各地にある鉄道系の博物館で人気がある、運転シミュレーター。ここ最近、シミュレーターによる電車の運転体験ができる宿泊プランを提供しているホテルがいくつか出てきました。
その一つに、浅草駅(東京都台東区)のすぐ近くにある「浅草東武ホテル」にて提供されている「東武鉄道運転シミュレータールーム」があります。電車の運転士の訓練に実際使用されていた大きなシミュレーターがホテルの一室に搬入され、リアルな運転体験を楽しめます。
鉄道系博物館で連続して運転できるのは、せいぜい数分間です。しかし、ここ浅草東武ホテルの運転シミュレータールームは、なにしろ一晩貸し切りです。チェックインしてから翌日チェックアウトするまで、運転したい放題です。時間制限なくぶっ通しで運転できる、数少ない場所だと思います。
そんなホテルの一室を筆者も予約し、実際に宿泊しました。

貸し切りで全線ぶっ通しで運転体験できるのは、全国でもおそらくここだけです。
この記事では、浅草東武ホテルの「運転シミュレータールーム」を予約し、チェックインしてから運転体験し、チェックアウトまでの筆者の体験を、できるだけリアルに共有します。
浅草東武ホテル「運転シミュレータールーム」宿泊プラン

浅草東武ホテルにて提供されている「運転シミュレータールーム」宿泊プランは、2021年11月から始まりました。当初は実際の運転士によるレクチャーを受けられる宿泊プランが販売されていましたが、2022年秋からはレクチャーなしの宿泊プランになっています。
浅草東武ホテルの一室に設置された運転シミュレーターは、東武鉄道東上線の志木乗務管区にて実際に使用されていたものです。東武東上線の始点、池袋駅(東京都豊島区)から小川町駅(埼玉県小川町)までの区間を運転できます。設置されている運転台(東武50070型)は本物の電車のサイズで、本来広い部屋も狭く見えるくらい巨大な装置です。
その宿泊プランの詳細は、次の通りです。
● 部屋タイプ:ツインルーム(定員2名)
● 宿泊料金:1泊1室40,000円(税込)
● 宿泊条件:人数分の朝食・ノベルティ付き
● 利用時間:チェックイン15:00ーチェックアウト翌朝10:00
● キャンセル料:宿泊6日前から発生(100%)
清水の舞台から飛び降りるくらいの料金設定ですが、食事やお土産付きで、至れり尽くせりのサービス内容です。一般のビジネスホテルよりワンランク上の東武ホテル系列にあっては、飛びぬけて高額な設定ではありません。料金以上の価値があるかと思います。
運転シミュレータールームの予約方法

鉄道ファンや東武鉄道ファンには垂涎の的の部屋ですが、提供されているのは一日1室のみです。日にちによっては取りにくいこともあるので、事前に予約方法をチェックしておくことが肝要です。
宿泊予約は、浅草東武ホテルのウェブサイトから直で予約します。ホテル公式ウェブサイトのトップページから「運転シミュレータールーム」のページに移動します。
宿泊月の前月上旬から、1か月間の予約が可能になります。毎月の予約開始日時を、ホテルの当該ページから確認しましょう。例えば、筆者が宿泊した12月の予約開始日時は、11月4日12時からでした。

対象プランである「東武鉄道運転シミュレーター宿泊プラン」が表示されたら、先にチェックイン日/チェックアウト日を選択してから「予約する」をクリックします。2泊以上連泊できず、1泊ずつ予約する必要があります。
予約時にクレジットカードでオンライン決済もできますし、宿泊当日チェックイン時に現地決済することもできます。

ここからは、筆者が実際に宿泊した時の様子です。
チェックインし、シミュレータールームへ

オンライン予約が完了したら、当日ホテルにそのまま向かうだけです。宿泊日前のリコンファーム(予約の再確認)は、特に求められません。
ホテルのフロントで予約のある旨申し出ると、シミュレータールームのチェックイン手続きが始まります。チェックインから部屋にあるシミュレーター装置の説明まで、スタッフさんが付きっきりで対応してくれます。
宿泊代金の決済が済むと誓約書が渡され、サインを求められます。誓約書というと一瞬ドキッとしましたが、運転台上で飲食しないことなど、いくつかの注意事項を守ることを誓約することになります。ルールを逸脱しない限り、法的な責任を負わされるわけではないので、ご安心を。
それから人数分のルームキーを用意してくれ、スタッフさんの先導でシミュレーターが設置された部屋へ(セキュリティを考慮し、部屋番号は内緒です)。

