JR東日本・北海道管内の新幹線・在来線特急列車、および北陸新幹線に乗車する際に利用できる、ネット限定発売の「えきねっとトクだ値」。
2021年以降、JR東日本エリアにある「みどりの窓口」が、急ピッチで縮小しています。駅できっぷが買えなくて、やむなくネット予約サイト「えきねっと」に移行している面も含めて、えきねっとの利用がかなり進んだように思えます。えきねっとがリニューアルされてから1年が経ち、利用者数が急速に増加しているという情報にも触れています。
消費者の節約志向の高まり、および「えきねっと」の利用促進に比例して、ネット限定の「えきねっとトクだ値」料金とも、かなり浸透してきました(以下「トクだ値」と表記)。その結果、トクだ値できっぷを取りにくくなったとお感じの方が多いのではないでしょうか。
筆者も、特に新幹線の普通車指定席を、トクだ値で取るのが難しくなってきた感覚を、肌で感じます。
この記事では、筆者が2022年中に「えきねっとトクだ値」料金で予約購入して実際に乗車した列車を列挙し、最近の動向や傾向を考えたいと思います。

同じ「えきねっとトクだ値」といっても、新幹線と在来線では状況がかなり違ってきました。
「えきねっとトクだ値」2022年の動向

旅行や移動の制限が2022年に入ってから次第に緩和され、ビジネスや旅行で移動する人が、従前と同じレベルまで回復しつつあるように思えます。
● 「えきねっとトクだ値スペシャル」設定の終息
旅行者数が落ち込んだ2021年度には、割引率が高い「えきねっとトクだ値スペシャル」50%引きの料金が多く提供されていました。しかし、今お話ししたように旅行者数が回復してきたにつれ、トクだ値の割引率も、本来の10%から30%の間に収束してきました。
そのようなわけで、2022年度に入ってから「えきねっとトクだ値スペシャル」できっぷが発売される機会がめっきり減りました。今後は、特にテコ入れする必要に迫られた列車に限られるように思料します。
2023年2月後半に、「えきねっとトクだ値スペシャル」が主な区間で展開されました。ただし、設備は普通車指定席ではなく、グリーン車・グランクラスでした。節約志向の高まりが影響しているのか、上級設備の需要喚起と話題作りが目的と考えます。
● 新幹線における「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」発売席数の減少
列車ごとに発売されるトクだ値の席数は、公表されていません。そのため、ここでお話しすることはあくまでも筆者の肌感覚です。
端的に言えば、事前予約の高割引率「お先にトクだ値」が非常に取りにくくなったように思えます。特に、新幹線では設定席数の少なさとあいまって、乗車1か月前10時のトクだ値争奪戦を制する必要がより高くなりました。
● 「えきねっとトクだ値」チケットレス特急券の導入
2022年には、トクだ値発売以来続いていた、乗車券付きトクだ値の料金組み立てに変化の兆しがみられました。
2022年度下期には、千葉県を走る房総特急で発売されていた、乗車券付きのトクだ値が「チケットレス特急券」化されました。従前「成田エクスプレス」で設定されていたチケットレス特急券のトクだ値が、拡大する動きが一層みられました。
2023年度には、常磐線特急「ひたち」「ときわ」号でも、チケットレス特急券のトクだ値が始まることから、特急券のチケットレス化がより進むと推測します。
トクだ値をうまく利用するための対策

