東海道・山陽・九州新幹線の列車をネットで予約し、専用ICカードでチケットレス乗車できる「エクスプレス予約(EX予約)」。IC乗車専用カード「EX-IC」でチケットレス乗車するだけではなく、格安な「e特急券」を買えるのがEX予約会員の醍醐味です。
出発地の新幹線停車駅から目的地の新幹線停車駅まで、在来線への乗り継ぎがないパターンでは、IC乗車がとても便利です。
しかし、出発地から目的地までの移動では、新幹線に乗車する前後にJR在来線を乗り継ぐケースの方が、むしろ多いのではないでしょうか。
その場合、IC乗車はちょっと待った!です。新幹線IC乗車分の運賃・料金と前後の在来線の運賃を別々に払う以外に、普通乗車券を全区間通しで買い、別に新幹線特急券を買う方法もあります。
旅費節約のために大切なのは、両者のパターンで支払う運賃・料金の総額を事前に比較し、安いほうできっぷを用意することです。

IC乗車するか、通しの乗車券とe特急券を用意して乗車するかの検討するためのツールとして、「乗換案内」などのスマホアプリが便利です。旅費節約につながるので、ぜひご検討を。
この記事では、EX予約会員向けに発売されている「e特急券」を新幹線特急券として別に買うと安いというお話を、ケーススタディを交えてしたいと思います。
また、EX予約の領収書についても、軽くお話しします。
この記事でご紹介するきっぷの買い方は、エクスプレス予約(EX予約)会員向けです。同じチケットレス乗車サービスでも「スマートEX」は運賃計算の仕組みが異なるため、残念ながらこのワザを活用できないことをご留意ください。
e特急券の醍醐味を味わうために~EX予約を利用する方法~

EX-ICカードでのIC乗車や値段がおトクなe特急券を買うには、EX予約の会員にならなければなりません。会員形態には個人会員と法人会員がありますが、本記事では個人会員を前提としてお話を進めます。
EX予約の[会員になる=クレジットカードに入会する]ことですが、大きく分けて次の4つの手段があります。どのカードを持ったとしても、年会費1,100円がかかります。
JR東海「エクスプレスカード」

JR東海が発行するクレカで、EX予約を利用するための王道です。
新しく当該クレカを作る以外に「プラスEX」会員になる方法があります。例えば、(株)ジェーシービーが発行するクレカをすでに所持している場合、特約としてプラスEXを付けられます。
JR西日本「J-WESTカード」エクスプレス

JR西日本が展開するJ-WESTカードの「エクスプレス」会員になる方法です。エクスプレス会員には、JR西日本発行のEX-ICカードが交付され、EX予約を利用できます。e5489、おとなび(該当者のみ)、WESTERポイントが一体になっているので、使い勝手がよいです。
JR九州「JQ CARD」エクスプレス
JR九州が展開するJQカードのうち「JQ CARDエクスプレス」銘柄を持つ方法です。エクスプレス会員には、JR九州発行のEX-ICカードが交付され、EX予約を利用できます。
ビューカード「エクスプレス特約」

隠し玉的な方法です。JR東日本子会社のビューカード発行のクレカを所持し、モバイルSuicaをスマホで使っているのが条件ですが、エクスプレス特約を追加するとEX予約を利用できるようになります。この場合、EX-ICカードの代わりに、ビューカード会員用の会員証が交付されます。
e特急券とは~JR在来線に乗り継ぐ乗車パターンで旅費節約~

「e特急券」とは、EX予約会員だけが購入できる、東海道・山陽・九州新幹線の特別価格の新幹線特急券です。紙の普通乗車券と併用して使います。普通車指定席と自由席が同額なので、座席指定を受けた方がおトクです。
EX予約サービスの主な使い方は、ネットで予約してチケットレスでIC乗車する方法です。ただし、EX予約の運賃・料金計算の特性として、新幹線乗車駅・下車駅で運賃計算を打ち切ることがあります。
新幹線乗車駅・下車駅で移動が始まり、終わるのならば、何も考える必要はありません(例:東京駅から乗車し名古屋駅で下車)。しかし、当該区間の前後でJR在来線に乗り継ぐパターンが多くあり、運賃の打ち切り計算で値段が高い安いという問題が発生します。
EX-ICカードでIC乗車するのではなく、EX予約の料金の安さはそのままに、全区間通しで運賃計算がされた紙の普通乗車券と、EX予約独自の紙の新幹線特急券「e特急券」を併用するという方法が、上記の解決策になります。
これらの事情が、e特急券が存在する主な背景と考えます。しかし、このきっぷを知らない方が大多数ではないかと思料します。せっかく買える安いきっぷをみすみす逃すことになり、とてももったいない話です。
延々と能書きを垂れても仕方ないので、ケーススタディとして、運賃・料金計算の事例をいくつかみていきたいと思います。運賃計算の比較ツールには、JR東海が出しているものもありますが、筆者は別のスマホアプリの力を借りたいと思います。
運賃・料金比較のケーススタディ

