石川県能登半島方面への観光の足になる、JR西日本が運行する観光列車「花嫁のれん」号。北陸新幹線が発着する金沢駅(石川県金沢市)をベースに、IRいしかわ鉄道線とJR七尾線を経由して、和倉温泉駅(石川県七尾市)までの区間を、週末を中心に運行されています。
北陸新幹線が金沢駅まで延伸した2015年に誕生した観光列車ですが、列車が走る加賀・能登エリアにおける嫁入り時の「花嫁のれん」の風習がこの列車の名称になりました。
列車車内のきらびやかさに目を惹かれ、非日常の乗り鉄を楽しめるだけではなく、オプションでご当地ならではの質の高い食事を楽しめます。それで、現在に至るまで花嫁のれん号の予約は好調なようです。
「花嫁のれん」1号および4号には、列車がデビューしたての2015年に乗車し、そして8年後の2023年にも乗車する機会を得ました。全く同じ列車ながらも、時間の経過によって違った空気感が得られました。
この記事では、観光列車「花嫁のれん」1号および4号に乗車した体験をお話しします。列車の車内探訪や車内でいただいた食事(スイーツセット・ほろよいセット)など、乗車しての体験を写真を交えて説明したいと思います。インスタではありませんが、写真が多い記事になります。

2015年の運行開始当初と比較して、率直なところサービスの質が低下したように感じます。しかし、食事の質は変わらないので、一度試されてはいかがでしょうか。
「花嫁のれん」号 きっぷの買い方・指定券の確保

観光列車「花嫁のれん」号は、全車指定席の特急列車です。グリーン車ではなく、普通車指定席の扱いです。したがって、列車に乗車するには事前の予約(=指定券の購入)が必要です。
座席のレイアウトは2人掛けから4人掛けのボックスシートおよび半個室が主ですが、変則的です。2両編成で定員が少ないため、気に入った座席がある場合、早めの手配が欠かせません。あいにくネット予約や駅の指定席券売機ではシートマップを参照することができません。そのため、席番を指定したい場合は駅員もしくはオペレーター(みどりの券売機プラス)を通す必要があります。
この列車ではオリジナルの食事を取ることができますが、旅行商品(募集型企画旅行)として込々での販売ではなく、きっぷを個別に事前購入する形です。食事代金も、個別の食事券扱いです(ネット決済で電子チケットが発行されます)。そのため、事前に食事代金の決済をせずに列車に乗車したものの、食事を注文できないことでトラブルに発展するケースがあるようです。
花嫁のれん号の予約の取り方(きっぷの買い方)や食事の手配の詳しい方法については、別の記事(↓)を参照してください。当該記事上に、手配上必要なサイトのURLも記載してあります。

それでは、花嫁のれん号の車内を探訪しましょう!
「花嫁のれん」号の車内探訪
2023年8月の某金曜日、筆者は北陸新幹線「かがやき」号で金沢駅に入りました。北陸新幹線下りの3番列車である「かがやき」503号が金沢駅に到着したのは、定刻の9時48分でした。花嫁のれん1号に接続する、ちょうどよい乗り継ぎパターンだと思います。

新幹線を降りてから紙のきっぷを受け取り、花嫁のれん1号が発車する在来線4番線ホームへ。ホームに上がる階段には花嫁のれん号の表示があるので、間違えなくてすむと思います。
4番線ホームに着いたのは、発車10分前の10時05分。ちょっとせわしなかったです。在来線改札口からは最も遠い位置にあたるため、時間に余裕をもってホームに向かうのをおススメします。

ホームには、花嫁のれん号の車両がすでに入線していて、ドアも開いていました。ホーム上にある列車オリジナルの花嫁のれんをくぐってから、車内へ。すでに多くの乗客が、車内に入っていました。
エクステリア(車両の外観)

花嫁のれん号用の車両は、気動車のキハ48形の2両編成です。金沢駅では、2号車が手前になります。赤い車体に黒の帯が入っています。花柄の模様が描かれていて、とても美しいです。

