JR東日本・JR北海道エリアがフリー乗車区間の「大人の休日俱楽部パス」(以下文中「パス」)。大人の休日俱楽部会員本人が期間限定で購入でき、格安で移動できます。
このパスには、両社のエリアともフリー乗車区間の「東日本・北海道」と、各会社のエリアのみがフリー乗車区間の「東日本」「北海道」と、あわせて3つのタイプがあります。
それぞれの値段や有効期間が異なるので、旅行の目的地によってそれぞれのタイプを使い分けます。しかし、座席指定を受けられる回数は、どのタイプも6回と共通しています。
この記事では、「大人の休日俱楽部パス」を持ち「はやぶさ」号を利用して東日本・北海道エリアを往来する場合、5日間でどこまで行けるものか、どのくらい座席指定が必要になるものか、筆者の実体験をもとに検証してみたいと思います。

大人の休日俱楽部パスの中でも、特に「東日本・北海道」は座席指定の回数に余裕がないと感じます。
座席指定の回数は全タイプとも「6回」

「大人の休日俱楽部パス」には、フリー乗車できる範囲によって、次の3タイプがあります。
● 東日本
15,270円/連続した4日間有効
● 北海道
17,400円/連続した5日間有効
● 東日本・北海道
26,620円/連続した5日間有効【北海道新幹線乗車可能】
それぞれ値段や有効期間が異なりますが、座席指定を受けられる回数は「6回」と固定です。したがって、旅程によってはその回数に余裕のなさを実感するかもしれません。
特に「東日本・北海道」を購入する場合、全車指定席の東北・北海道新幹線「はやぶさ」号に乗車することが非常に多いでしょう。その場合、座席指定の回数6回のうち、往復利用すると最低2回分は「はやぶさ」号で消費することになります。座席指定の残りの回数が4回で、心もとなく感じる場面があるかと思います。
どの列車に座席指定枠を充当するか、旅行出発前によくよく検討することをおススメします。
本記事では余談ながら、大人の休日俱楽部パスの座席指定の6回の枠を有効にうまく活用する方法について、別記事にて考察しました。以下の記事を参照してください。
首都圏と北海道エリアを往来する場合のパスのタイプ選び
例えば、東京から札幌まで移動する場合、多くの人は飛行機を利用するかと思います。一方で、新幹線に乗車して、陸路で安価に移動したいニーズもあるでしょう。
ここで、移動手段によっておススメの、パスのタイプについて考えたいと思います。
新幹線「はやぶさ」号に乗車する場合

大人の休日俱楽部パスの「東日本・北海道」と「北海道」の差額は、およそ9千円です。新幹線「はやぶさ」号を片道でも利用する場合、前者の「東日本・北海道」を購入します。
旅費の節約を第一に考えるのであれば、パス「東日本・北海道」を利用し、新幹線で往復すること一択です。ただし、すでにお話ししたように、新幹線「はやぶさ」号の座席指定が往復で2回分必要です。新函館北斗駅から札幌駅方面に向かう特急「北斗」号も混んでいることが多く、座席指定しておくとよい区間です。
そんなわけで、座席指定枠の6回分はあっという間に消費してしまいます。
飛行機を利用する場合

往復とも飛行機を利用する場合、道内での鉄道移動には「北海道」を購入します。ただし、北海道内の列車に乗車するための格安きっぷが多く存在するため、パスの値段17,400円の元をとれるかどうか、慎重に判断しましょう。
一例として、札幌駅から釧路駅まで特急「おおぞら」号普通車指定席に乗車するためのネット限定料金「えきねっとトクだ値」の値段は、片道5,990円です(2023年1月現在)。往復しても1万2千円ほどなので、パスの元が取れないことが分かります。
大人の休日俱楽部パス「北海道」の威力が出てくるのは、道内をめいいっぱい移動する場合です。座席指定の回数も6回あり、すべて在来線特急列車に充てられます。ただし元を取れるか否かは、使い方によっては微妙です。

