金沢駅(石川県金沢市)からJR西日本七尾線の和倉温泉駅(石川県七尾市)までの区間を結ぶ観光列車「花嫁のれん」号。北陸新幹線が金沢駅まで延伸したタイミングに合わせて、2015年に運行が始まりました。
その列車名の由来は、北陸地方の石川県や富山県に残っている「花嫁のれん」の風習にあります。JR七尾線沿線がその地域にあたることがあり、この列車は「花嫁のれん」と名づけられています。
そんな「花嫁のれん」号は、全車指定席の特急列車として、JR西日本によって運行されています。車内でいただける列車オリジナルの食事がウリですが、必須ではなくオプションで提供されています。きっぷ(乗車券・特急券)を購入して気軽に乗車できますが、食事は別に手配が必要なわけです。
この記事では、JR西日本七尾線を走る観光列車「花嫁のれん」号に関する運行の概要を最初にお話しします。そして、きっぷや食事の料金や予約の取り方といった列車に乗車する前の準備について詳しく説明します。

座席のレイアウトがとても変則的なので、特急券を購入する際は注意してください。ネット予約では、席番を自分で選べません。e5489でチケットレス特急券を購入する場合、特急料金の節約になります。
JR西日本「花嫁のれん」号の概要

冒頭にてお話しした通り、2015年に北陸新幹線が金沢駅まで延伸した際、北陸の観光キャンペーンに合わせてJR七尾線に観光列車「花嫁のれん」号の運行が開始されました。
この列車のコンセプトは、「女性の幸せを願う列車」です。乗車するお客さまの幸せを願う思いが込められているそうです。なんだか、優しい気持ちになれますね。
「花嫁のれん」号の名称の由来
加賀百万石の城下町、金沢市にある金沢駅から、能登半島随一の温泉地がある和倉温泉駅までの、観光客の動きが多い区間を走る観光列車の名称として、風土色が強い「花嫁のれん」が採用されました。
石川県や富山県にまたがる旧加賀国・能登国・越中国のエリアにおける風習に「花嫁のれん」があります。嫁入りの時にのれんをくぐって夫の家に嫁ぐのですが、それがこの列車の名称の背景となっているわけです。
花嫁のれんの風習は、よく言えば伝統的ですが、一方で保守的な土地柄がうかがえます。また、かつて放映されていたテレビドラマに「花嫁のれん」があり、加賀地方の旧家における嫁いびりが描写されていました。そのため、人によってはこの列車のネーミングにネガティブな印象を抱くかもしれません。
しかし、観光列車の「花嫁のれん」号に乗車すると、きらびやかな内装やご当地の食事を愉しむことができて、そのようなネガティブな印象は吹き飛ぶと思います。
首都圏では知名度が低い「花嫁のれん」号
筆者が初めて「花嫁のれん」号に乗車したのは、列車のデビュー直後の2015年12月でした。その際、北陸新幹線で東京方面から訪れる乗客よりも、北陸本線の特急列車「サンダーバード」号などで大阪方面から訪れる乗客の方がかなり多いというお話を、当時乗務していた車掌さんから聞きました。
花嫁のれん号はJR西日本が運行する列車のため、JR西日本の広報宣伝が行き届く近畿圏の乗客が多いことが容易に推察できます。現在は、当時よりも乗客が各地から訪れるようになったとは思いますが、確かにJR東日本管内の首都圏では知名度が低い列車だと感じます。JR東日本が、他社の観光列車を積極的にPRするとは思えませんから。。
列車の運行区間・ダイヤ・運行日
特急「花嫁のれん」号は、IRいしかわ鉄道線金沢駅から津幡駅を経て、JR七尾線和倉温泉駅までの71.0kmの区間を、約1時間20分で結びます。
北陸新幹線の金沢駅延伸後の北陸の観光キャンペーンに合わせて、2015年10月に観光列車「花嫁のれん」号としてデビューしました。
花嫁のれん号は、週末を中心に多客臨時列車として運行されます。全車指定席の特急列車なので、臨時列車として運行される日にはきっぷ(乗車券・特急券)を購入すれば誰でも乗車できます。
列車が運行される日には一日当たり2往復4本が運行されます。各年度によって運行日が異なるため、正確な運行日は時刻表やJR西日本の公式ページを確認してください。
号数 | 運行区間・時刻【2023年度】 | 食事内容 |
1号 | 金沢駅(10:15)→ 和倉温泉駅(11:42) | スイーツセット |
2号 | 和倉温泉(12:06)→ 金沢駅(13:21) | 和軽食セット |
3号 | 金沢駅(14:15)→ 和倉温泉駅(15:31) | スイーツセット |
4号 | 和倉温泉(16:30)→ 金沢駅(17:54) | ほろよいセット |
このうち、夕方に和倉温泉駅から金沢駅に向かう4号は、秋季や冬季には日没後の夜間に走ります。車内で一杯やるのにいい時間帯です。
列車の設備
特急列車の花嫁のれん号は、気動車キハ48形の2両編成です。元々普通列車用の気動車が改造され、豪華な観光列車に仕立てられました。
2両とも全車指定席ですが、普通車扱いです。1号車は半個室で、2号車は他の乗客と同じ空間を共有するオープン客室ですが、それぞれ雰囲気が大きく違います。
1号車、2号車とも座席は1席単位で発売されるため、混雑時には相席になる場合があることに留意したいです(本当は、相席が生じない1室売りが望ましいです)。
● 1号車
普通車指定席で、半個室が8室あります。そのうち2人掛け半個室が3室、3人掛け半個室が2室、4人掛け半個室が3室で構成されます。各室には「●●の間」という名前が付いています(きっぷには表示されません)。デッキには、車内販売用のカウンターや伝統工芸品の展示ケースがあります。

