きっぷ鉄とコミュニケーション〜快くきっぷを買うための考え方〜

八川駅きっぷうりば きっぷ鉄(紙券)

きっぷ鉄の醍醐味は、鉄道会社によって異なるデザインのバリエーションに富んだきっぷを手に入れることです。硬券や補充券といった、あらかじめ調製された手売りきっぷもまだまだ残っていて、味のある趣味として多くの人の気持ちを惹きつけます。

そんな手売りきっぷは券売機で買えるものではなく、人を介して出してもらうものです。多忙な駅業務を縫ってきっぷの発売に時間を割いてもらうのは、大なり小なり迷惑といえるかもしれません。とはいえ、遠慮ばかりしていては収集を推進できません。

そこで、きっぷ鉄を充実したものにするためには、相手に気持ちよく動いてもらうための良好なコミュニケーションスキルを身に着けたいです。

筆者も典型的な「コミュ障」で空気を適切に読めず、日頃の社会生活に困る場面が時折あります。しかし、きっぷ鉄を推進するためにコミュニケーションスキルを磨いてきて、今ではかなり改善したと思っています。

この記事では、きっぷ鉄とコミュニケーションの関係性を、筆者の経験を含めて考えてみたいと思います。抽象的な精神論に終わらず、具体的な話し方やアサーションの技法についても、可能な限り触れたいと思います。

はじめにお断りしておくと、この記事を通して、鉄道会社に趣味発券を行うように誘導する意図は全くありません。現場の方には、あくまでも会社の方針を貫き、本来の業務を励行していただきたいです。きっぷ鉄ファン向けに書いた記事ですが、鉄道会社の関係各位にも目を通していただくと嬉しいです。

鉄道きっぷの発売の場面では、固有のコミュニケーションの難しさがあります。穏やかに自己の要望をはっきり伝えることで良好なコミュニケーションが取れ、互いの信頼関係に結び付きます。

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趣味発券とは~使わないきっぷを発売してもらう~

常備券イメージ

きっぷを買うためのコミュニケーションについて触れる前に、そもそもきっぷを買うことがどのようなことか、個人的に思うところをお話しします。

駅できっぷを買うのは、本来は列車に乗るためです。実際に列車に乗って使用したきっぷを持ち帰るというのが、本来のきっぷ鉄のあり方かもしれません。

しかし、実際に使ったきっぷは着駅で回収されるのが原則的なルールです。最近では、大多数の鉄道会社できっぷの持ち帰りには寛容で、大変ありがたいことです。しかし、JR北海道などの一部の会社では、使用済みきっぷの扱いが杓子定規といえるくらい、実に厳しいです。

そんなわけで、稀なケースながら、正直にきっぷの持ち帰りを申し出ると断られて狼狽することになります。そこで、途中下車できるきっぷを買って、前途放棄をすることできっぷを手元に残すのが、典型的なワザです。

こんなことが背景にあるので、きっぷ鉄趣味を推進する上では、実際には使わないきっぷを収集のために発売してもらうことがどうしても必要になります。これが、いわゆる「趣味発券」です。

実際に乗車するためのきっぷを発売するのは鉄道会社の義務です。しかし、乗らないきっぷを発売するのは義務ではなく、完全に鉄道会社のご厚意ということを理解する必要があるでしょう。

したがって、収集用のきっぷを仮に売ってもらえなくても、異を唱える筋合いはありません。感謝の念を忘れないようにしたいものです。

ただ率直なところ、鉄道会社や簡易委託駅の受託者にとっては不労収入の確保、収集者にとっては趣味の充実と、個人的にはウィンウィンな関係だと思っています(発売コストの方が収入を上回るかもしれないけど)。

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多忙な駅員さんには配慮を

ワンオペで出改札業務を行う駅が、とても増えています。以前は地域鉄道会社の小駅における態勢でしたが、最近はJRや私鉄を問わず同じ状況になってきています。

また、JR駅にあるみどりの窓口の箇所や窓口の数が減少していて、より多くの乗客が少ない窓口に殺到するようになっています。窓口の職員にとっては、多くの乗客をより短い時間でさばく必要があるので、経路の相談や優先度が低いきっぷの発売に時間を割くのは難しいと察します。

個人的には、日本の鉄道会社にはおしなべて、寛容な駅員さんが多いように思います。しかし、多種の業務で忙しい中余計な仕事を行うのは、負担に違いありません。発売を頼む際、駅員さんにできるだけ快くきっぷを出してもらうように配慮するのを心がけたいです。

できれば、当事者がお互いストレスを抱え込まないよう、暇な時間帯を見計らって窓口を訪れたいです。

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ガラス越しの出札窓口がコミュニケーションを難しくする

西富岡駅きっぷうりば

駅にある出札窓口(きっぷうりば)は、ガラス越しで駅員と乗客が接することが大多数で、相手の表情が見えにくいです。拡声のためのアクリル板がはめこまれていますが、ガラスでさえぎられているので、相手の表情をみにくく、話し声が互いに聞こえにくい環境です。