これから筆者の実体験をご紹介します。5日間でどこまで行けるか、どのくらい使い倒せるか、参考になるかと思います。
筆者の北海道周遊行脚~5日間で道内ぐるっと一周~
これから、筆者が大人の休日俱楽部パス「東日本・北海道」を持って、5日間かけて北海道をぐるっとめぐった道中を綴ります。
東京から札幌まで移動し、札幌ベースに釧路駅や北見駅、旭川駅を鉄道で移動すると、急ぎ足でちょうど5日間で周遊することができました。鉄道に乗ることが目的の「乗り鉄」でも時間的にぎりぎりと感じるので、観光しながらの周遊は5日間では足りないと思います。
筆者が行脚したようすから、パスの使用実感はこんなものなのか、というところを読み取っていただきたいです。
1日目:東京→札幌駅【飛行機】

東京から札幌駅まで鉄道で移動するには、新幹線「はやぶさ」号と特急「北斗」号に乗車して、約8時間10分かかります。そのうち、在来線区間を「北斗」号で移動するのに約3時間半は、いささか時間がかかりすぎます。東京を出発した当日中に札幌駅に着くには、東京をお昼までに出発しなければなりませんから。
筆者は旅行初日、時間の余裕がなかったため、往路を飛行機で移動しました。東京・新宿駅を15時30分に特急「成田エクスプレス」にて出発し、成田空港から新千歳空港まで飛行機に搭乗し、札幌駅まで快速「エアポート」に乗車し、札幌駅に着いたのが21時10分でした。しめて5時間40分の移動で、陸路移動よりかなり時間を節約しました。
大人の休日俱楽部パスの1日目をこの日からにし、空港アクセスだけで1日分使いました。こんな使い方もできるのだな、ということです。。。
1.特急「成田エクスプレス」39号
新宿駅 15:38分 → 成田空港駅 16:58分

成田エクスプレスは全車指定席ということもあり、パスの座席指定枠を消費することも可能です。しかし、ここで1回消費するのはもったいないので、筆者はJR東日本のポイントサービス「JRE POINT」の特典チケットレス特急券を別で手配しました。
2.Peach583便(成田→新千歳)
NRT 18:10 → CTS 20:00

旅費の予算がタイトだったため、筆者は成田空港を発着するLCC、Peachのフライトを利用しました。羽田空港と比較すると、時間はかなりかかります。
成田空港では定刻にドアクローズしたものの、離陸まで時間がかかったため、新千歳空港にてドアオープンされたのが、定刻の20時でした。格安フライトで、個人用モニターもネット接続も利用できない環境は、修行といえます。
3.快速「エアポート」205号
新千歳空港駅 20:32分 → 札幌駅 21:12分

指定席もありますが、パスの1回分を消費するのはもったいないし、料金自体が840円というのはお高いです。ここでは、自由席に乗車しました。自由席とは聞こえが良いですが、実体はただのロングシートです。
2日目:札幌駅→北見駅

実質的に道内をめぐる初日であった2日目。札幌駅(札幌市中央区)から石勝線で一路道東に向かい、最終的に北見駅(北海道北見市)に到達しました。2日目から最終日まで、小さな駅の駅めぐりをしながら、マイペースで乗り鉄しました。
4.特急「とかち」1号
札幌駅 7:58分 → 占冠駅 9:20分


始発駅の札幌駅から占冠駅(北海道占冠村)まで、自由席を利用しました。この日の自由席は、4号車の1両のみでした。それでも、閑散期の平日ということで、相席になることがない程度に空いていました。
5.特急「おおぞら」3号【指定席枠消費】
占冠駅 10:29分 → 釧路駅 13:20分


真冬の寒さが数字で表れる北海道上川地方にある占冠村。その村にあるのが石勝線占冠駅で、特急列車しか走っていない区間です。

予定がはっきりしなかったため、指定券は始発の札幌駅から取っておきました。
混雑することが多い「おおぞら」号ですが、やはり閑散期ということがあり、指定席、自由席ともあまり混んでいませんでした。この列車は、座席指定を受けておくと安心だと思います。
6.釧網本線普通列車 4730D
釧路駅 14:14分 → 網走駅 17:17分


