東京駅(東京都千代田区)から金沢駅(石川県金沢市)までの区間を結ぶ、北陸新幹線。2024年春には、敦賀駅(福井県敦賀市)まで延伸します。
北陸新幹線の特徴は、一つの路線をJR東日本とJR西日本が共同で運行していることです。東京駅から上越妙高駅(新潟県上越市)まではJR東日本運行の区間で、上越妙高駅から金沢駅まではJR西日本運行の区間です。途中の長野駅(長野県長野市)で、JR東日本の乗務員とJR西日本の乗務員が交代することにお気づきかと思います。
したがって、北陸新幹線のきっぷをネット予約で購入する場合、JR東日本のネット予約サービス「えきねっと」とJR西日本のネット予約サービス「e5489」の両方が利用できます。
ただし、同じ区間のきっぷであっても、「えきねっと」と「e5489」ではきっぷの値段や付与されるポイントに差があります。つまり、利用の仕方によってはえきねっとを利用するほうが有利な場合があるし、あるいはe5489を利用する方が有利な場合があるというわけです。
この記事では、ネット予約サービス「えきねっと」と「e5489」それぞれの特長を踏まえた上で、それぞれのサービスで買える割引きっぷの種類や値段を詳しくみていきます。そして、北陸新幹線の利用に関係するポイントサービスについても触れたいと思います。

J-WESTカード会員専用の「eきっぷ」という割引料金が、北陸新幹線でも提供されています。ビューカード会員向けに同類の割引きっぷがないため、北陸新幹線のヘビーユーザーはJ-WESTカードを持つと吉です!
北陸新幹線のネット限定割引きっぷ
ネット予約サービスの要であるネット限定割引きっぷの概要を、最初にお話しします。北陸新幹線の場合、駅では所定運賃・料金のきっぷしか買えませんが、ネット上には割引きっぷが多く出ています。
北陸新幹線区間完結の割引きっぷ
JR東日本のネット割引料金「えきねっとトクだ値」および「お先にトクだ値」を、JR西日本も違う名称「eチケット早特」として発売しています。e5489上で発売されていますが名称が異なるため、同じ商品だと気づかないかと思います。
● 「お先にトクだ値」=「eチケット早特14」
北陸新幹線の場合、乗車14日前までに購入できれば、所定料金の35%引きになります。提供席数が少ないのか、乗車1か月前で瞬殺となることが多い人気商品です。
● 「えきねっとトクだ値」=「eチケット早特1」
乗車前日までに購入できれば、所定料金の10%引きになります。
北陸地区主要駅発着の割引きっぷ
「e5489」で購入する場合に限り、北陸地区在来線と北陸新幹線の区間が通しの割引きっぷを購入できます。「えきねっと」では発売していません。
● 「WEB早特1」「e早特1」
誰でも買えるのが「WEB早特1」で、J-WESTカード会員専用が「e早特1」です。和倉温泉駅/小松駅/福井駅/敦賀駅発着で料金設定があります。北陸地区在住者だけでなく、首都圏在住者も利用できます。
● 「おとなび首都圏往復フリーきっぷ」【おとなび会員限定】
50歳以上の人(おとなび会員)が購入できるきっぷです。北陸新幹線往復と東京地区のフリーきっぷがセットです(発着駅によっては当該区間の往復もセット)。このきっぷだけは例外的に、主な旅行会社でも購入できます。
いずれも駅では買えないため、ネットから予約購入します。それには、ネット予約サービスの利用登録が必要です。新幹線の料金は高額なので、割引をうまく活用したいです。
ネット予約サービス利用には利用登録が必要

北陸新幹線のきっぷをネットで予約購入するには、その前にネット予約サービスの利用登録をし、会員になる必要があります。
この記事でご説明する両サービスの差は、ここで説明するネット予約サービスとそれに紐づくクレジットカードによるものです。本記事を読み進めるための前提知識となります。
「えきねっと」とビューカード
JR東日本が展開するネット予約サービスが「えきねっと」です。えきねっとを利用するのに、クレジットカード決済は必須ではありません。
同じくJR東日本(の子会社)が展開するクレジットカードに「ビューカード」があります。一部の銘柄を除いて年会費が有料ですが、ビューカード会員だけに提供される料金の割引は特にありません。
えきねっととビューカードは相互依存の関係ではなく、それぞれ独立したサービスです。ビューカードがなくてもえきねっとを利用できるし、ビューカードを持ったとしてもえきねっとの登録が必須ではありません。ポイントサービスの「JRE POINT」入会も強制ではなく、緩やかな結びつきといえます。
ただし、えきねっととビューカードの親和性は高いです。えきねっと上で列車の予約をして、ビューカードで決済したきっぷで列車に乗車すればするほど、JR東日本のポイントサービス「JRE POINT」にザクザクポイントがたまります。
「e5489」とJ-WESTカード
一方、JR西日本が展開するネット予約サービスが「e5489」です。えきねっとと同じく、クレジットカード決済は必須ではありません。
JR西日本もクレジットカードを独自に展開しています。そのカードは「J-WESTカード」ですが、当該クレジットカードとネット予約サービス「e5489」、ポイントサービス「WESTERポイント」が一体のサービスであるのが大きな特長です。その現れとして、それらのサービスを利用するには共通のID「WESTER ID」でログインします。
e5489の利用にあたって、J-WESTカード入会は必須ではありません。ただし、J-WESTカードに入会したら同時に「e5489」や「WESTERポイント」、50歳以上の場合には「おとなび」にも自動入会となります。
J-WESTカードの大きいところは会員専用の料金設定があることで、非会員より安くきっぷを買えます。JR西日本ユーザーにとっては、大きなメリットです。
北陸新幹線における万人向けのネット専用きっぷ

