東武鬼怒川線の下今市駅(栃木県日光市)と鬼怒川温泉駅(栃木県日光市)との区間をゆっくり走る「SL大樹」号。2017年に列車が走り出してから数年経ち、蒸気機関車や客車の両数が増えました。
下今市駅から鬼怒川温泉駅まで、片道約40分間の小さな旅です。蒸気機関車に連結された客車に乗車します。それらの客車には、編成によって簡易リクライニングシートやボックスシートといったタイプの違う座席が設備されていて、飽きがこないよう工夫されています。
SL大樹号は全車指定席で、乗車するには乗車券(交通系ICカード)の他に座席指定券が必要です。乗車するまでに座席指定券を購入するわけですが、一般の東武特急列車とは発売の仕方が少しだけ違うことを留意したいです。
この記事では、「SL大樹」号および「DL大樹」号に乗車に必要なきっぷの準備方法を詳しく説明します(本記事では、両者を「SL大樹」と表記します)。同じ効力の座席指定券であっても、きっぷを購入する箇所によって様々なタイプのきっぷを垣間見れて、興味をそそられます。

かつて発売されていた硬券や補充券といった手売りきっぷが続々と終売になり、現在は端末券に統一されました。きっぷからレトロさを味わえなくなったのが残念です。
SL大樹号の様々な蒸気機関車や客車については、別の記事にて詳しく説明したいと思います。
「SL大樹」号の設備~座席の種類~

2017年に初めて東武鬼怒川線を走り始めたSL大樹号。運行当初は、C11-207蒸気機関車1両と14系客車3両のみでしたが、その後蒸気機関車・客車とも増備されました。現在では、C11蒸気機関車3両と12・14系客車9両が在籍し、同線を走ります。
現在では3編成走行できる状態で、鬼怒川線内では複数の編成が走っています。週末には、途中の駅でSL列車同士が離合する、大変珍しい光景が見られます。
現在9両が在籍する客車の座席には、いくつかタイプがあります。この記事では、そのさわりだけ簡単に説明したいと思います。
【1・3号車】簡易リクライニングシート(14系客車)

運行開始当初から連結されている客車です。合計で6両あり、主力の設備です。いずれも簡易リクライニングシートで、1号車と3号車はこのタイプです。
簡易リクライニングシートとは、座っている間だけ座席がリクライニングし、席を立つとリクライニングが解除されてしまう簡易な装置のことです。
昭和中期の客車の雰囲気を味わえます。
【2号車】ドリームカー(14系客車)

元々JR北海道管内で使用されていた客車で、1両のみあります。フカフカのリクライニングシートで、簡易寝台として使えるくらい深くリクライニングします。大樹号では唯一のリクライニングシートということで人気があり、席が早く埋まりがちです。
座席の座り心地は大変いいですが、一般的な座席についているテーブルがないため、座席で食事をとるのは難しいです。
【2号車】展望車(12系客車)

運行開始からしばらく後になってから登場した客車です。客車の一角に、オープンエアーの休憩スペースがあって、誰でも利用できます。
展望車の座席は他のタイプとは違い、4人掛けのボックスシートです。大きなテーブルが設置されていて、食事をとることができます。また、窓が開く唯一の設備です。これも、2号車に連結されています。
座席番号の振り方が独特なので、席を予約する際に注意が必要です。
SL大樹号の座席の選び方~席番について~
簡易リクライニングシートとボックスシートでは座席の配置が全く異なりますが、席番の配列は両者で共通しています。
一般の特急列車のように、ABCD席で横一列になります。
【2号車・3号車】
A席側が西向きで、男体山・女体山や鬼怒川を望める上席です。D席側はその逆側で、車窓からの眺めは劣ります。
【1号車】
席番の配置が2号車、3号車とは反転し、D席側が西向きです。男体山・女体山や鬼怒川を望めます。
【2号車ボックスシート留意点】
SL大樹号の2号車ボックスシートの席番配列が特殊で、続いた番号のAB席で一つのボックスになります(例えば11AB・12ABで一つのボックス)。席番の希望を伝える際、留意しましょう。
一般的なJR列車のボックスシートは、一つの番号のA-D席で一つのボックスを占めます(例えば12番ABCD席で一つのボックス)。SL大樹号の配列は、JRとは異なるので、要注意です。
(1・3号車席番表)

(2号車席番表)