今回の行脚では、普通列車で長距離移動した、唯一の区間でした。この区間こそ座席指定が必要と思うくらい、イス取りレースが繰り広げられる区間です。
この日も、発車数十分前から多くの乗客がホームに列を作っていました。筆者は出遅れ感があり、良席にありつくことができませんでした。3時間辛かったです。。。
7.特急「オホーツク」4号
網走駅 17:25分 → 北見駅 18:15分


網走駅(北海道網走市)では、短い時間での乗り継ぎでした。日が暮れてすっかり暗くなっている中、自由席での移動でした。オホーツク号の自由席は1両と半分ですが、概ね余裕があるように感じました。
筆者は途中の北見駅で下車し、ホテルで休みました。この列車の終着、札幌駅に到着するのが22時53分。そのまま乗車を続けたとして、5時間以上かかると思うと、ガクブルものでした。。。
3日目:北見駅→旭川駅

北見駅が所属する石北本線では列車の本数が少なく、この日は2本の列車に乗車しただけでした。北見駅から旭川駅(北海道旭川市)まで、わずか6時間の移動でゆったりした一日でした。
8.石北本線普通列車 4659D
北見駅 10:20分 → 美幌駅 10:52分


女満別空港に近い美幌駅(北海道美幌町)までは、ローカルな普通列車で約30分の移動でした。北海道内で急速に姿を消しつつある気動車、キハ40がいまだに活躍する地区です。

車内は、国鉄時代と変わらぬたたずまいで、濃青のモケットが汽車旅感を醸し出します。
9.特急「大雪」4号【指定席枠消費】
美幌駅 13:02分 → 旭川駅 16:19分


特急「大雪」号は、旭川駅発着の特急列車です。この列車では座席指定を受けておきましたが、結局全区間自由席に乗車しました。
石北本線を走る特急列車「オホーツク」と「大雪」は、途中の遠軽駅(北海道遠軽町)にて進行方向が反対になります。この場合、進行方向が変わっても座る場所を自由に移動できる自由席に分があったわけです。

「大雪」号で旭川駅まで乗車し、「ライラック」「カムイ」号で札幌駅方面に当日中に乗り継ぐ場合、座席指定で消費するのは2枠ではなく、1枠で済みます(反対方向でも同じ)。

11月末で、冬の始まりをこの区間で感じさせられました。道中石北峠を越えますが、大雪の中急な上り坂を進みました。途中の白滝駅(北海道遠軽町)では、温かいおでんに入れる白滝を連想してしまいました、笑。
4日目:旭川駅→札幌駅

この日は、日中旭川駅をベースに駅めぐりをして、夕方札幌駅まで戻りました。筆者は一日中列車に乗車していましたが、旭川市内で日中ゆっくり過ごす時間があります。
10.特急「カムイ」32号【指定席枠消費】
旭川駅 16:00分 → 札幌駅 17:25分


「カムイ」号に充当される789系1000番台電車には、指定席車両として「Uシート」が連結されています。パスの座席指定枠に若干余裕があったので、この区間にその枠を充当しました。

他の列車に充当していた指定席券が不要になったので、カムイ号の指定券に交換してもらいました。大人の休日俱楽部パスを所持している場合の座席指定枠、列車の発車前であれば変更がいくらでもききます。変更することによって、貴重な枠の無駄を省けます。

快速エアポート号の指定席Uシートと違い、カムイ号のUシートは一段上の設備です。座席そのものも自由席よりグレードが高く、スマホ用コンセントも付いています。指定席が1両だけなので混雑しがちですが、必ず座れる分安心といえます(自由席でもたいてい座れるので大丈夫ですが)。