これらの動向にうまく順応し、トクだ値をうまく利用して、より安く旅行するための対策をここで考えます。
● 旅行の計画は早く、乗車1か月前に予約成立を目指す
ご周知のとおり、JR線の指定券の予約は、乗車1か月前の午前10時に開始します。この記事で話しているトクだ値も例外ではなく、発売開始は乗車1か月前の午前10時です。
ただし、トクだ値がネット限定という点を念頭におく必要があります。駅の窓口で10時打ちして購入するのではなく、10時にえきねっとの画面に注力し、自分の操作でお目当ての列車の予約を取ります。
乗車14日前まで、より高割引率の「お先にトクだ値」を適用できるメリットもあります。
● 「事前受付」を過信せず、1か月前10時に自己操作での予約成立を目指す
筆者は他の記事で「事前受付」をおススメしていますが、可能な限り事前受付と1か月前10時の自己操作とを併用するのがベターです(えきねっとの事前受付は、乗車1か月7日前の14時から事前にエントリーできる仕組みです。詳しくは、筆者の別記事を参照してください)。
すでにお話しした通り、えきねっとの利用が増加していますが、それが動作速度に影響しています。本来、事前受付した予約が先に処理されて予約成立とされるべきですが、処理が遅いため10時ちょうどの自己操作に負けることが多くなっています。
● 在来線特急列車の紙のきっぷの引き取りは直前まで慎重に
今後導入される可能性があるチケットレス特急券のトクだ値。在来線特急列車について、現時点では乗車券込みの紙のきっぷのトクだ値が主流です。首都圏近郊以外の地区を走る特急列車にチケットレス化がやってくるかは、筆者は慎重にみています。
そのようなわけで、紙のきっぷはすぐには消滅しないでしょう。紙のきっぷのトクだ値の特性をうまく理解するとよいです。
その特性の最たるものが、紙のきっぷの引き取り後に旅行をキャンセルする場合の手数料が特殊なことです。無割引の普通のきっぷとちがい、トクだ値の払戻手数料は、料金の割引率に応じた金額がかかります(10%引きなら手数料10%、30%引きなら手数料30%。詳細は筆者の別記事を参照ください)。
引き取り前の払いもどしであれば、いかなる場合も1枚320円の手数料で済みます。デメリットである紙のきっぷの引き取りは、できるだけ時期を引っ張ったほうがいいです。


これから各論として、筆者が2022年に利用したトクだ値をご紹介します!
新幹線で利用した「えきねっとトクだ値」
新幹線では、以下3本の列車でトクだ値を利用しました。いずれも「新幹線eチケット」をスマホや交通系ICカードで利用する形です。筆者も、今回はスマホで改札を出入りしたため、乗車した証拠は紙のきっぷではなく、いずれも座席票(レシート)です。
東北新幹線「やまびこ」号:大宮駅→郡山駅

7月中旬に乗車する普通車指定席のきっぷを「お先にトクだ値」30%引きにて、1か月前におさえました。

郡山駅発着のトクだ値の設定があるのは、仙台駅発着の「やまびこ」号もしくは「なすの」号です。筆者もあらかじめ事前受付にて予約のエントリーをしておきましたが、この時は事前受付した分が無事に取れて、めでたく予約成立となりました。
事前受付分で瞬殺となる列車が多いので、処理が遅くなったとはいえ、事前受付のエントリーは欠かせません。
仙台駅発着の「やまびこ」号は、繁忙期でなければそれほど取りにくいとは思いません。事前受付と自己操作を併用すれば何とかなると考えます。
上越新幹線「とき」号:大宮駅→新潟駅

日本海側で最大の都市、新潟市に至る上越新幹線。終点の新潟駅まで堅い需要があります。そのため、トクだ値で予約を成立させるのが特に難しい区間です。

これは、10月末の旅行シーズン中に取れたトクだ値の座席票です(お先にトクだ値30%引き)。事前受付で第3希望までエントリーしたものの、10時を過ぎてもなかなか処理されず、いずれも予約不成立でした。並行して自己操作し、グリーン席ながらトクだ値での成立となりました。
筆者が自分で席を取った直後に、事前受付しておいた同じ席が予約不成立になったため、設定席数がわずか1組分(2席)であったと推測します。
10時を過ぎても一向に処理される気配がなかったことから、えきねっとやトクだ値利用者が急速に増加していることをうかがい知れました。同時に、えきねっと側のサーバー処理能力にも疑問符が付きます。
北陸新幹線「はくたか」号:糸魚川駅→大宮駅

これも、10月末の旅行で利用しました。30%引きの「お先にトクだ値」にて取れました。
北陸新幹線については、上越新幹線ほど予約成立の難易度が高くありませんが、利用者数自体の増加でやはり取りにくくなっています。