東海道新幹線に乗車し、その前後でJR在来線を乗り継ぐ経路を2例、東海道新幹線内で完結する近距離の経路を1例考えます。
本記事にてご紹介するEX会員専用の「e特急券」の料金体系が、2023年10月に変更されました。従来は通年で同額でしたが、現在はシーズナリティが導入され、時期によって金額に変動があります。
大宮駅から名古屋駅(名古屋市内)まで
JR大宮駅から東京駅までJR在来線に乗車し、東京駅で東海道新幹線に乗り継いで名古屋駅で下車する事例です。このケースでは、いわゆる「特定都区市内制度」の問題は考えなくて大丈夫です。

この経路では、(1)大宮駅から赤羽駅ゆきの乗車券と、(2)東京都区内から名古屋市内ゆきの乗車券を併用する手も考えられます。しかし、ここでは本記事の趣旨にのっとって、あくまでも大宮駅から名古屋市内ゆきの通しの乗車券で考えたいと思います。

筆者が普段利用している「乗換案内」では、設備ごとの料金比較ができます(有料機能)。東海道新幹線の列車を選択し、「e特急券(指定席)」や「EX予約(指定席)」を指定すると、料金の総額を簡単に比較できます。
(a) EX-ICカードでチケットレス乗車する場合
[大宮駅から東京駅までのIC運賃571円]+[東京駅から名古屋駅までのIC運賃10,310円]=10,881円

(b) e特急券と普通乗車券を併用し紙のきっぷで乗車する場合
[大宮駅から名古屋市内までの普通運賃6,600円]+[東京駅から名古屋駅までのe特急券4,130円]=10,730円

● 損得計算
(a)ー(b)=151円 → (b)のほうが151円安い
このケースでは、e特急券と紙の普通乗車券を買ったほうが、IC乗車よりもいくらか安くなります。特定都区市内制度が絡まなくてもe特急券が安い場合があるという事例です。微小な金額ですが、けっして無視できません。
横浜駅(横浜市内)からユニバーサルシティ駅(大阪市内)まで
JR横浜駅から新横浜駅までJR在来線に乗車し、新横浜駅で東海道新幹線に乗り継いで新大阪駅まで向かい、その後ユニバーサルシティ駅で下車する事例です。このケースでは「特定都区市内制度」の問題が絡んできます。

(a) EX-ICカードでチケットレス乗車する場合
[横浜駅から新横浜駅までのIC運賃178円]+[新横浜駅から新大阪駅までのIC運賃13,290円]+[新大阪駅からユニバーサルシティ駅までのIC運賃230円]=13,698円

(b) e特急券と普通乗車券を併用し紙のきっぷで乗車する場合
[横浜市内から大阪市内までの普通運賃8,580円]+[新横浜駅から新大阪駅までのe特急券4,910円]=13,490円

● 損得計算
(a)ー(b)=208円 → (b)のほうが151円安い
このケースでも、e特急券と紙の普通乗車券を買ったほうが、IC乗車よりもいくらか安くなります。特定都区市内制度が絡む場合、同制度が適用された紙の普通乗車券を使ったほうが運賃が安くなる傾向があります。
新横浜駅から東京駅まで
上の2例は比較的長距離の経路でしたが、この経路はきわめて近距離です。新横浜駅から東京駅まで東海道新幹線に乗車します。

(a) EX-ICカードでチケットレス乗車する場合
[新横浜駅から東京駅までのIC運賃2,270円]=2,270円
(b) e特急券と普通乗車券を併用し紙のきっぷで乗車する場合
[新横浜駅から東京駅までの普通運賃510円]+[新横浜駅から東京駅までのe特急券1,760円]=2,270円
● 損得計算
(a)と(b)は、いうまでもなく同額です。IC乗車しても問題ないケースで、紙のきっぷ(e特急券)を買ってもあまり意味がありません。
e特急券の買い方・使い方

それでは、e特急券の買い方および使い方を説明します。筆者が実際に使用した紙のきっぷをお示しした上で、具体的に流れをお話しします。
たった今設例として挙げた、大宮駅から名古屋駅まで乗車するための紙のきっぷ(e特急券・普通乗車券)で説明を進めます。
ウェブブラウザ・EXアプリ上でe特急券を予約購入
新幹線区間のe特急券の予約購入を、EX予約ウェブブラウザ版もしくはEXアプリから行います。ここでは、EXアプリで操作を行います。
1.列車を検索します。この時、追加条件として「e特急券のみ」を選択します。

