茨城県内のJR線全線とつくばエクスプレス線を除く会社線各線の全区間に一日乗り放題の「ときわ路パス」。毎年夏季・秋季・冬季の限定発売ですが、茨城県内の乗り鉄を安価に楽しめます。
ときわ路パスはとてもおトクなきっぷですが、一般料金の他に「大人の休日俱楽部」会員用料金(1,670円)があることをご存じでしょうか。大人の休日俱楽部会員にとって、大人の休日俱楽部パス以外にも買える、貴重な会員専用きっぷです。
茨城県内の会社線にも乗り放題なので、少し乗るだけで簡単にきっぷの元を取ることができます。例えば、フリー乗車区間内の関東鉄道常総線取手駅から下館駅までの区間(51.1km)を乗車するだけで1,540円かかるので、元を取るまであと一歩です。
このように大変おトクなきっぷですが、きっぷの発売箇所が茨城県内の一部のJR駅に限られ、入手しにくいのが短所です。茨城県外から利用するには、それなりに作戦を立てる必要があります。
この記事では、茨城県内を格安に歩き回れる「ときわ路パス」の特長と課題、そして「大人の休日俱楽部」会員用料金のおトクさについて考えます。きっぷの入手に課題がある「ときわ路パス」を購入するための戦略についても検討したいと思います。

茨城県外から訪問する場合、きっぷの入手が一仕事です。普通列車で取手駅に向かうか、特急列車で土浦駅/水戸駅に向かうか、決定打を見出しにくいです。
「ときわ路パス」のフリー乗車区間・料金

「ときわ路パス」は、以下のフリー乗車区間内を一日乗り放題のフリーきっぷです。JR東日本を含む茨城県内の鉄道会社5社がコラボして発売しているきっぷなので、JR線だけではなく県内の会社線全線がフリー乗車の対象になるのが特長です。
JR東日本の関東甲信越・南東北地区をカバーする「週末パス」と、きっぷの企画の仕方がよく似ています。ただし、ときわ路パスと週末パスでは、乗り放題の鉄道会社やフリー乗車区間が全く異なります。
茨城県内には観光列車がほとんど走っていないので、基本的には普通列車の旅になります。
フリー乗車区間

茨城県内の鉄道全線がフリー乗車区間です。ただし、つくばエクスプレス線の守谷駅(茨城県守谷市)からつくば駅(茨城県つくば市)の区間は対象外です。
JR常磐線の取手駅(茨城県取手市)から大津港駅(茨城県北茨城市)の区間の営業キロが141.3kmで、普通運賃が2,640円です(2023年6月現在)。これでパスの元がちょうど取れる格好です。
JR以外の会社線4社の全区間も乗り放題なので、JR線と合わせて他の会社線にも乗車するのが一般的な使い方でしょう。
パスの発売箇所
茨城県内にあるJR東日本の主要な駅のみで購入できます。会社線の駅では購入できず、さらに茨城県外の駅や旅行会社でも発売していないため、きっぷを購入するまでに難があります。
みどりの窓口がある主要な駅は次の通りですが、窓口の削減が急速に進んでいるので注意してください。
龍ケ崎市駅/牛久駅/土浦駅/石岡駅/水戸駅/勝田駅/日立駅/高萩駅/下館駅/結城駅
東京から最も近い取手駅のみどりの窓口は2023年2月いっぱいで閉鎖され、現在は指定席券売機のみあります。
茨城県内在住者が利用する場合はそれほど苦労しないと思います。しかし、県外から訪問する場合は、取手駅や高萩駅(茨城県高萩市)、結城駅(茨城県結城市)など県境に近いJR駅でいったん下車するか、常磐線特急列車に乗車し、いったん水戸駅(茨城県水戸市)や土浦駅(茨城県土浦市)まで出る必要があります。
パスの発売期間
ときわ路パスは、夏季・秋季・冬季の期間限定発売です。通年利用ではないので、注意しましょう。きっぷの利用期間は、直近では次の通りです。
【夏季】2023年7月15日〜2023年8月27日
【秋季】2023年10月01日〜2023年12月24日
【冬季】2023年2月11日〜2023年3月26日
この期間内の土曜・休日に利用できます。利用期間に、最繁忙期である8月のお盆期間が含まれているのが特長です。
事前購入の制限は特になく、利用当日でも購入できます。
一般用(大人用・小児用)料金
対象旅客の限定は特になく、誰でも買うことができます。大人用と小児用の料金は、次の通りです。JRがこのきっぷを利用してのファミリー旅行を提案しているだけあり、小児用がとても安いです。
● 大人用:2,180円
● 小児用:550円
「大人の休日俱楽部」会員用料金
「大人の休日俱楽部」会員本人には、このパスが一般の大人用よりも安価にて提供されます。会員用の利用期間は、一般用と同じです。会員用のパスを買える期間がさらに制限されているわけではないので、安心してください。
● 会員用:1,670円
非会員の同伴者は、一般用料金のパスを購入します。
大人の休日俱楽部会員用のきっぷには、本券の他にご案内の券片が付いています。しかし、ご案内に記載されている内容には会員用独特の追加事項があり、一般用よりも分量が多いです。
(本券)