この列車も、事前受付のエントリーと並行し、自己操作にて取りました。北陸新幹線の予約難易度がマックスではないことは、普通車指定席にて取れたことでわかります。
新幹線のトクだ値設定席数は、ここ最近至って少ないと感じます。旅行者数の回復に伴い、トクだ値にて予約が成立する可能性がさらに下がると思います。
在来線特急列車で利用した「えきねっとトクだ値」
筆者が予約購入し、利用したのは、いずれも乗車券付きのトクだ値です。在来線特急列車のトクだ値(乗車券付き)は、いずれも紙のきっぷを引き取って利用します。きっぷを持ち帰れば、そのまま旅行の証拠になります。
東海道線特急「踊り子」号:東京駅→伊東駅

2021年度の1月末に利用しました。特急「踊り子」号に50%引きの「えきねっとトクだ値スペシャル」が設定されていて、事前受付のエントリーをしておいたら、あっけなく予約成立を勝ち取れました。
乗車1か月前の予約成立時にオンラインにて決済し、乗車5日前になってから紙のきっぷを引き取りました。

踊り子号のトクだ値は、乗車券付きの紙のきっぷです。乗車券、特急券とも50%引きのインパクトは、とても大きいものがあります。トクだ値の真髄をみるようなきっぷで、安さが輝いています。【現在は50%引きの設定なし】

トクだ値と併用した普通乗車券です。踊り子号に乗車するのは東京駅ですが、乗車券は池袋駅ゆきです。トクだ値の乗車券が「東京山手線内」なので、問題なく併用できます。特定都区市内制度が在来線特急列車のトクだ値にも残っているため、その良さが出ています。
「踊り子」号のトクだ値、2023年度以降は乗車券付きの紙のきっぷがなくなり、特急料金のみ「チケットレス特急券」のトクだ値として提供されています。売れ残っている限り、列車の出発時刻までトクだ値料金を利用できます。しかし、乗車券部分の割引がなくなったため、全体的には値上げになったと考えます。
房総特急「しおさい」号:銚子駅→東京駅

紙のきっぷの設定がまだあった5月に利用しました。

乗車3日前にえきねっとで予約だけしておいて、駅の指定席券売機にて決済して、紙のきっぷを受け取りました。房総特急のトクだ値は割引率が高く、3日前の予約でも、なんと40%引きです。予約成立が厳しいトクだ値にあって、一番ゆるいのが房総特急です。よほどでなければ、買いたい時に買えます。

トクだ値と併用した普通乗車券。銚子駅発着のトクだ値も「東京山手線内」の扱いなので、乗車券の発駅が東京駅でなくても大丈夫です。これはやはり、紙のきっぷの良さです。
房総特急のトクだ値、2022年度下期から乗車券付き(紙のきっぷ)ではなく、チケットレス特急券での提供になりました。乗車券部分に割引がなくなった分、従前より料金が引き上げされたことになります。料金面から高速バスに乗客が流れてしまわないか、懸念します。
まとめ

「えきねっとトクだ値」とひとくくりに言っても、新幹線と在来線特急列車では状況がかなり異なることをご理解いただけたことと思います。
新幹線の場合設定席数が少なく、トクだ値の予約が争奪戦になります。トクだ値で取れれば、新幹線では「新幹線eチケット」としてスムーズに利用できます。ただし、新幹線eチケットは東京都区内、仙台市内の設定ではないので、市内の別の駅まで乗車する場合は別に運賃がかかります。
一方、在来線特急列車のトクだ値は、設定席数に余裕があり、線区によりますが直前でも比較的利用しやすいです。料金面でも、従前からの乗車券込みの紙のきっぷです。特定都区市内制度が残っているので、市内の別の駅まで乗車しても、運賃がトクだ値料金に含まれます。
在来線特急列車のトクだ値が、今後チケットレス特急券化することが推察できます。それは、乗車券部分の割引がなくなることを意味します。トクだ値の商品性・競争力といった価値を維持するために、何らかの施策を期待したいところです。
参考資料 References
● 「えきねっと」公式ウェブサイト えきねっとトクだ値(JR東日本)

● 「えきねっと」の事前受付と決済方法の新旧変更点と注意点
● 「えきねっとトクだ値」キャンセル料のワナ~複雑な計算方法を詳説~
● 「特定都区市内制度」企画きっぷと併用する乗車券の買い方~「えきねっとトクだ値」紙のきっぷを例に~
改訂履歴 Revision History
2022年12月24日:初稿
2022年12月25日:初稿 修正
2022年12月28日:初稿 修正
2023年4月07日:初稿 修正
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