定員が24名であるのに加えて全体が半個室のため、人口密度が低くプライベート感が強い車両です。
● 2号車
普通車指定席で、2人掛けボックスシートが3組、4人掛けボックスシートが4組、そしてカウンターシートが6席あります。カウンターシートの背面にはイベントスペースがあります。

定員は28名ですが、金沢駅方のボックスシートは団体客向けで、人口密度が高いです。座席のレイアウトが非常に変則的な花嫁のれん号にあって、2号車の2番から4番までのカウンターシートは、1人で乗車する場合でも窮屈な思いをすることなく、快適だと思います。
席番表
いま申し上げた通り、花嫁のれん号の座席レイアウトは非常に変則的です。席番表を作成するのがあまり適していないため、筆者オリジナルの席番表を割愛し、公式ページ(JR西日本おでかけネット)から引用します。
● 1号車

● 2号車

きちんとした法則性を見出せないものの、3人掛け・4人掛けのボックスシートについては、基本的にA席・D席が窓側です。2人で乗車する際には、A席・D席をおさえると良いです。2人掛けのボックスシートについては、A席・B席とも窓側です。
全体的に、グループ向けの座席レイアウトになっているように見受けます。しかし、実際には1名か2名で乗車する人が多く、相席になるケースが往々にしてあります。
乗車前に押さえておきたい情報源
JR西日本の公式ウェブサイトに「JRおでかけネット」があります。その中に花嫁のれん号のページがあります。各年度の運行日や季節変わりの食事のメニューが記載されているので、きっぷを取る前にチェックすることをおススメします。
紙やPDFのパンフレットの類は、特にありません。

食事がセットになった旅行商品として発売してもいいような気がしますが、今のところはきっぷ(特急券・乗車券)を買う形です。食事はオプションですが、別手配が必要なのでお忘れなく。
「花嫁のれん」号の運賃・料金・食事代金

特急列車「花嫁のれん」号の座席は旅行商品として発売されるのではなく、きっぷ(特急券・乗車券)を買って乗車します。
車内で提供される食事は必須ではなく、希望する人だけオプションで購入する形です。食事は乗車当日に車内では注文できないため、あらかじめウェブサイト上で自身で手配する必要があります。
きっぷの運賃・料金
花嫁のれん号に乗車するためには[特急券]と[乗車券]が必要です。きっぷの値段は花嫁のれん号専用の観光列車価格ではなく、他の在来線特急列車の料金と同額です。
● 特急券
特急券の値段は、きっぷを買う場所や手段によって異なります。花嫁のれん号はJR西日本の在来線特急列車ですが、ネット予約サービスの「e5489」で購入すると、下表のとおりかなり値段が安くなります。JR他社の観光列車にはあまりない現象で、筆者も驚きました。
きっぷ種別 | ねだん(通常期) | 備考 |
A特急料金 | 1,490円 | 紙のきっぷ、シーズナリティあり |
乗継割引(A特急料金) | 840円 | 北陸新幹線接続限定、紙のきっぷ、シーズナリティあり |
チケットレス特急券 | 1,290円 | 通年同額、ネット限定(誰でも購入可) |
eチケットレス特急券 | 850円 | 通年同額、ネット限定(J-WESTカードホルダー限定) |
金沢駅から津幡駅までIRいしかわ鉄道線を走るので、大人で200円の特急料金がJR線の特急料金に加算されます。通常の区間とは料金が異なることを知っておきたいです。
駅で特急券を購入する場合、あるいは「えきねっと」などe5489以外のネット予約サービスを利用して購入する場合、A特急料金が適用になります(紙のきっぷが発行されます)。繁忙期や閑散期でシーズナリティがあるため、時期によって料金が変わります。
北陸新幹線から花嫁のれん号に同日に乗り継ぐ場合(逆方向も同じ)、A特急料金部分に乗継割引を適用できます。ねだんは、所定のA特急料金の半額です。ただし、北陸新幹線の新幹線特急券が所定の料金である必要があり、「新幹線eチケット」では乗継割引を適用できません。