部屋はかなり広く、ベッドの脇にソファーが設置されたセミスイートルームタイプの部屋です。窓から外は見えません。そのソファーには、目立つクッションが二つ置かれています。
もともとベッドが4台置いてあった部屋で、ベッド2台分のスペースに運転シミュレーターが設置されています。バストイレ別の部屋でセーフボックス付き、人数分のミネラルウォーターが置いてあります。
部屋に入ってからさっそく、運転シミュレーターの説明をスタッフさんから受けました。装置の起動・終了方法について教えてもらえますが、運転方法は教えてもらえません。簡単なマニュアルが備え付けられているので、参照しましょう。装置のコンセントは絶対外さないよう言われました。
運転体験を味わえますが、制服や制帽の貸与はありません。コスプレができないのが残念。。。
いよいよ運転体験!

説明を一通りうけて、スタッフさんが帰ってから、さっそくシミュレーターを使用し始めました。
装置の起動が完了すると、運転する区間の発駅と着駅、列車の種別(普通・急行)が選択できます。本線を走るか、側線に入るか、細かな設定も可能です。
東武東上線にほとんど乗車しない筆者は、正直戸惑いました。それでも、操作のコツを一度つかめば運転を楽しめます。急行の停車駅は壁に貼ってあるので、参考にできます。できたら、ホテルに宿泊する前に、事前に東武東上線を乗車すると良いかと思います。
発駅を池袋駅、着駅を小川町駅、種別を普通と設定すると、ぶっ通しで約1時間運転を続けられます。想定以上に時間が過ぎるのが早かったです。

このシミュレーターがすごいのは、森林公園駅にある車庫への入庫が再現されていることです。鉄道系博物館ではまず体験できない入庫を、このシミュレーターで体験できます。
おいしい朝食がグッド!

この宿泊プランには朝食が付いていて、朝6時半からホテル3階にある「壱之壱」にてビュッフェ式の朝食を取れます。朝食ビュッフェはホテルによってピンキリですが、浅草東武ホテルの朝食の質は一回り上と感じました。
スクランブルエッグやベーコンといった洋食メニューから、玉子焼きや和惣菜といった和風メニューまで、手抜きのない料理でした。江戸前のシンプルな内容ながら、味は確かです。

ここの目玉が、料理人が目の前で握ってくれるおにぎり。1回2個まで注文でき、お代わりは何回でもオッケーです。特に鮭と明太子がおいしく、合計4個食べました。
お土産にオリジナルTシャツをもらう

朝食後、チェックアウトの10時少し前まで、シミュレーターをフル稼働。
部屋の電話機からフロントに内線通話し、スタッフさんが部屋に来てチェックアウト。装置のチェックという意味合いもありますが、この時にお土産のオリジナルTシャツを人数分くれました。フリーサイズではなく、S、M、L、XLサイズが一通りあって、自分に合ったものを選べます。
筆者はこのTシャツをいつもらえるのだろうかと、気がそわそわしていました。チェックイン時にもらうか、チェックアウト時にお土産として持ち帰るか、客が選択できるとよいかなと思いました。
筆者が宿泊した日には、二人分のオリジナルTシャツがお土産としてもらえました。2023年4月からはお土産が変更になり、クッションが1室1個もらえるということです。
まとめ

他ではまず体験できないであろう、浅草東武ホテルでの運転シミュレーター体験。
東武東上線池袋駅から小川町駅までの区間をぶっ通しで運転できます。チェックインの15時からチェックアウトの翌朝10時まで、誰にもじゃまされず、貸し切りで楽しめます。
宿泊予約は、概ね宿泊日の前月上旬から始まります。1日1室のみなので、早い者勝ちです。予約は、ホテル公式ウェブサイトからの予約に限られます。
シミュレーターが設置された部屋は、セミスイートのツインルームです。大人二人で泊まるか、親子二人で泊まるかのいずれかが考えられます。
ビュッフェ形式の質が高い朝食やオリジナルTシャツが付いていて、至れり尽くせりです。宿泊代金は高額ですが、金額以上の価値を持った体験を味わえるかと思います。
願わくは、制服や制帽を着けて運転士になりきれることを。
参考資料 References
● 浅草東武ホテル公式ウェブサイト
改訂履歴 Revision History
2023年01月15日:初稿
2023年4月07日:初稿 修正
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