2号車の外観。花嫁のれん号のロゴの右側には、金色で草花が描かれています。金沢の金箔を直ちにイメージできます。
インテリア(車内の内装)

早速2号車の車内へ。2号車のデッキにはバリアフリーのトイレや洗面台がありますが、その横を通って車内に入ります。金箔屏風が見事です。

2号車入口寄りの座席です。4人掛けのボックスシートやカウンターシートが配置されています。2号車にある座席は、すべて一人掛けの椅子です。普通車の設計のため、座席のサイズがタイトでリクライニングしないため、長時間乗っていると結構疲れます。

2号車のデッキより一番遠いところにある座席です。4人掛けのボックスシートと2人掛けのボックスシートが配置されています。空間設計はグリーン車並みにゆったりしていますが、椅子そのものの快適性がいまいちです。

2号車のイベントスペースには、花嫁のれん号の記念乗車証とスタンプ、チケッターが置かれていて、自由に使えます。

記念乗車証の実物。特急券が収まるスペースがあり、金箔風のデザインがステキです。

そして、1号車へ。1号車のデッキには、車内販売のカウンターと伝統工芸品の展示ケースがあります。車内で飲食できるドリンクや軽食が販売されています。

伝統工芸品の展示ケースが光り輝いています。

別のアングルから1号車デッキをみました。模様が繊細に描かれていて、美しいです。

1号車の内部へ。全座席が半個室です。通路が料亭や和風レストランのような感じです。

半個室のレイアウトには、何通りかあります。まずは、2人用の半個室から。この半個室の座席は、椅子です(鉄線の間)。

同じ2人用の半個室でも、こちらの方は座席がソファーです。座席の脇に机があるタイプで、空間がゆったりしています(錦秋の間)。

3人用の半個室。ボックスシートタイプのレイアウトで、座席は椅子です(扇絵の間)。

3人用半個室の別のレイアウト。半円状に椅子が配置されています(笹の間)。

4人用の半個室。ソファが配置されていて、個室感が強いです(桜梅の間)。
ご覧いただいたように、座席のレイアウトがとても多様です。上記写真や席番表を参考にして、座りたい座席の目星を付けられるとよいと思います。
各座席の設備ですが、スマホ用のコンセントや無料WIFIの類はありません。よくも悪くも普通車指定席のクオリティで、車両の外観や車内の雰囲気を楽しむのに特化した印象です。
「花嫁のれん」号の食事をいただく
列車が出発したら食事をいただくわけですが、ゆきとかえりの道中をつづる前に、それぞれの食事内容を抜き出して、先に共有します。
花嫁のれん号の座席や車内サービスは、両手をあげても素晴らしいとはいえないです。列車のデビュー当初はいろいろなサービスがありましたが、現在はところどころで端折られた印象です。
そんな中で、オプションの食事に関しては、質が維持されていて、むしろ向上しているくらいです。筆者が乗車したのは花嫁のれん1号と4号で、スイーツセットとほろよいセットをいただきました。
スイーツセット【1号・3号】
午前と午後の和倉温泉ゆきの車内では、スイーツセットとしてケーキとドリンク(コーヒー/加賀棒茶のいずれか)、そして持ち帰りができるバウムとサブレの詰め合わせが提供されます。
乗車するためのきっぷを買うだけではなく、乗車4日前までに食事代金をオンライン決済する必要があります。当日、車内では注文できないので、必ず事前に手配を済ませましょう。当日注文できないゆえにトラブルが発生するようですが、アテンダントさんは断り慣れている感じです。

代金のオンライン決済は、JR西日本のウェブサービス「tabiwa by WESTER」で事前に行います。[利用開始する]を押すと、電子チケットが表示されます。

使用を開始した電子チケット(サンプル)です。アテンダントさんが座席にやってきた時に必ず画面を提示します。購入時に席番を登録しない仕組みでアテンダントさんは発売状況を把握しておらず、アテンダントさんから声をかけてくれることはありません。

