅ですが、思った通り観光性の乗客が多く乗車しました。新幹線オフィス車両ということを知らないか、8号車にもお構いなしに乗車している感じがしました。

車内に入る自動ドアには「新幹線オフィス車両」の表示があるので、乗客は必ず目にしている形です。

各座席には、新幹線オフィス車両のリーフレットが置かれているので、一般車両ではないとわかります。座席には何も施されていませんが。。。

E5系・H5系車両には、折り畳み式の間仕切りがあります。もらえるわけではなく、使用後に返却する必要があります。テーブルの上にちょうど置けるサイズです。

間仕切りは紙製で、そんなに大きくありません。お世辞にも使いやすい代物とは思えませんが、ノートPCの画面を隠す程度には活用できるかと思います。

この間仕切りは、貸し出し用として8号車の荷物置場にいくつか置かれています。
ここでご紹介した「折り畳み式の間仕切り」、現在は貸し出しが行われていません。また、車端部のドアに貼られていた「新幹線オフィス車両」にかわる「TRAIN DESK」の表示はありません。
17時台の新青森駅で、出張客が多く乗車しました。多くの人がスーツ姿なので、さながらビジネスパーソン軍団の車両です。決してビジネス客専用ではなく、誰でも利用できる車両ですが、このような光景からは、専用車両という誤解がありそうです。
盛岡駅でもビジネス客を拾い、仙台駅では多くのビジネス客が降車。多くの客が入れ替わり、終点の東京駅へ。
まとめ

仕事(リモートワーク)や勉強といった作業に集中するための環境であることを理解していれば、誰でも利用できる「TRAIN DESK」。実際には、スーツを着込み、ノートPCで作業しているビジネス出張者や通勤者が多く乗車していました。
ただし、乗車中PC作業している人は多くなく、休息している人がほとんどでした。そんな光景から、ビジネスパーソン専用車両と誤解されている節があるのかと思いました。
TRAIN DESKと銘打っていますが、リモートワークのための特別な設備があるわけではなく、あくまでも運用上のゾーン分けです。一人か少人数で乗車することが多いと思います。
作業に集中するための静粛さが必要なゾーンなので、乗客同士の歓談は控えるべきです。したがって、歓談をする前提のファミリーやグループが利用する車両ではありません。
「はやぶさ」「はやて」号の一部区間で例外があるものの、TRAIN DESKは原則的に指定席の扱いです。「えきねっと」や指定席券売機でTRAIN DESKの座席を取る際、一般の普通車指定席ではなく「TRAIN DESK」と表記のある設備を選択するのを忘れないようにしてください。TRAIN DESKを利用する際、追加料金は必要ありません。
参考資料 References
● TRAIN DESK(JR東日本)
● ニュースリリース「新幹線オフィス車両、東北・北陸・上越新幹線全方面で実施」(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210126_ho01.pdf
https://www.jreast.co.jp/press/2021/20211005_ho02.pdf
改訂履歴 Revision History
2022年12月02日:初稿
2022年12月03日:初稿 修正
2023年3月28日:初稿 再構成
2023年4月07日:初稿 修正
2023年7月04日:初稿 修正
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