前置きが長くなってしまいましたが、これから北陸新幹線の列車を予約する際の「えきねっと」と「e5489」の差を見ていきたいと思います。まず最初に、特定のクレジットカードの所持や年齢にとらわれず購入できるきっぷをみていきます。
「えきねっと」で買えるネット専用のきっぷ
きっぷを購入するためには、えきねっとの利用登録が必須です。ビューカードに入会しなければならないという縛りも一切ありません。えきねっとでは、全国のほぼ全列車のきっぷを購入できることから、JR西日本区間完結のきっぷを買えることはいうまでもありません。
えきねっとを利用した場合、割引がない所定の運賃・料金の紙のきっぷの他に、ネット予約専用の「新幹線eチケット」が発売されていて、チケットレス乗車ができます。「新幹線eチケット」は、新幹線特急券と乗車券がセットになったきっぷですが、駅の窓口や指定席券売機では購入できません。
一番大きいメリットは、駅に出向き、駅員さんとあれこれとやり取りする煩わしさから解放されることです。自分できっぷを買ってそのまま列車に乗車するだけという便利さを一度体験すると、以前のスタイルには戻れなくなります。
ただし、紙のきっぷと違い、特定都区市内制度が適用されないことや途中下車できないといった、乗客にとって不利な制約があることを覚えておきましょう。

えきねっとで新幹線のきっぷを買おうとすると、新幹線eチケットの存在感が圧倒的に強いです。

えきねっとでしか買えないネット限定割引料金に「えきねっとトクだ値」があります。発売数量が限定なのがネックですが、14日前までに購入すれば35%割引の「お先にトクだ値」、前日までに購入すれば10%割引の「えきねっとトクだ値」を利用できます。
駅ではこのような割引きっぷが発売されていないので、ネットを利用する動機づけになると思います。
「えきねっとトクだ値」に関する詳細については、以下の別記事(↓)を参照してください。
「e5489」で買えるネット専用のきっぷ
e5489できっぷを購入するためには、えきねっとと同様、会員登録が必要です。J-WESTカードの入会は必須ではありませんが、当該カード会員しか購入できない割引きっぷがあります。後述しますが、この点がビューカードとの大きな違いです。
冒頭でお話しした通り、北陸新幹線はJR東日本とJR西日本の共同運行ということがあり、きっぷの種類や発売方法がかなり共通しています。

e5489からも、所定運賃・料金の紙のきっぷの他に「新幹線eチケット」を予約購入できます。JR西日本区間またがりのきっぷだけではなく、JR東日本区間完結のきっぷもe5489で購入できます。

e5489では、「えきねっとトクだ値」に相当するネット限定割引料金に「eチケット早特」があります。これは、えきねっととe5489とできっぷの呼び方が違うだけで、きっぷの効力や条件は全く同じです。
えきねっとの「お先にトクだ値」に相当するのが、e5489の「eチケット早特14」です。また、「えきねっとトクだ値」に相当するのが「eチケット早特1」です。
e5489でも、JR東日本区間完結の「えきねっとトクだ値」と同じ効力のきっぷが、JR西日本の「eチケット早特」として購入できること、本当は教えたくありません。
本記事では、説明のために「新幹線eチケット」の紙のきっぷを掲載しました。「新幹線eチケット」は本来チケットレスで乗車するもので、紙のきっぷを受け取る必要がないことを留意ください。紙のきっぷを受け取ると、それ以降乗車変更ができなくなるので、注意してください。
J-WESTカード会員しか買えない北陸新幹線のおトクきっぷ

北陸新幹線のきっぷを買う場合、J-WESTカード会員であることがかなり有利に作用します。当該カード会員がe5489を利用すると、以下の割引きっぷを購入できます。
ただし、以下の割引きっぷはJR西日本区間またがりである必要があり、JR東日本区間完結の場合は適用されません。
● eきっぷ(IC用)
チケットレス乗車できる「新幹線eチケット」に相当する会員専用のきっぷとして、数百円割引で発売されています。これは、J-WESTカード会員だけが買えるきっぷです。下記eきっぷと同額です。
● eきっぷ
上記の紙のきっぷ版です。新幹線特急料金が、所定料金から数百円割引になったきっぷです。eきっぷ(新幹線特急券)と乗車券をセットで購入しますが、それぞれのきっぷの値段は別建てです。これも、J-WESTカード会員しか買えません。