そのため、声や表情を十分にくみ取れず、良好なコミュニケーションの妨げになります。この状況を改善するため、一部の駅では互いの表情や声が直接分かるオープンカウンターが設置されていますが、圧倒的に少ないのが現実です。

きっぷの発売をする際の物理的な環境がよくない上、希望するきっぷを出してもらうためにやり取りする内容はとても複雑です。普通に考えれば良好なコミュニケーションが取れるとはとても言えず、時に駅員と乗客が言い合いになって不快な思いをすることが多いでしょう。

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駅職員の高齢化が進んでいる~話し方の配慮~

イメージ(無料写真サイト提供)

駅窓口でのコミュニケーションは、普通の状況よりも悪いことがお分かりいただけたと思います。その上、高齢化の波が駅窓口にもやってきています。

現在、高齢の駅員の割合が、特に地方の地域鉄道会社から増えてきている印象を持ちます。筆者は地方の鉄道会社の小駅を訪れ、きっぷ鉄を楽しみますが、本当に年配の駅員さんが多いです。かつての秩父鉄道はその好例で、駅員が男性の高齢者ばかりでコミュニケーションを取りにくく、とても困った記憶があります。

小さな鉄道会社の小駅の駅業務は後方業務的なところがあり、シニアが活躍できる場だと考えています。ただし、若い駅員では考慮不要な、聴力や認知能力といった高齢者特有の問題があります。コミュニケーションを取るのがさらに難しいということです。

高齢者に話しかけるときには「ゆっくりと、はっきりと、区切って」を心掛けるのが良いと言われます。早口の方は特に、単語をひとつひとつ区切って話す感じを心掛けるとよいのではないでしょうか。一度で聞き取ることができず、聞き誤りや聞き返しがどうしても多くなります。粘り強く伝えることです。

そして、相手の顔を見て話すと、こちらの表情を相手に理解してもらえると思います。メモを用意できるのならば、用件をメモに書くのも有効です。

この問題の原因は、あくまでも高齢ならではの特性にあります。特性とわかっていれば、イライラせずに済むでしょう。世間話を交えて優しく接すれば、喜ばれると思います。

客だからと相手に一方的に要求するのではなく、お互いに配慮し合うのが良好なコミュニケーションにつながるのではないでしょうか。

要望は遠慮せずはっきりと伝える

いま、高齢者とのコミュニケーションにフォーカスしてお話ししましたが、用件の伝え方そのものは、老若男女を問いません。きっぷを買う時は、以下の内容を区切ってゆっくりはっきりと話すと良いです。

● 乗車券・入場券の別
● 片道・往復の別
● 発駅と着駅の駅名
● 大人・子供の別
● きっぷの枚数

経路が複雑になる場合や座席指定が絡むときには、メモを渡すとスムーズでしょう。例えば、きっぷを実際に注文する場面でこんなセリフが考えられます。

▶ あいまいな例:「あのー、すいません、この駅から最低区間の乗車券を適当に欲しいんですが、大丈夫でしょうか」

▶ はっきりした例:「上野から日暮里まで、片道で、大人1枚ください」

はっきりと簡潔に指示すれば、聞く側の駅員もストレスなくスッと作業できます。しかし、あいまいだと一体何をしてほしいのかわからず、混乱してストレスを感じるでしょう。筆者もやってしまいがちなので、気を付けるようにしています。

駅員によって、きっぷを合計で何枚買うのかを先に知って、まとめて処理したがる場合もあるし、一枚一枚別に処理したがる場合もあります。臨機応変に対応できるとよいでしょう。

言葉遣いに気を付けることがその前提です。相手に敬意を払って話すことが大事だと思います。尊敬語や謙譲語は大丈夫ですか??

きっぷの趣味発券となると、相手に遠慮しがちではないでしょうか。遠慮するあまり、伝えるべきことが何か抜けてしまうと何をしてほしいかわからず、相手をイラつかせてしまいます。伝える段階では遠慮なくしてほしいことを伝えきるくらいがよいかと思います。

慣れないと大変ですが、場数を積むと段々できるようになるものです。筆者も伝えるべきことを緊張のあまり伝えきれず、逆に相手を余計にイラつかせた経験があることから得た知見です。

それでも動かない駅員に対処するには~まずはリサーチを~

上野駅みどりの窓口

きっぷの趣味発券をしてもらうためには、どうしても相手を動かさなければなりません。しかし、なかなか動いてくれないことが多いのが現実です。

それでは、どのようにしてきっぷ鉄を推進していくか。一見の間柄では情に訴えることは難しいので、そこは理路整然と情報武装するしかないと思います。

趣味発券とは少し離れますが、少し前に界隈で多く聞かれた不満をお話しします。

営業規則上発売できるきっぷを発売しないという話には、枚挙にいとまがありません。特に、以前連絡運輸の連絡乗車券が広範囲に発売可能だった頃に多かったと思います。「ICカードで乗ってください」という口上をよく聞きますが、運送約款がIC運賃ときっぷの運賃で異なるため、本来ダメです。