(ご案内券片)

「大人の休日俱楽部」会員用パスの特長
ときわ路パスについては、一般用と会員用とできっぷの効力に差がほとんどないです。しかし、ときわ路パス会員用と組み合わせて使う特急券については、乗車する距離に制限なく、大人の休日俱楽部割引が適用されます。
他の企画きっぷでは割引を重複できないのが原則ですが、ときわ路パス会員用については例外的です。
ときわ路パスを購入する戦略~エリア外からの乗車券と併用~
今お話しした通り、ときわ路パスを購入できる箇所は限定的で、茨城県内のJR駅できっぷを購入するまでが一苦労です。パスを効率よく購入する作戦ですが、これぞ盤石、といえる決定打がないのが辛いところです。
東京から茨城県を訪問する場合、常磐線特急を利用し土浦駅か水戸駅まで乗車するのが現実的でしょうか。この時にはときわ路パスをまだ買えていない状態なので、乗車券は別に用意する必要があります。
普通列車で茨城県に入ると、きっぷの購入が効率的だと思います。常磐線取手駅/大津港駅に入り、指定席券売機でパスを購入します。JR水戸線方面では、結城駅が県境に近い駅で、みどりの窓口もまだあります。
県内の周遊が終わった後のかえりには、フリー乗車区間の一番外側の県境駅からの乗車券を購入し、パスと併用できます。JR水戸線方面は小田林駅(茨城県結城市)、常磐線方面は取手駅を併用する乗車券の発駅とします。

筆者が実際に併用した乗車券です。
いま普通乗車券の併用で考えましたが、例えば下記の青春18きっぷ使用期間であれば、青春18きっぷと利用するのが最強であることはいうまでもありません。もっとも、青春18きっぷ使用期間中はときわ路パス自体が売れないと思いますが。。

ここからは、筆者の乗車体験を通して、どんな列車に乗車できるかお話しします!
関東鉄道常総線・真岡鉄道線乗り鉄【2023年2月】

筆者は、2023年2月に「ときわ路パス」会員用を購入し、関東鉄道常総線と真岡鉄道線の一日乗車券として使いました。
冒頭でお話ししたように、関東鉄道常総線の全区間を乗車すると、片道で1,540円かかります。関東鉄道線内を往復するだけで、ときわ路パスの元を十分取れます。
関東鉄道・真岡鉄道発売分一日乗車券と比較
関東鉄道や真岡鉄道でも、独自のフリーきっぷを発売しています。ときわ路パスと比較するとどんな感じか、ここで考えたいです。
● 常総線一日フリーきっぷ(関東鉄道)
土休日に利用できる関東鉄道常総線一日フリーきっぷが関東鉄道常総線線内で発売されていますが、大人2,000円/小児1,000円です。ファミリーは、できればときわ路パスを買いたいです。
● 常総線・真岡鉄道線共通一日自由きっぷ(真岡鉄道)
関東鉄道常総線に加え、真岡鉄道線にも乗車する場合、常総線・真岡鉄道線共通一日自由きっぷがあります。大人2,300円/小児1,150円するので、やはりときわ路パスを買いたいです。
JR線に乗車しなくてもときわ路パスが大きな威力を発揮しますが、再三申し上げているようにきっぷを買える箇所が限られている点に留意してください。
筆者の乗り鉄体験【2023年2月】
それでは、関東鉄道常総線取手駅から真岡鉄道線真岡駅(栃木県真岡市)まで、ときわ路パスを利用して北上した時の様子をお話しします。

上野駅(東京都台東区)から常磐線普通列車で取手駅まで。JR取手駅のみどりの窓口で、会員用ときわ路パスを購入。2月いっぱいで窓口が閉鎖されたため、その直前に窓口に駆け込んだ形でした。

いま買ったときわ路パスを持って、関東鉄道のほうの改札口へ。自動改札機があるものの、ときわ路パスを通せないため、有人改札から入場。
取手駅から列車に乗り、途中の水海道駅(茨城県常総市)で途中下車。水海道駅までは都市近郊型の区間で、列車の運行本数も比較的多いです。

水海道駅で下館駅(茨城県筑西市)ゆきの列車に乗り換え。水海道駅から先は、列車の本数が少なくなります。
下館駅で、真岡鉄道線に乗り換え。JR水戸線、関東鉄道常総線、真岡鉄道線が乗り入れるターミナルの下館駅は、乗り換え専用改札がなくてスルー(時間帯によって各線ホームに係員がいます)。