最初に、車内で飲食するケーキと飲み物が出てきます。飲み物は、ホットコーヒーか加賀棒茶のペットボトルのいずれかです。

食べ終わってから、バウムとサブレの詰め合わせを箱で持ってきてくれます。車内で食べきることはあまりないと思いますが、そのため持ち帰り用の袋をもらえますのでご安心を。

ケーキと菓子の詰め合わせは、石川県内に店舗を展開する「Le Musee de H(ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ)」さんの製品です。箱を開けると、お店の紹介の紙が入っています。パティシエの辻口氏は、いろいろなところでコラボしているので、有名だと思います。

詰め合わせの中身は、バウムが4個とサブレが3個です。スイーツセットの値段は1人2,000円ですが、お店で同じ商品を買うことを考えると、比較的お手頃な価格設定です。2015年から、スイーツセットの内容と値段は変わっていません。
和軽食セット【2号】
午後イチで走る金沢駅ゆきの2号では、ランチとして和軽食セットをいただけます。料理は、金沢市の料亭「大友楼」さん製です。実際にいただいていないので、レビューおよび写真は割愛します。
ほろよいセット【4号】
夕暮れ時に走る金沢駅ゆきの4号では、ほろよいセットをいただけます。セットに日本酒が含まれるので、未成年者はこのセットを注文できません。和軽食セットと同じく、料理は「大友楼」さん製です。ちなみに、列車のデビュー当初の食事は、和倉温泉にある高級旅館「加賀屋」製でした。

スイーツセットと同様、事前に代金をオンライン決済し、電子チケットを乗車時にアテンダントさんに提示します。チケットを提示すると、ほろよいセットのメニューをもらえます。

箱に入った料理と日本酒、加賀棒茶が同時に出てきます。日本酒は、能登半島にある珠洲市産「宗玄」の純米吟醸です。花嫁のれん号のオリジナルパッケージで、開栓しなければ持ち帰れます。おちょこが紙製なのが残念な点で、個人的にはせとものが良いと思います。

ふたを開けたところ。口取り、揚げ物、そして石川県ならではの治部煮と、結構ボリュームがある懐石料理です。お酒の肴にはもってこいな料理で、コスパは良好だと思います。

それでは、和倉温泉駅への道中をどうぞ!
「花嫁のれん」1号で和倉温泉駅に向かう
車両や食事の紹介が済んだところで、当日列車に乗車した際の様子を簡単にレポしたいと思います。
花嫁のれん1号(8011D):
金沢駅 10:15分発 → 和倉温泉駅 11:42分着


列車には和装のアテンダントさんが3名乗務していて、乗客へのサービスを担当しています。列車に乗車する時のきっぷのチェックや食事の提供、車内販売等のサービスです。
アテンダントさんの衣装やサービスには和倉温泉の高級宿「加賀屋」さんの監修が入っているそうですが、彼らの所作にはあまりきめの細かさはあまり感じられませんでした。
定刻の10時15分に、金沢駅を発車。

今回は夏休み中ということもあり、ほぼ満席でした。筆者は2人で乗車しましたが、座ったのは4人掛けのボックスシートでした。ボックスを2人で使えるかなと思っていましたが、結局相席でした。

実際の車内の様子です。2号車ですが、ほぼ満席です。2015年に乗車した際は、団体客の大量キャンセルでたまたま空いていて、おもてなしを存分に受けられただけに、相席は思ったよりも窮屈なものと感じました。
道中のところどころでは、運転士が案内放送を流していましたが、アテンダントさんがアナウンスすることはあまりありませんでした。
途中で停車した羽咋駅では、2分間だけ停車してすぐに発車。羽咋市には能登国一宮、気多大社があります。2015年に乗車した際には、車内で気多大社のお札が車内で配布されたのですが、現在は配布されていません。確かに、公衆空間であるJRの列車で、特定の寺社のお札を配るのはいかがなものだろうか、とは思います。