特急料金の乗継割引を利用できない場合、ネット予約でチケットレス特急券の購入を検討します。乗継割引との併用はできません。
e5489から特急券を購入する場合、誰でも「チケットレス特急券」を選択できます。クレジットカード決済に限られますが、通年同じ値段です。時期によっては所定料金よりも安くなります。
JR西日本が発行するクレカ、J-WESTカードを所持している場合「eチケットレス特急券」を格安で購入できます。これも通年同じ値段ですが、駅で買う特急券と効力が同じため、ネットで買った方が断然おトクです。
JR西日本のチケットレス特急券に関する詳細については、別の記事(↓)にまとめてあるので、必要な方は参照してください。
● 乗車券
花嫁のれん号は、途中の羽咋駅(石川県羽咋市)にも停車しますが、七尾駅もしくは終点の和倉温泉駅まで乗車することが多いと思います。
金沢駅から和倉温泉駅まで通しで乗車する場合の運賃(普通乗車券の値段)は、IRいしかわ鉄道線の運賃を含めて大人1,410円です(2023年8月現在)。
普通乗車券を買う以外にも、特急列車に乗車できるフリーきっぷを乗車券として利用することもできます。具体的には、誰でも利用できるデジタルきっぷ「金沢能登tabiwaパス」やJR東日本の「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」などが挙げられます。

食事代金(電子チケットの値段)
花嫁のれん号車内で提供される食事のメニューは季節ごとに入れ替わりますが、列車の号数ごとに食事内容と食事代金が決まっています。食事を取るには、きっぷとは別に、食事代金をネットで事前に決済します。
食事内容 | ねだん |
スイーツセット(1・3号) | 2,000円 |
和軽食セット(2号) | 2,900円 |
ほろよいセット(4号) | 2,300円 |
お子様メニューや子供料金は、特にありません。
運賃・料金と食事代金の合計金額
これらのきっぷと食事代金(電子チケット)を別々に手配した場合の合計金額は、下記のとおりです。
[花嫁のれん号特急券]+[乗車券]+[食事代金]
号数 | 乗車区間 | 食事内容 | A特急料金 | チケットレス特急券 | eチケットレス特急券 |
1・3号 | 金沢駅→和倉温泉駅 | スイーツセット | 4,900円 | 4,700円 | 4,260円 |
2号 | 和倉温泉駅→金沢駅 | 和軽食セット | 5,800円 | 5,600円 | 5,160円 |
4号 | 和倉温泉駅→金沢駅 | ほろよいセット | 5,200円 | 5,000円 | 4,560円 |
列車の号数および特急券の種別によって金額が異なりますが、1回の乗車で概ね5千円前後です。食事内容はカジュアルですが、食事を楽しめる他の観光列車に比べて安価な部類に入ろうかと思います。

これから、きっぷの買い方や食事代金の決済方を説明します!
きっぷ・食事の購入方法(予約の取り方)