真岡鉄道線は茂木駅(栃木県茂木町)まで延びていますが、筆者は時間の都合で途中の真岡駅まで乗車。真岡駅の駅舎はSLを模していて、立派な造りです。

駅構内にある「SLキューロク館」に立ち寄り。49671号機とD51145号機がありました。メンテナンスしていて、2両とも実際に走行可能です。

真岡駅構内には国鉄時代から引き継いだ古い車両が多く停まっていて、車両鉄には魅力的な場所です。真岡鉄道線はきっぷを手売りしないので、きっぷ鉄的には物足りないところですが。。

下館駅まで折り返し、JR水戸線で小山駅(栃木県小山市)へ。ときわ路パスのフリー乗車区間を抜けました。
鹿島臨海鉄道乗り鉄【2023年8月】

2023年8月、関東鉄道・真岡鉄道への乗り鉄とは別の機会として、鹿島臨海鉄道の乗り鉄に出かけました。鹿島臨海鉄道沿線はとても地味ですが、鹿島神宮や大洗といった観光スポットがあります。また、鹿島サッカースタジアムへの最寄りの駅があります。
鹿島臨海鉄道の乗車券
鹿島臨海鉄道線は観光性の路線ではないこともあって、一日乗車券が発売されていません。そのため普通乗車券を購入して乗車するのですが、水戸駅から鹿島神宮駅までの片道乗車券が大人1,590円です。
そのため、ときわ路パスの使用期間中にはパスを購入し、鹿島臨海鉄道の一日乗車券として活用することが可能です。水戸駅から鹿島神宮駅まで往復すれば、余裕で元を取ることができます。
筆者の乗り鉄体験【2023年8月】

当日はJR水戸線小山駅から水戸駅に向かい、水戸駅から鹿島臨海鉄道線内に入りました。ときわ路パスのフリー乗車区間の一番外側に位置する結城駅で、パスを購入。鹿島臨海鉄道の一日乗車券としてパスを買う場合は、水戸駅で購入しても問題ありません。

鹿島臨海鉄道線の列車が発着する水戸駅8番線ホームへ。発車時刻よりも時間に余裕を持ったつもりですがすでに多くの乗客が車内に乗っていました。

水戸駅を出て大洗駅までは、眺めのいい高架線を走ります。筆者が乗車した時は、田んぼの稲が実ってきていていました。

水戸駅から10分強で、鹿島臨海鉄道の本社がある大洗駅(茨城県大洗町)に到着。沿線の主要な町で、フェリーターミナルや磯前神社、水族館、マリンタワー等の観光スポットが多いところです。駅の中は、ガールズ&パンツァー一色です。

大洗駅前にてランチを済ませ、一路鹿島神宮駅へ。日中時間帯は列車の運行間隔が2時間あくので、注意したいです。旧型の車両がやってきました。

旧型の6000系車両の車内には、転換クロスシートが並んでいます。やはり、ロングシートよりは座り心地がよろしいです。

大洗駅以南の区間は眺めがよくない丘陵地をぬって走ります。約1時間乗車して、終点の鹿島神宮駅に到着。

JR鹿島線の普通列車に乗り継いで、千葉県方面に向かいました(JR鹿島線潮来駅までがときわ路パスのフリー乗車区間です)。
まとめ
期間限定で発売される「ときわ路パス」を利用すると、茨城県内のJR線のみならず、つくばエクスプレス線を除く会社線の全区間に一日乗り放題です。
きっぷの値段もこなれていて、JR線のフリーきっぷとして利用できるだけでなく、各会社線だけ乗車する場合だけでもときわ路パスを買うとおトクです。特に、青春18きっぷの使用期間中は、会社線の一日乗車券と割り切ってときわ路パスを買ってもオッケーです。
ときわ路パスの特長は、誰でも買える大人用だけではなく、破格の小児用500円、さらに安価な「大人の休日俱楽部」会員用1,670円がある点です。ぼっちでもファミリーでも老若男女問わず、多くの人にとって価値があるきっぷです。
ときわ路パスの課題は、きっぷを購入できる箇所がごく限られていることですが、フリー乗車区間が茨城県内なので致し方ないところです。県境に近いJR駅、例えば取手駅や大津港駅、結城駅から入ると、きっぷを買ってから効率的にまわれます。
茨城県内の鉄道には、観光列車がほとんど走っていません(水郡線に臨時列車が走る程度)。もっぱら普通列車を乗り継ぐ乗り鉄ですが、出かけてみてはいかがでしょうか。
参考資料 References
● おトクなきっぷ:JR東日本 (jreast.co.jp) 2023.6閲覧
● おトクなきっぷ|鉄道情報|関東鉄道| (kantetsu.co.jp) 2023.6閲覧
改訂履歴 Revision History
2023年6月21日:初稿
2023年8月31日:初稿 加筆
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