羽咋市はUFOの街ということで、駅にはゆるキャラ「宇宙人サンダーくん」がいました。ゆるキャラにしては、かなりリアルです。。

筆者は終点の和倉温泉駅の1つ手前、七尾駅で下車。観光客ではない地元の用務客と思しき乗客が意外に多く降りていきました。
「花嫁のれん」4号で金沢駅に帰還
のと鉄道の乗り鉄を済ませ、夕方の花嫁のれん4号で、金沢駅まで帰還しました。金沢をベースにして、日帰りでのと鉄道方面に出かけるには、花嫁のれん1号と4号を利用すると便利です。
花嫁のれん4号(8014D):
和倉温泉駅 16:30分発 → 金沢駅 17:54分着


15時30分過ぎに和倉温泉駅に到着。花嫁のれん4号の発車まで時間がありました。

その時間には花嫁のれん3号がちょうど和倉温泉駅に到着した瞬間で、まだ車両が止まっていました。その後、七尾駅に引き上げていきました。

多くの特急列車が発着する和倉温泉駅ですが、2022年度から無人駅になりました。券売機だけは残っていて、みどりの券売機プラスを利用すれば、花嫁のれん号の特急券を購入できるのが救いです。

定刻の10分前に、七尾駅方から花嫁のれん4号が入線。すぐにドアが開き、アテンダントさんに特急券を見せてから1号車の車内へ。

筆者が座ったのが、この3人掛けのボックスシート。3人用の半個室に相席はさすがになかろうと考えていましたが、この列車もほぼ満席で、結局相席に。筆者と相方で2人で、相席になった人が1人。お互いに、結構気まずい思いをしました。
そして、金沢駅に向けて発車。若いカップルやグループが客層の中心で、小さな子供連れのファミリー層が少ないのが印象的でした。一大観光地へ向かう北陸新幹線の車中にも子連れファミリーが少ないので、金沢はファミリー受けがあまりしない場所なのかなと思いました。

七尾駅を過ぎたところで、食事の電子チケットをアテンダントさんに提示。ほろよいセットが出てきたので、一杯。食事が必須ではなくオプションなので、食事をとらずに自分で食料を持ち込む乗客もいました。車内を見まわしましたが、コスパがよい食事にしては取る人が少ないなと思いました。
筆者の所感 ~半個室は1室売りが望ましい~

座席指定された特急券を購入してから、改めてネットで食事の手配と2つのステップがあることから、オリジナルの食事を取る人が少ない印象を受けました。
列車がデビューしたばかりの2015年12月に乗車した際には、食事を当日販売できないことで、アテンダントさんが対応に苦慮されていました。現在ではそのような場面を見なくなりましたが、当時から現在までサービスの柔軟性に欠けるような印象があります。
食事そのものは列車の運行開始から質量とも変化なく、コスパは決して悪くないと思います。特に、4号のほろよいセットの料理が当初よりも増量され、味もよくなりました。率直なところ、食事をとる人が少ないのはもったいないことだと思いました。
そして、今回気になったのが、1号車の半個室で他の乗客と相席になったこと。指定券の購入時に自分で席番を指定できない花嫁のれん号の弱点が、このように現れるのかと思いました。半個室の座席を1席単位で発売する限り、列車が混雑する時には相席が発生しますが、多くの人にとっては窮屈で、不快なはずです。
2号車のボックスシートはともかく、1号車の半個室は1組で1室を売り切る個室タイプの発売方式に改めないと、混雑時は不快だろうと考えます。例えば、日本旅行あたりで個室券と食事をセットにして、旅行商品として発売すると、勝手がわからなくても購入しやすいかと。
おもてなしがウリな列車のはずですが、それがあまり感じられなかったのが残念です。移動手段と割り切るというと身もふたもないですが、過度に期待しすぎないほうがよいのかなと正直思いました。
参考資料 References
● 花嫁のれん│観光列車の旅時間:JRおでかけネット (JR西日本) 2023.8閲覧
● tabiwa by WESTER 花嫁のれん食事 (JR西日本) 2023.8閲覧

改訂履歴 Revision History
2015年12月06日:初稿
2022年12月08日:初稿 再構成
2023年02月13日:初稿 再構成
2023年4月08日:初稿 修正
2023年8月24日:第2稿
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