J-WESTカード会員がe5489にログインすると、通常のきっぷに加え、会員専用きっぷが検索結果に表示されます。通常価格の「新幹線eチケット」の代わりに「eきっぷ(IC用)」が表示されています。
● e早特1
北陸地区主要駅から北陸新幹線に乗り継ぐ場合の割引きっぷです。和倉温泉駅/小松駅/福井駅/敦賀駅発着で料金設定があります(J-WESTカード非会員でも「WEB早特1」として、少し高い金額で購入できます)。

加賀温泉駅発着の検索結果では、カード会員専用の割引きっぷ「e早特1」が表示されています。2024年春に北陸新幹線が延伸され次第、この料金は廃止されるはずです。
これらの割引きっぷは、年会費実質無料のJ-WESTカード会員だけが買えます。このことは、ビューカード会員やえきねっとユーザーが決して享受できないアドバンテージです。人様にはあまり教えたくない、実においしいきっぷの買い方です。
それにしても、JR西日本が発売するネット割引料金の名称が「e」ばかりで、とても紛らわしいですね。
ネットで買える「おとなび」会員向けおトクきっぷ
「えきねっと」と「e5489」それぞれで買える北陸新幹線のきっぷの特徴という本記事の論点からは脱線しますが、ここで50歳以上のミドル・シニア層向け「おとなび」会員向けのきっぷのお話をします。
50歳以上のe5489ユーザーは、自動的に「おとなび」会員になります。彼らに対して提供される北陸新幹線のきっぷに、おトクなものがあります。
おとなび会員向けのきっぷをネット予約「e5489」で購入する際、J-WESTカード以外のクレジットカードや現金決済も可能です。年齢条件さえ満たせば、J-WESTカード会員向け割引きっぷよりもずっと自由です。
● おとなび首都圏往復フリーきっぷ【おとなび会員限定】
おとなび会員だけが購入できる、北陸地区の主な駅発着の往復割引きっぷです。
加賀温泉駅/和倉温泉駅/金沢駅/高岡駅/富山駅/黒部宇奈月温泉駅/糸魚川駅発着の設定があります。首都圏在住者向けではありません。

北陸新幹線の普通車指定席往復に加えて、東京地区のフリーきっぷが付いて、値段が最安のきっぷです。北陸地区在住者が東京に出てくる時には、ファーストチョイスです。
おとなび会員は年会費がかからないので、購入条件さえ満たせれば、おトクなきっぷにリーチ可能です。
ポイントサービス

いま見てきた内容だけからすると、J-WESTカードに軍配が上がりそうですが、ポイントサービスでは、JR東日本勢も負けていないと思います。
JR東日本の「JRE POINT」に付くポイント数、新幹線eチケットを購入し、チケットレス乗車するためのきっぷをビューカードで決済した場合、平カードで利用額の5%、ゴールドカードで利用額の10%なのは、非常に高率です。
一方、リニューアルされたJR西日本「WESTERポイント」に付くポイント数は、東京駅ー金沢駅間の普通車指定席のきっぷをJ-WESTカードで決済した場合、124ポイントと少なめです。
JR西日本区間完結の北陸新幹線の「新幹線eチケット」をビューカードで決済した場合でも、同率のポイントが付与されます。JRE POINTの貯まり方がすごいと感じるはずです。
まとめ

北陸新幹線を割引きっぷで乗車するには、ネット予約サービスの利用が欠かせません。ネット予約サービスには、JR東日本展開の「えきねっと」とJR西日本展開の「e5489」があります。いずれも利用登録が必要です。
北陸新幹線の停車駅間をチケットレスで乗車する「新幹線eチケット」のネット限定割引料金が、JR東日本の「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」およびJR西日本の「eチケット早特1・14」です。名称が違いますが、同じ効力で同じ値段です。誰でも利用できる割引きっぷですが、人気が高く瞬殺気味なので、できれば乗車1か月前に購入したいです。
JR西日本が展開するクレカ「J-WESTカード」を所持していると、加えて「eきっぷ」や「e早特1」が購入できます。クレカ会費実質無料で、所定運賃・料金よりも安いきっぷが買えるので、できれば利用したいです。
新幹線のチケットレス乗車に高率のポイントを付与するのが、JR東日本のポイントサービス「JRE POINT」です。えきねっととビューカード決済の併用で、平カードで利用額の5%分、ゴールドカードで利用額の10%分のポイントを得られるので、JR東日本ユーザーは要注目です。
JR西日本のポイントサービス「WESTERポイント」は仕組みが複雑で、付与ポイント数も少なめなので、ポイントにはあまり期待しないほうがよいでしょう。
参考資料 References
● JRおでかけネット トクトクきっぷ(JR西日本)2023.4閲覧

● e5489 トップページ(JR西日本)2023.4閲覧
● えきねっと トップページ(JR東日本)2023.4閲覧

改訂履歴 Revision History
2023年4月24日:初稿
2023年4月29日:初稿 修正
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