コンセントとドリンクホルダーの位置が悪く、設計の甘さを感じました。
5日目:札幌駅→東京【新幹線】

最終日は、室蘭地区の駅めぐりをしつつ、陸路新幹線で東京まで移動しました。ホテルを朝6時半に出発し、自宅に戻れたのが20時台と、移動が12時間以上に及んだハードな日でした。
先にお話ししましたが、東京から札幌駅までの陸路移動に8時間以上かかることから、単純に移動するだけでハードなことがお分かりいただけると思います。
11.特急「北斗」4号【指定席枠消費】
札幌駅 6:52分 → 東室蘭駅 8:15分


道内の他の特急列車と比較し堅調で、指定席、自由席とも混雑した印象があります。大手企業の事業所が多い室蘭市、玄関口である東室蘭駅まで特急列車の業務利用が多い区間です。
特急北斗号、指定席車両がどれほど増えても、自由席車両は2両で固定です。閑散期は座席指定なしでもなんとかなりそうでも、繁忙期には指定席を取るのが望ましいでしょう。

そんなわけで、余った座席指定枠を充当しました。
12.特急「北斗」12号【指定席枠消費】
洞爺駅 14:08分 → 新函館北斗駅 15:52分

利用が堅調な北斗号、帰路に当たる洞爺駅(北海道洞爺湖町)から新函館北斗駅(北海道北斗市)までの区間、当初から座席指定をとっておきました。
北斗12号は、札幌駅をお昼過ぎに出発し、東京に夜ほどよい時間に到着できる理想的な時間帯の列車です(ちなみに、途中の長万部駅(北海道長万部町)で函館本線山線からの乗客を拾います)。そんなわけで、大人の休日俱楽部パスホルダーには人気がある列車に思えます。
実際に指定席は混んでいて、相席なしですべてふさがっている状況でした。途中駅から自由席アタックするのは、あまり気が進みません。

座席指定の区間指定、かなりアバウトです。えきねっとで自分で操作しましたが、旅程の整合性のチェックまで、システム的にはできないようです。
13.新幹線「はやぶさ」40号【指定席枠消費】
新函館北斗駅 16:20分 → 大宮駅 20:07分


5日間の日程中、最後の列車です。乗車時間が4時間弱と、これまで乗車した列車の中でも最も長い列車でした。

はやぶさ号の難点は、車内で食事を調達できないことです。食堂車やビュッフェもなく、新青森駅まで車内販売はあるものの弁当の取り扱いがなく、下手すると空腹が続いてしまいます。
はやぶさ40号の走行時間帯は夕食の時間と重なるため、車内で食事をとりたいところです。
というわけで、新函館北斗駅での乗り継ぎ時には、時間帯によっては駅弁の争奪戦になります。

この日は、8号車の「新幹線オフィス車両」に乗車してみました。詳しい情報を別記事にまとめましたので、興味ある方はぜひお読みください。
この日乗車した「新幹線オフィス車両」は、2023年3月から「TRAIN DESK」というサービスに衣替えされています。しかし、実質的に同じサービスです。東北・北海道新幹線の場合、8号車から7号車に変更されています。
まとめ

大人の休日俱楽部パス「東日本・北海道」は、5日間有効で非常にコスパの高いきっぷです。しかし、パスのフル活用を考えると、座席指定枠が6回ではどうしても回数が不足します。
往復とも新幹線「はやぶさ」号と特急「北斗」号の指定席を取ったとすると、6枠中4枠を消費することになります。コスパが最大化する使い方ですが、時間と体力に自信がある人向けに思えます。
陸路の移動に時間がかかることから、北海道までの移動には飛行機を利用し、道内の移動には大人の休日俱楽部パス「北海道」を利用するのも一案です(元を取れそうか検討が必要です)。
いずれにしても、5日間で首都圏から北海道を往復し、道内の在来線を一周するのは、かなりタフなことがお分かりになると思います。
参考資料 References
● 「大人の休日俱楽部」公式ウェブサイト

● 「大人の休日俱楽部パス」の買い方に関する筆者の記事
改訂履歴 Revision History
2023年01月10日:初稿
2023年4月07日:初稿 修正
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