2.予約したい設備を選びます。e特急券の値段は、指定席、自由席とも通年で同額です。

3.座席指定が完了したら購入内容を確認し[この内容で予約(購入)]します。

紙のきっぷの準備
新幹線に乗車する場合、交通系ICカード(Suica・ICOCA等)を乗車券として使用できないため、必ず紙の普通乗車券を購入します。したがって、e特急券と交通系ICカードの併用ができないという言い方もできます。

e特急券については、乗車する前に紙のきっぷの受け取りが必要です。アプリ上の受け取りコードを提示するか、IC乗車するためのカード(EX-IC等)を持参して、JR東海/西日本の窓口もしくは指定席券売機で受け取ります。
紙の普通乗車券等を別に用意します。e特急券と乗車券を自動改札機に入れて、改札口を通ります。
実際に買ったきっぷ・領収書の様式

引き取った紙のきっぷの様式は、この通りです。

きっぷの本券と同時に「ご利用票兼領収書」も発行されます。

ウェブブラウザやアプリからも領収書を取得できます。PDF形式にて保存できます。

新幹線では、交通系ICカードのチャージ残高からのIC乗車(SF乗車)ができません。必ず紙の普通乗車券を購入します。
乗車変更
● 紙のきっぷ引き取り前
ウェブブラウザやアプリ上で列車の発車時刻前に変更操作が可能です。購入日から最長で3か月先の日まで、何回でも変更の操作を行えます。
● 紙のきっぷ引き取り後
ウェブブラウザやアプリでは変更できません。券面に記載された内容と同じ日・同じ区間・同じ設備・同じ列車種別の場合に限って、駅窓口で1回だけ変更できます。
引き取り後の乗車変更には、かなり制約が伴います。きっぷの引き取りは、乗車直前をおススメします。
割引運賃と併用可能なe特急券
IC乗車と比較して運賃部分の差額の節約になるだけがe特急券のメリットではありません。
学割、障害者割引などの運賃割引を併用する場合に、e特急券を活かせます。学割、障害者割引は運賃の割引だけで、料金の割引がありません。新幹線に頻繁に乗車する場合、e特急券の利用価値がありそうです。
変わり種としては、JR東海管内全域の鉄道が乗り放題の「乗り鉄★たびきっぷ」で東海道新幹線に乗車する場合、e特急券との併用が可能です。
在来線定期券や団体乗車券との併用には制限がありますが、普通に利用する限り考慮不要です。
こぼれ話:紙のきっぷの券面をよく見てみよう
この記事をしめる前に、紙のきっぷの券面をよく見てみたいと思います。

JR西日本発行のJ-WESTカードで決済する場合、券面の左上に「西C」と印字されます(発行箇所:西EX予約)。続けて「e特急券」と印字されているので、それとわかります。

ビューカードのエクスプレス特約を利用して購入したe特急券。これはJR東海発行になるようで、券面の左上に「海C」と印字されます(発行箇所:海EX予約)。
このe特急券を使用して乗車したのがGWの最繁忙期で、所定料金が激高でした。乗車当時はe特急券の値段が通年同額で、料金面でありがたさを感じました。
JR九州のJQ CARDまではさすがに持てませんが、その場合「九C」となるのでしょうか??
まとめ

EX予約の会員にさえ、あまり知られていないであろう「e特急券」。
新幹線に乗車する前後にJR在来線を乗り継ぐ場合に運賃節約のツールとして活用したい料金です。ただし、利用するたびに試算が必要なため、玄人向けのきっぷに違いありません。「乗換案内」などのスマホアプリを使用して比較計算することをおススメします。
e特急券は紙のきっぷで、併用する乗車券に紙の普通乗車券を用意する必要があります。新幹線に乗車する場合、交通系ICカードのチャージ残高で乗車すること(SF乗車)ができないため、交通系ICカードとe特急券の併用ができません。
e特急券は、必ずしも特定都区市内制度が適用される区間でのみ有効なわけではありません。乗り継ぎ先の多くのJR線区間で、運賃が割安になる可能性があるきっぷの買い方です。
残念なのが、e特急券が、入会のためのハードルが高い「EX予約」会員専用のきっぷである点です。任意のクレカがあれば誰でも利用できる「スマートEX」利用者向けには、e特急券と同等のおトクなきっぷがありません。e特急券を活用できる人がかなり限定されてしまうことは否めません。
参考資料 References
● 予約・乗車ガイド|エクスプレス予約 新幹線の会員制ネット予約(JR東海)2023.5閲覧
● EX予約運賃ナビ(JR東海)2023.5閲覧
改訂履歴 Revision History
2023年5月13日:初稿
2023年9月16日:初稿 修正
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