発売できないものを発売しないのはごく当たり前ですが、売れるものを売らないのは運送拒否にあたり、大いにコンプライアンス上の問題があります

包み隠さずいうと、この類の話はJR東日本や東武鉄道に多いです。筆者も相手に動いてもらうためにどれだけ苦労したことか(ただし、この2社に関しては、意見を出すとしっかり対応してもらえるよい傾向があると思っています)。

きっぷを買う側からすれば、どのようなきっぷを発売できるのか、事前によくリサーチするに限ります。

特にTwitterには実際に買ったきっぷが投稿されていて、経験知としてとても有効です。一方、弊サイトをはじめとしたウェブ上の多くの記事には、高品質な情報がたくさんあります。ただし、情報に鮮度差があり、古い記事には要注意です。

旅客営業規則で、どの種類の乗車券が発売されているか研究するのも有効です。例えば、意外な会社で連続乗車券が発売されていたりします。

それでも、売れるのにもかかわらず意図して売り渋ることに対しては、毅然として要求するしかありません。相手に確認を求めたり、相手の上長と直接話す意思を示します。

アサーションの技法をきっぷ鉄に応用

「アサーショントレーニング」をご存じでしょうか。

アサーション(assertion)とは、英語で「自己主張」を意味します。元々は、米国で公民権運動があった際、マイノリティーである黒人が自己の権利を主張することをきっかけに広まりました。日本ではとかく悪く思われがちな自己主張ですが、アサーションは良い意味での自己主張といえましょう。

アサーションのポイントは、相手を攻撃することなく、穏やかに自分を主張することにあります。相手を尊重し、自分自身も尊重するのです。相手を尊重するあまり、自身を犠牲にしては主張的ではなくなってしまいます。

難しい要望を通す必要があるきっぷ鉄にとっては、アサーションは欠かせない考え方であり、有効な技法です。

趣味発券だからと弱気になって相手に遠慮してしまうと、自分が欲しいきっぷの内容をはっきり伝えられなくなってしまいます。それでは、自分も相手も尊重するアサーションの考え方から外れてしまいます。まずは、失敗を恐れず自分の希望を出してみてはいかがでしょうか。

もしも断られたら、そこで引けばいいのです。相手を尊重せず、引かずに自分の要求を押し通してしまうと、攻撃的な態度とみられ、アサーションとは言えなくなってしまいます

筆者も、きっぷ鉄の現場では要求を強く通してしまうことがあります。それで、実際に攻撃的と評価されてしまうところがあり、悩ましいところです。

本記事ではアサーションについてこれ以上深く掘り下げませんが、これまでお話ししてきたことの土台にアサーションの技法があることを申し上げたいです。

アサーションに関しては、多くの専門記事や専門書があるので、興味のある方は読んでいただきたいと思います。

まとめ

八川駅駅舎

趣味発券は、実際に乗車するためではないきっぷを出してもらうことです。乗らないきっぷを発売する義務はなく、あくまでもご厚意の上で出していただくものと理解したいです。したがって、発売を強要することは決してあってはなりません。

しかし、その逆のケースとして、実際に乗車するためにきっぷを買う場合にもかかわらず、営業規則上売れるきっぷを売ってもらえないことも残念ながらあります。それに対処するためには、事前のリサーチが欠かせません。ネットや営業規則の研究が有効でしょう。

鉄道きっぷを買う際に、固有のコミュニケーションの難しさがあります。ガラス越しに離れた距離でコミュニケーションを取る必要があったり、高齢者と話す必要があったりと、日常のコミュニケーションとは違った状況です。

そのため、「ゆっくりと、はっきりと、区切って」を心掛けるのが良いでしょう。あまり遠慮するのもよくなく、希望を率直に伝えることが大切です。きっぷ鉄に限らず、あらゆる社会生活の場面で活用できるライフハックです。

きっぷを求める側も、相手を尊重した上で、しっかり自分自身を主張したいところです。対等な立場で接することで、駅員と良い関係性を築けそうです。

もっと言えば、鉄道会社の社員研修にアサーショントレーニングを導入すると、効果的なコミュニケーション技法を習得できて、乗客への接遇向上にも社員のメンタルヘルス上にも有効と思います。

きっぷ鉄に理解を示してくださる多くの駅員さんの対応に感謝申し上げつつ、記事をしめたいと思います。

参考資料 References

● 高齢者の難聴|聞こえに不安を感じてきたら|福祉用具|福ナビ (fukunavi.or.jp) 2023.5閲覧

2.高齢者の難聴|聞こえに不安を感じてきたら|福祉用具|福ナビ

● 図解 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術(PHP研究所)2007.6

改訂履歴 Revision History

2023年5月30日:初稿

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