香川県内の鉄道には、JR四国とことでん(高松琴平電気鉄道)があります。香川県内を広域で結ぶのがJR四国、そして高松市周辺や琴平町を結ぶのがことでんです。それぞれ、金刀比羅宮や丸亀城、屋島など香川県中部の観光地を結んでいます。
それらの観光スポットを移動するのに便利なフリーきっぷが「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」です。このきっぷは、JR四国とことでんの2社で共同発売されています。発売がJR側だけのフリーきっぷが多い中、他社線側の駅でも発売される珍しいきっぷです。
ことでんでは、自社線の列車のみ乗車できるフリーきっぷが発売されているため、フリーきっぷの選択肢が2つあります。しかし、JR四国の香川県エリアに特化したフリーきっぷは、このきっぷ一択です。
両線に一日乗り放題のこのきっぷの値段は、大人2,200円/小児1,100円と決して安くはありません。しかし、きっぷの効力がオールマイティーで、使い勝手の良さは確かです。
この記事では、JR四国のフリーきっぷ「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」の概要をご紹介し、実際に使用した体験を共有したいと思います。また、きっぷがどれだけ料金的におトクか、コスパについても掘り下げたいと思います。

観光しながら一日でJRとことでんの列車両方に乗車するのは、結構欲張りだと思います。便利なきっぷですが価格設定が高めで、一日中頑張って乗車しないと料金の元をとるのが難しいでしょう。
「ことでん・JRくるり~んきっぷ」のフリー乗車区間・料金

はじめに、「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」とはどんなきっぷか、概要のお話をしましょう。
基本はJR四国が発売するフリーきっぷですが、フリー乗車区間にことでん全線が含まれます。それら2社共同で発売しているのが、このきっぷの大きな特長です。
フリー乗車区間

JR高松駅から高徳線志度駅までの区間、JR高松駅から土讃線琴平駅までの区間、ことでん全線が一日乗り放題です。香川県中部の鉄道を網羅しています。
特急券を別に買えばJR線の特急列車も利用可能ですが、「サンライズ瀬戸」号は利用できません。
きっぷの発売箇所
JR四国・ことでん2社共通のきっぷだけに、いろいろな箇所できっぷを発売しているのが特長です。多くのフリーきっぷのようにJR側だけでしか発売していないといった不便さがなくてよいです。
● JR四国
JR四国の駅にあるみどりの窓口・みどりの券売機プラス(指定席券売機)にて購入できます。また、四国内の旅行会社の窓口でも購入できますし、JR四国ツアーウェブサイトにてオンライン購入も可能です。
● ことでん
ことでん側でも、一部の駅できっぷを発売しています。
発売駅:高松築港駅/瓦町駅/栗林公園駅/琴電琴平駅/長尾駅/琴電志度駅
● 高松空港
鉄道駅の他に、高松空港の到着ロビーにある案内所でも、このきっぷを買えます。高松空港に着いてすぐにきっぷを買えて便利ですが、空港バスはフリー乗車区間に含まれないので注意してください。
料金・きっぷの様式
利用対象者には制限がなく、通年で利用できます。また、事前購入の制限もなく、利用当日に購入できます。したがって、利用したいと思った時に購入できます。
きっぷの値段は、JR四国とことでんの普通運賃の値上げに合わせ、2023年5月に値上げされました。大人用と小児用の料金は次の通りです。
● 大人用:2,200円
● 小児用:1,100円
「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」は、筆者が利用した2023年時点ではデジタルきっぷではなく、紙のきっぷです。購入箇所によってきっぷの様式が異なるのが、2社共同発売のきっぷの特長です。
JR四国の駅やウェブで購入した場合は端末で発券され(マルス券)、ことでんの駅や高松空港で購入した場合、あらかじめ調製された紙のきっぷに日付が押されます(常備券)。

筆者はことでんの駅できっぷを購入し、常備券を手にしました。
「ことでん・JRくるり~んきっぷ」のコスパを考える

いま見てきたように、香川県中部を列車でめぐることができるオールマイティーなきっぷ、「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」。ただし、値段の高さが気になります。
そこで、ここでは主要な区間の片道運賃と比較して、一日でどれだけ乗車すればきっぷの元を取れるか、検討していきます。
主要区間の片道運賃との比較
主要区間の普通片道運賃は、下表のとおりです。
● JR四国
区間 | 営業キロ | 運賃額(円) |
高松ー琴平 | 44.0 | 980 |
高松ー丸亀 | 28.5 | 630 |
丸亀ー琴平 | 15.5 | 430 |
高松ー志度 | 16.3 | 430 |
● ことでん
区間 | 営業キロ | 運賃額(円) |
高松築港ー琴電琴平 | 32.9 | 730 |
高松築港ー琴電志度 | 14.2 | 500 |
高松築港ー長尾 | 16.3 | 550 |
琴電琴平線の運賃の安さが目立ちます。高松駅から琴平駅まで往復する場合、JRで1,960円、ことでんでは1,460円です。JRとことでんを片道ずつ利用する場合は、1,710円です。
高松駅から琴平駅まで単純往復する場合、JRで往復しても2千円弱なので、きっぷの元は取れません。一日で琴平と丸亀、屋島、志度を訪れる場合は十分元を元を取れますが、結構頑張って駆けめぐる感じです。
他のフリーきっぷとの比較
ことでんだけを利用する場合、別のフリーきっぷが発売されています。
● 1日フリーきっぷ:大人1,400円/小児700円
ことでんで高松築港駅から琴電琴平駅まで往復するだけできっぷの元が取れる、おトクなきっぷです。単に金刀比羅宮まで向かいたいのであれば、「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」でなくても事が足ります。
「ことでん・JRくるり~んきっぷ」で琴平駅に向かう

フリー乗車区間は特急列車を利用するほどの距離ではないため、実際に乗車する列車は普通列車になろうかと思います。
JRで高松駅から琴平駅までは44.0kmで、所要時間は約1時間です。JRの列車は揺れが少なく、普通列車でも快適です。

JR琴平駅は最近改装されて、駅舎内がとてもきれいです。週末には東京駅からの直通列車「サンライズ瀬戸」号が乗り入れる日もあります。

ことでんで高松築港駅から琴電琴平駅までは32.9kmで、JRよりも近道です。所要時間はJRと同じく、約1時間です。停車駅が多く、車内が結構揺れるので、快適さはJRに軍配があがります。

琴電琴平駅はローカル線の駅で、その雰囲気がよく出ています。金刀比羅宮参拝のための列車という色が濃いです。駅舎も歴史があります。
まとめ
香川県中部の琴平、丸亀、高松、志度までのエリアをカバーする一日フリーきっぷ「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」。JRとことでんの両方を利用できるオールマイティーなきっぷです。
気になるのが、料金の高さです。琴電やJRの普通運賃が意外に安いことから、かえってこのきっぷの値段設定が高く感じます。ことでんのみ乗車できる「1日フリーきっぷ」がかなり割安なことから、単に上記エリアをめぐるだけならば必ずしも「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」にこだわる必要はありません。
JRでしか行けないところと、ことでんでしか行けないところを一日で周遊する場合にはこのきっぷを活用できますが、かなり頑張った旅程になります。きっぷを買う前によく検討するのをおススメします。
参考資料 References
● ことでん・JRくるり~んきっぷ (JR四国ツアー) 2023.6閲覧
● 企画きっぷのご案内(高松琴平電気鉄道) 2023.6閲覧
改訂履歴 Revision History
2023年6月30日:初稿
コメント