花嫁のれん号は全車指定席の特急列車で、自由席はありません。列車に乗車する前に、必ず座席指定された特急券・乗車券を購入します。
オプションの食事を取りたい場合、指定券を購入した後にネットで食事代金(電子チケット)を事前に決済します。乗車当日に車内で注文することはできませんので、注意してください。
きっぷの発売開始時期:いつから買えるか
駅の有人窓口やネット予約サービス(e5489およびえきねっと)にてきっぷを購入する場合、乗車1か月前の午前10時00分より発売が開始されます。ただし、ネット予約サービスを利用する場合、事前受付/事前申込が可能です。受付時間がサービスによって異なるので、以下を参照してください。
駅の指定席券売機では、以下の通り発売開始時刻が異なるため、注意してください。
花嫁のれん号は、デビューからしばらく時間が経っているため、繁忙期以外はそれほど予約が取りにくいということはないでしょう。しかし、座席レイアウトが変則的な列車なので、取りたい席があったらできるだけ早く駅の窓口もしくは「みどりの券売機プラス」(オペレーター経由)で調整してもらうのが望ましいです。
きっぷの発売箇所:どこで買えるか
花嫁のれん号は、きっぷの他に食事を購入する機会がある列車ですが、きっぷについては他の列車同様、多様な購入方法があります。
● ネット予約サービス
JR西日本のネット予約サービス「e5489」では、通常の特急券を購入できるほか、J-WEST会員に限っては同行者を含め、格安な「eチケットレス特急券」も購入できます。事前申込の受付開始時間は、乗車1か月と7日前の午前5時30分です。
JR東日本のネット予約サービス「えきねっと」でも、花嫁のれん号の特急券を購入できます。ただし、特急券の種別は所定料金のA特急料金のみです。事前受付の受付開始時間は、乗車1か月と7日前の午後14時00分です。
いずれのネット予約サービスを利用する場合でも、事前受付=座席確保ではなく、手配の結果予約不成立の場合があることを覚えておきたいです。
また、ネット予約サービスの操作時には、花嫁のれん号のシートマップが表示されません。したがって、自分で好きな席番を選択できないことに要注意です。
● 駅の指定席券売機(みどりの券売機)
全国のJR駅に設置されている指定席券売機にて、特急券を購入できます。この場合の発売開始時間は、乗車1か月前の午前10時10分です。有人窓口やネットよりも10分遅いので、注意してください。また、指定席券売機でもシートマップが表示されないので、好きな席番を選択できません。
● 駅の有人窓口(みどりの窓口)
全国のJR駅の有人窓口にて、花嫁のれん号の特急券を対人で購入できます。乗車1か月前の午前10時00分に発売が開始され、かつ取りたい席番の希望を伝えられる唯一の手段です。ネット予約サービスで気に入った席番が割り当てられなかった場合、駅の有人窓口で相談するか、オペレーターと話せるタイプの指定席券売機にてオペレーターに調整をお願いするしかありません。
全国の旅行会社でも駅の有人窓口に準じますが、前売りの開始時間に間に合わない可能性があります。
きっぷの様式
きっぷの購入が完了した後に受け取るのが、[特急券]および[乗車券]です。フリーきっぷを利用する場合は、普通乗車券は必要ありません。

e5489で購入したチケットレス特急券には提示用画面があり、紙のきっぷを受け取らなくても当該画面を見せれば大丈夫です。
所定料金のA特急料金で発行される特急券は、紙のきっぷです。また、JR西日本のチケットレス特急券であっても、紙のきっぷをJR西日本管内のみどりの券売機で出力することも可能です。本来は受け取り不要ですが、不安に感じるようであれば乗車前に出力しておくとよいと思います。
食事の手配
花嫁のれん号にて提供される食事を取るには、上記のきっぷを購入するだけではなく、オンラインで食事代金を事前に決済する必要があります。決済するには、スマホおよびクレジットカードが必要です。
運行開始当初は駅窓口で紙の食事券を購入できましたが、現在はネット手配のみです。
● オンライン決済【JR西日本 tabiwa by WESTER】
乗車1か月前~4日前まで
JR西日本が展開する「tabiwa by WESTER」というウェブサイトで手配します。クレジットカードでオンライン決済し、電子チケットを受け取ります。手配が締め切りになる手仕舞の日は、乗車4日前です。それよりも間際の手配や当日の購入は無理なので、注意してください。当該ウェブサイトのURLはコチラ。

操作時には席番を入力する必要がないかわりに、乗車時には忘れずにアテンダントさんに電子チケットを提示してください。
まとめ

金沢駅から和倉温泉や能登半島方面に向かう場合に利用すると、非日常の体験を満喫できるのが、観光列車の「花嫁のれん」号です。金箔が施された車内で石川県ならではの食事を愉しめるのが、この列車の特長です。
食事は必須ではなく、あくまでもオプションです。ただし、列車の運行開始時のクオリティーがそのまま維持されていて、コスパもよいのでおススメです。
全車指定席の特急列車なので、乗車する前に予約を取り、特急券や乗車券を用意する必要があります。シートマップが表示されず、自分で席番を指定できませんが、ネット予約サービスで特急券を購入するのが便利です。
JR西日本の在来線特急列車なので、e5489で購入すればチケットレス特急券を格安で入手できます。J-WESTカード会員に限っては、激安のeチケットレス特急券を購入できます。
食事の手配は駅ではできず、自分でオンライン決済する必要があります。その際、スマホとクレジットカード決済が必須になるので、留意してください。
「花嫁のれん」号に乗車!~食事を愉しむ~
きっぷの準備が完了し、花嫁のれん号に実際に乗車しました。乗車当日の様子については、以下の記事をぜひご一読ください。
参考資料 References
● 花嫁のれん│観光列車の旅時間:JRおでかけネット (JR西日本) 2023.8閲覧
● tabiwa by WESTER 花嫁のれん食事 (JR西日本) 2023.8閲覧

改訂履歴 Revision History
2015年12月06日:初稿
2022年12月08日:初稿 再構成
2023年02月13日:初稿 修正
2023年8月22日:第2稿
2023年8月24日:第2稿 加筆
2023年9月13日:第2稿 修正
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