SL・DL大樹号 座席指定券のお値段
SL大樹号・DL大樹号乗車に必要な座席指定券の料金は、乗車区間により下記の通りです。乗車する号車に関係なく、料金は一律です。座席のタイプが異なる2号車に乗車するための追加料金がないことを覚えておくとよいでしょう。
● SL大樹号・SL大樹「ふたら」号【下今市駅ー鬼怒川温泉駅】
大人760円/子供380円
● SL大樹「ふたら」号【東武日光駅ー鬼怒川温泉駅】
大人1,080円/子供540円
● DL大樹号【下今市駅ー鬼怒川温泉駅】
大人520円/子供260円
乗車券について
紙のきっぷ(普通乗車券)だけではなく、交通系ICカードも使用できます。遠方から乗車する場合、株主優待乗車証を入手して乗車するのも手です。
その他、日光・鬼怒川エリアをカバーする各種フリーきっぷやデジタルきっぷを乗車券として使用することもできます。フリーきっぷには、往復の乗車券分を含んだものの他、日光・鬼怒川エリアだけで使用できるフリーきっぷも発売されています。

筆者も「日光・鬼怒川エリア鉄道乗り放題きっぷ」大人500円/子供250円を購入してみました。このきっぷ、端末から発行されるのではなく、印刷されている常備券です。デザインが良くて、持ち帰ると良い記念になるでしょう。
その都度きっぷを購入する必要がなく、コスパが高いきっぷです。日光まで車で来て、SL大樹号に乗車する場合、このきっぷを買うことをおススメします。
予約の仕方・きっぷの買い方~様々なきっぷが登場~
冒頭で申し上げた通り、SL大樹号は全車指定席の列車です。乗車券だけではなく、座席指定券を乗車する前に用意しておく必要があります。
その座席指定券を購入する方法は、以下のようにいくつかあります。東武鉄道の指定券は、従前は東武沿線でないと入手しにくかったですが、現在は主な旅行会社の他、ネット予約も利用できるようになりました。東武沿線以外に住んでいても、距離的なハードルは低くなったといえるでしょう。
座席指定券の発売時期~いつ買うか~
SL大樹号の座席指定券は、乗車1か月前の午前9時00分から購入できます。
JR指定券のように事前受付のような仕組みはありませんが、SL大樹号の座席定員は多いので、繁忙期でない限り急がなくても指定券を買えると思います。
座席指定券の発売箇所~どこで買うか~
● 東武線の有人駅(本線系統)
東武鉄道直営の有人駅窓口で、座席指定券を購入できます。押上駅など、他社管理の駅では発売しません。
SL大樹号の座席指定券に限っては自動券売機では購入できず、駅員さんを通して購入します。券売機で購入できる東武線特急列車とは違う点です。

本線系統の有人駅には端末が完備しているので、その場ですぐに購入できます。号車の希望や席番の希望をしやすい購入方法です。
※ 本線系統の駅:東上線系統以外のすべての路線を指します。
● 東武線の有人駅(東上線系統)
本線系統の駅と同じく、東上線・越生線の有人駅窓口でも座席指定券を購入できます。ただし、本線系統の駅にある端末が設備されておらず、手配と発券が手作業です。そのため、きっぷを受け取るまでに時間がかかることを留意しましょう。
手配が手作業になるため席番の希望をピンポイントで出せず、おまかせになるのが弱点です。細かな希望がある場合、ネット予約をするか、端末券を買える駅に行ったほうがよいです。

※ 池袋駅南口窓口では、他の駅と違って端末券を購入できます。
● 野岩線・会津鉄道線の有人駅
東武線の有人駅に準じて、座席指定券を購入できます。ただし、これらの駅で購入する場合、手配が電話中継で手作業での発券になるため、時間的余裕が必要です。
● 主な旅行会社
お店の数が激減しましたが、東武トップツアーズのカウンター窓口にて、東武線特急列車やSL大樹号の座席指定券を購入できます。東武トップツアーズで東武線のきっぷを購入する際、取扱手数料はかかりません。この場合も、席番の希望出しは難しいようです。

東武トップツアーズで指定券を購入すると、このような船車券を入手できます。
他の旅行会社でも東武線のきっぷを購入できますが、取扱手数料がかかることがあるので、留意しましょう。
● ネット予約【駅で決済】
東武線のネット予約では、特急列車用とSL大樹号用で違うシステムが使用されているため、それぞれ別のサイトで予約購入を行います。

SL大樹号の座席指定券の予約購入は、専用の予約サイトから行います(URLはコチラ)。
ネット予約を行う際、予約だけしておいて駅で決済する方法と、クレジットカードでオンライン決済する方法があります。
駅で決済する場合、ネット予約時に席番を確定できません。駅で購入するのと同じ手順のため、ネット予約する意味があまりありません。ただし、列車が満席になりそうなら、席を仮に押さえておくために活用できるでしょう。
この方法では、予約日を含めて7日間以内に駅で決済する必要があるので、遠方に居住している場合は活用が難しいです。駅で決済する際、乗車券が必要な場合は一緒に買うことができます。
※ 一般の特急列車とちがい、SL大樹号は券売機でのネット予約受け取りができません。駅員さんに依頼しましょう。
● ネット予約【クレカオンライン決済】
クレジットカードでオンライン決済する場合、予約時に席番が確定し、座席指定券がチケットレスになります。席番の希望を駅員さんに伝える手間がないので、気楽です。
ネットでオンライン決済できるのは、座席指定券のみです。乗車券は別に用意する必要があります。
駅で決済する場合にはあまり意味がないネット予約ですが、オンライン決済できれば大変有用な方法です。紙のきっぷにこだわりがなければ面倒がなく、この方法がおススメです。
東武沿線から遠方に住んでいる場合や無人駅から乗車する場合、駅員を通してきっぷを購入できないので、ネット予約を活用する価値があると思います。
● 電話予約
東武鉄道のセンターにて電話予約もできますが、詳細は割愛します。
こんなところでも買えます
観光列車でもあるSL大樹号の座席指定券は、これまでお話ししてきた駅や旅行会社だけではなく、現地の一部観光相談窓口や観光施設でも購入できます。
【発売終了】鬼怒川温泉駅・東武日光駅ツーリストセンター
2023年6月をもって、鬼怒川温泉駅・東武日光駅ツーリストセンターの運営が東武トップツアーに移管されたことにより、硬券の扱いがなくなりました。本記事では、参考までに掲載を続けます。

バス乗車券や観光チケットを発売しているカウンターでも、以下の条件付きでSL大樹号の座席指定券を発売しています。
● 当日それぞれの駅を発車する分の座席指定券
● 満席でないこと
● 席番の希望を出せず、おまかせになること
硬券に日付や席番が手で記入されています。券面をよく見ると、旅行会社に準じた船車券ですが、昔懐かしい列車に合ったきっぷに違いありません。

タイミングが良ければ、自分で日付を入れる作業(ダッチング)を体験させてもらうことができるかもしれません。
東武ワールドスクウェア園内のチケットカウンター

東武ワールドスクウェア駅ではきっぷを発売していない代わり、同園の営業時間に限って東武線のきっぷを購入できます。
SL大樹号の座席指定券も、例に漏れず購入できます。発車まで時間に余裕がある場合、園内に入ってきっぷを買っておくと安心です。
当日券は、レシート状のきっぷです。
列車車内で乗車時に購入

無人駅の東武ワールドスクウェア駅からSL大樹号に飛び乗る場合、車内のアテンダントさんから座席指定券を購入します。
SL大樹号には、他の特急列車と違って料金の車内加算がなく、通常の値段でいけます。ただし、座席指定してもらえない可能性があることを念頭に置いたほうがよいと思います。
どうしても事前に座席指定券を買えなかった場合の最終手段なので、個人的にはこの方法をあまりおススメしません。
以前は、車内で座席指定券を購入すると、日付が手書きの車内券を入手できました。今日では、残念ながらレシートに変わってしまいました。
まとめ

SL大樹号に乗車するためのきっぷの準備には、いろいろな方法があります。座席指定券の料金は一律ですが、乗車券の買い方には多くのパターンがあります。
日光・鬼怒川地区だけ乗車する場合、格安なフリーきっぷがあります。下今市駅で乗り換えないで通しで乗車する場合、交通系ICカードや株主優待乗車証など、自分に合った方法をとることができます。
座席指定券の料金は、号車を問わず一律です。2号車に乗車する場合でも、差額はありません。
ネット予約でオンライン決済できれば最も便利ですが、買い方によっては手売りきっぷを入手できる場合があります。きっぷ鉄を含め、万人に楽しめる列車だと思います。
Appendix:ネット予約の画面遷移
ここでは、東武鉄道「SL大樹・DL大樹インターネット購入・予約サービス」ウェブサイトにてSL大樹号のネット予約を行う際の操作画面を逐一説明します。
ここでは、ネット予約で席を仮押さえしてから駅で決済する流れでいきたいと思います。
(1) 日にち、時間帯、区間を指定して空席照会すると、予約できる列車が発車時刻順に表示されます。オンライン決済する場合「座席を指定して購入」、駅で決済する場合「予約のみ」を選択します。

(2) オンライン決済する場合、希望する席番を指定します。駅で決済する場合、座席を選択できないため、このステップはありません。

(3) 予約する列車と座席指定券の金額を確認して、次に進みます。

(4) 電話番号とメールアドレスを入力してから、規約に同意します。

(5) 予約が完了すると、6桁の予約番号が表示されます。予約当日を含めて7日間以内に駅で決済してきっぷを受け取ります。

参考資料 References
● 「SL大樹」公式ウェブサイト(東武鉄道)2023.02閲覧

● 「SL大樹・DL大樹 インターネット購入・予約サービス」ウェブサイト(東武鉄道)2023.02閲覧
改訂履歴 Revision History
2023年02月05日:初稿
2023年02月10日:初稿 修正
2023年02月15日:初稿 追加
2023年4月07日:初稿 修正
2023年7月20日:初稿 修正
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